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飛竜探しの旅
背中に乗せてもらうための交渉
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「もしかして、退屈で外に出たいと思ってませんか?」
俺は直球でたずねてみた。
すでに認識を改めたように、小細工は通用しそうにない。
飛竜が求めていることを想像して投げかけた。
(それで我が頷くと思ったか? 人間とは浅はかだ)
小馬鹿にするような響きだった。
思ったよりも反応がよくないように感じられた。
……いや、ここまで同じような反応が続いている。
「簡単に同意しないでおいて、何か条件をつけようとしてませんか?」
強気であることは自覚していたが、ここで引くべきではないと判断した。
もしもの時はアデルとハンク、パワーアップした俺の魔法があれば撤退程度は可能だろう。
それにアデルの話では村の方まで追跡されることはない。
(ほう、そこまでの口を聞くとは……。我は外に出たいとは言っておらぬ)
その言葉から飛竜の圧が増したことを感じた。
声で話せないのはやりづらいわけだが、まだまだ交渉は半ばだった。
昨日のソラルのおかげなのだろうか、不思議と力が湧いてくる。
しかし、飛竜の好きなものとは何だろう。
向こうが本気で怒る手前まで、適当に投げかけるしかなさそうだ。
「……どこか行きたいところがあるとか?」
(ふん、そんなところはない)
「……実は食べたいものがあるとか?」
(我の主食はこの地の肉と草。他に望む食物などないわ)
なかなか手強い相手だ。
やりとりを続けていると、気難しい年寄りを相手にしているような感じになる。
おそらく、人間の一生よりも長く生きているようなので、そうなるのも仕方のないことか。
「それにしても年寄りか」
向こうに聞こえないようにつぶやいた。
飛竜の首を縦に振らせるための提案を続けるのは、何かのプレゼンテーションみたいで少しだけ煩わしさを覚え始めた。
あるいは、俺がそのように感じるとするならば、飛竜もイラっとしている可能性もありえる。
「……あんまり粘らない方がいいか」
いつまでもこちらの相手をしてくれるとは限らず、思考を加速するように巡らせる。
俺の中で年寄りという言葉を元にして、インスピレーションが湧いていた。
――年寄りといえば温泉、飛竜は限られた世界から出られないのなら、温泉というものを知らない可能性が高い。
そろそろ、手札が尽きてきたところなので、ダメ元で言ってみるとしよう。
「あなたは温泉というものを知ってますか?」
(……大地から湯が湧いてくる場所を指すのだろう)
エルフの誰かから聞いたことがあるのか、さすがに知識だけはあるようだ。
ただ、実際に行ったことはないようで、答えからわずかなためらいが感じ取れた。
「ふむふむ、知っていはいるが、行ったことはないと」
(それがどうかしたか)
「推測を口にしただけですよ。あまり怒らないでもらえると」
俺がなだめるように伝えると、脳裏に響く声の怒気が和らいだ気がした。
相手は人間ではないので、自分の感覚でどこまで通用するか未知数だった。
先ほどから静かなアデルとハンクの方を振り返ると、二人はうんうんと頷いて、こちらを励ますような表情を見せていた。
そもそも、俺が自分のために始めたことだった。
他に飛竜がいるかもしれないし、知性の指輪をはめることができる飛竜が見つかる可能性もあるだろう。
しかし、目の前の飛竜を逃したら、次がいつになるのか見当もつかない。
「温泉はいいですよ。特に露天風呂がいい。自然と調和した景色とか」
(おぬしもしつこいな。我の背に乗ろうというのならば、そういう抽象的なものではなく、具体的な利点を述べるべきだろう)
「ああっ、それはそうですね」
この飛竜は年寄り属性があるようで、呆れたり怒りながらも話に付き合ってくれている。
それにしても、温泉の具体的な利点って何だ。
効能とかなら食いつくみたいな意味なのか。
転生前の世界には万病に効く温泉というのはあったが、この世界の温泉はエバン村しか知らない。
あそこの温泉は効能とか謳ってなかったはずだ。
アデルかハンクなら、もう少し気の利いた温泉を知っているかもしれない。
「――ちょっと、作戦タイムで」
(好きにするがよい)
だいぶ飛竜のことが分かってきたが、俺の話に付き合う程度には暇なのだ。
相手にする価値がないと思われない限り、付き合ってくれそうな気配がある。
「二人とも、万病に効く温泉って知りませんか?」
「私は美味しいものに興味がある方だから、温泉は詳しくないわ……」
「何でも治すってことはないだろうが、それに近い温泉なら知ってるぞ」
「さすがハンク!」
飛竜を待たせないように、すぐに先ほどの位置に戻った。
向こうの声は距離が関係ないかもしれないが、こちらの声を届かせるには一定の距離まで近づく必要がある。
「お待たせしました。利点とおっしゃいましたが、万病に効く温泉があります。あなたのように飛ぶことができれば、そう遠くはないでしょう。しかし、あなただけの力ではここから出られないし、温泉の場所も分からない」
飛竜が出られないのは結界の構造が関わることのはずなので、コレットの力を借りればクリアできると考えていた。
それに魔法に関わることならばアデルの力を借りることもできる。
それよりも条件を提示して、興味を示してもらうことが優先だった。
(……それは意外であるな。温泉とは湯に浸かり、くつろぐものだと人の子から聞いた記憶がある。病まで治してしまうとは)
「おっ、興味が湧きましたか? 何か気になる症状でも?」
(そんなに我の背に乗りたいのか? 人の子よ、おぬしのような者は初めてだ。万病に効くとはなかなか魅力的だな。それとここから出られるというのも)
「そうでしょう、そうでしょう」
今後のことを考えれば下手に出すぎない方がいいと思うものの、加減を誤ると本気で怒りそうなので、さじ加減を調整しながら接している。
正直なところ、どれぐらいまで強気に出ていいものか判断しかねていた。
俺は直球でたずねてみた。
すでに認識を改めたように、小細工は通用しそうにない。
飛竜が求めていることを想像して投げかけた。
(それで我が頷くと思ったか? 人間とは浅はかだ)
小馬鹿にするような響きだった。
思ったよりも反応がよくないように感じられた。
……いや、ここまで同じような反応が続いている。
「簡単に同意しないでおいて、何か条件をつけようとしてませんか?」
強気であることは自覚していたが、ここで引くべきではないと判断した。
もしもの時はアデルとハンク、パワーアップした俺の魔法があれば撤退程度は可能だろう。
それにアデルの話では村の方まで追跡されることはない。
(ほう、そこまでの口を聞くとは……。我は外に出たいとは言っておらぬ)
その言葉から飛竜の圧が増したことを感じた。
声で話せないのはやりづらいわけだが、まだまだ交渉は半ばだった。
昨日のソラルのおかげなのだろうか、不思議と力が湧いてくる。
しかし、飛竜の好きなものとは何だろう。
向こうが本気で怒る手前まで、適当に投げかけるしかなさそうだ。
「……どこか行きたいところがあるとか?」
(ふん、そんなところはない)
「……実は食べたいものがあるとか?」
(我の主食はこの地の肉と草。他に望む食物などないわ)
なかなか手強い相手だ。
やりとりを続けていると、気難しい年寄りを相手にしているような感じになる。
おそらく、人間の一生よりも長く生きているようなので、そうなるのも仕方のないことか。
「それにしても年寄りか」
向こうに聞こえないようにつぶやいた。
飛竜の首を縦に振らせるための提案を続けるのは、何かのプレゼンテーションみたいで少しだけ煩わしさを覚え始めた。
あるいは、俺がそのように感じるとするならば、飛竜もイラっとしている可能性もありえる。
「……あんまり粘らない方がいいか」
いつまでもこちらの相手をしてくれるとは限らず、思考を加速するように巡らせる。
俺の中で年寄りという言葉を元にして、インスピレーションが湧いていた。
――年寄りといえば温泉、飛竜は限られた世界から出られないのなら、温泉というものを知らない可能性が高い。
そろそろ、手札が尽きてきたところなので、ダメ元で言ってみるとしよう。
「あなたは温泉というものを知ってますか?」
(……大地から湯が湧いてくる場所を指すのだろう)
エルフの誰かから聞いたことがあるのか、さすがに知識だけはあるようだ。
ただ、実際に行ったことはないようで、答えからわずかなためらいが感じ取れた。
「ふむふむ、知っていはいるが、行ったことはないと」
(それがどうかしたか)
「推測を口にしただけですよ。あまり怒らないでもらえると」
俺がなだめるように伝えると、脳裏に響く声の怒気が和らいだ気がした。
相手は人間ではないので、自分の感覚でどこまで通用するか未知数だった。
先ほどから静かなアデルとハンクの方を振り返ると、二人はうんうんと頷いて、こちらを励ますような表情を見せていた。
そもそも、俺が自分のために始めたことだった。
他に飛竜がいるかもしれないし、知性の指輪をはめることができる飛竜が見つかる可能性もあるだろう。
しかし、目の前の飛竜を逃したら、次がいつになるのか見当もつかない。
「温泉はいいですよ。特に露天風呂がいい。自然と調和した景色とか」
(おぬしもしつこいな。我の背に乗ろうというのならば、そういう抽象的なものではなく、具体的な利点を述べるべきだろう)
「ああっ、それはそうですね」
この飛竜は年寄り属性があるようで、呆れたり怒りながらも話に付き合ってくれている。
それにしても、温泉の具体的な利点って何だ。
効能とかなら食いつくみたいな意味なのか。
転生前の世界には万病に効く温泉というのはあったが、この世界の温泉はエバン村しか知らない。
あそこの温泉は効能とか謳ってなかったはずだ。
アデルかハンクなら、もう少し気の利いた温泉を知っているかもしれない。
「――ちょっと、作戦タイムで」
(好きにするがよい)
だいぶ飛竜のことが分かってきたが、俺の話に付き合う程度には暇なのだ。
相手にする価値がないと思われない限り、付き合ってくれそうな気配がある。
「二人とも、万病に効く温泉って知りませんか?」
「私は美味しいものに興味がある方だから、温泉は詳しくないわ……」
「何でも治すってことはないだろうが、それに近い温泉なら知ってるぞ」
「さすがハンク!」
飛竜を待たせないように、すぐに先ほどの位置に戻った。
向こうの声は距離が関係ないかもしれないが、こちらの声を届かせるには一定の距離まで近づく必要がある。
「お待たせしました。利点とおっしゃいましたが、万病に効く温泉があります。あなたのように飛ぶことができれば、そう遠くはないでしょう。しかし、あなただけの力ではここから出られないし、温泉の場所も分からない」
飛竜が出られないのは結界の構造が関わることのはずなので、コレットの力を借りればクリアできると考えていた。
それに魔法に関わることならばアデルの力を借りることもできる。
それよりも条件を提示して、興味を示してもらうことが優先だった。
(……それは意外であるな。温泉とは湯に浸かり、くつろぐものだと人の子から聞いた記憶がある。病まで治してしまうとは)
「おっ、興味が湧きましたか? 何か気になる症状でも?」
(そんなに我の背に乗りたいのか? 人の子よ、おぬしのような者は初めてだ。万病に効くとはなかなか魅力的だな。それとここから出られるというのも)
「そうでしょう、そうでしょう」
今後のことを考えれば下手に出すぎない方がいいと思うものの、加減を誤ると本気で怒りそうなので、さじ加減を調整しながら接している。
正直なところ、どれぐらいまで強気に出ていいものか判断しかねていた。
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