2 / 5
第一章
第一話 虐待令嬢の日常風景
しおりを挟む
誕生日だからって祝いの言葉もなければましてやプレゼントもない……使用人の誰か私を祝ってくれないかなぁ。
去年の事もあったしあまり期待はしていないが。
そんな身の丈に合わない願望を抱いていたからか、またもや厄介な人物に遭遇してしまった。
「あらあら! こんなところにいたのねぇ?」
「……はい」
少し迷ってから短く答えた。
「え、何? 上司には元気よく、明るく大きな声で返事するって習わなかったの?」
格好の獲物を見つけたといわんばかりに煽りまくってくるこの人は三年前、家から追放された比較的新人のメイドだ。
恐らく年齢だけで上司と部下が決まると思っているのだろう。お可哀想に。私この生活八年やってるのに。
そんなお可哀想なお方は、お義母様の専属メイドで(専属メイドが複数人いるのでほとんどサボっているが)、本当になぜこんな人がウチで働いているのか疑問でしかないのだが、学生時代からの友達だったためここに来たらしい。
年齢は27、18のとき婚約者が我慢できずに逃げ出したときから婚約まで漕ぎ着けたことはないらしい。
これで高い爵位、あるいは非常に優れた性格、はたまた領地運営などの才能があれば婚約まで漕ぎ着けることも可能だったかもしれないが、この人ーークズハはそのうちの何も持っていないし、二番目に至っては一度婚約に漕ぎ着けたのであるならば余程のことがない限り婚約破棄などされないだろう。
あっても十中八九向こうの責任のため、レベルは難しくはあるがどうにかなるレベルだろう。この世界観『婚約破棄はされる方が悪い』っていう考えじゃないし。
まあ、類は友を呼ぶと言うのだろうか。お義母様と友達な時点である程度は性格が悪いとみていいだろう。
「あっ……ごめんね? あなたロクに学校も行ってないものね。教養なんて身に付いてるわけなかったわね! まったくもう、これだから使えないのよアンタは!」
私、あなたのために余分な仕事やってるせいで復習や予習、読書がおざなりになっているんだけど?
他の使用人の大半は優しい人で、家庭教師が来る前日とかだったら手伝ってくれたりもするんだけど……さすがに毎日頼むのは気が引けるし、残業しろって言われるのは私だけだし。
最初の方はまだマシだったけど、それも二週間くらいだったし、私も文句の一つや二つ言いたいところね。
「申し訳ございません、何かご不快な思いをさせてしまったのならお詫び申し上げます」
とりあえず謝罪をしておけば怒りのベクトルくらいは下がってくれるだろう。
もちろん本当に悪いと思っているときはこんな事考えないが、みんなもあるわよね? 理不尽に怒られること。私の場合、そういうときは内心小馬鹿にしながら謝罪するの。
そんな事を思いながら、ニコニコともはや胡散臭いともとれる笑みを浮かべながら形ばかりの謝罪をしたのだがーー。
「え? 謝罪する時は土下座でしょ?」
さすが。思いもよらぬところから難癖付けてきやがる。一回自分が受けてみてはいかがだろうか。パワハラというやつを。
……いや、これはパワハラなんてチャチな言葉で収められないわ。犯罪ね。
「申し訳ございませんでした」
言われるがまま土下座を遂行させる。ここで不要な怒りを買っても仕方がない。耐えるんだ。
「やればできるじゃない。もっと教育してあげるわ」
メイド長が教育係になったのに見放されたあなたが私の教育ですって? 笑わせないで頂けませんでしょうか。
……ああ、この人の『教育』の定義と私の『教育』と定義は違うんだ。びっくりするほど真逆だものね。
「さ、とりあえず水浴びなさい」
この人の『教育』はーー『イジメ』だ。
去年の事もあったしあまり期待はしていないが。
そんな身の丈に合わない願望を抱いていたからか、またもや厄介な人物に遭遇してしまった。
「あらあら! こんなところにいたのねぇ?」
「……はい」
少し迷ってから短く答えた。
「え、何? 上司には元気よく、明るく大きな声で返事するって習わなかったの?」
格好の獲物を見つけたといわんばかりに煽りまくってくるこの人は三年前、家から追放された比較的新人のメイドだ。
恐らく年齢だけで上司と部下が決まると思っているのだろう。お可哀想に。私この生活八年やってるのに。
そんなお可哀想なお方は、お義母様の専属メイドで(専属メイドが複数人いるのでほとんどサボっているが)、本当になぜこんな人がウチで働いているのか疑問でしかないのだが、学生時代からの友達だったためここに来たらしい。
年齢は27、18のとき婚約者が我慢できずに逃げ出したときから婚約まで漕ぎ着けたことはないらしい。
これで高い爵位、あるいは非常に優れた性格、はたまた領地運営などの才能があれば婚約まで漕ぎ着けることも可能だったかもしれないが、この人ーークズハはそのうちの何も持っていないし、二番目に至っては一度婚約に漕ぎ着けたのであるならば余程のことがない限り婚約破棄などされないだろう。
あっても十中八九向こうの責任のため、レベルは難しくはあるがどうにかなるレベルだろう。この世界観『婚約破棄はされる方が悪い』っていう考えじゃないし。
まあ、類は友を呼ぶと言うのだろうか。お義母様と友達な時点である程度は性格が悪いとみていいだろう。
「あっ……ごめんね? あなたロクに学校も行ってないものね。教養なんて身に付いてるわけなかったわね! まったくもう、これだから使えないのよアンタは!」
私、あなたのために余分な仕事やってるせいで復習や予習、読書がおざなりになっているんだけど?
他の使用人の大半は優しい人で、家庭教師が来る前日とかだったら手伝ってくれたりもするんだけど……さすがに毎日頼むのは気が引けるし、残業しろって言われるのは私だけだし。
最初の方はまだマシだったけど、それも二週間くらいだったし、私も文句の一つや二つ言いたいところね。
「申し訳ございません、何かご不快な思いをさせてしまったのならお詫び申し上げます」
とりあえず謝罪をしておけば怒りのベクトルくらいは下がってくれるだろう。
もちろん本当に悪いと思っているときはこんな事考えないが、みんなもあるわよね? 理不尽に怒られること。私の場合、そういうときは内心小馬鹿にしながら謝罪するの。
そんな事を思いながら、ニコニコともはや胡散臭いともとれる笑みを浮かべながら形ばかりの謝罪をしたのだがーー。
「え? 謝罪する時は土下座でしょ?」
さすが。思いもよらぬところから難癖付けてきやがる。一回自分が受けてみてはいかがだろうか。パワハラというやつを。
……いや、これはパワハラなんてチャチな言葉で収められないわ。犯罪ね。
「申し訳ございませんでした」
言われるがまま土下座を遂行させる。ここで不要な怒りを買っても仕方がない。耐えるんだ。
「やればできるじゃない。もっと教育してあげるわ」
メイド長が教育係になったのに見放されたあなたが私の教育ですって? 笑わせないで頂けませんでしょうか。
……ああ、この人の『教育』の定義と私の『教育』と定義は違うんだ。びっくりするほど真逆だものね。
「さ、とりあえず水浴びなさい」
この人の『教育』はーー『イジメ』だ。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
【※R-18】私のイケメン夫たちが、毎晩寝かせてくれません。
aika
恋愛
人類のほとんどが死滅し、女が数人しか生き残っていない世界。
生き残った繭(まゆ)は政府が運営する特別施設に迎えられ、たくさんの男性たちとひとつ屋根の下で暮らすことになる。
優秀な男性たちを集めて集団生活をさせているその施設では、一妻多夫制が取られ子孫を残すための営みが日々繰り広げられていた。
男性と比較して女性の数が圧倒的に少ないこの世界では、男性が妊娠できるように特殊な研究がなされ、彼らとの交わりで繭は多くの子を成すことになるらしい。
自分が担当する屋敷に案内された繭は、遺伝子的に優秀だと選ばれたイケメンたち数十人と共同生活を送ることになる。
【閲覧注意】※男性妊娠、悪阻などによる体調不良、治療シーン、出産シーン、複数プレイ、などマニアックな(あまりグロくはないと思いますが)描写が出てくる可能性があります。
たくさんのイケメン夫に囲まれて、逆ハーレムな生活を送りたいという女性の願望を描いています。
籠の中の令嬢
ワゾースキー
恋愛
どうして、こうなってしまったのかしら。
私は、ひっそりと暮らして生きたかっただけなのに…
女の子の出生率が極端に少なく、一妻多夫制という他国と比較しても、数少ない配偶システムを導入している国で産まれた彼女は、とても美しい容姿故に求婚が後を立たず、そんな日々に嫌気がさしていた。
他国では男女の出生率が平均的であると知った彼女は、自分が女性というだけで執着されることのない、他国に憧れ、国を出る方法を画策していた。
彼女へ想いを寄せる4人の男性に計画を知られるまでは順調だった。
そう。知られるまでは…
気づけば知らない部屋。
脚に鎖が。
窓には鉄格子が。
あぁ…どうしてこうなったの…?
*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
初執筆作品
右往左往しながら書いています。
至らぬ点につきましては、何卒ご寛容のほどお願い申し上げます。
R18です。
監禁、束縛、無理矢理など、苦手な方は回れ右でお願い致します。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
春画を売ったら王子たちに食べられた
四季
恋愛
どこにでもいる普通のOLの里奈は、山の中でスケッチをしていたら異世界に迷い込んだ。魔力のない里奈は『非人』として国に保護されて、洗濯の下女の仕事をしている。将来のためにお金を貯めようと、こっそりエロ画を描いて売っていた。どうも里奈の描いたエロ画はこの国では刺激が強かったらしい。「これを描いたのはおまえか?」と、俺様王子に食べられた。恋い焦がれていた人の兄と関係を持った。
里奈が王子の子どもを妊娠したことによって、長い歴史の中でねじ曲げられた非人と王族との真実が明かされようとした。そして命を狙われはじめた。二人の王子の間で揺れ動く恋心。生き残るために日本で育った常識を捨てた。
R18 *性的描写や残酷描写を想像させる描写あります。誤字脱字多で不快感を覚える方はお控えください。執筆に集中したいので感想欄を閉じさせていただきます。お読みくださり、ありがとうございます。
すみません、クライマックスですが、更新ペース下がります。
【完結】R-18乙女ゲームの主人公に転生しましたが、のし上がるつもりはありません。
柊木ほしな
恋愛
『Maid・Rise・Love』
略して『MRL』
それは、ヒロインであるメイドが自身の体を武器にのし上がっていく、サクセスストーリー……ではなく、18禁乙女ゲームである。
かつて大好きだった『MRL』の世界へ転生してしまった愛梨。
薄々勘づいていたけれど、あのゲームの展開は真っ平ごめんなんですが!
普通のメイドとして働いてきたのに、何故かゲーム通りに王子の専属メイドに抜擢される始末。
このままじゃ、ゲーム通りのみだらな生活が始まってしまう……?
この先はまさか、成り上がる未来……?
「ちょっと待って!私は成り上がるつもりないから!」
ゲーム通り、専属メイド就任早々に王子に手を出されかけたルーナ。
処女喪失の危機を救ってくれたのは、前世で一番好きだった王子の侍従長、マクシミリアンだった。
「え、何この展開。まったくゲームと違ってきているんですけど!?」
果たして愛梨……もとい今はルーナの彼女に、平凡なメイド生活は訪れるのか……。
転生メイド×真面目な侍従長のラブコメディ。
※性行為がある話にはサブタイトルに*を付けております。未遂は予告無く入ります。
※基本は純愛です。
※この作品はムーンライトノベルズ様にも掲載しております。
※以前投稿していたものに、大幅加筆修正しております。
完結 異世界で聖女はセックスすることが義務と決まっている。
シェルビビ
恋愛
今まで彼氏がいたことがない主人公は、最近とても運が良かった。両親は交通事故でなくなってしまい、仕事に忙殺される日々。友人と連絡を取ることもなく、一生独身だから家でも買おうかなと思っていた。
ある日、行き倒れの老人を居酒屋でたらふく飲ませて食べさせて助けたところ異世界に招待された。
老人は実は異世界の神様で信仰されている。
転生先は美少女ミルティナ。大聖女に溺愛されている子供で聖女の作法を学ぶため学校に通っていたがいじめにあって死んでしまったらしい。
神様は健康体の美少女にしてくれたおかげで男たちが集まってくる。元拗らせオタクの喪女だから、性欲だけは無駄に強い。
牛人族のヴィオとシウルはミルティナの事が大好きで、母性溢れるイケメン。
バブミでおぎゃれる最高の環境。
300年ぶりに現れた性欲のある聖女として歓迎され、結界を維持するためにセックスをする日々を送ることに。
この物語は主人公が特殊性癖を受け入れる寛大な心を持っています。
異種族が出てきて男性の母乳も飲みます。
転生令嬢も出てきますが、同じような変態です。
ちんちんを受け入れる寛大な心を持ってください。
男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話
やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。
順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。
※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる