10 / 33
はじまりまして
08
しおりを挟む
* 【危機察知――〈解除〉】 *
危機察知を使ってから、一時間が経ったようだ。
もちろんその効果は切れてしまったのだが、ひとまずその力はもうは必要ないと、森谷は判断する。
一つは単純に、魔力がもったいないからだ。
それに、この力に頼りすぎるのも良くないという考えも、彼の中にわずかながらあり、それも判断材料となっていた。
ただ一番の理由は、この城のトップであろう目の前にいる少女と、打ち解けたことだろう。
でなければ、結構悩み事など、まともに聞いてくれないだろう。
そう――彼女は聞いていた。
覚悟を持ち、森谷が口にしたあるおかしな話にたいして、彼女は静かに、真面目な様子で耳をかたむけていたのだ。
そして――
「……なるほど。話はわかった」
「ん? わかったって?」
ファーシルの呟きに、森谷は首をかしげる。
すると彼女は、説明のために森谷が手にしていた『魔力タンク』を指さして言った。
「要するに、それに――屁をこけばいいんだろう?」
「…………」
ファーシルの返答に、森谷は呆然とする。
彼女がおかしなことを言ってるからではない。
そのおかしな話に対して、彼女が理解を示そうとしてくれていることに驚き、彼は声も出せずにいるのである。
「ん? 違うのか?」
「い――いや。違わない……けど。……信じてくれるのか?」
「まあ、にわかには信じられんが、試してみればわかるだろう。それに、せっかく仲良くなれたんだ。嘘をつかれるのは……寂しいしな。だから、信じることにしてみた」
「――っ」
情けないと思いながら、森谷は泣きそうになる。
話をしっかり聞いてくれたことも嬉しかったが、温度を感じるような暖かな言葉が嬉しかったのだ。
そして――
「こらこら、そんな顔をするな。情けない」
「いや、仲良くなりたい思ってたのは、おれだけじゃなかったんだなって思ったら、嬉しくて」
「ほう。わたしと友人になれたことが、そんなに嬉しいか?」
「ああ。まあ、そりゃあね」
森谷が素直な調子で言うと、
「ちなみに。その魔力の補給とやらを、やってやるとは言ってないぞ?」
「あ、ああ。まあ……そうだよな……」
ファーシルの言葉に、思わず落胆の色を浮べてしまう森谷。
断られる覚悟をしていても、いざそれを言われてしまうと、やはり気分は落ち込むのである。
とはいえ、今の状況で繋がりができたことは、素直に嬉しいと思っており、彼は複雑な表情を浮べた。
そんな彼の内心を知ってか知らずか、ファーシルは苦笑いを浮べる。
「まあ――やってやらんとも言ってないがな」
「…………ん?」
呆然と首をかしげる森谷。
その眼前で、ファーシルはおもむろに玉座から立ち上がると、彼女はゆったりとした歩調で、森谷のすぐ前へと向かった。
「どれ。嘘か本当か、ひとつ――試してみようか」
「えっ……と……?」
反応に困る森谷。
ファーシルが口にした言葉の意味を、わかりかねているのである。
「アユミ。おぬしは運がいい」
ファーシルは戸惑いの表情を浮べている森谷の手から、すっと『魔力タンク』を取り上げると、
「今ちょうど――」
ファーシルはそういいながら、手に持ったままの森谷の『魔力タンク』を尻の方へと持っていく。
そして――
「――出そうな感じがするんだ」
彼女は腹に――ちからを入れた。
その刹那、森谷は――、
* 【12】――【4】 *
危機察知を使ってから、一時間が経ったようだ。
もちろんその効果は切れてしまったのだが、ひとまずその力はもうは必要ないと、森谷は判断する。
一つは単純に、魔力がもったいないからだ。
それに、この力に頼りすぎるのも良くないという考えも、彼の中にわずかながらあり、それも判断材料となっていた。
ただ一番の理由は、この城のトップであろう目の前にいる少女と、打ち解けたことだろう。
でなければ、結構悩み事など、まともに聞いてくれないだろう。
そう――彼女は聞いていた。
覚悟を持ち、森谷が口にしたあるおかしな話にたいして、彼女は静かに、真面目な様子で耳をかたむけていたのだ。
そして――
「……なるほど。話はわかった」
「ん? わかったって?」
ファーシルの呟きに、森谷は首をかしげる。
すると彼女は、説明のために森谷が手にしていた『魔力タンク』を指さして言った。
「要するに、それに――屁をこけばいいんだろう?」
「…………」
ファーシルの返答に、森谷は呆然とする。
彼女がおかしなことを言ってるからではない。
そのおかしな話に対して、彼女が理解を示そうとしてくれていることに驚き、彼は声も出せずにいるのである。
「ん? 違うのか?」
「い――いや。違わない……けど。……信じてくれるのか?」
「まあ、にわかには信じられんが、試してみればわかるだろう。それに、せっかく仲良くなれたんだ。嘘をつかれるのは……寂しいしな。だから、信じることにしてみた」
「――っ」
情けないと思いながら、森谷は泣きそうになる。
話をしっかり聞いてくれたことも嬉しかったが、温度を感じるような暖かな言葉が嬉しかったのだ。
そして――
「こらこら、そんな顔をするな。情けない」
「いや、仲良くなりたい思ってたのは、おれだけじゃなかったんだなって思ったら、嬉しくて」
「ほう。わたしと友人になれたことが、そんなに嬉しいか?」
「ああ。まあ、そりゃあね」
森谷が素直な調子で言うと、
「ちなみに。その魔力の補給とやらを、やってやるとは言ってないぞ?」
「あ、ああ。まあ……そうだよな……」
ファーシルの言葉に、思わず落胆の色を浮べてしまう森谷。
断られる覚悟をしていても、いざそれを言われてしまうと、やはり気分は落ち込むのである。
とはいえ、今の状況で繋がりができたことは、素直に嬉しいと思っており、彼は複雑な表情を浮べた。
そんな彼の内心を知ってか知らずか、ファーシルは苦笑いを浮べる。
「まあ――やってやらんとも言ってないがな」
「…………ん?」
呆然と首をかしげる森谷。
その眼前で、ファーシルはおもむろに玉座から立ち上がると、彼女はゆったりとした歩調で、森谷のすぐ前へと向かった。
「どれ。嘘か本当か、ひとつ――試してみようか」
「えっ……と……?」
反応に困る森谷。
ファーシルが口にした言葉の意味を、わかりかねているのである。
「アユミ。おぬしは運がいい」
ファーシルは戸惑いの表情を浮べている森谷の手から、すっと『魔力タンク』を取り上げると、
「今ちょうど――」
ファーシルはそういいながら、手に持ったままの森谷の『魔力タンク』を尻の方へと持っていく。
そして――
「――出そうな感じがするんだ」
彼女は腹に――ちからを入れた。
その刹那、森谷は――、
* 【12】――【4】 *
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


扉のない部屋
MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・
出口のない部屋に閉じ込められた少女の、下品なお話です。





ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる