悪役のミカタ

MEIRO

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はじまりまして

02

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「……お?」

 リアクションに戸惑いながら、少年は“それ”を見上げる。
 彼の眼前にあったのは、雲に届きそうなほどの建物だった。
 なぜその建物が森の中から見えなかったのだろうか、という疑問は、闇に包まれている建物の高所の部分を見て解決する。
 城のようだったが、物語に出てくるような煌びやかなそれではなく、もっと現実的に、空からの光――月ではない白っぽい色をした惑星からの光を受けていた。
 その薄暗さに、少年の目には、輪郭がぼんやりとなって映りこんでくる。
 彼は怪しげな雰囲気の漂う外観に圧倒されながら、視線を下ろすと、

「へえ……」

 城壁を見て、少年はさらに驚いたように声をもらす。
 左右どちらを向いても、終わりの見えないほどの城壁が続いていたからだ。
 暗さのせいもあるだろう。だが、少年はなんとなく感じる。その先が、終わりが見えないほどに続いていることを――。
 縦にも横にも迫力のある光景に少年はため息をもらすと、ふと近くに人影を感じ、そちらへと視線を向けた。

「……あ……ん?」

 首をひねる少年。
 少し離れた所に建物の門を発見し、そこに門兵のような者の姿を見つけたのだが、その姿に、彼は違和感を感じたようだ。
 顔は陰に隠れていて見えないが、おそらく男だろう。
 その者は、中世ヨーロッパに存在していたであろう兵士のような格好をしており、その佇まいを見て、少年はなんとなくRPGの世界の中に迷い込んだような錯覚を覚える。
 少年はおもむろに、その人影に近づいていった。
 すると、門兵が少年の存在に気付いたように振り向き、

「……へ?」

 驚愕に目を見開く少年。
 門兵の顔が、城壁にぶら下がっているランプ照らされ、はっきりと見えるようになったのだが、その顔がすべて――骨だったのである。

「――っ! ……はぁ!?」

 よっぽど驚いたのだろう。
 びくっと身体を反応させると、慌てた様子で物陰に隠れた。
 ちなみに、驚いて隠れなたのは、少年ではなく――である。

「ええぇぇーー……」

 予想外の展開に少年の肩ががくっと下がった。
 彼の眼前には、門のふち――奥まった部分に身体を引っ込め、石壁から顔を除かせる骨の兵士の姿がある。
 表情は――ないが、気の毒に思えるほどに、身体を震わせていて、恐ろしいげな見た目とのギャップに、少年の思考は追いつかず、数秒間、困惑したように固まっていた。

「あ、あのぉ……」
『――ッ』

 骨の兵士の体がびくっと震える。
 少年はどうしたもんかと、頬をかくと、

「言葉、わかります?」
『……?』

 首をかしげる骨の兵士。
 それから彼(?)は、『カクカク』とあごを動かした。
 どうやら、言葉は通じていないようだ。
 と、そこに――もう一体、骨の兵士がやってくる。

『――カクカク……。カクッ!?』

 彼(?)――骨の兵士Bは門の脇にある小さな扉から出てくると、少年を見るやいなや、何事だと言いたげに、一体目の兵士――骨の兵士Aの方を向く。

「いや、その――」
『『――ッ!?』』

 口を挟もうとした少年へ、二体は慌てたように顔を向ける。
 そして、呆然とする少年の目の前で、二体はなにやら意思疎通のようなものを交わすと――城の中へと入っていってしまい、少年は置いてけぼりを食らうように、ひとり、門の前に残されたのだった。
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