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はじまりまして
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* 【18】――【18】 *
「――んぐぎゃああああああああぁぁっ!!」
声を荒げる少年。
ここはもう、白髪の少女がいた空間ではなく、彼はひとり、乾いた土の上でうずくまっていた。
それは白髪の少女の仕業のようだ。
少年は嗅覚に、卵が腐ったような――それを何倍も濃くしたようなニオイのようなを感じ、苦鳴をあげている。
本来ならばそれは――魔力に変換できるはずのものだった。
しかし、やり方が違っているため、彼の魔力量に、いっさいの変動はない。
意図的なものだろう。
少年は白髪の少女から――単純に嫌がらせのようなものを受けたのである。
「くっそ! まじか、このニオイ! 一体何を食ったら……って、かみさまって飯くうのかよ!? うわああ……」
聞いてみればよかったな――と少年は呟き、ゆっくりと落ち着きを取り戻していく。
「とはいえ、このくらい……堪えられるようにならないと」
もしや、これは白髪の少女からの、気付けのようなものなんじゃないかと――少年は心を奮い立たせる。
この先、魔力補充のたびに同じようにしていたら、思いやられると。
それを手伝ってくれた相手にも失礼だと。
彼は一人では何もできない自分を省みたのだ。
少年は深い呼吸をし、落ち着きを取り戻すと、ようやく顔をあげた。
「つうか……。ここ……どこなんだろう?」
周囲は木々に囲まれていた。
彼はどうやら、森の中にいるようだ。
そして、日は落ちかけており、下手をすれば、遭難まっしぐらといったふうな雰囲気が漂っている。
とはいえ、
「最悪の場合……さっそく力に頼るしかないかもな」
その切り札が、少年の精神を支えていた。
彼は落ち着いた様子で腕を組み思考する。
しかし、野営についての知識がなく、このままじっとしていることに意味を感じなかったのもあり、彼はこれからどうするかを考えながら、ひとまず歩くことにした。
*――*――*――*――*
空はすぐに暗くなり、薄暗くなっていく視界が、少年の不安をあおっていく。
歩いているあいだに良い案が閃くこともなく、彼は暗い森を中を適当に歩いていた。
「やっぱ……灯りが必要かな。力を使えば、たぶんいけそうな気がするけど……魔力がなぁ……」
少年は、白髪の少女から力の使い方を教わったときのことを思い出しながら呟く。
その時の内容を端的に言うなら、力を使う際には――使うイメージをすればいいだけ、といったものだった。
とはいえ、言葉以上にその工程は複雑であり、今の少年にとって、まだ好き勝手に使えるような技術ではない。
それらを理解するには、力に慣れていくしかないと、そう説明を受けていた少年は、ひとまず手探りで知識を得るように、魔力の感覚へと意識を向けてみる。
「まあ、ランプくらいなら、生み出せる――か?」
少年は自分の中にある魔力と相談するように、思考する。
どうやら、その成功率は、半々ぐらいのようだ。
「やめておくか……失敗したら魔力がもったいないし」
少年は靴を生み出した時のことを思い出す。
その時は、白髪の少女に言われるがままに魔力を扱い、確実にできると、確信してから、彼は力を使ったのだ。
どうして、そう思えたのかは本人にすらわからず、魔力を扱うのであれば、できるだけその時に近い状態で扱いたいと、少年は思う。
でなければ、失敗するような気がしてならないのである。
失敗すれば――魔力だけが減る、らしく。
魔力の供給するすべのない今、それは避けたいと、少年は魔力の使用を躊躇ったのだった。
「まあ、まだ……真っ暗って訳じゃない」
夕日はとうに沈んでおり、視界にはほとんどなにも映っていないが、彼はそんな言い訳をしつつ、歩く速度を上げていく。
そして、しばらく進み。
やはり一か八か、力を使ってみるべきかなのだろうか。
そう心に焦りを感じ始めた頃。
「――ん?」
遠くに何かが――見えた。
見える、ということ。
それはつまり、そこに光源があるこということに、他ならない。
その事実に少年は眼に希望の色を浮かべ、駆け足で、何かがある方へと向かってみることにした。
「――んぐぎゃああああああああぁぁっ!!」
声を荒げる少年。
ここはもう、白髪の少女がいた空間ではなく、彼はひとり、乾いた土の上でうずくまっていた。
それは白髪の少女の仕業のようだ。
少年は嗅覚に、卵が腐ったような――それを何倍も濃くしたようなニオイのようなを感じ、苦鳴をあげている。
本来ならばそれは――魔力に変換できるはずのものだった。
しかし、やり方が違っているため、彼の魔力量に、いっさいの変動はない。
意図的なものだろう。
少年は白髪の少女から――単純に嫌がらせのようなものを受けたのである。
「くっそ! まじか、このニオイ! 一体何を食ったら……って、かみさまって飯くうのかよ!? うわああ……」
聞いてみればよかったな――と少年は呟き、ゆっくりと落ち着きを取り戻していく。
「とはいえ、このくらい……堪えられるようにならないと」
もしや、これは白髪の少女からの、気付けのようなものなんじゃないかと――少年は心を奮い立たせる。
この先、魔力補充のたびに同じようにしていたら、思いやられると。
それを手伝ってくれた相手にも失礼だと。
彼は一人では何もできない自分を省みたのだ。
少年は深い呼吸をし、落ち着きを取り戻すと、ようやく顔をあげた。
「つうか……。ここ……どこなんだろう?」
周囲は木々に囲まれていた。
彼はどうやら、森の中にいるようだ。
そして、日は落ちかけており、下手をすれば、遭難まっしぐらといったふうな雰囲気が漂っている。
とはいえ、
「最悪の場合……さっそく力に頼るしかないかもな」
その切り札が、少年の精神を支えていた。
彼は落ち着いた様子で腕を組み思考する。
しかし、野営についての知識がなく、このままじっとしていることに意味を感じなかったのもあり、彼はこれからどうするかを考えながら、ひとまず歩くことにした。
*――*――*――*――*
空はすぐに暗くなり、薄暗くなっていく視界が、少年の不安をあおっていく。
歩いているあいだに良い案が閃くこともなく、彼は暗い森を中を適当に歩いていた。
「やっぱ……灯りが必要かな。力を使えば、たぶんいけそうな気がするけど……魔力がなぁ……」
少年は、白髪の少女から力の使い方を教わったときのことを思い出しながら呟く。
その時の内容を端的に言うなら、力を使う際には――使うイメージをすればいいだけ、といったものだった。
とはいえ、言葉以上にその工程は複雑であり、今の少年にとって、まだ好き勝手に使えるような技術ではない。
それらを理解するには、力に慣れていくしかないと、そう説明を受けていた少年は、ひとまず手探りで知識を得るように、魔力の感覚へと意識を向けてみる。
「まあ、ランプくらいなら、生み出せる――か?」
少年は自分の中にある魔力と相談するように、思考する。
どうやら、その成功率は、半々ぐらいのようだ。
「やめておくか……失敗したら魔力がもったいないし」
少年は靴を生み出した時のことを思い出す。
その時は、白髪の少女に言われるがままに魔力を扱い、確実にできると、確信してから、彼は力を使ったのだ。
どうして、そう思えたのかは本人にすらわからず、魔力を扱うのであれば、できるだけその時に近い状態で扱いたいと、少年は思う。
でなければ、失敗するような気がしてならないのである。
失敗すれば――魔力だけが減る、らしく。
魔力の供給するすべのない今、それは避けたいと、少年は魔力の使用を躊躇ったのだった。
「まあ、まだ……真っ暗って訳じゃない」
夕日はとうに沈んでおり、視界にはほとんどなにも映っていないが、彼はそんな言い訳をしつつ、歩く速度を上げていく。
そして、しばらく進み。
やはり一か八か、力を使ってみるべきかなのだろうか。
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「――ん?」
遠くに何かが――見えた。
見える、ということ。
それはつまり、そこに光源があるこということに、他ならない。
その事実に少年は眼に希望の色を浮かべ、駆け足で、何かがある方へと向かってみることにした。
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