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12 あの、もうHP0なんですけど……
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何人かの少女が入れ替わったあと、
「うっわー、凄いニオイ。大丈夫……、そうではではなさそうだね」
すっかり濁った空気の中。
ショートヘアーのボーイッシュな少女が、表情を歪め、苦笑いをしながら少年の前へとやってくる。
その様子に、一つ後ろに並ぶ三つ編みツインテールの少女が、やれやれといった様子で口を開いた。
「こらケイリー。人様の『プレゼント』たいして、そんな風に顔をしかめては――」
「いやいや、エレノアだって。鼻をつまみながら言われても、説得力ないよ」
「なっ、これは……」
三つ編みの――エレノアと呼ばれる少女は、慌てた様子で、思わず鼻から手を離し、「うっ……」と前のめりになると、「げほげほっ」と、少し苦しそうにむせる。
「エ――エレノア! 大丈夫!?」
ケイリーと呼ばれた、ボーイッシュな少女は心配げにエレノアの背中をさすった。
すると、
「……ケイリー」
エレノアがゆっくりと、彼女へ視線を向ける。
「ん? エレノア。今、何か言った?」
「背中……。ホックが、外れたわ……」
涙目のエレノア。
その反応に、ケイリーは「……ぇ」と身を硬直させ、
「あ、あはは……」
笑ってごまかした。
それを見た誰かが、可笑しそうに笑う。
ばかにした感じではない。
そしてその空気は――そよ風のように伝染していき、涙目だったエレノアも含めて、気づけば皆が、笑みを浮かべていた。
止まった列の流れに、いらいらする者もおらず、そこには優しげな空気だけが流れていて、“酸素以外”は、澄みきっていた。
だが、
「…………」
少年だけは笑えず、表情には力がない。
ただ、半開きに目を開け、壊れたおもちゃのように、時折ぴくっと動いている。
ケイリーは少年に視線を向けると、気にした様子を見せることなく、
「――さてと。エレノアにはあとでもう一度、ちゃんと誤るとして。さっそくだけど、私の『プレゼント』、嗅いでもらっちゃおうかな」
と、催しは続けられていく。
そして――順番はさらに進み、
「あなた、本当に大丈夫? まあ、多分私のはそこまで臭い強くないから――……」
少年は見ず知らずの――誰かの声を聞きながら、
「ねえねえ、一つ聞きたいんだけど。あなたは、どんなふうに嗅がせてもらうのが――……」
誰かの――おならの臭いを嗅がされ、
「あーだこーだ言ってたのに……結局、ロゼッタも『カップケーキ』に――……」
臭いに――脳を揺らされ、
「よかったぁ、まだ意識があるみたいだねぇ。人数が人数だし、流石に心配に……、あぁ、ごめんなさい。話の途中だけど、もう、限界――……」
既に空っぽの胃を――絞られるように、
「あーらら、お昼に食べたのが、結構効いたみたいだね。ちなみに私も――……」
明滅するような――意識のなか、
「やっと、会えましたね。ああ、こんなことなら――……」
少年は――苦しみ続ける。
「あーん、結局、こんなに後ろになっちゃったよ。まあ、あなたを一人占めにしようとした罰だよね。もし今度機会があったら、今度はちゃんと、普通のパンを作ってくるよ」
そして――数が“五百”を越えた頃。
「うっわー、凄いニオイ。大丈夫……、そうではではなさそうだね」
すっかり濁った空気の中。
ショートヘアーのボーイッシュな少女が、表情を歪め、苦笑いをしながら少年の前へとやってくる。
その様子に、一つ後ろに並ぶ三つ編みツインテールの少女が、やれやれといった様子で口を開いた。
「こらケイリー。人様の『プレゼント』たいして、そんな風に顔をしかめては――」
「いやいや、エレノアだって。鼻をつまみながら言われても、説得力ないよ」
「なっ、これは……」
三つ編みの――エレノアと呼ばれる少女は、慌てた様子で、思わず鼻から手を離し、「うっ……」と前のめりになると、「げほげほっ」と、少し苦しそうにむせる。
「エ――エレノア! 大丈夫!?」
ケイリーと呼ばれた、ボーイッシュな少女は心配げにエレノアの背中をさすった。
すると、
「……ケイリー」
エレノアがゆっくりと、彼女へ視線を向ける。
「ん? エレノア。今、何か言った?」
「背中……。ホックが、外れたわ……」
涙目のエレノア。
その反応に、ケイリーは「……ぇ」と身を硬直させ、
「あ、あはは……」
笑ってごまかした。
それを見た誰かが、可笑しそうに笑う。
ばかにした感じではない。
そしてその空気は――そよ風のように伝染していき、涙目だったエレノアも含めて、気づけば皆が、笑みを浮かべていた。
止まった列の流れに、いらいらする者もおらず、そこには優しげな空気だけが流れていて、“酸素以外”は、澄みきっていた。
だが、
「…………」
少年だけは笑えず、表情には力がない。
ただ、半開きに目を開け、壊れたおもちゃのように、時折ぴくっと動いている。
ケイリーは少年に視線を向けると、気にした様子を見せることなく、
「――さてと。エレノアにはあとでもう一度、ちゃんと誤るとして。さっそくだけど、私の『プレゼント』、嗅いでもらっちゃおうかな」
と、催しは続けられていく。
そして――順番はさらに進み、
「あなた、本当に大丈夫? まあ、多分私のはそこまで臭い強くないから――……」
少年は見ず知らずの――誰かの声を聞きながら、
「ねえねえ、一つ聞きたいんだけど。あなたは、どんなふうに嗅がせてもらうのが――……」
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「あーだこーだ言ってたのに……結局、ロゼッタも『カップケーキ』に――……」
臭いに――脳を揺らされ、
「よかったぁ、まだ意識があるみたいだねぇ。人数が人数だし、流石に心配に……、あぁ、ごめんなさい。話の途中だけど、もう、限界――……」
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「やっと、会えましたね。ああ、こんなことなら――……」
少年は――苦しみ続ける。
「あーん、結局、こんなに後ろになっちゃったよ。まあ、あなたを一人占めにしようとした罰だよね。もし今度機会があったら、今度はちゃんと、普通のパンを作ってくるよ」
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