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作り物の部屋
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「それじゃあ、はじめてくれ」
俺は声をマイクに通し、ガラスの向こうの部屋へ、指示を出す。
その部屋には、ベッドにクローゼット。勉強机――といった。
いかにもといった、学生の部屋といった様子が広がっていた。
ちなみに、窓があるが、窓を開いても、外にはつながっていない。
――作り物。
ある目的のためだけに作られた部屋で。
向こうからは、俺のことがみえないようになっている。
とりあえず、そこらへんの説明はのちにするとして――。
部屋には、十代半ばといった感じの男女が一人ずつおり、二人ともベッドに腰をかけていた。
そして、少女のほうだけが、俺の声に反応し――ウェーブがかったセミロングの髪をかきあげ、決められた合図で俺に返すと、
『それじゃあ、これ。はずすわね』
少女は少年に言い。
少年の目にかけられていたアイマスクをとる。
要するに、少年は何も知らない状態でそこにいたのだ。
少女の声に、少年は一度、『え?』と反応してから、おずおずと口を開いた。
『あの……、ここは……?』
少年が少女にたずねる。
すると、少女は柔らかな笑みを浮かべて答えた。
『ここは、私の部屋よ』
それはもちろん――演技だ。
ここは、彼女の部屋などではなく、俺の――いや、この話も、いったんおいておくことにしよう。
とにかく、彼女は俺に雇われ、俺の指示で動いていた。
そして、そんな少女の言葉に、少年は疑問の表情を浮かべると、
『そうなんだ……? ちなみに、どうして僕は、アイマスクをつけなきゃいけなかったの?』
『え……?』
『いや、だから……』
『へ……?』
『あ、いや……。なんでもないです……』
『そう……』
なんだか、茶番のようなやり取りだが、これは俺の指示ではない。
彼女――音夢は少しばかり、天然のところがあるようだ。
それでいて、与えられた指示をきっちりこなすのだから、面白いこだったりする。
さて、それで。
彼女に与えた指示だが――、
ぷううぅぅ……
その音は、ガラスの向こう――イヤホンから聞こえてきた。
部屋は防音になっていて、きっちり遮音されている。
そのため、マイクを通さないと、向こうの物音が聞こえないのだ。
ちなみに、マイクは音夢に身につけさせている。
そのほうが――ほしい音が、聞き取れるからだ。
と、まあそんな具合で、話は展開していき――、
『『…………』』
唐突に黙り込む二人。
音の出所は明らかに――音夢であり。
先ほどの音は、どうきいても、放屁音といった感じだ。
つまり、ここは――男の見せ所といった場面であり。
呆然としていた、少年だったが、すぐに気を取り直したようすで、音夢のフォローをしようという気配を見せた。
しかし、
『――うっ……』
声を詰まらせる少年。
その理由は――いわずもがなだろう。
まあ、考えずらいだろうが。
音夢の屁が――臭いのだ。
彼女の屁は人よりも臭い。
原因は、わかならいが。
以前、健康診断にいかせたことがあったが、問題ないらしく。
だというのに――なぜか、規格外に臭いのだった。
ひょっとすると、スカンクの生まれ変わりかなんかだろうか。
と、思ったこともあったりしたが、その話はさておき、
『ど、どうしたの……?』
音夢がおずおずと、少年にたずねる。
目を動揺で揺らし、明らかにうろたえているような様子だ。
まあそれも――演技なわけだが。
その様子に、少年は少し慌てると、
『あ、いや。その……、大丈夫? 体調とか、悪いのかな……、って……』
おそらく、今すぐ鼻をつまみたいだろうに。
少年はどうにか臭いをこらえながら返答する。
それを受け、少女はぎこちない笑みを浮かべ、『うん……』とだけ返した。
すると、
『けど……、あれだから。僕、そういうの気にしないし……。気を使わなくて大丈夫だからね』
ああ、いい返答だ。
俺はその台詞に、合格点をだす。
というより、その言葉を待っていたというほうが正しいだろう。
それに、このあとの展開を思えば、少年が気の毒に思えて。
俺はおもわず――。
やれやれ。
いったん落ち着こう。
そう思い、深呼吸する俺の眼前では、話がさらに展開しており。
音夢が安堵するように、少年へ『ありがとう』と返し。
その反応に、少年も安堵した様子で笑みを浮かべた。
さて。
これで、一件落着――とはいかないのが、俺の作ったシナリオだ。
音夢はおずおずと口を開くと、
『それじゃあ……。もう少し、だしちゃっても……、いいかな?』
『……へ?』
呆然とする少年。
予想外の返答だったのだろう。
あるいは、音夢の屁のキツさを知って、怖じ気ているのか――。
しかし、少年は気を取り直すと、はっきりと頷いた。
『いいよ。我慢は体に悪いからね』
その返答に、音夢は『そう……』とつぶやくと、
『ありがとう……』
音夢はお礼の言葉を口にすると、少年の手を両手とも――ぎゅっ、と握った。
その様子に、少年は驚愕したように目を見開き。
さらに、音夢が手を握ったままなのを見て、その驚きは深いものとなっていく。
ひょっとして、自分に好意があるのだろうか。
と、少年は思ったことだろう。
しかし、こちらの思惑はそういったことではなく――。
音夢は少し恥ずかしそうに笑みを浮かべて言った。
『それじゃあ、ごめんね。もうちょっと、だすから……』
『え? ちょ――』
ふっすううううぅぅううぅぅううぅぅ~~……
それは。
長く。長い、すかし。
まるで聞いているこっちまで臭ってくるかのような音だ。
そんな屁を音夢は少年の手をぐっと握ったまま放出し――、
『――うっ……!?!?』
少年が苦しげな声をもらす。
よっぽど強烈だったのだろう。
一瞬、手を握られていることも忘れているかの様子で、自分の手を見て。
手が動かせないことを理解する。
思わず、鼻をつまもうとしたのだろう。
しかし、それはかなわず、少年は漂う音夢の屁を思いっきり吸い込んでしまい、
『っ……、うっぷ……』
くらりと、少年は白目を向きかけ、頭をゆらす。
表情が真っ青といった具合で、今にも、胃の中身を吐き出してしまいそうな感じだ。
しかし、音夢はそんな彼の様子に目を向けると――、
『ごめんね……』
『ぁ……、え……?』
少年はぼやけた調子で返し、少しずつ我に返っていく。
そして、はっと、顔をあげたタイミングで、
『まだ、出そうなの……。いいよね?』
『ぁ……』
むっすううううぅぅううぅぅううぅぅ~~……
絶望感をにじませる少年の前で。
音夢は再び、長いすかしっ屁を放出させた。
そして、その臭いは――、
『おっ!! おええぇぇええぇぇっっ!!』
少年は声だけを搾り出す。
胃の中のものがあふれ出てくることはなかったが、ひたすら具合の悪そうな様子だ。
と、そこで、少年は少し強引に、音夢の手を引き離そうとする。
が、音夢の力が思いのほか強かったのか、腕は外れず、
『ぉお……! ぉねがぃ……!』
少年が少し泣きそうな表情で言う。
俺にはわかる。
彼がなさけないのではなく、そうなってしまうほどに、音夢の屁がキツいのだ。
しかし、地獄はまだ終わらない。
音夢は無言のまま――『ふん』といきむと、
ふ――っしゅううううぅぅううぅぅ~~……
今度も、すかし。
何度聞いても、ぞっとするような音だ。
おそらく、毒ガスのような濃厚な腐卵臭が部屋の中にたまっているだろう。
しかし、自分のものだからか、音夢は平然と、心なしか心地よさげに、ねっとりとした、ガスを放出させていた。
と、そこでついに、
『――っ!』
切羽詰ったような表情で、少年は腕を引いた。
すると、どうにか音夢の手から腕がはずれ。
彼は、涙目で鼻を押さえると、窓のほうへと急いだ。
そして、少年は――ガラリ、と。窓をあけ、
『……ぇ?』
呆然とする少年。
その眼前に広がったのは――コンクリートだった。
太陽の光だと思っていたものは、外の光をうまく再現されただけの、ただの人工的な光だったのだ。
その先に、新鮮な酸素はどこにもなく。
次に、少年はドアのほうへと急いだ。
窓が開かないのならば、部屋をでればいい話なのである。
しかし――、
『……ぁ?』
ドアが、開かず、鍵を回したどころでびくともしない。
それもそのはず。そのドアの鍵は、遠隔操作で管理しているのだから。
俺の気が変わらない限り、少年が部屋から出ることはできない。
と、そんな彼の、背後へ、
『――ひっ……!』
するぅ、と。
音夢は絡みつくように腕を回し、
『やっ、ゃめ……』
ベッドの方へと少年を引きずった。
音夢は、意外と力が強い。さらに、少年は臭いで力が抜けている状態だ。
少年に勝ち目などあるはずもなく――。
音夢は少年をベッドの上に仰向きで寝かせると、
『いったのに』
音夢の言葉に、少年は『へ……?』と、疑問の表情を浮かべる。
そんな彼へ、音夢は続けて言った。
『気にしない、って。いったのに……』
悲しげなトーンでいう音夢。
それを受け、少年は弁明をしようと、口を開こうとして、
『……?』
少年は音夢の行動に、表情を硬くする。
音夢が唐突に、少年へ尻を向けたのだった。
そして、
『――むぐううぅぅっ……!』
少年のくぐもった声。
音夢が履いているスカートをめくり、尻で、彼の顔を下敷きにしたのだ。
さらに、下着の生地に、先ほどの臭いが残っていたのだろう。
尻の感触など、感じる暇すらなく、少年は地獄を味わっていることだろう。
そんな彼へ、音夢は少しむっとした顔で『お仕置き』とだけ言うと、
しゅ……すううぅぅ……ふすううううぅぅううぅぅ……
これで何度目のすかしだろうか。
というか、なぜだか知らないが、音夢の屁はほとんどが、すかしだ。
面白いことに。
そして、恐ろしいことに。
すかしが臭いという説に、信憑性などはないのかもしれないが。
まあ、それはそれとして――。
音夢の屁の威力は間違いない。
そのガスで、何人もの意識を沈めてきたのを、俺はこの目で見てきたのだ。
そして、今回も――、
むっすううううぅぅううぅぅ……しゅううううぅぅ~~……
いつの間にか、少年は声をあげることなく。
痙攣を繰り返していた。
もう、虫の息といったところだ。
それはそうだろう。
先ほどまでのは、散った臭い。
それで、彼は目を回していたのだ。
鼻先にかまされては、ひとたまりもないだろう。
だが、まだ終わりではない。
すううううぅぅ~~……
音夢は尻の位置を、もぞもぞと直すと、
しゅううううぅぅ~~……
あまりにも、ひどい。
すかしっへだけで構成された。
地獄のような責め。
これは――、
ふしゅうぅ……
俺のシナリオではない。
ふ――っすううぅぅ~~……
俺がそうであるように。
彼女もまた、俺とは違った種類の――サディストであり。
俺と音夢は、互いに欲求を満たしあう関係なのである。
むっすううううぅぅ~~……
俺と彼女だけでは、満たせない。
第三者が介入することで、ようやく空っぽの容器に、どろりとした熱が注がれていく。
俺と音夢は、そんな。
ゆがんだ関係で、繋がっているのである――。
すっかああああぁぁああぁぁああああぁぁ~~……
俺は声をマイクに通し、ガラスの向こうの部屋へ、指示を出す。
その部屋には、ベッドにクローゼット。勉強机――といった。
いかにもといった、学生の部屋といった様子が広がっていた。
ちなみに、窓があるが、窓を開いても、外にはつながっていない。
――作り物。
ある目的のためだけに作られた部屋で。
向こうからは、俺のことがみえないようになっている。
とりあえず、そこらへんの説明はのちにするとして――。
部屋には、十代半ばといった感じの男女が一人ずつおり、二人ともベッドに腰をかけていた。
そして、少女のほうだけが、俺の声に反応し――ウェーブがかったセミロングの髪をかきあげ、決められた合図で俺に返すと、
『それじゃあ、これ。はずすわね』
少女は少年に言い。
少年の目にかけられていたアイマスクをとる。
要するに、少年は何も知らない状態でそこにいたのだ。
少女の声に、少年は一度、『え?』と反応してから、おずおずと口を開いた。
『あの……、ここは……?』
少年が少女にたずねる。
すると、少女は柔らかな笑みを浮かべて答えた。
『ここは、私の部屋よ』
それはもちろん――演技だ。
ここは、彼女の部屋などではなく、俺の――いや、この話も、いったんおいておくことにしよう。
とにかく、彼女は俺に雇われ、俺の指示で動いていた。
そして、そんな少女の言葉に、少年は疑問の表情を浮かべると、
『そうなんだ……? ちなみに、どうして僕は、アイマスクをつけなきゃいけなかったの?』
『え……?』
『いや、だから……』
『へ……?』
『あ、いや……。なんでもないです……』
『そう……』
なんだか、茶番のようなやり取りだが、これは俺の指示ではない。
彼女――音夢は少しばかり、天然のところがあるようだ。
それでいて、与えられた指示をきっちりこなすのだから、面白いこだったりする。
さて、それで。
彼女に与えた指示だが――、
ぷううぅぅ……
その音は、ガラスの向こう――イヤホンから聞こえてきた。
部屋は防音になっていて、きっちり遮音されている。
そのため、マイクを通さないと、向こうの物音が聞こえないのだ。
ちなみに、マイクは音夢に身につけさせている。
そのほうが――ほしい音が、聞き取れるからだ。
と、まあそんな具合で、話は展開していき――、
『『…………』』
唐突に黙り込む二人。
音の出所は明らかに――音夢であり。
先ほどの音は、どうきいても、放屁音といった感じだ。
つまり、ここは――男の見せ所といった場面であり。
呆然としていた、少年だったが、すぐに気を取り直したようすで、音夢のフォローをしようという気配を見せた。
しかし、
『――うっ……』
声を詰まらせる少年。
その理由は――いわずもがなだろう。
まあ、考えずらいだろうが。
音夢の屁が――臭いのだ。
彼女の屁は人よりも臭い。
原因は、わかならいが。
以前、健康診断にいかせたことがあったが、問題ないらしく。
だというのに――なぜか、規格外に臭いのだった。
ひょっとすると、スカンクの生まれ変わりかなんかだろうか。
と、思ったこともあったりしたが、その話はさておき、
『ど、どうしたの……?』
音夢がおずおずと、少年にたずねる。
目を動揺で揺らし、明らかにうろたえているような様子だ。
まあそれも――演技なわけだが。
その様子に、少年は少し慌てると、
『あ、いや。その……、大丈夫? 体調とか、悪いのかな……、って……』
おそらく、今すぐ鼻をつまみたいだろうに。
少年はどうにか臭いをこらえながら返答する。
それを受け、少女はぎこちない笑みを浮かべ、『うん……』とだけ返した。
すると、
『けど……、あれだから。僕、そういうの気にしないし……。気を使わなくて大丈夫だからね』
ああ、いい返答だ。
俺はその台詞に、合格点をだす。
というより、その言葉を待っていたというほうが正しいだろう。
それに、このあとの展開を思えば、少年が気の毒に思えて。
俺はおもわず――。
やれやれ。
いったん落ち着こう。
そう思い、深呼吸する俺の眼前では、話がさらに展開しており。
音夢が安堵するように、少年へ『ありがとう』と返し。
その反応に、少年も安堵した様子で笑みを浮かべた。
さて。
これで、一件落着――とはいかないのが、俺の作ったシナリオだ。
音夢はおずおずと口を開くと、
『それじゃあ……。もう少し、だしちゃっても……、いいかな?』
『……へ?』
呆然とする少年。
予想外の返答だったのだろう。
あるいは、音夢の屁のキツさを知って、怖じ気ているのか――。
しかし、少年は気を取り直すと、はっきりと頷いた。
『いいよ。我慢は体に悪いからね』
その返答に、音夢は『そう……』とつぶやくと、
『ありがとう……』
音夢はお礼の言葉を口にすると、少年の手を両手とも――ぎゅっ、と握った。
その様子に、少年は驚愕したように目を見開き。
さらに、音夢が手を握ったままなのを見て、その驚きは深いものとなっていく。
ひょっとして、自分に好意があるのだろうか。
と、少年は思ったことだろう。
しかし、こちらの思惑はそういったことではなく――。
音夢は少し恥ずかしそうに笑みを浮かべて言った。
『それじゃあ、ごめんね。もうちょっと、だすから……』
『え? ちょ――』
ふっすううううぅぅううぅぅううぅぅ~~……
それは。
長く。長い、すかし。
まるで聞いているこっちまで臭ってくるかのような音だ。
そんな屁を音夢は少年の手をぐっと握ったまま放出し――、
『――うっ……!?!?』
少年が苦しげな声をもらす。
よっぽど強烈だったのだろう。
一瞬、手を握られていることも忘れているかの様子で、自分の手を見て。
手が動かせないことを理解する。
思わず、鼻をつまもうとしたのだろう。
しかし、それはかなわず、少年は漂う音夢の屁を思いっきり吸い込んでしまい、
『っ……、うっぷ……』
くらりと、少年は白目を向きかけ、頭をゆらす。
表情が真っ青といった具合で、今にも、胃の中身を吐き出してしまいそうな感じだ。
しかし、音夢はそんな彼の様子に目を向けると――、
『ごめんね……』
『ぁ……、え……?』
少年はぼやけた調子で返し、少しずつ我に返っていく。
そして、はっと、顔をあげたタイミングで、
『まだ、出そうなの……。いいよね?』
『ぁ……』
むっすううううぅぅううぅぅううぅぅ~~……
絶望感をにじませる少年の前で。
音夢は再び、長いすかしっ屁を放出させた。
そして、その臭いは――、
『おっ!! おええぇぇええぇぇっっ!!』
少年は声だけを搾り出す。
胃の中のものがあふれ出てくることはなかったが、ひたすら具合の悪そうな様子だ。
と、そこで、少年は少し強引に、音夢の手を引き離そうとする。
が、音夢の力が思いのほか強かったのか、腕は外れず、
『ぉお……! ぉねがぃ……!』
少年が少し泣きそうな表情で言う。
俺にはわかる。
彼がなさけないのではなく、そうなってしまうほどに、音夢の屁がキツいのだ。
しかし、地獄はまだ終わらない。
音夢は無言のまま――『ふん』といきむと、
ふ――っしゅううううぅぅううぅぅ~~……
今度も、すかし。
何度聞いても、ぞっとするような音だ。
おそらく、毒ガスのような濃厚な腐卵臭が部屋の中にたまっているだろう。
しかし、自分のものだからか、音夢は平然と、心なしか心地よさげに、ねっとりとした、ガスを放出させていた。
と、そこでついに、
『――っ!』
切羽詰ったような表情で、少年は腕を引いた。
すると、どうにか音夢の手から腕がはずれ。
彼は、涙目で鼻を押さえると、窓のほうへと急いだ。
そして、少年は――ガラリ、と。窓をあけ、
『……ぇ?』
呆然とする少年。
その眼前に広がったのは――コンクリートだった。
太陽の光だと思っていたものは、外の光をうまく再現されただけの、ただの人工的な光だったのだ。
その先に、新鮮な酸素はどこにもなく。
次に、少年はドアのほうへと急いだ。
窓が開かないのならば、部屋をでればいい話なのである。
しかし――、
『……ぁ?』
ドアが、開かず、鍵を回したどころでびくともしない。
それもそのはず。そのドアの鍵は、遠隔操作で管理しているのだから。
俺の気が変わらない限り、少年が部屋から出ることはできない。
と、そんな彼の、背後へ、
『――ひっ……!』
するぅ、と。
音夢は絡みつくように腕を回し、
『やっ、ゃめ……』
ベッドの方へと少年を引きずった。
音夢は、意外と力が強い。さらに、少年は臭いで力が抜けている状態だ。
少年に勝ち目などあるはずもなく――。
音夢は少年をベッドの上に仰向きで寝かせると、
『いったのに』
音夢の言葉に、少年は『へ……?』と、疑問の表情を浮かべる。
そんな彼へ、音夢は続けて言った。
『気にしない、って。いったのに……』
悲しげなトーンでいう音夢。
それを受け、少年は弁明をしようと、口を開こうとして、
『……?』
少年は音夢の行動に、表情を硬くする。
音夢が唐突に、少年へ尻を向けたのだった。
そして、
『――むぐううぅぅっ……!』
少年のくぐもった声。
音夢が履いているスカートをめくり、尻で、彼の顔を下敷きにしたのだ。
さらに、下着の生地に、先ほどの臭いが残っていたのだろう。
尻の感触など、感じる暇すらなく、少年は地獄を味わっていることだろう。
そんな彼へ、音夢は少しむっとした顔で『お仕置き』とだけ言うと、
しゅ……すううぅぅ……ふすううううぅぅううぅぅ……
これで何度目のすかしだろうか。
というか、なぜだか知らないが、音夢の屁はほとんどが、すかしだ。
面白いことに。
そして、恐ろしいことに。
すかしが臭いという説に、信憑性などはないのかもしれないが。
まあ、それはそれとして――。
音夢の屁の威力は間違いない。
そのガスで、何人もの意識を沈めてきたのを、俺はこの目で見てきたのだ。
そして、今回も――、
むっすううううぅぅううぅぅ……しゅううううぅぅ~~……
いつの間にか、少年は声をあげることなく。
痙攣を繰り返していた。
もう、虫の息といったところだ。
それはそうだろう。
先ほどまでのは、散った臭い。
それで、彼は目を回していたのだ。
鼻先にかまされては、ひとたまりもないだろう。
だが、まだ終わりではない。
すううううぅぅ~~……
音夢は尻の位置を、もぞもぞと直すと、
しゅううううぅぅ~~……
あまりにも、ひどい。
すかしっへだけで構成された。
地獄のような責め。
これは――、
ふしゅうぅ……
俺のシナリオではない。
ふ――っすううぅぅ~~……
俺がそうであるように。
彼女もまた、俺とは違った種類の――サディストであり。
俺と音夢は、互いに欲求を満たしあう関係なのである。
むっすううううぅぅ~~……
俺と彼女だけでは、満たせない。
第三者が介入することで、ようやく空っぽの容器に、どろりとした熱が注がれていく。
俺と音夢は、そんな。
ゆがんだ関係で、繋がっているのである――。
すっかああああぁぁああぁぁああああぁぁ~~……
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