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第一章
合間に混じる音
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ブラックジャックテーブルの奥側、ディーラーの席にシルクハットの少年は座っていた。
黒髪黒目、黒のハットに、黒いベスト、少年の全身は黒に包まれており、白いシャツ、そして手にはめている白の手袋などの明るさが際立っている。靴やベルトなどには革をのような素材が用いられており、上品な光沢を帯びていた。
シルクハットの少年は手に持っているカウンターのような小物を親指で『カチッ』と鳴らすと、「プリル」と眼前にいる人物の名前を呼んだ。
「今の、なかなか良い音だったね」
「う、うるさいなぁ……」
声を返したのは、シルクハットの少年と同い年、もしくはひとつ下くらいの少女だった。
プリル呼ばれたその少女は、テーブルをはさんで少年の向かいの椅子に腰をかけおり、いらだたしげに灰色の目を細めている。
ミルクティー色をしたセミロングの髪に、長いまつげ。服装はショートパンツスタイルで整えられており、足にはブーツを履いている。シンプルな印象の格好だが、彼女自身のもつ雰囲気が、そこに華やかさを加えていた。
「次、誰かいける?」
シルクハットの少年はそう言って、自分の周囲へと視線を滑らせていく。
彼の眼前には、プリルをあわせて六人の少女たちが、テーブルを扇状に囲み、椅子の上に腰を下ろしていた。
そのうちの一人、薄紅色の髪をした少女がやれやれといったふうに肩をすくめ、おもむろに口を開く。
「まったく、無茶なことを言うわね。おならなんて――」
~ ぶっ、ぶびぃ!
「――そう簡単に出るわけないじゃない」
言葉と言葉の間に、下品な音が鳴った。
* 『カチッ』
どう聞いてもそれは、彼女のお尻の下から鳴った――おならの音だったのだが、鳴らしたであろう当の本人は、肩にかかる外側にはねた髪を手ではらい、フレアスカートから伸びる足を組むと、動揺を態度に見せることなく、ふんっ、と鼻を鳴らし、すました顔をしていた。
その瞼の内には、朱色の瞳が光を帯びており、燃えるような色とは裏腹に、伝わってくるような冷ややかさが浮かんでいる。
「い――いやいや! 誤魔化されないって!? 今のは明らかに、ロゼリアのお尻の下から鳴った音だったよねぇ!?」
ロゼリアという少女は声のした方に目を向ける。
その視線の先で、澄んだ飴色の瞳が、まっすぐにロゼリアを見ていた。
若葉色のショートヘアー。だぼっとしたボーイッシュなシャツに、ハーフパンツ。動きやすさ重視といった、ラフな印象の格好だ。
彼女は思わずといったふうに立ちあがり、息を荒くしていた。
「ぶぅ~、ぶびぃ~、って、こっちまで聞こえてきたよ。その動じない精神は凄いと思うけど、今の音を誤魔化すっていうのは、流石に無理があるでしょ」
「まあまあ。エレナ、いったん落ちついて」
穏やかな口調でエレナをたしなめる少女の声。
「メリッサ……」
エレナの眼前にいるのは、メリッサという少女らしい。
背中まで伸びる菫色の巻き髪。レースのあしらわれたスカートから伸びる彼女の足先には、ミュールのような露出度の高い履物が履かれていて、滑らかな肌が見えている。
「ああ、うん、そうだね……。ごめん、別に怒ってるわけじゃないんだけど、つい――」
~ ばぶぉ!
と――エレナの言葉をさえぎるように、その音は場に響いた。
またもや、疑いようもない――おならの音である。
* 『カチッ』
「……ぇ?」
エレナは消え入りそうな声をもらし、困惑の表情で首をかしげた。
黒髪黒目、黒のハットに、黒いベスト、少年の全身は黒に包まれており、白いシャツ、そして手にはめている白の手袋などの明るさが際立っている。靴やベルトなどには革をのような素材が用いられており、上品な光沢を帯びていた。
シルクハットの少年は手に持っているカウンターのような小物を親指で『カチッ』と鳴らすと、「プリル」と眼前にいる人物の名前を呼んだ。
「今の、なかなか良い音だったね」
「う、うるさいなぁ……」
声を返したのは、シルクハットの少年と同い年、もしくはひとつ下くらいの少女だった。
プリル呼ばれたその少女は、テーブルをはさんで少年の向かいの椅子に腰をかけおり、いらだたしげに灰色の目を細めている。
ミルクティー色をしたセミロングの髪に、長いまつげ。服装はショートパンツスタイルで整えられており、足にはブーツを履いている。シンプルな印象の格好だが、彼女自身のもつ雰囲気が、そこに華やかさを加えていた。
「次、誰かいける?」
シルクハットの少年はそう言って、自分の周囲へと視線を滑らせていく。
彼の眼前には、プリルをあわせて六人の少女たちが、テーブルを扇状に囲み、椅子の上に腰を下ろしていた。
そのうちの一人、薄紅色の髪をした少女がやれやれといったふうに肩をすくめ、おもむろに口を開く。
「まったく、無茶なことを言うわね。おならなんて――」
~ ぶっ、ぶびぃ!
「――そう簡単に出るわけないじゃない」
言葉と言葉の間に、下品な音が鳴った。
* 『カチッ』
どう聞いてもそれは、彼女のお尻の下から鳴った――おならの音だったのだが、鳴らしたであろう当の本人は、肩にかかる外側にはねた髪を手ではらい、フレアスカートから伸びる足を組むと、動揺を態度に見せることなく、ふんっ、と鼻を鳴らし、すました顔をしていた。
その瞼の内には、朱色の瞳が光を帯びており、燃えるような色とは裏腹に、伝わってくるような冷ややかさが浮かんでいる。
「い――いやいや! 誤魔化されないって!? 今のは明らかに、ロゼリアのお尻の下から鳴った音だったよねぇ!?」
ロゼリアという少女は声のした方に目を向ける。
その視線の先で、澄んだ飴色の瞳が、まっすぐにロゼリアを見ていた。
若葉色のショートヘアー。だぼっとしたボーイッシュなシャツに、ハーフパンツ。動きやすさ重視といった、ラフな印象の格好だ。
彼女は思わずといったふうに立ちあがり、息を荒くしていた。
「ぶぅ~、ぶびぃ~、って、こっちまで聞こえてきたよ。その動じない精神は凄いと思うけど、今の音を誤魔化すっていうのは、流石に無理があるでしょ」
「まあまあ。エレナ、いったん落ちついて」
穏やかな口調でエレナをたしなめる少女の声。
「メリッサ……」
エレナの眼前にいるのは、メリッサという少女らしい。
背中まで伸びる菫色の巻き髪。レースのあしらわれたスカートから伸びる彼女の足先には、ミュールのような露出度の高い履物が履かれていて、滑らかな肌が見えている。
「ああ、うん、そうだね……。ごめん、別に怒ってるわけじゃないんだけど、つい――」
~ ばぶぉ!
と――エレナの言葉をさえぎるように、その音は場に響いた。
またもや、疑いようもない――おならの音である。
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エレナは消え入りそうな声をもらし、困惑の表情で首をかしげた。
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