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エピローグ
エピローグ⑤
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そして三カ月も、あっという間に過ぎた。
ホテルの下には、ブライダル雑誌の取材も来ているらしく小さく写真も載るらしい。
ばたばたと急ぎ足で決まった結婚式だったけれど、なんとか今日の日までこれた。
空は晴天。
雲さえも吹き飛ばすような真っ青な空だった。
先ほど、空を色とりどりの風船が飛んでいくのが見えた。
ベールを下ろし、静かに鏡に映った自分を見つめる。
颯真さんと風くんは新郎の着替え室に居る為にまだ会えないのが余計に緊張してしまう。着替えに別れてから数時間なのに既に寂しいと思う。
飲み物でも飲もうとしたら、手が震えているので諦めた所で、扉をノックされた。
「わかばちゃん」
「お、ほらみろ、やっぱ緊張してるだろ」
「涼香さん、柾」
「結婚おめでとうございますっ」
二人が、緊張しているだろう私の為に差し入れを持って来てくれた。
猫のぬいぐるみが新郎新婦の姿をしている。
よく見ると、私の今日着ているウエディングドレスと一緒だった。
「わあ、可愛い。ありがとうございます! 受付に飾って貰っちゃおう」
「緊張してるなら、飾らず持っててもいいよ」
「お前みたいな庶民が緊張しないわけないんだから、諦めろ」
天使みたいな涼香さんと、意地悪しか言わない悪魔のような柾の雰囲気に確かに緊張は和らげた。
「……俺の結婚式も、御手洗夫婦で来いよ」
「うん。絶対に行くね」
柾とこんな風に会話ができるようになったのも、お互いが満たされたからだし、こんな柾を全部受け止める涼香さんのおかげなんだろうなって思う。
二人のお陰で、今度は飲み物を持っても震えることは無かった。
緊張しながらチャペルへ向かう道。
控え室からチャペルへ向かう廊下は、外側が全て窓ガラスになっていて、射し込む光の中を進んでいくのは今の気持ちを表している様な、素敵な演出だった。
この先、こんな幸せな道ばかりではないかもしれないけど私はきっと怖くない。
「此処で待っていて下さいね」
チャペルの門の前で、緊張して何度もネクタイを触る父の横で、パイプオルガンの賛美歌が聴こえてくる。
それが、颯真さんが弾いているのだと分かったのは彼の奏でる音が甘かったからだ。
幸せすぎて涙が零れる。
皆が居なかったら、きっと走り出して抱きついていたかもしれない。素敵なサプライズの後、ゆっくりとチャペル扉が開いた。
そこには、花弁の絨毯のバージンロードの向こうに真っ白なスーツの颯真さんが立っているのが分かった。
すぐ横の椅子には風くんもいた。
既に涙で颯真さんの顔はぼやけて見えなかったけれど、一歩一歩歩いて行く。
花弁の絨毯の上を、マリアベールがさらさら花弁をさらいながら流れていき、皆の拍手と笑顔、フラッシュの中、涙が止まらなかった。
風邪をひいたふりをして休んだ一週間。
それがなければ、彼は心配して様子を見に来なかったかもしれない。全て恋愛にはタイミングがあって、私たちは全て上手に絡み合った。
私一人がぐるぐると空回りしただけだったけれど、最後にはいつも許してくれた受け止めてくれたね。
漸く、花弁を攫いながら彼の前に辿りつくと、彼は私のベールを上げて涙を指先で拭ってくれる。
その笑顔は、いつもの蕩ける様な優しい笑顔で私の心は、また風邪を引いた様にドキドキと高鳴った。
FIN
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