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エピローグ
エピローグ③
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オーベルジュの初ウエディングが私たちなので多少の注目は覚悟するけど、無駄使いだけは何とか踏みとどまらせよう。
ナイスタイミングで、私と颯真さんのお母さん達も来てくれて、二人も説得してくれたので無事にレンタルになったのは安心した。
それが終わって、午後から出勤。仕事は結婚後も続けていく予定だと伝えたけれど、結婚式準備で抜けることも多く、今の時期はちょっとだけきつかった。
休憩室へ入るや否や、他のスタッフさん達が歓声を上げていた。
「菊池さんおめでとうございますーっ」
「すっげ、一流商社マンっすか」
「毎日、菊池さんのこと送って下さってるあのイケメンですよね」
左手の薬指に光る指輪を見せながら、菊池さんが真っ赤な顔で頷いている。
「わ、ついに! おめでとうございますっ」
「わかばちゃん、ありがとうー」
菊池さんが飛んできて、首に抱きついてきた。
菊池さんと柾も、私と颯真さんが婚約したあの日に付き合ったらしいから交際6カ月でプロポーズかあ。
柾って意外とこーゆうのはスマートなんだなあ。颯真さんと暮らしだして、結婚式の準備にばたばたしててここ数カ月そう言えば顔を見ていない。
でも菊池さんがこんなに幸せなんだから、きっと幸せなんだろうな。
「私たちも、オーベルジュで式を挙げたいから、色々と教えてね、わかば先輩!」
「やっ 滅相もないです! 私なんてっ」
それでも私の言葉なんて耳にも入らないぐらい幸せなのか、着替えもしないまま、店長に報告しに飛び出して行った。
18時に仕事を終え、ダッシュで家へ帰るのは最近の日課になりつつある。
「風くん。ごめんね、直ぐにご飯用意するね」
家に帰って、買ってきた食材をキッチンに置くと、リビングの風くんを探した。
風くんは、一番日が当たっているグランドピアノの椅子の上で、丸まって日向ぼっこしていた。
「あ。やだ、鍵盤開けたまま試着に行ったんだ。毛が入ったら更に壊れちゃうよー」
風くんを退かして椅子に座ると、ピアノが壊れていないか弾いてみる。
茜さんにも、颯真にも、寿命だと宣告された私たちの思い出の詰まった大切なピアノ。
それを、廃棄処分にはせず、ここで騙し騙し調律しながら飾っておくことが出来たのも、颯真さんの考えのお陰だ。此処でなら、下手くそな私しか弾くことはないもんね。
こっそりとサプライズで、結婚式の時に弾こうと思っている曲の楽譜さえ開いたままだった。
自分のクローゼットに楽譜を仕舞い、二番目に日当たりの良いソファの上で、風くんと料理本を読む。
毎日疲れてるのにちゃんとご飯を食べに帰ってくる颯真さんに、厭きが来なくて美味しくて、そしていて見た目も凝っている奴――。
三冊目に突入しても決まらず、ついつい朝から走りまわった疲れがドッと出て、うたた寝をしてしまった。
ナイスタイミングで、私と颯真さんのお母さん達も来てくれて、二人も説得してくれたので無事にレンタルになったのは安心した。
それが終わって、午後から出勤。仕事は結婚後も続けていく予定だと伝えたけれど、結婚式準備で抜けることも多く、今の時期はちょっとだけきつかった。
休憩室へ入るや否や、他のスタッフさん達が歓声を上げていた。
「菊池さんおめでとうございますーっ」
「すっげ、一流商社マンっすか」
「毎日、菊池さんのこと送って下さってるあのイケメンですよね」
左手の薬指に光る指輪を見せながら、菊池さんが真っ赤な顔で頷いている。
「わ、ついに! おめでとうございますっ」
「わかばちゃん、ありがとうー」
菊池さんが飛んできて、首に抱きついてきた。
菊池さんと柾も、私と颯真さんが婚約したあの日に付き合ったらしいから交際6カ月でプロポーズかあ。
柾って意外とこーゆうのはスマートなんだなあ。颯真さんと暮らしだして、結婚式の準備にばたばたしててここ数カ月そう言えば顔を見ていない。
でも菊池さんがこんなに幸せなんだから、きっと幸せなんだろうな。
「私たちも、オーベルジュで式を挙げたいから、色々と教えてね、わかば先輩!」
「やっ 滅相もないです! 私なんてっ」
それでも私の言葉なんて耳にも入らないぐらい幸せなのか、着替えもしないまま、店長に報告しに飛び出して行った。
18時に仕事を終え、ダッシュで家へ帰るのは最近の日課になりつつある。
「風くん。ごめんね、直ぐにご飯用意するね」
家に帰って、買ってきた食材をキッチンに置くと、リビングの風くんを探した。
風くんは、一番日が当たっているグランドピアノの椅子の上で、丸まって日向ぼっこしていた。
「あ。やだ、鍵盤開けたまま試着に行ったんだ。毛が入ったら更に壊れちゃうよー」
風くんを退かして椅子に座ると、ピアノが壊れていないか弾いてみる。
茜さんにも、颯真にも、寿命だと宣告された私たちの思い出の詰まった大切なピアノ。
それを、廃棄処分にはせず、ここで騙し騙し調律しながら飾っておくことが出来たのも、颯真さんの考えのお陰だ。此処でなら、下手くそな私しか弾くことはないもんね。
こっそりとサプライズで、結婚式の時に弾こうと思っている曲の楽譜さえ開いたままだった。
自分のクローゼットに楽譜を仕舞い、二番目に日当たりの良いソファの上で、風くんと料理本を読む。
毎日疲れてるのにちゃんとご飯を食べに帰ってくる颯真さんに、厭きが来なくて美味しくて、そしていて見た目も凝っている奴――。
三冊目に突入しても決まらず、ついつい朝から走りまわった疲れがドッと出て、うたた寝をしてしまった。
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