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症状五、処方箋求む。
症状五、処方箋求む。④
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『なんだ。ただの猫でそんな風に泣いていたの?』
柾のように、そう馬鹿にするのかな。今日みたいに私をからかって面白がって、苛め過ぎたら謝って?
猫だと告げて、真実を行った時に彼がどんな表情をするのかが見えなくて怖い。それに浮かぶ月が、雲で覆われて隠れていくみたい。
「私、婚約者の立場を偽れるこの位置が一番好きだから、今あの人にがっかりされるのは辛い」
「だったらお前は、大切なヤスのことを偽るのか。
本当に大切な存在でも、恋愛を優先にするんだよな」
やっぱり柾は意地悪だ。そして――こんなに私の事を考えてくれているんだ。
「でも、真実を言ったら魔法が溶けてしまう」
「魔法?」
「もう彼の隣に居られなくなる」
もう婚約者のフリをする理由が、何処にも見当たらない。知らないふりをしていないと、隣に居られないの。
「それって辛くねえの?」
呆れたように言われて、私の頬がカッと羞恥で赤く染まる。
そうだよね。きっと今の私は、痛々しい。縋ろうと必死で、嘘を身に纏って痛々しい。
でもどうしたらいいのか分らない。自分は店長のかわりだとしても、店長だけじゃない。彼の回りには茜さんみたいに素敵な人がいる。
あの茜さんを本の登場人物のモデルにしたとしても、彼自身は恋に落ちなかったのに、私は茜さんほど魅力は無い。
彼が今、私に魅力を感じる場所は無い。ただ恋人を亡くして傷付いている私だから優しくしてくれているだけ。
ソレが現実なんだ。それどころか、店長をもう親に合わせているのかもしれない、だったらこの恋は、処方箋もなく溢れる気持ちが止まらず悪化していく。
伝えることも、勇気もなく、嘘をついて嫌われるしかない。
「だけどあいつも、お前に本当の自分を見せてねーよ」
「え」
「気になるなら、自分で調べるか聞いてみればいいだろ」
「それ、店長も言ってた」
呆然としてそう言うと、柾は辺りをきょろきょろ見渡しだす。
「何?」
「何か、この馬鹿頭を殴っても良い様なモノが転がってないかなと思ってな」
「ひい」
頭を押さえると、柾はその頭をポンポン叩く。
「お前は恋愛経験は?」
「ない」
「お前に他の女より魅力的な部分は?」
「……ない」
「じゃあ、お前がその小説家野郎を振り向かせるのは無理だ」
「……」
現実を突きつけられたら、胸が抉られるように痛い。
「諦めずに、突進しなければ、だけどな」
またポンポンと叩く。
付き離して冷たい言葉を言うのは、甘ったれた私に優しく現実を教えてくれているからだ。
それに今気づいた私は、遅すぎた。こんなに優しい人がずっと隣に居たのに、私は気づかない鈍感野郎でした。
もう、後悔はしたくない。そう思った時、携帯が鳴った。着信相手は、颯真さんだった。
「出て良いよ。俺も遅れるかもって鏡花に一応連絡入れるし」
メッセージを打ちだした柾から少し距離を取ってから、電話を取った。
『もしもし』
「もしもし……」
声を聞いたら、心臓が飛び跳ねたので、本当に私の思考は短絡なんだと実感できる。
目の前の動物病院に子猫がいるのに、私の気持ちはもう電話の向こうの颯真さん一色だ。なんて酷い奴だろう。
柾のように、そう馬鹿にするのかな。今日みたいに私をからかって面白がって、苛め過ぎたら謝って?
猫だと告げて、真実を行った時に彼がどんな表情をするのかが見えなくて怖い。それに浮かぶ月が、雲で覆われて隠れていくみたい。
「私、婚約者の立場を偽れるこの位置が一番好きだから、今あの人にがっかりされるのは辛い」
「だったらお前は、大切なヤスのことを偽るのか。
本当に大切な存在でも、恋愛を優先にするんだよな」
やっぱり柾は意地悪だ。そして――こんなに私の事を考えてくれているんだ。
「でも、真実を言ったら魔法が溶けてしまう」
「魔法?」
「もう彼の隣に居られなくなる」
もう婚約者のフリをする理由が、何処にも見当たらない。知らないふりをしていないと、隣に居られないの。
「それって辛くねえの?」
呆れたように言われて、私の頬がカッと羞恥で赤く染まる。
そうだよね。きっと今の私は、痛々しい。縋ろうと必死で、嘘を身に纏って痛々しい。
でもどうしたらいいのか分らない。自分は店長のかわりだとしても、店長だけじゃない。彼の回りには茜さんみたいに素敵な人がいる。
あの茜さんを本の登場人物のモデルにしたとしても、彼自身は恋に落ちなかったのに、私は茜さんほど魅力は無い。
彼が今、私に魅力を感じる場所は無い。ただ恋人を亡くして傷付いている私だから優しくしてくれているだけ。
ソレが現実なんだ。それどころか、店長をもう親に合わせているのかもしれない、だったらこの恋は、処方箋もなく溢れる気持ちが止まらず悪化していく。
伝えることも、勇気もなく、嘘をついて嫌われるしかない。
「だけどあいつも、お前に本当の自分を見せてねーよ」
「え」
「気になるなら、自分で調べるか聞いてみればいいだろ」
「それ、店長も言ってた」
呆然としてそう言うと、柾は辺りをきょろきょろ見渡しだす。
「何?」
「何か、この馬鹿頭を殴っても良い様なモノが転がってないかなと思ってな」
「ひい」
頭を押さえると、柾はその頭をポンポン叩く。
「お前は恋愛経験は?」
「ない」
「お前に他の女より魅力的な部分は?」
「……ない」
「じゃあ、お前がその小説家野郎を振り向かせるのは無理だ」
「……」
現実を突きつけられたら、胸が抉られるように痛い。
「諦めずに、突進しなければ、だけどな」
またポンポンと叩く。
付き離して冷たい言葉を言うのは、甘ったれた私に優しく現実を教えてくれているからだ。
それに今気づいた私は、遅すぎた。こんなに優しい人がずっと隣に居たのに、私は気づかない鈍感野郎でした。
もう、後悔はしたくない。そう思った時、携帯が鳴った。着信相手は、颯真さんだった。
「出て良いよ。俺も遅れるかもって鏡花に一応連絡入れるし」
メッセージを打ちだした柾から少し距離を取ってから、電話を取った。
『もしもし』
「もしもし……」
声を聞いたら、心臓が飛び跳ねたので、本当に私の思考は短絡なんだと実感できる。
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