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症状三、急激に体温上昇?

症状三、急激に体温上昇?⑫

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――お久しぶり?
「御手洗 颯真です。わかばさんは本当に綺麗になりましたね」
「颯真くん? ええっ 貴方、颯真くんなの?」
「お母さん、颯真さん知ってるの?」
私も柾を警戒しつつ、彼の元へ駆け寄ると母が口を大きく開けて私と颯真さんを交互に見る。
「知ってるのって、あんた私を馬鹿にしてるの? 彼を知らないまま働いてるわけないわよね?」
何故か呑気な私を母に苛立ってさえいる。
どういうこと?
なんで彼と母が知りあいなの?
「ふふ。わかばさんにはまだ俺の事は秘密にしていてください」
にっこりと彼が笑うと、母は分りやすいぐらい真っ赤になった。
間違いなく私と母は親子だ。
「でも、うちの子が何か失礼を」
「いいえ。俺にとってわかばさんは、今も昔も大切な女性です」
颯真さんは、私の腰を引き寄せると頭を優しく撫でてくれた。
親の前で恥ずかしすぎて真っ赤になって身体が硬直して上手く動かない。
颯真さんは、私の親と知り合いだったなんて。
一体本当に彼は何者なの?
「俺は焦っていません。ヤス君が彼女の心の中で一番大きな存在だったのならば、俺は待ちます。何年経っても待ちます」
――何年たっても待ちます。
そんな言葉、口から出まかせだって分ってるのに。この場を上手く逃れるための詭弁だって分っているのに。私の隣に、本当に恋人の颯真さんがいてくれているようで嬉しくなった。
「まあ! 素敵な青年に成長してこんな子にそこまで言ってくれるなんて。
颯真君、夕飯は食べた? 倉庫に車止めて食べていってちょうだい」
「いえ。まだ仕事が残っているので帰ります」
「あら。忙しいの? 残念ね」
「お母さんっ」
興奮している母が、今にも颯真さんの手を取って家に入れてしまいそうだったので慌てて私が先に手を取った。
「ごめんなさい。お仕事残ってたんですね。私が手間を取らせてしまって」
「大丈夫。そこがわかばの良いところだから」
ポンポンと頭を叩くと、車の方へ踵を返して歩き出す。
「此処で良いよ。また明日、ね」
「颯真さんっ」
ちゃんと御礼も言わせて貰えないまま、彼は本当に車に乗り込むと母にお辞儀し、行ってしまった。塵一つ残さないスマートな去り方だった。
「お母さん、颯真さんとどんな知りあいなの?」
「あら、私の方が知りたいわ。どうして最近知り合ったみたいな風なの、貴方」
「私、あんな格好良い人、知り合いに居なかったよ」
「本当かしら」
母が口に手を当てて何かを隠すように笑う。母は見て直ぐに、いいや、名前を聞いて思い出していた。私と颯真さんは昔、やっぱりどこかで会ったことがあったのかな。
そう言えば、髪を撫でられた時、既視感があった。
「ってか、なんでこんなにお前汚れてんの?」
「ちょっと、子猫の救出してたらこんな汚れちゃった」
「ふうん。相変わらず」柾は着ている黒のセーターの裾を伸ばしながら、溜息を零す。その溜息の重さに何故かひやりとする。
何か、言いたそうなのがありありと伝わってくる。
「ご飯まだでしょ? 柾くんのところからシチュー貰っちゃったからお風呂でも先に入ってきたら?」
「そ、そーしようかな」
「柾君、ありがとうね」
家へ入る母の後を私も直ぐに追う。
「で、お前ら結局婚約は嘘なんだな」
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