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五、乱入者。
五、乱入者。⑥
しおりを挟む「でも私と幹太の問題に、貴方は関係ないよ」
私と幹太の関係がはっきりすれば、自分にも可能性があると夢を見てしまったのかもしれない。
でも、幹太はそんなに甘い奴じゃない。
一度決めたら、きっともう戻りきれない不器用な奴だと思う。
「関係なくない! 貴方が幹太さんに甘えているからです。そうやって守られて、幹太さんだけが我慢してるなんて、私には我慢できません」
私は晴。彼女は幹太。
一番大切な人を、選んだだけ。
……彼女は、幹太を一番に選んでくれている。けれどじゃあ、実家は?
貴方は跡取りでしょう。幹太と家、それでも幹太を選んでくれるのだろうか。
私も貴方も、幹太の覚悟ほど選択できていない。
「言葉はくれないけど、きっとあいつは晴哉が居ても居なくてもあのままで、きっといつかは私が勝手に傷つけて昨日みたいなことが起るようになってたんだ」
言葉をくれない幹太と、言葉を聞かない私は、一体どうやって分かりあえばよかったんだろう。
「私ね、幹太の良さを分かってくれてこうやって私に説教してくれる美鈴ちゃんがいて本当に嬉しい。ありがとうね」
「何で貴方なんかにお礼を言われなきゃいけないんですか! はっきり教えてください。幹太さんを好きなのか利用しているのかを!」
詰め寄られ、肩を軽く押された私は、まるでスローモーションのように持っていたスムージーの容器を落としてしまった。
そのタイミングでトラックが納品を終えて、道路へと飛び出して行く。
コロコロと転がる容器と、今にも泣き出しそうな美鈴ちゃんと、返答を黙秘しようとした様子が、はっきりと幹太の瞳に映ってしまった。
幹太が大きな車を購入したのは、晴哉が乗っていた車が軽自動車だったからだ。
少しでも広い車にと幹太の家の車庫には不釣り合いな大きな車。
その意味を私は気付かないふりをしていたに過ぎなかった。
「28年愛していた人を亡くしてすぐに、幹太を好きなんて私が言うと思ってるの? 私は晴哉から貰ったものを二年やそこらで忘れて幹太が好きだなんて、口が裂けても言うはずないわ」
そんな事をしたら、幹太もお義母さんもうちの親も、きっと皆呆れてしまうだろう。
なにより私が私自身を絶対に許せない。
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