淫獣の育て方 〜皇帝陛下は人目を憚らない〜

一 千之助

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 皇帝陛下は逃さない 4

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「すでに肉体関係なのでしょうっ? ぜひとも御令息を皇帝陛下の妃にっ!!」

「恋仲な二人を引き剥がすのは宜しくない。どうか御一考を。侯爵閣下」

 四方八方からの湧き上がる懇願の嵐で、オルフェウスの父親は絶叫したい気分である。

 塔での密会。秘められた恋と、王宮を駆け巡るまことしやかな噂。社交界すら席巻するその噂を、侯爵は忸怩たる思いで静観した。
 オルフェウスが皇帝陛下の御召を厭うて出奔したという侯爵の言い分も覆される。
 実は逆ではないのか? 恋い慕う陛下の下に身を寄せ、匿ってもらっているのではないか? ……と。
 実際に甘く絡み合う二人を側仕えが目撃しているのだ。報告を受けた重鎮らはもちろん、その重鎮達が毎日のように侯爵家詣でをしていると聞いた貴族達も、噂は真実に違いないと囀りまくる。

 ……オルフェウスが抱かれているだと? どうやって呪いを解いたんだ? あんのクソ外道がぁぁーーーっ!!

 があーっ、があーっと、侯爵の絶叫が谺していた頃。

 当の本人は、獣化したオルフェウスを嬲っていた。

 膝に抱えあげて腹を丸出しにし、その股間の一物をグチュグチュ撫で回す。
 舌をだらりと垂らして、何度もイかされ瀕死な狼様。

「可愛いぞ。ほら、もっと出してみよ。……夜に種付けしたくなくばな」

 びくぅっと大きく震え、素直に佳がり始める狼。それをさらに虐め抜くため、アンドリューはいつもの玩具を持ち出した。
 
「ヒャイィィンっ! ヒゥンっ!」

「悦~い声だぁ。……はあ、舐めてやろうか? それとも挿れて?」

 うっとりと狼の耳に睦言を囁く皇帝に、見ていた周りが、ざーっと血の気を下げる。

 いや、何考えてるんですかっ! 相手はケダモノですよっ? 陛下の御乱心はまだ続いてるっ! 早く、早く侯爵様を説得して、御令息を迎えてくださいぃぃーーーっ!!

 満場一致な雄叫びが、王宮各所で上がっていた。

 それとは別な思惑も。



「皇帝陛下は気が違ってしまわれた。……御退位いただき、別な皇帝陛下をようすることも考えねば……」

「そうですな。侯爵令息が正妃となられるなら、係累の者を王太子とするしかなくなります。今、挿げ替えても未来は変わりますまい」

 先のなくなった皇帝の廃位を望む一部の者達。

 どちらもアンドリューの仕込みだ。オルフェウスを伴侶と出来るなら、どちらでも良い。



「このまま俺の正妃にするか、廃された俺が大公となり、お前を娶るか。ふはっ、愉しみだなあ? どっちにしても逃さねえから? ああ……気持ち悦い」

「……し、死にゅ……っ、ひうっ!!」
 
 とにかく、ねちっこい皇帝陛下。

 オルフェウスの心を圧し折るため、彼は古今東西のあらゆる玩具や薬を買い集めた。

「これなあ? ムズ痒くなって堪らない薬らしい。叩かれる刺激すら快感に変わるとか。使ってみようか?」

 にい~っと口角を歪め、彼は塗り薬らしいモノの蓋を取る。

「やっ、やめてぇーっ!!」

「なんだよ、嫌なのかよ。じゃ、こっちな? これは催淫効果の高い薬物らしい。夢のようにふわふわして、何をされても分からなくなるとか。痛覚が麻痺して、愉悦だけを拾えるぞ?」

 次々とされる説明に、ぞわりと肌を粟立てて怯える青年。

 その怯えようが愉しくて、アンドリューは懇切丁寧に話してやった。

 そして、その全てを試してみる。



「うはっ、すげえな、ぷっくり腫れて…… 真っ赤じゃねーか、痒い? なあ?」

 こすこすと胸の頂を撫でさすり、アンドリューは興奮気味にオルフェウスへ問いかけた。

 ……か、痒いっ! もっと……っ、もっと強く弄って欲しいぃぃっ!!

 ひいひい涙を零しつつ、両手をベッド隅の鎖で繋がれたオルフェウスは、どれだけ痒くても自分で慰められないジレンマに身を捩る。
 そのジレンマを淡く刺激するよう掠めていく皇帝の指先。鎖をガチャガチャいわせながら、オルフェウスは頭を振り乱して懇願した。

「も……つ、もっと強く……っ! ふあ……っ!」

「良い子だぁ…… もっと俺に弄って欲しいって? 強く? こうか?」

 ぎゅっと乳首を指先で掴んでアンドリューはぐにぐに捻り潰してやる。すると可愛らしい唇から嬌声があがり、んっ、んっとオルフェウスの顔が満足そうに蕩けていった。
 我慢の果の解放。望むものを与えられた時に起こる多幸感は、言いしれぬ愉悦を人にもたらす。
 しかも敏感な部分だ。その効果は覿面。

「悦い……っ、あっ、もっと……っ、もっとしてっ!」

 痒みを抑えるようカリカリと爪弾いてやれば、面白いくらい佳がり狂う愛しい獲物。薄れる痒みと溢れる快感。薬の相乗効果もあいまり、オルフェウスの乳首は痛いくらい尖って熟れていく。

「気持ち悦いか? なあ?」

「ひうっ! あ……っ、ぁあっ! 気持ち悦……っ! 悦ぃぃ…っ! 陛下、もっとぉぉ……っ」

 真っ赤な泣き顔で懇願され、アンドリューの劣情が煽られる。

 ……素直かぁぁーっ! あっ? 今まで、あんだけ嫌がっていたくせによぉぉーっ!

 毎回激痛を伴っていたのだ。オルフェウスが逃げ腰になるのも当たり前だ。……が、今は薬があった。
 じっくり念入りに調教してやると心に誓い、アンドリューは愛しい青年をいたぶり続ける。

「玩具も沢山あるし。退屈はしなそうだな、なあ?」

 いつもの棒で奥の奥まで薬を塗り込められたオルフェウスは、狂ったかのように泣き喚いてアンドリューにしがみついた。

「中がっ! ひいぃぃんっ!」

「うん? どうして欲しい?」

 玩具片手に嗤う鬼畜様。

「それで……っ、一杯掻き回してくださいぃっ!」

「どこを?」

 ふるふる泣き崩れて唇を噛み締め、オルフェウスはアンドリューの望む言葉を口にする。

「ぼ、僕のちんこの中を……っ」

「続けろ…… 最後まで」

「僕の……ちんこの中を……、そ、その玩具で……っ、うく……っ! 一杯、掻き回してください……っ」

 はらはら零れる涙。その切なげな姿に背筋をぞくぞくさせ、アンドリューはオルフェウスの望む以上を与えた。



「きゃーっ! 壊れるっ! 壊れちゃうぅぅっ!!」

「壊れろ、壊れろ。どうせ、獣化したら治るさ。気持ち悦いだろ? ん?」

 いつものモノではなく、淫猥に歪み膨れる奇妙な玩具に責め苛まれ、オルフェウスは絶叫する。
 それはアンドリューが買い求めた玩具の一つ。毒性の弱いスライムを調教して造られた生態玩具だった。
 孔という孔に潜り込み、内側から獲物をいたぶるよう仕込まれたモノだ。
 スライムの好物は生き物の排泄物や老廃物、体液など。その習性を利用し、捕まえた獲物に悦い思いをさせて吐き出させるよう覚えたスライムである。
 案の定、スライムはオルフェウスを泣かせ、精を吐き出させるために、青年の悦いところを嬲り、虐めまくる。
 おっ勃つ御立派様に絡みついて、その中の中まで刺激し、うねる触手達。にちゅにちゅ扱きあげられながら内部を激しく擦られ、オルフェウスは随喜の涙が止まらない。
 それすらもスライムの触手に舐め回され、凄まじい多幸感に溺れつつ、青年は高みへ叩きつけられた。

「ひぎっ! ~~~~~っ! イったぁ……、も…っ、イったからぁぁっ!」

「イったなぁ? まだイけるだろ?」

 ナマコのような形でオルフェウスのモノを呑み込み、扱くスライム。内側で暴れる触手の動きも巧みで、イってもイっても青年の御立派様はエレクトしたままである。

「し、死ぬぅ……っ、も……、やああぁぁーっ!!」

 ガンガン突き上げられる刺激が否応なく高める己の身体。それに恐怖し、目を見開いて頭を打ち振るうオルフェウス。
 飛び散る艶めかしい汗や涙をうっとり見つめ、飽きることなく愛しい者の絶頂を堪能するアンドリュー。

 終わりのない快楽に悶絶し、今日もオルフェウスは失神した。
 がっくりと項垂れる獲物の重みが嬉しくて、皇帝はスライムをひっぺがすと、オルフェウスを抱き込み眠りにつく。
 もはや習慣化した二人の睦み。それを翌日に持ち越すため、彼は努力を怠らない。



「きゃーっ!」

「ん……、悦い声だな。……飯にするか。おい!」

 呼ばれて、ようよう部屋に入ってくる側仕え達。

 デロ甘な二人のイチャイチャを見せつけられつつ、彼等は安堵に胸を撫で下ろした。

 ……早く御結婚なされば良いのに。お願いします、侯爵令息。どうか、陛下の御乱心を止めてください。

 生温い眼差しで見つめる側仕えらは知らない。

 御乱心と呼ばれる愛玩狼と、眼の前の妖艶に溶かされたオルフェウスが同一人物とは。

 こうして今日も、皇帝陛下の画策は続く。
 
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