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皇帝陛下は逃さない 2
しおりを挟む「ほら、来い」
じゃらっと硬質な音をたてる短い鎖。
それに引かれて、オルフェウスは部屋から出され、アンドリューの傍に侍らされる。王宮の仕事を終えた皇帝が、囚えた狼を可愛がることは既に周知されており、その調教が淫らであることも知れ渡っていた。
「今日はどうするか…… なあ?」
にやにや笑って椅子に座り、皇帝はオルフェウスを足置き代わりにする。椅子の下に横たわり、靴を脱いだアンドリューの足を支え、何をされるのか戦々恐々の狼。
そんなオルフェウスの腹を足先でいじくりながら、ふと皇帝は内包されている慎ましやかな一物に眼を向けた。
不思議なことに、狼化しても青年の御立派様は人間サイズ。形も色も夜に可愛がるモノと同じで、犬族独特な膨らみもない。
じわりと詰め寄る足の動き。それに気づいたオルフェウスは、無意識に腰を引いた。
「逃げるな。そのままだ。……いや、仰向け」
俗に言う服従のポーズ。それを要求されて、オルフェウスは酷く葛藤する。その葛藤する痛々しい姿すら眼福なアンドリュー。
「どうした? 言うことを聞けないのか? なら、お仕置きだな? おい、スライムを持って来い」
スライムと言われて全身を総毛立てる狼。
以前のお仕置きで、オルフェウスは何匹ものスライムに絡みつかれて穴という穴を弄くり回されたのだ。ズブズブ後孔に戻りこまれ、細い触手が尿道や耳、鼻の穴にまで這い回り、それこそキャンキャン泣きじゃくったのである。
……あんなの二度と御免だっ!
慌てて身体を裏返し、腹を見せる狼。
「ようし、良い子だな。じゃあ御褒美をやろう」
そう言いながら、皇帝は床に座り込むと前を寛げて己の物を取り出し、オルフェウスの鼻面に突きつけた。
「好きだろう? ほら、舐めろ。上手にイかせられたら、今日の食事は普通に食べさせてやるぞ?」
困惑げだった狼の眼が歓喜に彩られる。
青年の食事はいつもアンドリューからの口移し。あるいは口に含んだ物を舌で取るよう命令されていた。空腹に勝てず、仕方無しに受け入れているオルフェウス。
おずおずと舌を絡める狼に眼を細め、皇帝はさわさわと青年の股間を撫でた。
緩急つけた巧みな動きに煽られ、オルフェウスの物が勃ちあがる。それに狼狽えて、アンドリューのモノに絡んだ長い舌が微かに緩んだ。
「競争だぞ? お前が俺をイかせるのが早いか、俺がお前をイかせるのが早いか」
ぎょっと見開く可愛い眼。それをべろっと舐め回し、皇帝は勃ったオルフェウスのモノを容赦なく扱く。
眼を閉じられぬよう瞼を押さえて、つつ……っと目玉を這い回る舌先。チロチロ動くソレに意識を持っていかれ、オルフェウスは己の舌を上手く動かせない。
犬族特有の薄く長い舌は、アンドリューのモノにべっとりと巻き付き、人間とは違う格別な悦楽を生み出してくれる。
はあ……っと蕩けた息が皇帝の唇から漏れ、その甘い色香にオルフェウスはあてられた。ずくっと疼く腹の奥底。それがダイレクトに股間を直撃し、先走りでにゅるにゅる湿った音をたてる一物を弾けさせる。
『キャウウゥゥゥンっ!!』
悲痛な鳴き声が響き、オルフェウスの身体が大きく痙攣した。ピクピク震える四肢が愛らしく、アンドリューはその前足を取り、裏の肉球を舐めてやる。
「俺の勝ちだな? ふふ、どうしてくれようか。駄目だ、愉しすぎるっ! ふははっ!」
がしがし狼の頭を掻き回すように撫でて無邪気に笑う皇帝陛下。その右手は、未だにオルフェウスのモノを扱き、さらなる吐精を強要する。
ひゃいん、ひゃいんっと鳴き叫びながら身悶える狼。
公共の場で毎日行われる淫らな調教は、王宮の名物となりつつあった。
一部始終を鑑賞せざるをえない護衛や侍従は、ドン引きである。
……我々は一体、何を見せられているのだろう?
満場一致な感想を胸に抱く王宮関係者。
皇帝、御乱心とも揶揄される一連を耳にして、オルフェウスの父親が青ざめたのは余談だ。
「すまん、オルフェウス…… 一体どうしたら……?」
毎日悶々とする侯爵の背中を、執事が痛ましげに眺めていた頃。当の本人らは晩餐を楽しんでいた。
「ん~? んっ!」
口に咥えた肉を狼に与える皇帝陛下。
素直にソレを口で受け取り、オルフェウスは咀嚼する。もちゃもちゃ食べる狼の口についたソースを舐め取ってやり、アンドリューは至福の笑みを浮かべた。
「可愛いな。次はどれが良い?」
言われて狼が示したのは赤い果実。良く熟れて柔らかな果実は口に咥えられず、アンドリューは中に含む。
そしてソレを口づけるようにオルフェウスへ与えた。差し込まれる長い舌を逃げ出せないよう歯で押さえ、果実を余所に己の舌と絡ませる。
ふっ……ふっ……っと聞こえる荒い息づかい。
がっちり食込む歯で引き出せないオルフェウスの舌が逃げ惑い、それを追いかけて捕まえ、アンドリューは思う存分堪能する。
「早く元の姿で食べさせてやりたいな。……侯爵め。まだ折れぬか」
皇帝の眼が陰惨な翳りを帯びてギラついた。
そんなことには気づきもせず、オルフェウスはアンドリューに与えられるまま、口移しや手ずから満腹になるまで食事する。
恥も外聞もない調教を受けているのだ。いまさら口移し程度で恥ずかしがることもない。
そう割り切るオルフェウス。
だが彼が、そのように考えるのもアンドリューの手の内だった。毎日、凄絶な責め苦を受けることで、優しい強制が甘く感じられるよう、皇帝は誘導しているのだ。
毎日、身体を引き裂かれるごとき蹂躙や、衆人環視で行われる調教に比べたら、こんな食事風景など何とも思わなくなるだろう。
オルフェウスの呪いが解けた時。これを通常として受け入れられるように、アンドリューは微に入り細を穿ち愛しい青年を洗脳していた。
何でも手ずからや口移しで食べさせ、ブラッシングや風呂も人にさせずに自らやり、そんな些細な中にいやらしいことを織り交ぜて悪戯し、オルフェウスをキャンキャン泣かせる。
「おら、逃げんな。……気持ち悦いか?」
『ヒャイィィンっ! ヒィンっ!』
狼を後ろから抱きしめるように風呂に浸かる皇帝陛下。その右手はオルフェウスの御立派様を掴み、左手には細い棒のような玩具。
直径五ミリ、表面に小さなデコボコのついた柔らかい棒を鈴口から捩じ込まれ、狼は涙目で泣き喚く。
それが楽しくて仕方のないアンドリューは、ぬちぬちと抜き差ししつつ、うっとり恍惚な顔でオルフェウスの耳の中を舐め回した。
「悦~い声だなぁ。おら、もっと泣け」
『ヒャインっ? ヒャウゥゥンっ!!』
眼を見開いて激しく喘ぐ狼。皇帝の操る玩具が激しさを増し、先端から奥の奥まで刺激する玩具に追い詰められ、オルフェウスは目の奥に火花が散った。
……イくっ! イくぅぅぅっ! もうぅぅぅ!!
ひくひく身体を仰け反らせ、だらりと下がった長い舌。緩急つけて一物を虐め抜かれ、一瞬硬直してから弾けるオルフェウス。
身体を前のめりにして震える狼の可愛らしさよ。
中身を全て吐き出すまで嬲り尽くし、アンドリューは、さも愛しげにオルフェウスを撫で回した。
「夜にもしてやる。覚えろよ? 気持ちの悦いこと一杯教えてやるから…… 俺の身体を覚えろ。たっぷりと躾けてやる」
ちゅっちゅっと狼にキスの雨を降らせる皇帝陛下。
しかし、狼溺愛なアンドリューに心底慌てたのは、見せつけられている周囲ではなく、実は国を預かる重鎮達だった。
「皇帝陛下御乱心と聞いたが、ここまでとは……」
「ケダモノ相手にもよおす? 悪い冗談だっ!」
「今は専属の側近や側仕えしか知らないですが、これが外に知られたら…… 考えたくもないっ!!」
上を下への大騒ぎとなる王宮。
「これならまだ、男性にでも懸想してくれていた方がマシだった! 跡継ぎなど、係累から養子をもらえば済むっ! ……そういえば、誰かと噂になっていませんでしたか?」
「ああ、確か、侯爵の御令息に一目惚れし、言い寄ったとか。断られたらしいですが」
「あちらも御嫡男で嫁には出せまいが…… もう、高望みはせん。ケダモノよりマシだ、御正妃様が男性でもかまわんっ! なんとかならないものか」
懊悩煩悶する侯爵が知らぬ間に、着々と皇帝色に染められていくオルフェウスと、余波を食らって巻き込まれる王宮各位。
じわじわと外堀を埋めつつ、一人御満悦なアンドリューを今は誰も知らない。
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