43 / 102
理不尽な接待 11
しおりを挟む「見えたぞ? あれがスフェーンだ」
「ふわあ、やっと緑がありますね」
リドルが閣下に脅されていた頃。
源之助は、馬車に揺られて異国に辿り着いていた。
多くの申し込みの内、リヒャルト達が早急に片付けたいのが隣国スフェーン。
ここは内乱寸前の国らしく、五人いる王子のうち、現在子を持つ者が一人もいない。ゆえに誰かしらが子を得れば、その発言権も強くなる。
それを期待して、リヒャルトと懇意にしていた第二王子の招きで源之助達はスフェーンを訪れた。
レスレクシオン王国と違い、海と大河を持つスフェーンは砂漠の国。
レスレクシオン辺境を出た途端、パノラマで広がる荒野を物珍しげに眺めているうち、緑がしだいに枯れ果てて足元が砂に変わる。
……すげぇぇ。見渡す限りの砂漠とか、初めて見たかも。
夜営も天幕を張った本格的なモノで、遠足や修学旅行気分の源之助を、すこぶる楽しませてくれた。
潤沢なお湯も用意され、地面に掘った穴に防水布を敷き、簡易的な風呂に早変わり。
近くにオアシスのある場所で行う夜営は、非常に快適だった。
満天の星空に、そよぐ椰子の木。
一応、夜営側から隠す仕切りはあるが、三方開けた露天風呂のような光景に源之助は酔いしれる。
……贅沢な光景だなぁ。砂漠と無窮の星…… 星の界って、こういうのをいうのかもなあ……
口まで湯に浸かり、ふと源之助はリドルやリヒャルトの言葉を思い出す。
風呂は王侯貴族の贅沢だと二人共言っていた。
「そういや、お湯って竈門で沸かす以外にどうやって?」
「魔術具だ」
独り言に返事が来て、ぴゃっと背筋を震わす少年。
慌てて振り返った源之助の目に映ったのはリヒャルト。もちろん全裸で、狭くはない仮設露天風呂に入ってくる。
源之助を抱え込むように湯に浸かり、彼は先程の疑問に答えてくれた。
「その首輪もそうだが、世界には魔術具がある。知っているか?」
ぶんぶんと源之助は首を横に振る。
それに淡い笑みを浮かべ、リヒャルトは右手にはめた指輪を抜いた。
「これも魔術具の一つ。宝石を媒体とし、魔術師が付与を入れるんだが。魔力には質があってな。平民でも魔術具を動かす程度の魔力はあるが、溜めて付与するほどの魔力はない。貴族などは魔力の質も量も高いが、それでも魔術具に魔力を装填するにはかなりの時間がかかる」
要は、魔術具を作り、魔法を付与し、それを動かすための燃料である魔力を溜められる魔術師は滅多にいないということ。
起動させる魔力はほんの少しでも良いが、その魔術具を動かすために予め道具に魔力を注いでおく必要がある。それを出来る魔術師が多くはないので、結果、風呂のように大量のお湯を沸かすのが困難だという話だった。
「薪とか普通に火を焚いて沸かさないのか」
「それこそ王侯貴族の贅沢だ。こんな大量のお湯を沸かすための薪など、半端ない金額だぞ?」
魔術具が広く普及しているため、平民でも気軽に使える。わざわざ火をつけて後始末が必要な手間暇はかけないらしい。
ゆえに滅多に使われない薪は、非常に高価なのだとか。
リドルのところでお湯を使わせてもらっていた源之助だが、あれとて壺に二つか三つ。鍋で沸かして用意したものだろう。
「森で木でも切ってきて薪にしたら良いのに」
「……それ、普通に犯罪だからな? 森の木々は国の大切な資源だ。材木として高価に売れる物を薪になんぞしてはいかん」
呆れたかのような顔のリヒャルト。
聞けば薪にしてよい物は、加工の過程で出た廃材や古くなって取り替えた廃材。真新しい木材を薪になど言語道断と彼は言う。
ちょっとした魔術具ならそんなに魔力も食わないし、こういった大掛かりなモノでなくば問題はないらしい。
「身を清めるのは水で事足りる。我々だからこそお湯を使えるんだ。平民には無用だろう?」
この世界の人々は、流し捨てるだけの湯水に必要性を感じないようだ。こうして湯に浸かるリヒャルトとて、たんなる財力、権力の誇示。
嫁に湯を使わせるのも、その一つ。これだけ大切にしていますよという自己満足。
……う~ん。価値観の相違だなあ。
ぷくぷくとアブクをたてながら、リヒャルトに抱きかかえられていた源之助は、彼の手が悪戯し始めたのに眼を据わらせる。
「………………」
無言だが、少しずつ熱くなる背後の吐息。
……またか。この絶倫様が。
少年の予想を裏切らず、のぼせるほど湯船で絡まる二人。こんな旅路でも毎日注がれる精に溺れ、今日も泣き叫ぶ源之助だった。
22
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる