耽溺の森 〜だから僕らは森から出ない〜

一 千之助

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 始まりの森 3

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「ん......? くっ? ぁっ!」

 酷い痛みに見舞われ、うっすら敦の瞼があがる。どうやら気を失っていたようだ。
 そして体内を蠢く何かが少年の意識を急速に覚醒させた。

「ふっ? ぅあっ?!」

「あ、眼が覚めちゃった?」

 金髪の男性が敦の背中から被さるように動いている。
 その動きに合わせて体内を掻き回す何かも動き、敦の身体が硬直した。

 ……まさか?

 起き上がろうとする敦を身体で押さえ込み、薄い笑みをはいた男性は、己のモノを知らしめるかのように鋭く腰を突き上げた。

「がっ?! ……ぅぅうううっ?!」

 鈍い痛みを訴えながら敦のお尻を出入りする何か。ナズナのモノより巨大なソレは、容赦なく少年の柔らかな腹の中で暴れ回っている。

「気を失ってるうちに終わらせておこうと思ったんだけどさ。君の中、気持ち悦すぎて..... ずっと、こうしていたいよ。最高ぅぅ……」

 ぬぷぬぷ音をたてて捩じ込まれる一物に敦の全身が粟立った。鈍い痛みが続いてはいるが、それを上回る快感がゾワゾワと背筋を這い上る。

「くぅ.....っ、んっ、はぁ.....っ」

「君らを見てたら火がついちゃってさ。責任取ってよね」

 被さる男性が敦の両手首を掴んでいて全く動けない。
 にちゅにちゅと泡立つような、いやらしい水音だけが敦の耳に届き、少年の肩越しに触れる熱く蕩けた吐息が敦の唇を震わせた。

「なに? またイきそう? 気を失っている間にも、二回イってたよ、君。初めてみたいなのに凄いね」

 首まで真っ赤にして震える子供。息も絶え絶えに乱れ、身悶え、男性の一物を必死に呑み込んでいる背徳的な情景。

 ふっと眼を細めて、男性は眼福に酔いしれる。

「ゃっ、もぅぅ、.....ぁっ、あーーーっっ!」

 ガクンガクンと大きく痙攣する少年を押さえ込み、金髪の男性は苦しそうに顔を歪めた。いや、夢心地な苦悶の表情は、うっとりと蕩けている。

「きっつっ......っ、君、ホントに悦すぎるよ、クセ、に、……なりそうぅぅっ」

 唸りながら彼もまた精を吐き出す。何度も激しく腰を叩きつけ、奥の奥に己の猛りを迸らせた。
 ドクドクと注がれる熱い何か。ソレを体内に感じながら、再び敦は意識を失った。
 くたりと沈み込んだ少年を抱き起こし、男性はびっしょり濡れた汗の感触を愉しむように敦の顔を撫でる。  
 その眼は、まるで獲物に狙いを定めたかのような、猛禽の輝きを宿していた。





「異世界転移ねぇ」

 あれから数刻。気づけば再び別の場所にいて、狼狽える敦達。なんでも、目の前の男性が二人を担いで自宅に運んでくれたのだとか。

 ………ガタイが良いとは思ったけど、想像の斜め上過ぎるだろう。

 唖然とする敦達から詳しい話を聞き、金髪の男性は椅子に腰かける。
 この森の奥深くに隠遁する魔術師の男性は、意識のない敦らを家に運んで檻に入れ、鎖で繋いだ。

 そう、繋いだのだ。

 直に感じる金属の冷たさ。小振りな南京錠のようなモノで留められた鎖は、緩く二人の首に絡んでいる。
 立て続けの異常事態に、二人は己の現状を正しく理解する気力もない。
 それでも残っていた欠片ほどの理性が、なんとなくの疑問を呟いた。

「……この鎖は?」

「ん? 君らは私が飼う事にしたから。首輪はいずれね」

 はい?

 呆然とする中学生様達。

 その顔を見て、彼は、ああ、とばかりに説明してくれた。

「ここはティモシーという世界なんだけど。君らに人権のない世界なんだよ」

 絶句する二人を可笑しそうに眺め、彼は口を開いた。

 いわく、この世界は半陰陽が当たり前の世界。片方しか性を持たない者は欠陥品として人権を与えられない。生まれた時に奴隷の印を押され、成長すれば売り買いされる。
 半陰陽とはいえそれぞれ個性もあり、男性寄り、女性寄りなど様々だ。ただ、総じて細く柔らかな姿の人々なのだという。

「まあそんな中、私は単体の男だ。自分で自分を買い取り、自由民となった」

 言われて敦も気づいた。彼は大きな体躯の男性だ。女性っぽさはない。

「だが見ての通り、あきらかな男性体は誤魔化せない。いつなんどき奴隷狩りに遭うか。それで、こんな森深くに隠れて住んでいるってわけ。ここまでは、オーケー?」

 なぜか言語に不自由はない。どちらかといえば、敦達に分かりやすく翻訳されている気がする。
 さっきまでは非常事態で気づきもしなかったが、飄々とする眼の前の金髪男性が日本語を話しているわけがないのだ。なにがしかの力で翻訳されていると考えるのが普通だろう。
 
 素直に頷く二人。

「で、まあ、ここで問題になるのは、明らかな男性が少ない。ある意味、稀少という事」

 神妙な面持ちで聞き入る敦とナズナ。

 さらに彼が説明するには、単体の女性は比較的多いらしい。そして半陰陽の陽根は小さめだと言うこと。
 女性でもあるせいか、その一物は小振りで今の敦くらいが標準なのだという。

 小ぶりと言われて、やや傷つく思春期様。

 まだ成長期だしっ? いずれデッカくなるもんっ!

 そんな複雑な敦の胸中を余所に、男性は話を続ける。

「だからね。私みたいに大きな一物を持つ者は肉奴隷として垂涎な獲物なんだよね」

 隆々とした熱く猛る肉棒。玩具にはないその質感に、是非とも溺れたい人々が非常に高値で買ってくれるらしく、金髪の彼も奴隷時代には散々無茶苦茶な使われ方をされてきたんだという。

「で、まあ。アツシだっけ? 君も人目に触れたら同じことになる。首輪無しな単体なんて良い獲物だ。すぐさま奴隷商に捕まり、徹底的に調教されるだろう」

 そして彼は、ついっとナズナを見る。

「君はシークレットという半陰陽だ。私も文献でしか知らないが、とても希少な奴隷と聞いているよ」

「シークレットって?」

 恐る恐る尋ねるナズナに、彼はソレも説明してくれる。

 いわくシークレットとは、イかされる事で陽根を発現させるタイプの半陰陽。
 普段は女性なため、奴隷として調教する段階で発覚するのが常で、この年齢まで発覚しない事はあり得ない。敦にしても、とうに性技を仕込まれている年齢だという。

「だから君らが異世界からやってきたってのも納得出来るんだよ。単体がこの年齢まで無垢なままなんて有り得ないからね。大抵は一桁後半には調教で性技や絶頂を仕込まれるからさ」

 何でもないような口振り。

 それが当たり前なのだと肌で感じ、敦とナズナは背筋を震わせる。そして恐々と金髪の男性を見上げて、二人は喉を大きく鳴らした。

「僕らを..... 売るの?」

 ここは異世界だ。しかも自分達に人権のない世界。中学生になったばかりの子供に何が出来るたろう。
 不安に押し潰されそうになっている二人を柔らかく見つめ、金髪の男性は首を横に振った。

「言っただろう? 君達を飼う事にしたと。私が君らの主になろう。奴隷印を結び、二人を支配下に置く。そうすれば、他の誰かには手を出せなくなるから。良いね?」

 淫猥な光を宿す彼の眼に気づかず、二人は安堵の息をつき、小さく頷いた。

 だがすぐに、彼等はそれが生半可で無いことを知る。
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