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悪夢の女
しおりを挟む「賢ー、聡子ー、行くぞー」
「「はぁーい」」
山奥の一軒家に住む奇妙な家族。今日は揃ってお出かけである。
もうじきクリスマスなので、街に買い物だ。
最初は通販で済ませようと思った睦月だが、子供らがテレビのクリスマスイルミネーションに興奮しているのを見て、たまには連れ出してやらないとと、覚悟を決めた。
賢と暮らすようになって、そういった症状も遠退いた。聡子にもクる時はあるが、ほとんど抑えきれる。たぶん、大丈夫だろう。
微かな希望を胸に、睦月は久々に山道仕様の4WDを駆けさせた。
「なんか欲しいモノがあれば言うんだよ? オモチャも一つなら買ってあげるからね」
ほぼ全て通販で済ませているが、リアルタイムに自分で選ぶのも大切だ。
手に取り確認して、多くの中から選ぶ。そういったことも子供らには大事だろう。
睦月は、そんなことを考えたが、周囲を山々に囲まれた大自然に勝る環境はない。
季節の野草や花々に触れ、木に登ったり、虫を捕まえたり。
満天の星や、水のせせらぎ。
周囲を満たす全てが贅沢な情操教育なのだとは、全く気づいていない都会っ子の睦月である。
「ここで良いかな」
睦月は一番近い街からもう少し離れた主要駅のある街へ来た。近場の街は田舎過ぎて大した店もないからだ。
ここも田舎ではあるが、某有名スーパーのデカイ奴がある。映画館も併設しているし、ちょっとしたアミューズメントパーク的なモノになっていた。
睦月は駐車場に車を停めて、二人からシートベルトを外す。
途端に飛び出す聡子。まるで回る独楽のようにあちらこちらへと跳んでいた。
「聡子っ! 車が危ないから、こっちへっ!」
慌てて抱き上げる睦月。
こうして聡子を抱いていても、劣情が渦巻くことはない。
本当に慣れたのだなぁと、感慨深くなる睦月である。
それもこれも賢のおかげだ。
賢という愛しい宝物があるから、他に惑わされない。前のように、子供なら何でもという気持ちにはならない。
柔らかな笑みをはき、睦月は賢と手を繋いで店の中に入っていった。
店に入ると、周囲に子供らはいるが、これといって何も感じない。
安堵に胸を撫で下ろし、睦月は子供らに微笑んだ。
「まずは御飯にするか。何が食べたい?」
睦月達がやって来たのは飲食店街。キラキラと眼を輝かせる子供達が可愛らしい。
「僕ねぇ、えーっと、どれにしようっ!」
「さとはー、おにくぅぅ」
きらびやかなウィンドウに張り付き、あちらこちらへと移動する二人を微笑ましく見つめる睦月の肩を、誰かが軽く叩いた。
思わずビクッとし、慌てて振り返った先には綺麗な女性。見覚えがありすぎる、二度と会いたくなかった女性。
「.....遥? か?」
「久しぶりっ、ってか何年ぶりよ。昌子姉ぇの葬式以来じゃない?」
少し斜にかまえたロングヘアーの女性は、呆れを滲ませた笑顔で睦月に微笑んだ。
軽くウェーブさせた髪に、ほんのりのせただけの薄化粧。
睦月より頭一つ分小さい彼女は、彼の従姉妹である。
「母さんが引き取った子供らを、あんたに預けたって聞いたけど? あの子達?」
「ああ」
ぶっきらぼうに答える睦月に、遥は苦笑する。
「あんた、子供嫌いだしねぇ。あたしも別所してたから良く知らないけど。まあ、元気そうでなによりね」
子供嫌いではなく、その逆を過ぎたる変態なのですが。この女にカミングアウトする気はない。
むすっとしたまま、言葉少なな睦月に腕を絡ませ、遥はしなの入った甘い声で囁いた。
「あんたも若いのに苦労してるね。あの子らがいたら結婚も無理なんじゃない?」
……別にかまわない。
「昔は一緒にお風呂にも入った仲だし? なんなら、あたしがあの子達の母親になってあげても良いよ?」
その囁きに、睦月はゾクリと背筋を震わせた。
この女は、年端もゆかぬ睦月に性を教え込み、初めての全てをむしりとった悪女である。
中学校に上がる前から同世代の女の子に興味が持てず、小さな子供にばかり眼がいく己に悩んでいた頃。
十三歳だった睦月を誘惑して、それに靡かないと知るやいなや、無理やり淫行を強制した、ふしだらな女。
睦月を騙し、ロープで縛り上げて猿ぐつわまで噛ました女。
何をしても反応しない睦月に業を煮やし、勃たせるために、睦月のアナルをバイブで犯した女。
この淫乱はそういった道具を嗜み、部屋に揃えていた。
ローション、ローター、バイブ数種。その中でも一番太いのをローションでぬらぬらにして捩じ込んできたのだ。
身を裂くような激痛も、ローションの滑りを借りた凄まじい抽挿で、ほぐれ和らいでいく。
さらにはバイブのスイッチを入れられ、うねる淫猥な道具は、睦月の弱いところを、凄まじく抉り続けた。
そうなればもはや勝ち目はない。奥の好い所を刺激され、睦月の柔らかかった一物が猛り狂う。
『あっはっ! こっちのが悦いんだ? やーらしぃ身体ぁぁ』
……生理現象だ、馬鹿野郎っ!!
ぬちゃぬちゃと激しくバイブを動かして、前立腺を刺激されまくられ、生理現象で勃ってしまった睦月の陽根を己の中に呑み込み、勝手に腰を振って果てた女。
さらに睦月が果てるまで、散々バイブで弄んだ女。
彼の初めては、全てこの女に散らされたのだ。
睦月の腹の奥から、ドロリと沸き上がる憤怒。
この淫乱な女は、その姿を写メにして、後々にも関係を迫ってきた。
好んで睦月を縛り上げ、満足するまで口淫を強要し、最後はバイブで睦月を無理やり勃たせて猛る陽根呑み込み果てる。
どうやら、通常より大きな睦月の一物が気に入ったようで、バイブが抜けなくなるようなベルトまでも購入し、睦月自身に腰を振らせたりもした。
極太なバイブを捩じ込まれたまま、この女に奉仕する睦月。
『良いわ、もっとよっ、もっと激しくぅぅっ!!』
バイブのスイッチを握って身悶える下種な顔。
自分がイクと、睦月もイカせたがる極悪非道な女。
バイブのスイッチが入り、身も世もなく悶える睦月を抱き締め、キスを強要し、愉悦に溺れた睦月がしがみつくのを心から楽しんでいた悪女。
泣き顔が見たいと、出すことを阻むリングとやらを嵌められて、延々悶絶させられたりもした。
この時に初ドライも奪われた。
売春に近い行為の強要もされ、男らに売られた事もある。
睦月が男に貫かれ、この女を睦月が貫く、そんな背徳的な3Pが売りだったらしく、けっこうな数の男らに捩じ込まれた。
『あんたが悪いのよ、睦月ぃ。あたしがサービスしてやっても勃たないから、別の人に手伝ってもらってんじゃん。感謝してよねぇ』
下卑た嗤いで見下した、この女。
男らに抱かれても睦月は勃たない。ただの肉穴だ。だから、そんな形で売りをさせたのだろう。
奴隷を嬲るようで興奮すると、通常より高値で売れたらしいソノ行為は、ほんの数ヵ月で終わりを迎えたが。
客の中に弁護士がいたのだ。
不本意が顔に出ている睦月を無理やり勃たせて行う行為。
勃つまで執拗に責め苛む倒錯的なのが本来の売りだったが、本気で嫌がっている睦月が演技ではないと見抜いた彼は、睦月個人に声をかけてきた。
そしてある日、彼は売りの暴露を脅しに使って睦月と個人的な性交渉に及び、普通にやっても勃たない睦月から話を聞いてくれた。
『ああいうのに参加してる時点で私も誉められたものではないけど、同性愛者だからね。わかるんだよ、そういうの。君、脅されてやってるね? 相手は、あの少女かな?』
脅して誘っておいて、何も無理強いしてこない男性を信じ、睦月は全てを話した。
結果、彼は迅速に動いてくれて、睦月がレイプされた現場の写メから、他全ての画像を回収し、処分してくれた。
『あんた、何てことしてくれんのよっ!! おかげで、あたし、学校退学になったじゃんっ!!』
被害者が十五歳未満だったこともあり、名前その他はふせられたが、遥は十八歳。高校卒業間際に退学を食らってしまったらしい。
この淫乱が、睦月の写真を何処にも流していなかったのは意外である。
両親にはバレてしまったが、睦月の地獄は一年もたたずに終息したのだ。
その負い目もあったのだろう。遥の両親は、我が家に関して、かなり気をつかってくれた。
両親の死後も姉の出産を手助けしてくれたり、賢達を引き取ってくれたり。
海外永住は寝耳に水だったが、まあ、仕方ないとも思える。
そんな悲惨な過去を振り返っていた睦月は、元凶の女が子供らにすり寄ってるのに気づくのが遅れた。
「お姉ちゃんパスタが食べたいなぁー、ほら、お子さまランチパスタだって。旗がついてるし、オモチャもあるよー」
「!!」
子供らの肩に手をおき、楽しそうに話す遥を見て、睦月はカッと頭に血が昇る。
思わず怒鳴り付けようと口を開いた、その瞬間。
「おばちゃん、へんなにおいがして気持ち悪い」
賢が仏頂面で吐き捨てる。
「おばっ?!」
憤慨する遥を無視して、賢は聡子の手を引き睦月の元へやって来た。
「へんなおばちゃんがいる。へんたいかもしれないよ? おじさん、あっちいこ」
大きな賢の声に、周囲が何事かと振り返る。
そのささくれだった視線に耐えられなかったのだろう。遥はそそくさと逃げ出していった。
変態は俺なんだけど..... まあ、昔されたことを考えれば、あの淫乱も変態と言えなくもないか。
深刻だった過去のトラウマが、ふと軽くなる。
賢の一言が、それを笑い話に塗り替えてくれた。
心配げな周りに軽く頭をさげて、睦月は少し離れた所にある寿司屋に入った。
「お刺身や、ちらし寿司なんかは家でも作れるが、こういった握りは本職でないとなぁ」
カウンターに子供らを座らせ、睦月は適当に注文をする。
「さとは、たまごとー、きゅうりとー」
「僕、トロっていうの食べたいっ! あとイクラとマグロっ」
「トロかぁ、俺も久々かも。子供らのはサビ抜きで、俺にも同じモノを。あとアジ追加」
へいっと景気の良い声がし、聡子が真似をする。
思わず綻ぶ板前の顔。
賢は興味津々で、カウンターを眺めながら睦月を見た。
「サビぬきって?」
「お寿司にはワサビっていう辛いモノが入っているんだ。それを抜いてもらうの」
「そっか。アジは? おいしい?」
「美味しいよ。叔父さんは好きだな。食べてみるか?」
「うんっ!」
無邪気な子供らに心が洗われる。
微笑ましい親子の食事に、店の従業員もニッコリ笑顔。
こうして穏やかに楽しく食事を済ませた三人は、目的のモノを探してエスカレーターに乗る。
まだ買い物は終わっていないのだ。
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