The ミリオネア 〜億万長者を創る方法〜

一 千之助

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 お題 蠟燭 〜前編〜

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「なんだ?」

「.....何でもないです」

 アレから本当に毅は七海に何もしなかった。

 自身で練習しろと言われていた彼女は幾つかの玩具を買い、御風呂の時に練習したが、その気持ち悦さに驚く。
 以前と違い、ちゃんと性感帯の開いた七海の身体は、玩具の刺激で愉悦を感じ、何度もイッてしまったのだ。
 あれほど嫌悪していたお尻も、絶頂の疼きに誘われ、玩具で弄ってしまった。はしたない身体にされたのだと憤慨するも、その快感には抗いがたく、何度も練習をしてしまう七海。
 そして無理やりされたアレコレを思い出すと、身震いするほど身体が疼く。

 .....もう一度されたい。ガチガチに拘束されて、メチャクチャに犯されたい。

 なんて恥ずかしい事を考えるのか。自嘲で赤面する七海。
 あれから御腹の調子も悪くないし、確かに毅はそういった知識が豊富なのだろう。
 ぐちゃぐちゃにお尻を掻き回して突き上げまくられたのに、翌日痛む事もなかった。
 ちゃんと七海の負担を考えて調教してくれていたのだと気付き、さらにバツが悪い七海である。

 ドラムロールが響き渡り、シンバルが鳴り、お題が点滅した。

 蝋燭。

《おおっとぉー? 今回は難しいお題が来ましたねぇ~~? にわか調教の奴隷達がどのようにこなすかみものですっ♪》

 まだ鞭や緊縛のがマシだったな。

 毅は軽く天を仰ぐ。

「やるしかないか。こっち来い。ブギーマン、ライトをしぼってくれ」

 毅の望み通り明かりが暗くなり、宵闇ていどのあたりで彼はしぼるのを止めてもらった。
 二人が薄っすらと見える程度の暗さ。道具を確認して、毅は陰惨に眼をすがめ、七海を調教台へ連れて言った。
 それはスポーツクラブ等で良く見る腹筋台。ただし拘束ベルト付き。
 そこへ全裸にした七海を寝かせて、毅はキツく拘束する。斜めな台でまんぐり返しのように固定され、七海の股間は丸見えである。

「今日は抵抗しないんだな? まあ、ショーだし、諦めたか?」

 嘲るように笑う毅。

 そして五センチほどの太さの白い蝋燭を数本だすと、彼はそれに火をつけた。

 闇に浮かぶ焔は美しい。

 妖しく揺らめく焔を凝視ししながら、七海はそれを手にしてほくそ笑む毅にも魅入られる。
 灯りに照らされ浮かぶ少年。次々と蝋燭に火が灯り、それを背景にした毅は非常に幻想的で淫靡で背徳的だった。
 明かりと闇のコントラストが陰影をはっきりさせ、その場を妖しく彩っている。

 .....キレイ。

 黒いスラックスに前開きのシャツの前を寛げ、長い睫毛を伏せて愉しげに眉を上げる毅。
 そして周囲につけた明かりとは別に、毅は新たな蝋燭に焔を灯す。毒々しいくらい真っ赤な蝋燭に。
 七海の横に並べられるよう灯された蝋燭は五本。その一つを持ち上げ、毅は七海の足を掴む。

「じっとしてろよ? 動くと酷い事になるぞ?」

 冷たく見下ろされ、彼女の身体が硬直した。
 毅は七海の踵を掴み、その足の裏に敢えて至近距離から蝋を垂らす。たっぷりと。

 思わずぎゅうっと丸まる彼女の足先。

「ひあっ?! 熱っ! あっ!!」

 焼けた蝋を足らされて身動ぐ七海を無視し、その蝋が足の裏から零れるほど溜めると、毅はそこにそのまま蝋燭を立てた。

「じっとして動かないようにしろよ? 下手に動かすと、蝋が他にも垂れるぞ?」

 七海の顔が凍りつく。

 足の裏ならばまだ皮が厚いが、その下にある七海の柔かな肌にあの熱いモノが落ちたら、ただでは済まないだろう。
 怯え震える雌犬をニヤリと見つめ、毅はもう片方の足にも同じく蝋燭を立てる。
 知識のない七海は知らない。高さがあれば、蝋は急速に冷やされるという事を。
 毅は低温蝋燭など使っていないので、薄い皮膚に落ちればそれなりに熱いだろうが、焼けるほどではない。
 だが至近距離から本物の熱さを叩き込まれた七海には恐怖でしかないだろう。知らないからこその恐怖が彼女を染めていく。

 悦い顔だな。

 ガクガクと震える七海の前に椅子を置き、軽く脚を組むと、毅は胡乱げな眼差しで彼女を見下ろした。

「お前じゃ、俺のコレ勃たないんだよね。だからまずは舐めて?」

 低く下がった七海の顔に、毅は足を突きつける。

「指の間まで綺麗に舐めろ。いやらしく舌をチロチロさせてな。俺を興奮させるんだ」

 七海の唇に足先を捩じ込み、毅は彼女の舌を弄くった。
 こう言うストイックでお堅い女には、するより、させる方が恥辱を煽る。
 酷い事をしても、この女は被害者意識に酔うだけ。ならば自らさせる事で、そのプライドをズタズタにしてやる。
 残忍な想像に酷薄な笑みを浮かべる毅の眼が、軽く見開いた。

 てっきり泣き叫ぶと思っていた七海が、なんと、素直に毅の足を舐めているではないか。

 辿々しいが、言われた通りに指の間を這い回る舌先。
 ぬるりとした温かな舌先に、毅のモノが微かに頭をもたげた。

「.....素直じゃないか」

 興奮に上ずる呼吸を押し隠し、毅は辛辣な眼差しで七海を見下ろす。
 屈辱にまみれた彼女の顔。しかしその唇は、毅の足先を濡らし、ぬちゃぬちゃと口に含んでいた。

 恥辱に潤む意思の強い瞳。

 ……堪んねぇな。別の意味で煽るの上手すぎだろ、お前。

 毅は己の性癖を理解していた。相手を貶め、踏みにじり、徹底的に従わせたくなる凶暴な性癖を。
 一般的にサディストと呼ばれる部類なのだろうが、毅のは少し違う。ただ痛めつけて泣かせたいわけではない。それに興奮して悦ぶ相手と睦みたいのだ。
 もちろんお互いに情を持ち、信頼出来る情交を交わしたい。そこに調教というコアな遊びが入るが、それも受け入れてくれて、毅の支配欲を満たしてくれる奴隷が欲しい。
 
 そのために円香を優しく調教してきた。それこそまだ小学生のころから念入りに。いずれ、とことん可愛がって最愛の雌犬に仕上げたかった。
 だが、それとは別な欲望も彼の腹の奥に降りしきる。恋人の雌犬とは違う、虐げるだけの雌豚も飼ってみたいと。
 完全なペットだ。ペットとしての愛情くらいは持つかもしれないが、嬲り尽くして泣かせるための玩具。そういった奴隷も夢に見た。

 他にも、心から仕えて身も心も捧げてくれるような雌犬や、無惨な嗜虐な打ち震えて悦び、毅を愉しませてれる雌犬など、彼は幼い頃から妄想する。

 夢見るだけなら罪ではない。……が、ここに来て、それが叶ってしまった。最愛の円香を雌犬に出来つつある。
 不思議なことに、円香へ酷いことをしたいとは思わない毅。彼女は恥ずかしがって泣き叫ぶのが可愛いのだ。嫌がることを無理強いしてさせるのが楽しいのだ。……歪んでいるけど、これも愛だろう。

 そして今の毅には、好きに嬲れる奴隷達がいた。これを愉しまない手はないだろう。

 この馬鹿なゲームの間は、徹底的に躾けて弄んでくれるわ。

 にたりと眼を細め、毅は足先を捩じ込んだまま、七海の顔を踏みつける。
 口を一杯にされて鼻も塞がれ、あまりの息苦しさに悶えた七海の身体に、パタパタと赤い小花が咲いた。

「んぐぅぅーーーっ?! んんんーーっっ!!」

 それは揺れた蝋燭による洗礼。大量に溜まっていた溶けた蝋が、彼女の柔かな肌に降り注ぐ。

「くっくっくっ、あっはっはっはっ、だから、じっとしてろっていったじゃないか。バカな女♪」

 ベルトで固定された足は動かせない。揺れる蝋燭の蝋は、七海の腹や胸に真っ赤な花を次々と咲かせていく。
 恨めしげに毅を見上げる七海の眼。涙にまみれたソレに、ようやく毅はゾワゾワとした劣情をもよおした。
 許しを請うまでいたぶり尽くしてやりたいという劣情が。
 彼は七海の口から足を引き抜くと、新たな蝋燭を手に取る。しばらく放置されていた蝋燭には、たっぷりな蝋がたまっていた。

「ショータイムだ」

 淫靡な毅の雰囲気に、観客らが固唾を呑む。撮影用のドローンも忙しなく周囲を回っていた。
 うっそりと微笑む毅の手から、七海の胸元に蝋が垂らされる。焼けない程度の絶妙な高さから垂らされる蝋が、ボタボタと彼女の首筋を真っ赤に染めた。

「ひいいぃぃっ! 熱っ、熱いぃぃ!!」

「煩いな」

 毅は七海の口にボールギャグを噛ませ、足をねぶらせたことでテラテラな涎まみれの唇を指でなぞった。

「ここにピアスとかつけたいね。俺が針で穴を空けてさ。ゆっくり貫いて泣かせてやるよ?」

 残酷な毅の囁きに耳を凍らせた七海だが、何故か腹の奥が疼き、熱くなる。

 針で?! そんなことされたら、死んじゃうわっ!!

 脳裏に浮かぶ悲惨な光景。

 全身を拘束され、頭を押さえつけられてギャグを噛ませられる自分。
 その唇をなぞり、うっとりとした顔で毅が針を穿つ。

 ぶつっと突き刺されて.....

 そこまで考えた瞬間、七海のアソコがぎゅぅうううんっと大きく疼いた。

 熱い? なにこれっ?!

 股間を渦巻く謎な快感に、彼女は狼狽える。
 火照った腰を無意識に捩り、秘処から、じゅわっと蜜が湧きあがった。

 なんで? ぅぅぅっ、熱いぃぃっ!

 きゅんきゅん疼く子宮をもてあまし、七海は弱々しく身悶えた。
 それを余所に毅は用意していた蝋燭を移動して、七海の後ろに回る。

 こいつに遠慮はいらないしな。普段やれないことをさせてもらおうか。

 淫猥に光る毅の眼。このあと彼は奇跡の出会いを知る。


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