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 お題 玩具イキ

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『リクエスト』

 拘束椅子から円香を抱き上げ、そっと立たせていた毅の耳に見知らぬ声が聞こえた。

《おっと、今回のレース初のリクエストだーっ!! お題に沿ったモノならOKですっ!! さて、何が出るかっ?!》

 興奮気味なブギーマンの絶叫。

『少年の玩具イキに三本』

 音声を変えているのだろう。割れたような低い声がルームに響きわたる。

《これまた豪気だぁーっ! 玩具プレイに三百万来ましたぁーっ!》

 三百万っ?!

 ぎょっと毅が眼を見張った。八割持っていかれるとしても六十万。とんでもない大金だった。

《さて、どうする? 毅氏、受けますか?》

 リクエスト。毅の知らない未知のプレイだ。どうなるのか分からない。しかし.....

 毅は腕の中の円香を見つめる。

 コイツの分だけでも稼がないと。最悪、俺は売られても円香だけは助けたい。

 そのためには少しでも稼いでおかないと。

「受けるっ!」

『良い判断だ』

 変声された声が、うっそりと嗤ったような気がした。



『そう、それを使って扱くんだ。ゆっくりね』

 毅はX型の張りつけ板に拘束され、円香にオナホで責められていた。
 たっぷりのローションを含んだソレを動かし、円香は心配そうに毅を見上げる。

「大丈夫? 気持ち悦い?」

 じれったい動きを指示された円香は、言われた通りにことさらゆっくりと玩具を動かしていた。

 まどろこしい刺激に毅の顔が歪む。

 かれこれ十分以上悶絶する毅。滑る汗が火照った身体を冷やし、落ち着いた頃を狙って、また責められる。

「く.....っ、大丈夫.....、気持ち悦いよ、円香」

 両手両足を枷に繋がれ、毅はゾワゾワと毒のように沁み込む愉悦に溺れた。
 決して極まらせない、円香の動きを絶妙にコントロールする誰かの声。
 オナホに呑み込まれた毅の一物は、ガチガチなまま先走りを滴らせている。

『ああ..... 悦い顔だね。苦しいだろう? イキたいかね?』

 興奮気味に上ずった声。変声してあっても誤魔化せないほど、それはねぶり尽くすように卑猥ないやらしさを醸していた。

「.....ふっ、くぅ.....っ、んっ」

 ぬちぬち微かに動く玩具。堪えきれぬ呻きと汗が毅の顔に浮かんでいる。
 小刻みに痙攣する彼の両脚は、もはや立っているのがやっとな有り様だ。
 はらはら見守る円香は、毅がどうなっているのか分からないのだろう。
 ずくんっと腹の奥に溜まるだけの欲情。熱く蕩けた熱が、果てる事なく延々と毅を苦しめていく。

 相手の思惑は丸分かりだ。毅に懇願させたいのだろう。イカせてくれと。御願いしますと泣き叫ばせたいのだ。

 しかし、それはお題にもリクエストにも入ってはいない。

『強情だね。君、そこの棚からローターを出して。そう、その小さな丸い奴』

 声が用意させたのは遠隔式のピンクローターとガムテープ。
 円香に毅の前をはだけさせ、声の主はローターを胸の頂にガムテープで張りつけさせた。

「.....ぅ? ひっ?!」

 長い悶絶に虚ろだった毅が気づいた時は、もう遅く、ローターは十字に貼られたガムテープによって、ガッチリと張りつけられている。

『さて。もう一度聞こうか。イキたいかい? 素直になれば、オナホで気持ち悦くイカせてあげるよ?』

 何をされるのか覚った毅だが、ここまで来て後には引けない。
 周囲を回るドローンで毅の嬌態は丸見えなのだろう。
 毅はゼィゼィと熱い吐息を漏らしながら、挑発的に眉を跳ね上げた。
 含みきれぬ唾液が顎を伝うその姿は酷く扇情的で、涙に潤んだ眼差しも、観客の嗜虐心を派手に煽る。

『.....良い度胸だ。君、オナホを外しなさい。ゆっくりとだよ』

 言われて円香が毅のモノを呑み込んでいる玩具を外す。
 ぬちゅっと音をたてて解放された一物は、毅の腹につくほど熱く滾っていた。

「はっ、.....んっんん」

 苦しげに喘ぐ毅。

 その喘ぎが絶叫に変わる。

「………っ、ぅぁあああーーーっ!!」

 遠隔で操られるローターが、激しく毅を責めたてた。
 自分で触れたこともない頂を刺激され、今までの責め苦も手伝い、電流のような凄まじい快感が毅の全身を駆け巡る。

「ひぃぃっ! あっ、ああぁっ!!」

 ガチャガチャと枷を鳴らして暴れる毅。
 振り乱す頭から飛び散る汗の飛沫が円香にかかり、彼女はハッと顔をあげた。

「毅っ? ねぇっ、大丈夫?!」

「大.....丈夫ぅっっ、ひ.....っぁっ!」

 凄まじく感じはするが、達するには足りないもどかしさ。
 今にもイキそうな直前をキープして絶妙に振動を緩める声の主。

『悦い声だ。堪らないね、ほら、もっと啼いて?』

「ふあっ?! ぁっ、.....くぅぅぅっっ!!」

 ギンギンな猛りが、さらなる刺激を求めるが、それは与えられない。
 喉を仰け反らせて絶叫する毅の耳に、ブギーマンの声が聞こえた。

《タイムアーップッッ!! リクエストタイム三十分が終わりましたっ! 速やかに終了を願いますっ♪》

『良いところだったのに。また遊ぼうね』

 ふっと振動が消え、毅はがっくりと頽れた。

「毅ぃぃぃーっ!!」

 だらりと下がる毅を枷から外し、円香は必死に抱き締める。

「ごめんねっ、アタシの代わりに.....っ、ゴメン、毅っ!」

 ひゅーひゅーと息も絶え絶えなまま、毅は力無く笑う。

「いや.....、俺の.....自業自.....得。頼む..... 円香」

「なにっ? 何したら良いのっ?」

「抜いてくれ..... 動け…ない……」

 毅は小刻みに四肢を痙攣させている。ダラダラと滴る汗に加え、顎が笑って唾液を呑み込むことも出来ないようだった。
 その股間でガチガチに硬く滾る一物を見て、円香は躊躇いもせず即咥えた。
 半瞬もおかずに爆発する毅の一物に吸い付き、その一物が萎えるまで、円香は泣きながら毅を慰めた。

 丁寧な愛撫で精を吐き出し、三回ほど果てたあと、ようやく毅の身体から緊張が抜けていく。

 全身を弛緩させて、ぐったりと横たわる毅を膝枕し、流れるような汗で張り付いた髪を円香の指が優しく整えてくれた。

「助かった..... 死ぬかと思ったよ」

「毅ぃぃ.....っ、死んじゃ、やだぁぁぁ」

「いや言葉のあや。死なない、死なない」

 ルームが暗転し、ショーが終わる。

 ようよう解放された安堵で、毅は酷い睡魔に襲われた。

 あの野郎..... 半端ねーわ。

 声だけの指示で毅を地獄に突き落とした観客。そういった嗜好の玄人なのだろう。

『.....また遊ぼうね』

 ふざけんなっ、二度と御免だっ!!

 脳内で毒づく毅だが、この後もリクエストにつく多額の御布施に目が眩み、幾度となく観客にもて遊ばれる毅である。





「君、無茶しますねぇ。まさかリクエストを受けるとは」

「あんた、何でここにいんの?」

 じっとりと眼を据わらせる毅の前にはブギーマン。

 いつもの燕尾服を着た彼は、紅茶を片手にソファーで座っていた。

「わたくし主催者なので、どこの部屋もフリーパスです♪」

 ああ、そうかい。

 仏頂面で見下ろす毅に苦笑し、ブギーマンはソーサーをテーブルに置くと真面目な顔で毅を見た。仮面ごしだが。

「正直に申しましょう。貴方、彼女を守りすぎ」

「は?」

「他の奴隷の男性達は、とうに女性を犬扱いしてますよ。昨日のお題も凄いモノでした。虐げる事に目覚めてくれたようです」

 そういや自分達に夢中で他は見ていなかったな。

「かなりの観客の意識が君に向き過ぎててね。ぶっちゃけ、投げ銭が片寄りすぎてんですよね、今」

 ん? 今、変な事言われなかったか?

 首をかしげる毅に溜め息をつき、ブギーマンは改めて説明をする。

 円香がプレイに疎く、逆に毅はプレイを知っている感じに気づいた観客らは、円香を利用して毅を。毅を利用して円香を嬲るようになるだろうと。
 こういったプレイには際限がない。玩具イキひとつでも、昨日、毅は死ぬ目に合った。

「まだ初花だから、こんな緩さで済んでますけどね。花を散らして開通させたら、そこも使われますよ?」

 最初のお題で蹴られたフィストファックだって有り得ない事ではないのだ。

 毅は背筋を震わせる。

「君らが勝ち進むには彼女を雌犬にしないと。君が壊されたら、誰が彼女を守るんです?」

 円香は今風呂にいる。

 その隙をついて、毅にだけ話すためブギーマンはやってきたのだろう。

「観客の意識を彼女に集めなさい。君が肩代わりしてたら、立派な雌犬になれないでしょーが」

「円香は犬じゃないっ!」

「ここでは雌犬ですよ」

 怒りも顕な毅に、再び溜め息をつくブギーマン。

「とにかく。君が壊されたら困るんで、次からはなるべく彼女にやらせなさいね。リクエストも君系のは蹴るように」

 それでは。と、帽子をかぶり、彼は出ていった。

 円香を犬にだと? 冗談じゃないっ!!

 憤慨する毅だが、後日この認識を改めさせられる事になる。
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