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 産卵との遭遇 4

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「……この子、女の子の可能性もあるよね?」

「あるね。産まれてみないと分からないけどさ」

 こちらの方が先に定着していたらしく、拙い千里の知識から考えると今は妊娠六ヶ月くらい。十月十日とはいうが、実際には九ヶ月ちょいで人間の子供は産まれる。
 遺伝子という考えがあるあたり、オウチの技術は低くない。そこに魔法や錬金術まで加わるのだ。地球人の感性からすると、出来ないことはないように思える。
 そう考えた千里がショーンに尋ねてみたところ、彼は驚愕の事実を語った。

「遺伝子とか、俺らは概念しか知らないよ? 要は血を繋ぐ何かだろう? それが濃くなりすぎると良くないとか? 過去の渡り人らが遺した知識に過ぎないしね」

 てへっ? っと両肩を竦めるショーン。

 そういうことかぁぁーっ!! う~っ、ヤバいな。

 千里は絶望的な顔で天を振り仰いだ。

 妊娠、出産は命懸けである。それに他者の手助けを望めない今の状況。聞けば、女性の出産は各家で行う。夫達の介助で生み育てるのだ。
 王侯貴族にだけ許された贅沢。稀に平民でもあるらしいが、本当に極稀で、多くの医師は女性を見たこともない。
 治癒が蔓延しているため、その医学というのも粗末なものだ。基本、治癒で癒せない病などに特化したモノ。
 それだけでお察しだろう。病原体という概念もないし、衛生観念もない。それを知らないから、治癒で病は癒せない。

 ……殺菌はアルコールでやれたよね? 灰にもあったな。あとは…… うわああぁぁっ! 大変だよ、これはーっ!!

 現代日本でも自宅出産をする人はいたが、それはあくまでも医師の監修があってのことだ。素人では危険極まりない。
 しかし、ほんの百年も前はどこだって自宅で産んでいたのだ。やれないことはないだろうと、千里は己を奮い立たせた。
 そんな彼女の悲壮な決心も知らず、ショーンはたまに動く滑らかなお腹を撫で回す。

「ここに俺の子が…… うん、俺も育てるから。一緒に頑張ろうな」

 にぱーっと笑う狐が悪魔に見える。

 周囲には培養液の入った瓶に詰められたスライムの肉片の山。飼われているらしい親スライムが、仕事は終わったとばかりに飼育ケースへ戻っていく。

 ……これに驚かないあたり、アタシも慣れちゃったなぁ。

 呆れ笑顔で夫を眺める千里は忘れていた。出産より先にやってくる産卵のことを。



「にゃああぁぁーっ!! 痛い、痛い、痛いぃぃーっ!!」

「大丈夫っ! 落ち着け、もう出てくるっ!!」

「チイ、チイ、こっち向いて? ほら、舐めてあげるからっ!!」

「痛いな? 筋弛緩剤は用意してあるからっ!」

 すんすん鼻面を鳴らして千里を宥めるショーンとヒュー。なるべく薬を使いたくはないという彼らだが、やはり千里は小さすぎるからと用意された。

「使うか? なあ? もう見てられないぞっ?!」

 焦燥感を隠しもせず、ヒューが注射器片手にラウルを振り返る。
 それに力なく首を振って、千里が歯を食いしばった。彼女が自由にいきめるようにとショーンが用意してくれた硬めのマウスピースを咥えて。
 産卵経験者な彼は、自分の時に欲しかった物をあれもこれもと千里に与える。

「……ひひゃない。ひょほふぁふぁ…… うく……っ」

「なんて……?」

 呂律の回らない千里の言葉はマウスピースに阻害され、ラウルには聞き取れなかった。だが、彼女を抱き締めているショーンは、しっかり聞こえた。

「いらないって。このまま……って言ってる」

 涙目でコクコク頷く千里。

「無理すんなよっ?! 壊れそうじゃないかっ! 使うぞっ!」

 半狂乱になって叫ぶヒュー。

 産婦より狼狽え、暴れるヒューを片手で押えつけ、ラウルは降りてくる卵を受け止めた。途端に弛緩し、千里が意識を失う。
 緊張の糸が切れたのだろう。くたりと溶けるように崩折れた彼女を抱きしめたまま、ショーンも無我夢中で細い身体を掻き抱いた。

「もう…… もう、良い。もう沢山だ。俺がいくらでも産むから、もうチイに産ませないで」

「……俺からも頼むよ。無理だ、こんな小さな身体に産ませるなんて。ほんとにチイが壊れるんじゃないかと…… チイは子供だって産めるんだし、卵はなしにしようや」

「同感だ。……チイと睦む時は受胎スライムを殺そう」

 普段なら受胎スライムを殺すなっと怒鳴っているショーンすら全力でラウルの言葉に頷いていた。……が、それは逆を言えば、彼女の中のスライムを突き殺すほど激しく睦むということ。
 排泄の処理を夫達にやらせたくない千里にスライムを挿れない選択肢はなく、この後、なし崩し的に四人での乱交が始まることとなる。



「……だからぁっ! 俺に挿れんなってっ! ひあっ?!」

「チイのためだ、我慢しろ。それに、お前はもう子供が出来てるじゃないか。きっと良い子だぞ? お前みたいに……なっ!」

 千里に捩じ込みながらラウルにも捩じ込まれ、ショーンは前と後との責めに喘ぐ。ショーンの御立派様に絡まる彼女の熱い柔肉。その肉壁一枚を隔てて、蠢く猛りが、さらにショーンの一物を刺激した。

「スライムを殺さないとな。チイ? もっと動かすぞ?」

 ガンガン後孔を突き上げられ、千里も身悶える。前と後ろではしたないお汁が飛び散り、高みを目指して彼女を追い詰めてきた。
 すでに何度も精を放たれた体内は静かなもので、どちゅ、ばちゅと濡れた音をたてて引きずり出される一物にはスライムの残骸が絡まっている。

「も……っ、あうっ! も、死んで……っ、ひゃあんっ!」

「念には念をだよ…… ああ、気持ち悦いなぁぁっ!」
 
 夢中で貪る兄貴達に挾まれ、妻二人は揺すぶられるまま佳がり狂った。
 この四人で並ぶ性交がお気に入りの兄二人。背後からショーンと千里のうなじに噛みつき、彼等は蕩けた吐息を荒らげる。
 じわりと食込む鋭い牙。それがプツっと皮膚を食い破った瞬間、間に挟まれた二人が絶叫にも似た嬌声をあげた。

「イぐ、イ…ぃぃっ! あああぁぁーっ!!」

「痛っ! 痛いっ! まっ…っ! ひゃああぁぁぁっ!!」

 泣き叫んで身悶える獲物の艶姿。その涙すら甘く、捕食者二人は舐るように妻らのうなじに滲んだ血をすする。

「イったなぁ……? はは、なんて可愛い弟だ。中がぎゅんぎゅん締まっているぞ?」

「こっちもだ。ショーンの弾けた熱さが伝わってきたぜ。すっげぇ脈打ってる。まだ出してるな? チイも…… トロトロじゃん。まるで呼吸するみたいに俺のを呑み込んで…… かあぁぁーっ、堪らんっ!!」

 それぞれが繋がり、感覚すら共有する深く淫猥な睦み。千里の甘露な匂いも手伝い、興奮したケダモノ達の行為は止まらない。

 毎夜激しく睦む仲良し家族。

 字面は微笑ましく見えるのに、その中身は凄絶だ。

 そして彼等は思い知らされる。

 産卵を越える、出産の恐ろしさを。
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