7 / 31
7 藤枝類
しおりを挟む「凛音くん?」
「えっ?」
記憶の中では『来栖』と彫られた表札がかけられていたはずの玄関のポストの上には、今は別の名前の表札がかかっていた。
呆然と立ち尽くしていたら、玄関があいて、中から顔を出した男の子が凛音の顔を見て目を輝かせる。
「遊びにきたのか!?」
「……ここ、類くんの家なの?」
藤枝類。
昨日、ちょうど母との話の中で話題になった友達が出てきたものだから、凛音はびっくりする。
「うん! あれ、知らなかったっけ?」
類とは仲がよかったけど、帰る方向がいつも別々だから、家までは来たことはなかった。
「……類くん、いつからここに住んでるの?」
ここは来栖リンネの家だったはずだ。
いま現在、類が住んでいるということは、来栖一家は、どこか別のところに引っ越したということになる。
「えーと、オレが一歳の時、とかママが言ってたかな? なんで?」
「いや、えっと、大きな家だなと思って……」
「うん! 犬を飼ってるんだ。見るか?」
答えにはなっていない気がしたが適当にごまかすと、類は特に疑うこともなく、犬の話を持ち出した。
家の中に入れてもらえるチャンスだ。
凛音が頷くと、庭に案内される。
芝生の敷き詰められた広い庭の片隅には、白い犬小屋があった。
「てぃーいーえぬ?」
犬小屋の入り口には、木製のアルファベットの文字がくっつけられている。
TEN……テン?
「あ、それ、前に住んでた人の犬の名前みたいだよ。ここ、ちゅーこ? の家を買い取ったみたいだからさ。オレの犬の名前はジョンね!」
「へぇ……うわぁっ!」
「ワン!」
茶色と白が入り混じった模様の犬がいきなり飛びかかってきた。
「こら、お客さんをびっくりさせちゃダメだろ、ジョン」
犬はすぐに引き剥がされたが、落ち着かない様子で、元気にぐるぐるとその場を回っている。
「……コーギー? だっけ?」
「うん。ちょうどいま、お散歩につれていくところだったからさ。待ちきれないみたい。暇なら、一緒に行かない?」
「……うん」
とりあえず断る理由が見つからなかったので、凛音はなりゆきのままついていくことにした。
今日は曇っていて少しだけ涼しい。
大通りの横の並木道を、二人と一匹はゆっくりと歩いて行く。
「夏休みの課題、凛音くんはなに選んだんだっけ?」
「あー……絵、だったかな」
夏休みは、学年全員共通の問題集と日記とは別に、学校によってリストアップされたコンクールの中のどれかに応募しなければいけないことになっている。
コンクールのラインナップは、絵とか貯金箱とか習字とか読書感想文とか様々だ。
「もう描いた?」
「まだ……」
というか、夏休みが始まって三日目に行ったプールで前世の記憶を取り戻すという大事件が発生してしまったため、課題のことなどすっかり忘れていた。
「オレさぁ、貯金箱作るやつ選んだんだけど、全然いいアイデアが浮かばなくてさ」
「普通に箱にお金を入れるための穴をあけて、『貯金箱』って書けばいいんじゃないの?」
きょとんとしながら答えたら、類にじろりと睨まれた。
「そんなのダサいだろ!?」
「そう、かな……?」
いやよく考えたらダサいかも。
でも、学校の宿題なんだし、どうせ受賞とか無理だし、適当でもいいんじゃないかと、指先があまり器用ではない凛音は思ってしまったのだ。
「オレだってさ、最初は別にそんな凝ったやつを作るつもりはなかったんだよ。デザインがカッコよければいいかな、と思ってたぐらい。でもさ、ネットで過去の受賞作を見てみたら、めちゃくちゃすごい仕掛けのやつばっかりで! 普通じゃダメだと思ったんだよ!」
「へぇ……」
「だからオレももっと、みんなをアッと驚かせるようなやつを作ろうと思ったんだけど、過去の受賞作のパクリはダメだっていうし、難しい仕掛けとかはそもそもなにがどうなってるのかわからないし、悩んでんだよ」
類の熱弁を聞きながら、凛音は、先を歩く犬を眺めていた。
リンネが生きていた頃、あんな犬小屋はなかった。
犬も飼っていなかった。
リンネが死んだあとに犬を飼ったということだろうか。
そしてあの家を手放したということは、リンネの両親はもうこの街のどこにもいないということだろうか。
どこに行ってしまったのだろう。
もう会えないのだろうか?
リンネが死んでから十年の間、この街ではなにが起こっていたのだろう。
「凛音くん?」
ずっと黙り込んだままの凛音を不審に思ったのか、類が顔を覗き込んでくる。
「あっ……ごめん。暑くて頭がぼうっとしちゃって……」
「大丈夫? ねっちゅーしょーってやつかな?」
「……ジョンもバテてきてるみたいだけど、大丈夫?」
よく見ると凛音よりも、犬の方がよっぽどやばそうだ。
最初はあんなに行く気満々で意気揚々と歩いていたのに、雲が晴れて日の光が強くなってきたあたりからだんだんスピードが遅くなってきて、ついには道の端に座り込んでしまっている。
「あー……コーギーって、脚が短いから暑さに弱いみたいなんだよな」
仕方なさそうな様子で、類は犬を抱えて、近くにあった公園のベンチに移動した。
「脚が短いのと暑さに弱いのって、関係あるの?」
「ほら、地面に近い位置を歩くことになるから、地面の熱を感じやすいだろ?」
「なるほど」
人間は靴を履いているので地面の熱さを直接感じることはあまりないが、裸足で歩く犬はダイレクトに太陽で熱せられた地面の熱さを受けることになる。
犬どころか動物もまったく飼ったことのない凛音はようやく納得した。
マンションの脇に作られた公園は小さいものの滑り台もブランコも砂場もあったが、今は誰も遊んでいない。
ベンチのところには日陰ができていて、休憩するのにはちょうどよかった。
水筒を首にぶら下げてきていた類は、勢いよく水筒の中身をゴクゴクと飲んでいる。
「飲む?」
水筒が差し出される。
「あ、うん……ありがとう」
直接口をつけるタイプの水筒だ。
凛音は若干ためらったが、類は気にしていない様子だったので、ありがたく飲ませてもらうことにした。
水筒を持ってこなかったことを後悔するぐらいには、喉がカラカラになっていたためである。
(類くんってちょっと、シュウちゃんに似てるよね)
今の愁はどうだかわからないが、昔の愁はわりとこんな感じだった。顔は全然似てないけど。
相手が女の子であることも気にせず、凛音に飲みかけの飲み物を渡すタイプであった。
それから、愁も夏休みの課題の工作に気合いを入れていた。
(シュウちゃんは確か一年生の時、ダンボールで恐竜を作ってたっけ?)
「……恐竜とか、いいんじゃないかな」
「なにが?」
「貯金箱」
「おっ、それは新しいかもな」
「口からお金を入れる感じで……口の部分が閉じたり開いたりすればおもしろいんじゃないかな」
「凛音くん……もしかして天才か?」
茶色がかった大きな目が、キラキラ輝きながらこちらを見つめてくる。
そのまっすぐさに、凛音は若干たじろいだ。
「い、いや……なんとなく、いま思いついただけなんだけど……」
「よーし、決めた! それにしよ! 素材は牛乳パックで……色画用紙を貼り付ければいいかな?」
「フェルトとか、紙粘土をくっつけてもいいかも」
リンネだった頃の夏休みの課題で、そんな感じの貯金箱を作っている子がいた気がする。
「確かに! そっちの方が手が込んでるっぽく見えるかもな! 今度100均で材料探しに行こ! 凛音くんも一緒に作ろうぜ!」
「え……僕も?」
「応募用紙は持ってるだろ?」
基本的に最低一つ以上のコンクールに応募しなければいけない決まりになっているが、別のコンクールにも複数応募していいことにもなっている。
夏休みが始まる前に、まとめて大量に渡されたプリントの中に、貯金箱コンクールの応募用紙も入っていたはずだ。
「いいけど……」
「とりあえず今日はオレ、午後からスイミングもあるし、買い物に行くのは明日でいいかな?」
「そ、そのスイミングのことなんだけど……!」
類のペースに呑まれて言い出しそこねていたが、ようやくその話題ができそうなタイミングがやってきて、凛音は勢いよく食いつく。
「森倉、って先生いるの、知ってる……?」
「森倉? あー、あれだろ、ジュニアオリンピックに出てたっていう、めちゃくちゃ上手い人だろ?」
「オリンピック!?」
「オリンピックっていってもあれだよ、テレビに出てくるような世界の大会じゃなくて、日本の中の優秀な選手同士で競い合う? ような感じのやつだって。……ほら、『森倉選手を輩出したスイミングスクール!』ってチラシに載ってたの、見たことないか? 幼稚園でも配ってただろ」
「……覚えてない」
スイミングスクールのチラシは他のお手紙とまとめて渡されていたような気がするが、そういったものはたいてい母はチェックしていて、詳しい内容まで見たことはなかった。
「練習にはよく来てるみたいだけど、オレは直接教えてもらったことないかな。たまに高学年ぐらいのクラスを教えてるっていうのは聞いたことあるけど、時間帯が違うから」
「そっか……」
「なに? 知り合いか?」
「えっと、命の恩人? かな」
先日、市民プールで溺れて死にかけて助けてもらったという顛末を話すと、類はぽかんとしていた。
「えっ、大丈夫なのか!?」
「あ、うん……すぐに息を吹き返したから……」
「溺れたあと、次の日に死ぬやつもいるらしいぞ。気をつけろよ」
「そうなの?」
「二次……できすい? とかママが言ってた気がする。だから、もし溺れることがあったら、救助されたあとも気を抜くなって」
「さすがに三日たってるから、もう大丈夫だと思うけど」
「でも、森倉選手が監視員に入ってる時でよかったかもな。きっと、助けるのもすんげー早かったんだろ?」
「わかんないけど、多分、ラッキーだったよ」
昨日、宮城だかのプールで八歳の女の子が水死したというニュースもやっていた。
監視員がいても、子供が溺れたことにすぐに気づかないケースも少なくはないのだ。
(よかった。シュウちゃんに二度も『助けられなかった』という絶望を味あわせずにすんで)
「凛音くんもスイミングスクール通ったらどうだ? また溺れないように!」
「そ、そうだよね……!? やっぱり僕も行った方がいいよね!? ちょうど昨日、お母さんに相談してたとこだったんだ!」
それについて相談しようとしていたところ、類の方から話を振られて、凛音のテンションがついつい上がる。
「そういや今、紹介キャンペーン? とかやってた気がする。うちのママに聞いてみようか?」
「うん! お願い!」
「うちのクラスでスイミングスクール通ってるのオレだけだから、凛音くんがきてくれたらオレも嬉しいな!」
「そうなんだ? 幼稚園の時、他にも誰か通ってなかったっけ?」
「隣のクラスのやつが一人続けてるけどな、あとはみんな辞めちゃったぜ。なんか、別の習い事するとかで」
類はふてくされたように頬を膨らませている。
「そっか……」
小学生になるとサッカーとか野球を始める子もいるし、みんないろいろあるのだろう。
凛音も、幼稚園の頃に習っていたピアノをやめた経験があるので、あまり他人のことを言えた立場ではない。
「あっ、そろそろ帰ろうか。ジョンが帰りたそうにしてる」
公園に入ってからは足元の日陰でのんびりとくつろいでいたコーギーだが、飽きたのか、あるいはお腹がすいてきたのか、『動け』と言わんばかりに首輪に繋がる紐を引っ張って、類になにかアピールしている。
「明日、十時に待ち合わせでも大丈夫そう?」
「うん。類くんの家に行けばいいかな?」
「それだと凛音くんの家からはちょっと遠回りになるだろ。学校の隣のコンビニで待ち合わせしようぜ」
ついでにこの場所からだと、一度類の家に戻ってから帰るよりも、直接自分の家に向かった方が近い。
「明日は犬の散歩はいいの?」
「いつもはもっと早起きして、涼しい時間に行ってんの! 今日は寝坊したからこの時間になっただけ。暑いのしんどいから、明日は早起きできるようにがんばる」
げんなりした様子の類に、凛音はクスクスと笑った。
「じゃあまた明日」
「おう」
元気な犬に引っ張られるかたちで、類は帰って行った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
ループももう17回目なので恋心を捨てて狼を愛でてスローライフを送りたい
箱根ハコ
BL
怪物シュタインを倒そうとした勇者パーティの補助系魔術師ルカスはシュタインを倒そうとして逆に殺された瞬間、2年前の魔術学校の生徒だった頃に戻された。そうして16回、学生からシュタインに殺されるまでの2年間を繰り返しついにパーティ全員生存ルートにたどり着くことができた。更には愛する相手であり、何度も振られてしまったレオンの幸せを祈り、彼の幼馴染であるエミリアとレオンの結婚式にまでこぎ着けた。これ以上はない最高のハッピーエンドだと越に入っていたルカスだったが、またも時間が巻き戻され17回目のループに突入してしまう。
そうして彼は決心した。レオンの幸せを願って成就したのにループから抜け出せなかったのだから自分の幸せを求めて生きていこう、と。そんな時に一匹の狼と出会い、彼とともにスローライフを送りたいと願うようになったが……。
無口系剣士☓一途な補助魔術師のループBLです。
「小説家になろう」にも投稿しています。
以下、地雷になるかもしれない事柄一覧
冒頭で攻めが別の女性と結婚します。
流血表現があります。
こちらのお話のスピンオフを開始しました。
興味ある方がいらっしゃいましたらよければどうぞ!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/461376502/980883745

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる