悪役令息に転生しましたが、なんだか弟の様子がおかしいです

ひよ

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6,兄として

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2日間も寝ていたから、トイレへ向かう足がおぼつかない。

フラフラである。

この姿をレイに見られたら「だから言ったじゃないですか!」なんて言われながら介護されそうだと思いながら、トイレを終え、部屋に向かう。


「……っう………うぅ…ぐすっ」


そんなことを考えながら廊下を歩いていると、ある部屋の扉から呻くような、すすり泣くような音が微かに聞こえた。


夜中の屋敷は真っ暗で薄気味悪い。
まさか、幽霊だったりしないよな…それか、泥棒か?


僕は気になり、恐る恐るその部屋へと入る

カチャリ

中にはいると、音がはっきりと聞こえ、音の源はこの部屋で間違いないと確信する

しかしここはゲストルームか?暗くてよく見えないな…


「誰かいるのか?」

手持ちのランプで照らしながら、ゆっくりと音のする方へと進む。

するとどうやらベッドの方から聞こえるようだった。

「ぐすっ………ぅっ…」
泣いているのか?誰だそこにいるのは、

ベッドにいる人物は、シーツに顔ごとくるまるようにしているせいか誰だかわからない。

「大丈夫か」
僕はシーツを恐る恐るはがした



「っ!…お前は………」

すると、そこにはルークが眠っていた。

なぜここに、

そう言いかけたが、ランプで照らしているベッドが子供用であることに気がつく。
あぁ、ここがルークの部屋なのか。

「ぅう………ぐす…」
しかしすごく悪い夢でも見ているみたいだ。涙まで流してとてもうなされている。

「かわいそうに…」

震えながらすすり泣くルークに、
僕は自然と手を伸ばした。

そしてその涙を拭う。




ぱしっ──


すると、その手をルークから掴まれた。

「えっ?」

突然のことに驚く。起こしてしまったのだろうか?そう思い顔をのぞくが、そうではないようだ。

掴まれた手を解こうとしたとき、



「いかないでっ」

とても強く引き止めるようにルークが言った。
そしてまた、声を押し殺すかのようにすすり泣くルーク。



とても辛そうな、誰かにすがるようなそんな声だった。とまらないルークの涙を見て、僕は思わずその手を握り返した。
小刻みに震えている手をぎゅっと包む。



すぐに折れてしまいそうなほど細い手。

乙女ゲームの情報だと3歳の頃に公爵家に来たはずだ。
しかし3歳児にしては小さすぎる手に、やはりきちんと育ててもらえてなかったのだと実感する。

3歳の子供にとって母親とはなくてはならない存在であり、自分を守ってくれる大切な人である。
その人から見捨てられ、ルークはただ一人で耐え生きてきた。

この小さな体でどのくらい我慢してきたのか。
この小さな心の中にどれほどの悲しみが詰まっているのか。

僕には分からない。


しかし
この温かい手が、この子は人間なのだと、ゲームの中ではないを生きる人物なのだと、そう感じる。



"必要最低限は関わるが深くは関わらない方向で行こう。“
ヤンデレキャラであるルークが怖いからと、極力かかわらないようにしようとしていた自分が憎い。


僕がしようとしていたことは、この子の心の叫びを無視する行為であった。

この子は誰かの愛情を求めている。。
夢の中ですら誰にも愛してもらえないほど、苦しんでいるのだ


前言撤回だ。
ルークに優しくしよう。



ルークに兄として、めいいっぱい愛情をあげよう。
ルークが要らないっていうくらいあげよう。
一人で寂しくないように。
そして夢の中でも泣かないですむように。




「どこにも行かない。お兄ちゃんがこれから、守ってあげるからな。」

僕はそっと銀髪のきれいな髪をなでる。




すると、にへらと幸せそうにルークは笑った。










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次からお話が展開していきます!
少し文がだらだらとしてしまい、ここまで長くかかってしまいました。。
読んでくださりありがとうございます!

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