20 / 22
本編
20 (完)
しおりを挟む
今日は結婚式当日。番、契約、入籍を済ませ、ようやく2人はここまでたどり着いた。
列席者は希の家族と霞の親族、2人の友達。そしてプレイバーのマスターやアキラにもダメ元で招待状を出したが、2人とも駆けつけて来てくれた。
マスターは希のことも霞のことも心配していて、まるで子供のように思っていた、と語っていた。アキラは「そりゃ首輪も指輪も作った2人の門出は見るしかないじゃん?あ、店番は弟に任せてきた」だそうだ。後で調べたら、結構関わったカップルの結婚式に列席しているらしい。
霞はタキシードを、そして希は純白のウエディングドレスを着ることにしていた。こういう機会は他にないからと、希が希望したのである。好奇心旺盛なのは元々だ。着てみたら思った以上に歩きにくかったのは計算外だったが、それ以上に嬉しい気持ちが勝った。
式前に霞に見せたら「なんでそんなに似合うんですか…!」と天を仰がれた。「うーん…プロポーションがいいから?」と言ったら軽くはたかれた。実際、式の後誰もが花嫁衣裳に身を包んだ希はまるで天使のように見えたと口を揃えて言っていた。
式場に入る前に、母がベールダウンをする。2人とも無言だったが、母は新しい門出を祝福するように涙をその目に湛えつつも微笑んでいた。
それから両親と共にバージンロードを歩く。ΩSubとして生まれ、霞と出会い、そして想いを通じ合わせるまでの道のりを噛み締めながら、1歩1歩霞のもとへと近づき、たどり着いて、両親から霞へと希が受け渡される。
祈りの言葉が述べられ、いよいよ牧師からの問いかけが始まった。
「霞さん、あなたはここにいる希さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います…!」
「希さん、あなたはここにいる霞さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
希は息を吸うと、はっきりと「誓います」と答えた。
霞の母親が泣く声が聞こえる。どうも彼女は特に涙脆いようで、この前もウエディングドレスを見せて初めて「お義母さん」と呼んだら号泣させてしまった。
次は指輪交換だ。震える手で霞が牧師から指輪を受け取り、希の左の薬指にはめる。希も霞の手を取り、希よりいくらか小さい手に指輪をはめた。
プラチナで出来た指輪には波打つような花と若草のレリーフが彫られている。指輪選びには首輪以上に苦労して、最終的にお互いをイメージしたデザインにした。首輪ができてすぐに契約を済ませ、その時にゴールドのシンプルなペアリングも作ったのだが、この指輪を頼めるようになるまではと、結婚式は先延ばしにしていたのだ。
ペアリングに並んで、その指輪が光る。
それから霞がベールを上げる。予想していた通り今にも涙が溢れそうだ。
希は少しかがみ、霞のキスをそっと唇で受け止めた。
(完)
列席者は希の家族と霞の親族、2人の友達。そしてプレイバーのマスターやアキラにもダメ元で招待状を出したが、2人とも駆けつけて来てくれた。
マスターは希のことも霞のことも心配していて、まるで子供のように思っていた、と語っていた。アキラは「そりゃ首輪も指輪も作った2人の門出は見るしかないじゃん?あ、店番は弟に任せてきた」だそうだ。後で調べたら、結構関わったカップルの結婚式に列席しているらしい。
霞はタキシードを、そして希は純白のウエディングドレスを着ることにしていた。こういう機会は他にないからと、希が希望したのである。好奇心旺盛なのは元々だ。着てみたら思った以上に歩きにくかったのは計算外だったが、それ以上に嬉しい気持ちが勝った。
式前に霞に見せたら「なんでそんなに似合うんですか…!」と天を仰がれた。「うーん…プロポーションがいいから?」と言ったら軽くはたかれた。実際、式の後誰もが花嫁衣裳に身を包んだ希はまるで天使のように見えたと口を揃えて言っていた。
式場に入る前に、母がベールダウンをする。2人とも無言だったが、母は新しい門出を祝福するように涙をその目に湛えつつも微笑んでいた。
それから両親と共にバージンロードを歩く。ΩSubとして生まれ、霞と出会い、そして想いを通じ合わせるまでの道のりを噛み締めながら、1歩1歩霞のもとへと近づき、たどり着いて、両親から霞へと希が受け渡される。
祈りの言葉が述べられ、いよいよ牧師からの問いかけが始まった。
「霞さん、あなたはここにいる希さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「誓います…!」
「希さん、あなたはここにいる霞さんを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
希は息を吸うと、はっきりと「誓います」と答えた。
霞の母親が泣く声が聞こえる。どうも彼女は特に涙脆いようで、この前もウエディングドレスを見せて初めて「お義母さん」と呼んだら号泣させてしまった。
次は指輪交換だ。震える手で霞が牧師から指輪を受け取り、希の左の薬指にはめる。希も霞の手を取り、希よりいくらか小さい手に指輪をはめた。
プラチナで出来た指輪には波打つような花と若草のレリーフが彫られている。指輪選びには首輪以上に苦労して、最終的にお互いをイメージしたデザインにした。首輪ができてすぐに契約を済ませ、その時にゴールドのシンプルなペアリングも作ったのだが、この指輪を頼めるようになるまではと、結婚式は先延ばしにしていたのだ。
ペアリングに並んで、その指輪が光る。
それから霞がベールを上げる。予想していた通り今にも涙が溢れそうだ。
希は少しかがみ、霞のキスをそっと唇で受け止めた。
(完)
1
お気に入りに追加
52
あなたにおすすめの小説
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
不器用Subが甘やかしDomにとろとろにされるまで
もものみ
BL
【Dom/Subの創作BL小説です】
R-18描写があります。
地雷の方はお気をつけて。
タイトルがあらすじみたいなものです。
以下にあらすじを載せておきます。もっと短く内容を知りたい方は一番下までスクロールしてください。
Sub性のサラリーマン、葵(あおい)はある日会社の健康診断に引っかかってしまい病院を訪れる。そこで医師から告げられた診断は『ダイナミクス関連のホルモンバランスの乱れ』。医師からはパートナーを作ることを勧められた。葵はここのところプレイを疎かにしており確かに無視できない体調不良を感じていた。
しかし葵は過去にトラウマがあり、今はとてもパートナーを作るような気分にはなれなかった。そこで葵が利用したのがDomとSub専用のマッチングアプリ。葵は仕方なしにマッチングアプリに書き込む。
『27歳、男性、Sub。男女どちらでもかまいません、Domの方とプレイ希望です。』
完結なメッセージ。葵は体調さえ改善できれば何だってよかった。そんかメッセージに反応した一件のリプライ。
『28歳、男性、Dom
よろしければ△△時に〇〇ホテル×××号室で会いませんか?』
葵はそのメッセージの相手に会いに行くことにした。指定された高級ホテルに行ってみると、そこにいたのは長身で甘い顔立ちの男性だった。男は葵を歓迎し、プレイについて丁寧に確認し、プレイに入る。そこで葵を待っていたのは、甘い、甘い、葵の知らない、行為だった。
ーーーーーーーーー
マッチングアプリでの出会いをきっかけに、過去にトラウマのある不器用で甘え下手なSubが、Subを甘やかすのが大好きな包容力のあるDomにとろとろに甘やかされることになるお話です。
溺愛ものがお好きな方は是非読んでみてください。
腕の噛み傷うなじの噛み傷
Kyrie
BL
オメガだった僕。アルファだった彼。
*
表紙 晶之助さん https://twitter.com/s_nosuke_oekaki
pixiv https://www.pixiv.net/member.php?id=16855296
*
オメガバースの設定を自己流にアレンジ。
他のサイトで短編として発表した作品を大幅に加筆修正しています。
他サイト掲載。
お世話したいαしか勝たん!
沙耶
BL
神崎斗真はオメガである。総合病院でオメガ科の医師として働くうちに、ヒートが悪化。次のヒートは抑制剤無しで迎えなさいと言われてしまった。
悩んでいるときに相談に乗ってくれたα、立花優翔が、「俺と一緒にヒートを過ごさない?」と言ってくれた…?
優しい彼に乗せられて一緒に過ごすことになったけど、彼はΩをお世話したい系αだった?!
※完結設定にしていますが、番外編を突如として投稿することがございます。ご了承ください。
敏感リーマンは大型ワンコをうちの子にしたい
おもちDX
BL
社畜のサラリーマン柊(ひいらぎ)はある日、ヘッドマッサージの勧誘にあう。怪しいマッサージかと疑いながらもついて行くと、待っていたのは――極上の癒し体験だった。柊は担当であるイケメンセラピスト夕里(ゆり)の技術に惚れ込むが、彼はもう店を辞めるという。柊はなんとか夕里を引き止めたいが、通ううちに自分の痴態を知ってしまった。ただのマッサージなのに敏感体質で喘ぐ柊に、夕里の様子がおかしくなってきて……?
敏感すぎるリーマンが、大型犬属性のセラピストを癒し、癒され、懐かれ、蕩かされるお話。
心に傷を抱えたセラピスト(27)×疲れてボロボロのサラリーマン(30)
現代物。年下攻め。ノンケ受け。
※表紙のイラスト(攻め)はPicrewの「人間(男)メーカー(仮)」で作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる