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#6 悩める二人
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歩くのを再開した二人。ゆっくり山を下りていく。
「そういえば、ハンカチを落としたって言っていたけど、元々一人で山へ来たのかい?」
「はい。自然が大好きでして……。ずっと、自然と触れ合って生きていきたいのですが……」
ユアの表情に何かを感じ取ったユージ。
「人生に悩んでいるみたいだね」
「!」
「実は僕も悩んでいてね……こうして自由に過ごせるのも今だけなんだ……」
その言葉にはっとするユア。
「マルーン様の跡を継がれる……ということでしょうか!?」
「ううん。それはまだなんだけど」
(違った……)
少し自信たっぷりな表情で言ったため、少し恥ずかしくなったユアだが、すぐに別のことに気づいた。
「ご結婚……でしょうか!」
「そうなんだ」
「わぁ……! おめでとうございます!」
「ありがとう」
自然と出た祝いの言葉に心がざわつくユア。
(……ユージ様は最近18歳になられたから…………)
この国の王子は18歳から結婚することが可能である。もちろん自由恋愛ではなく、決められた婚約者がいる。
(ユージ様の婚約者は結婚するまで私たちには明かされないようだけれど……どのようなお方がお相手なのかしら……)
ユージの婚約者のことを考えながら、胸が気持ち悪い感覚におそわれていく。
(このもやもやした胸の感覚は何かしら……気持ち悪い……)
そんなユアの耳に、意外な言葉が入ってきた。
「おめでたいことなんだろうけど……当の本人はあまり嬉しくないんだよね」
「!? …………そうなのですか……?」
「うん……って、こんなこと言っちゃダメだよね。はぁ~……本当に僕は……最低だ……」
「……それは……お相手の方と……あまり仲がよろしくないのでしょうか……?」
そう口にした後、聞いてはいけないことを聞いているのではと感じたユア。とっさに訂正する。
「っ 申し訳ございません! 個人的なことをお尋ねしてしまいました……失礼いたしました……っ」
「ううん、謝らないで。聞いてくれて構わないよ。王太子である男が最低なことを口にしたんだ。不信に思って当然だよ」
「不信だなんてっ……思っておりません!」
ユージは少しの沈黙の後、ユアの目を見て口を開いた。
「実は……婚約者のことを僕はまだ何も知らないんだ」
「…………えっ…………??」
「そういえば、ハンカチを落としたって言っていたけど、元々一人で山へ来たのかい?」
「はい。自然が大好きでして……。ずっと、自然と触れ合って生きていきたいのですが……」
ユアの表情に何かを感じ取ったユージ。
「人生に悩んでいるみたいだね」
「!」
「実は僕も悩んでいてね……こうして自由に過ごせるのも今だけなんだ……」
その言葉にはっとするユア。
「マルーン様の跡を継がれる……ということでしょうか!?」
「ううん。それはまだなんだけど」
(違った……)
少し自信たっぷりな表情で言ったため、少し恥ずかしくなったユアだが、すぐに別のことに気づいた。
「ご結婚……でしょうか!」
「そうなんだ」
「わぁ……! おめでとうございます!」
「ありがとう」
自然と出た祝いの言葉に心がざわつくユア。
(……ユージ様は最近18歳になられたから…………)
この国の王子は18歳から結婚することが可能である。もちろん自由恋愛ではなく、決められた婚約者がいる。
(ユージ様の婚約者は結婚するまで私たちには明かされないようだけれど……どのようなお方がお相手なのかしら……)
ユージの婚約者のことを考えながら、胸が気持ち悪い感覚におそわれていく。
(このもやもやした胸の感覚は何かしら……気持ち悪い……)
そんなユアの耳に、意外な言葉が入ってきた。
「おめでたいことなんだろうけど……当の本人はあまり嬉しくないんだよね」
「!? …………そうなのですか……?」
「うん……って、こんなこと言っちゃダメだよね。はぁ~……本当に僕は……最低だ……」
「……それは……お相手の方と……あまり仲がよろしくないのでしょうか……?」
そう口にした後、聞いてはいけないことを聞いているのではと感じたユア。とっさに訂正する。
「っ 申し訳ございません! 個人的なことをお尋ねしてしまいました……失礼いたしました……っ」
「ううん、謝らないで。聞いてくれて構わないよ。王太子である男が最低なことを口にしたんだ。不信に思って当然だよ」
「不信だなんてっ……思っておりません!」
ユージは少しの沈黙の後、ユアの目を見て口を開いた。
「実は……婚約者のことを僕はまだ何も知らないんだ」
「…………えっ…………??」
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