17 / 21
#17 美術準備室
しおりを挟む
振り向き、目に映ったのは……。
「アーリン様……!?」
「そちらの部屋に何の用があるのかしら?」
「あっ それは……」
「やめておいた方がいいわよ、そんな汚らしい部屋」
「……えっ?」
(汚らしい部屋……?)
アーリン様は周りに誰もいないことを確認すると、小声で話した。
「ここは浮気現場よ」
「!?」
(そ……それは……)
「あなた、エミリー様と一緒にいるわよね。ちょっと今から話せるかしら?」
「……はい……」
アーリン様に連れられ、隣の美術準備室に入った。
私の胸はざわついていた。
(もしかして、アーリン様もアルザ様の浮気をご存じで……!?)
予想は完全に的中した。
「ちょっとこちらへ来てくださる?」
言われるがまま、例の部屋側の壁際へ行く。
アーリン様が壁際に置かれてある壺を横にずらすと、壁に細長い縦長の小さな穴があった。
「覗いてみてくださる?」
覗くと、少し見えにくいものの、例の部屋を見ることができた。
「えっ!!」
「この部屋で探し物をしていた際に、隣の部屋から声が聞こえたのよ。何かしら?と思って壁に近づいたら偶然この穴を見つけたの。覗いてみたらあらビックリよ。アルザ様が美術部の先輩とキスしているんだもの」
「!!!」
「アルザ様がエミリー様と親しいのはみんな周知のことでしょ? 婚約はしていないようだけど、その内するだろうって噂されていたし」
「……そう……ですね……」
「今はマークス様といい感じみたいだけど。ちゃんと見る目はあったみたいね。別にわたくしはエミリー様のことは知らないから、彼女がどうなろうと興味はなかったけど、マークス様の意中の相手だものね。見る目を持っていてもらわないと困るわ」
「えっ!? えっ……えっ……」
色んなことに驚き、『えっ』しか言葉が出なかった。
他の語彙はどこへ行ってしまったのやら。
「何をそんなに驚いているの?」
「あっ えと……」
何より一番驚いたのは、アーリン様がエミリーとマークス様の関係性に気づいていて、かつ受け入れているということだ。
「あなたが何に驚いていようがわたくしには関係ないけど。とにかく隣の部屋に入らない方がいい理由はわかったわね?」
「はい……」
「あの部屋に何か用事があったのかしら? ひょっとしてあなた、物でも置いているの? 嫌だわ、ガラクタ置き場に加担しないでちょうだい」
「いえっ 何も置いておりませんわ! その……」
私はエミリーのことをアーリン様に相談した。
なぜかはわからないが、そうするべきだと直感したのだ。
「そんなの、さっさと浮気現場を見せちゃえばいいのよ」
アーリン様はあっさりとそう言った。
「わたくしに任せていただけるかしら」
「……?」
数日後、中休みにアーリン様に呼び出された。
アーリン様はエミリーに美術準備室の穴から浮気現場を見せたらしい。
美術部の先輩が部活を抜け出すタイミングをよく知っていたため、予め山を張り、簡単にエミリーに見せることができたそう。
急展開に動揺しつつ、一番気になることを尋ねた。
「エ……エミリーの様子はっ……どうでしたか……?」
「彼女は強いわよ。ショックは受けたみたいだけど、あの目は真っすぐに前を向いていたわ。彼女なら絶対に大丈夫よ。マークス様が選んだお方なんだから当然よ」
アーリン様の言い方に、なんだかとても心が救われる気持ちになった。
「アーリン様……本当に……本当にありがとうございました……!」
「いいわよお礼なんて。それより、あなた婚約したんだってね。よかったじゃない」
「! ありがとうございます……」
「待ち遠しいでしょ」
「えっ?」
「早く結婚生活を送りたいんじゃないの?」
「あっ……! はい! それはもう……今すぐにでも……」
「ふふ。いい顔するじゃない。わかるわ。わたくしも卒業が待ち遠しいもの。早くキス以上のことがしたいわ……」
「……えぇっ!?」
自分でも驚くほど大きな声を出してしまい、アーリン様も目をきょとんとさせた。
「アーリン様……!?」
「そちらの部屋に何の用があるのかしら?」
「あっ それは……」
「やめておいた方がいいわよ、そんな汚らしい部屋」
「……えっ?」
(汚らしい部屋……?)
アーリン様は周りに誰もいないことを確認すると、小声で話した。
「ここは浮気現場よ」
「!?」
(そ……それは……)
「あなた、エミリー様と一緒にいるわよね。ちょっと今から話せるかしら?」
「……はい……」
アーリン様に連れられ、隣の美術準備室に入った。
私の胸はざわついていた。
(もしかして、アーリン様もアルザ様の浮気をご存じで……!?)
予想は完全に的中した。
「ちょっとこちらへ来てくださる?」
言われるがまま、例の部屋側の壁際へ行く。
アーリン様が壁際に置かれてある壺を横にずらすと、壁に細長い縦長の小さな穴があった。
「覗いてみてくださる?」
覗くと、少し見えにくいものの、例の部屋を見ることができた。
「えっ!!」
「この部屋で探し物をしていた際に、隣の部屋から声が聞こえたのよ。何かしら?と思って壁に近づいたら偶然この穴を見つけたの。覗いてみたらあらビックリよ。アルザ様が美術部の先輩とキスしているんだもの」
「!!!」
「アルザ様がエミリー様と親しいのはみんな周知のことでしょ? 婚約はしていないようだけど、その内するだろうって噂されていたし」
「……そう……ですね……」
「今はマークス様といい感じみたいだけど。ちゃんと見る目はあったみたいね。別にわたくしはエミリー様のことは知らないから、彼女がどうなろうと興味はなかったけど、マークス様の意中の相手だものね。見る目を持っていてもらわないと困るわ」
「えっ!? えっ……えっ……」
色んなことに驚き、『えっ』しか言葉が出なかった。
他の語彙はどこへ行ってしまったのやら。
「何をそんなに驚いているの?」
「あっ えと……」
何より一番驚いたのは、アーリン様がエミリーとマークス様の関係性に気づいていて、かつ受け入れているということだ。
「あなたが何に驚いていようがわたくしには関係ないけど。とにかく隣の部屋に入らない方がいい理由はわかったわね?」
「はい……」
「あの部屋に何か用事があったのかしら? ひょっとしてあなた、物でも置いているの? 嫌だわ、ガラクタ置き場に加担しないでちょうだい」
「いえっ 何も置いておりませんわ! その……」
私はエミリーのことをアーリン様に相談した。
なぜかはわからないが、そうするべきだと直感したのだ。
「そんなの、さっさと浮気現場を見せちゃえばいいのよ」
アーリン様はあっさりとそう言った。
「わたくしに任せていただけるかしら」
「……?」
数日後、中休みにアーリン様に呼び出された。
アーリン様はエミリーに美術準備室の穴から浮気現場を見せたらしい。
美術部の先輩が部活を抜け出すタイミングをよく知っていたため、予め山を張り、簡単にエミリーに見せることができたそう。
急展開に動揺しつつ、一番気になることを尋ねた。
「エ……エミリーの様子はっ……どうでしたか……?」
「彼女は強いわよ。ショックは受けたみたいだけど、あの目は真っすぐに前を向いていたわ。彼女なら絶対に大丈夫よ。マークス様が選んだお方なんだから当然よ」
アーリン様の言い方に、なんだかとても心が救われる気持ちになった。
「アーリン様……本当に……本当にありがとうございました……!」
「いいわよお礼なんて。それより、あなた婚約したんだってね。よかったじゃない」
「! ありがとうございます……」
「待ち遠しいでしょ」
「えっ?」
「早く結婚生活を送りたいんじゃないの?」
「あっ……! はい! それはもう……今すぐにでも……」
「ふふ。いい顔するじゃない。わかるわ。わたくしも卒業が待ち遠しいもの。早くキス以上のことがしたいわ……」
「……えぇっ!?」
自分でも驚くほど大きな声を出してしまい、アーリン様も目をきょとんとさせた。
0
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
ちかすぎて
橋本彩里(Ayari)
恋愛
幼馴染のあいつに彼女ができたらしい。
彼女に牽制され、言われなくてもこっちから距離をあけてやるとささくれていたら窓に雪玉をぶつけられ……。
幼馴染同士のちかすぎてじれっとしていた二人の話。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。
あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。
そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。
翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。
しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。
**********
●早瀬 果歩(はやせ かほ)
25歳、OL
元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。
●逢見 翔(おうみ しょう)
28歳、パイロット
世界を飛び回るエリートパイロット。
ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。
翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……?
●航(わたる)
1歳半
果歩と翔の息子。飛行機が好き。
※表記年齢は初登場です
**********
webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です!
完結しました!
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠 結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
姉の身代わりで冷酷な若公爵様に嫁ぐことになりましたが、初夜にも来ない彼なのに「このままでは妻に嫌われる……」と私に語りかけてきます。
夏
恋愛
姉の身代わりとして冷酷な獣と蔑称される公爵に嫁いだラシェル。
初夜には顔を出さず、干渉は必要ないと公爵に言われてしまうが、ある晩の日「姿を変えた」ラシェルはばったり酔った彼に遭遇する。
「このままでは、妻に嫌われる……」
本人、目の前にいますけど!?
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる