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7.新しい魔法

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 ワイルドボア狩りから帰り、一日休むことにしたのでギルドの訓練所へと来ていた。

 <盲目《ブラインド》>の時同様、新しく覚えた魔法の確認と検証をする為である。

 なにせ闇魔法はマイナーだ。

 他の属性に比べて情報が少ない。

 マジで無い。

 ギルド内にある図書館にも全然情報が無い。

 身近に闇属性の人もいないので手探りで調べていくしかないのが現状だ。

 今回覚えたのは<闇弾《ダークバレット》>。

 それとは別にスキルで<加速《アクセラレーション》>を覚えた。

<闇弾《ダークバレット》>は闇属性の魔力の弾を打ち出す魔法。

<加速《アクセラレーション》>は自身の俊敏性を上げるスキル。

 念願の攻撃魔法にワクワクしながら、訓練場まで一緒に付いて来たシャロと一緒に準備を始める。

 俺は練習用の的である案山子の前で手の平を向け呪文を唱えた。

<闇弾《ダークバレット》>!

 呪文を唱えると、掌の前に小さい魔法陣が出現し真っ黒の魔法の弾が射出された。

 案山子目掛けて高速で飛んで行き。

 バキッという音を立てて<闇弾《ダークバレット》>は弾けて消えていった。

 案山子は前後にビヨンビヨン動いて、直ぐにピタリと止まった。

 ——流石に案山子を壊すほどの威力は無いようで。

 もっとも訓練所の案山子は、耐久性上昇のエンチャントが付加されている為、そうそう壊れる事は無いのだ。

 俺としては異世界人なので。

 俺TUEEEEEよろしく攻撃魔法一発で案山子を壊し周りをざわつかせるような展開を少し期待していた。

 そんな都合のいい展開は無いか・・・。

 ま、こんなものか。シャロの手前余裕ぶってみる

「案山子相手だといまいち威力わかんないねぇ~」

 隣に立っていたシャロが笑いながら答える。

 威力は明日ホーンラビット辺り狩りに行って確認するかな

 再度強がる。

 流石に人に当てて威力の確認をするのは気が引けるので、魔物に撃って確認する事にした。

 次は<加速《アクセラレーション》>を試してみる事にした。

 俊敏性が上がるってのがいまいち理解できないが使ってみればわかるだろう。

<加速《アクセラレーション》>!

 <加速《アクセラレーション》>はスキルなので魔法陣が出ることは無かったが、自分の中で<加速《アクセラレーション》>が発動したのが感覚で分かった。

 ダッとその場から走り出してみる。

 おおっ!体が軽い!

 普段よりも素早く動くことが出来る。

 そのまま剣を振ってみたり、回避行動を試してみたりした。

「お~!
 何時もより速く動けてるよ!」

 シャロから見ても俺の動きは速くなっているようだ。

 無駄に反復横跳びなどして俊敏性を披露していると、効果が切れたのか急に体が重くなった。

 おおぉ・・・体が重い・・・。

 これが<加速《アクセラレーション》>のデメリットか。

 <加速《アクセラレーション》>を掛け直せば問題は無いだろうが、効果が切れたタイミングで動きに隙が出来るからそこを突かれるときついな。

 スキルの効果時間の管理が大事って所か。

 そんな感じに昼の鐘が鳴るまで訓練所で検証を重ねていった。


 訓練場での検証を終え、昼飯を食べに宿屋へと向かって歩いていると後ろから声を掛けられた。

「ソラにシャロじゃないか。
 二人とも久しぶりだな」

 声のする方を向くと——。シルバーファングの面々がいた。

 お久しぶりです。暫く見かけませんでしたけど依頼ですか?

 10日ほど見かけなかったので、遠出の依頼にでも行っているのかと思っていた。

「ああ。
 カールさんの護衛で他の街まで行ってたんだよ」

 なるほど

 ほとんど専属で護衛を引き受けてるって話を聞いた気がする。

「あたし達これからお昼なんだけどなんか奢ってよ~」

 シャロは遠慮というものを知らないらしい。

「悪いな。
 俺等3人は家族の所に帰らないといけないんでね。
 マルコを連れていけ」

 ハルクさんがマルコさんを押し付けて来た。

「お、お前ら——」

「いいじゃねーか。
 後輩にうまいもん食わせてやれ」
「俺達は家族にうまいもの食わすとするさ」

 うーん。無慈悲。

 マルコさん以外は家庭を持っているようなので、早く家族の顔を見たいのだろう。

「決まりだね!
 うちの店でお昼食べよ~!」

 シャロに引っ張られながら宿屋に向かった。

 人の金で食う飯は異世界でも良いものだ。

 ◇

「お前ら。
 装備の手入れはちゃんとしてるか?」

 宿で昼食を食べている最中にマルコさんが聞いてきた。

 一応ギルドで教わった通りに手入れはしていますよ

 俺はギルドで教わったやり方で、装備品の手入れをしていることを伝えた。

 因みにギルドでは色々な講習が開かれており、その中で装備の手入れの仕方を教わった。

 他にも色々な講習がある様だが、流石に全部に顔を出すことは出来ない。稼がなきゃいけないし。

「革の装備ならそれでもいいんだが。
 自分で武器を研ぐのにも限界があるからな。」

 なるほど。ここ等で一度鍛冶屋に行ってみるのもいいか。

「マルさん。
 良い鍛冶屋知ってるの?」

 シャロがそう聞くと

「何時も手入れを頼んでいる鍛冶師はいるが——。少々頑固なドワーフだからなぁ」

 ドワーフ!時折街で見かけたりするが。ドワーフのいる鍛冶屋には一度も行った事が無い。

「この後紹介してよ~」

 シャロは俺が言えないような事もガンガン言うから助かる。

 交渉は任せた。

「うーん。
 ——まあいいか。
 俺も装備の手入れ頼む予定だったしな」

 この後の予定も決まったので俺達はさっさと昼食を食べ終え宿屋を後にした。

 ◇

 マルコさんの案内で普段手入れを頼んでいるという、鍛冶屋の前にやって来た。

 見た目は普通の鍛冶屋で、看板には[ヴィーシュ鍛冶屋]と書かれていた。

「お前ら失礼な態度はとるなよ?
 俺までとばっちり食らうことになるんだからな」

「は~い」
 わかりました~

 2人そろって返事をする。

 マルコさんは扉を開け店の中に入っていった。

 俺達も遅れずに付いていく。乗り込め~。

「こんちわ。
 ヴィーシュさん居る?
 装備の手入れ頼みたいんだけど」

 マルコさんは、店のカウンターに立っていた若い男に声を掛けた。

 この人はドワーフではない様だ。背も高いし俺等と同じ人種かな。

「師匠は裏で作業してるんで、今呼んできますね。」

 そう言うと、男は店の奥へと向かって行った。

 待っている間に店内を見回してみる。

 色々な種類の武器が展示していて、シャロは盾と斧を見ながら目を輝かせていた。

 俺も壁に在る剣を眺めていた。

 値段は——。うわ高っか。

 今の俺では手が出せない剣ばかりだ。

 これ手入れの代金払えるのか?

 俺が金の心配をしている中、シャロは普通に盾を手に持って具合を確かめていた。やめて。

 ハラハラしながら見ていると、奥から先ほどの若い男と一人のドワーフがやってきた。

「おう。
 久しぶりだな。
 今日は何しに来たんだ?」

 そう言ったのは、身長は低いが、体はがっしりしていて立派な口髭を蓄えたドワーフだった。顔や手に細かい傷痕があり中々迫力のある佇まいだ。

「いやー。
 色々忙しくて・・・。
 自分で手入れはちゃんとしてますよ」

「はっ!
 どうだかな。
 面倒くさいだけだろ。
 で、そっちのガキ共は何だ」

 目を反らすマルコさんを問い詰めながら、俺達2人に視線を向ける。

 初めましてソラといいます

 初対面なので頭をちゃんと下げて、礼儀正しく自己紹介をする。

「シャロです♪」

「そうか。
 ワシはヴィーシュだ。
 こっちは弟子のカルマン」

 お互いに自己紹介を済ませ、マルコさんは自分の装備を手渡した。

「目的は俺の装備の手入れなんですが、こっちの二人をヴィーシュさんに紹介しようと思いましてね」

「ほぉ!
 珍しい。
 お前さんが人を連れてくるなんてな。」

 ガハハと笑いながら背中をバシバシ叩かれている。

 叩いた後に俺達に向けて片手を突き出して来た。

「んっ」

 ——握手を求められているのだろうか?。

 素敵な笑顔を浮かべて握り返す。

「違うわ!
 その腰に付けてる剣を見せろ」

 ああ、そっちですか

 剣を鞘ごと外し手渡した。

 ヴィーシュさんは剣を鞘から抜きまじまじと見つめた。

「ふーむ。
 安物だが、手入れはちゃんと出来ている様だな。
 しかし刃の研ぎが甘いな、この後研いでやるから次からワシの所に持ってこい」

 おっ。好印象を与えることが出来た様だ。

 ヴィーシュさんは剣を弟子のカルマンさんに渡す。

「娘っ子、お前のも見せなさい」

 そのままシャロに向かって手を差し出す。

 ・・・なんでお前も笑顔で手を握るんだよ。

「武器を見せんか武器を!」

 手を振り払いツッコミを入れていた。

「ごめんなさ~い。
 どうぞ!」

 シャロは笑いながら斧と盾を手渡した。

「うーん。
 盾の手入れは良いが、斧の手入れが全然じゃな。
 お前さんのもこの後手入れしてやろう。
 この後使う予定は無いな?
 よし、なら明日取りに来い」

 ヴィーシュさんは、シャロの盾と斧も弟子に渡し近くの椅子にドカッと腰かけた。

「今回の代金はマルコのに上乗せしといてやる。
 次からは自分で払うんだな。
 ガッハッハッハ!」

 俺とシャロはお互い視線を交わし頷く。

 ヴィーシュさんの案に乗ることにしたのだ。

 マルコさんありがとうございます!
「あざーっす!」

 マルコさんに2人で頭を下げる。

「ちょっと待て。
 払うなんて一言も言ってないぞ」

「いいじゃねーか。
 オマケしてやるから、可愛い後輩の為だ。
 一肌脱いどけ」

 ぐぬぬとマルコさんが唸っている。

 その後、マルコさんも自分の装備を預け、ため息をついていた。

 武器を預けた俺達はヴィーシュさんの店を後にし、宿屋に向かった。

 ◇

 夕食まで各々時間を潰し。

 シャロの実家である宿屋で、シルバーファングのメンツと食事をすることになった。

「マルコ。
 今回の飯代は俺達3人で持つから機嫌直せよ」
「そうだそうだ」
「だからモテねぇんだよ」

「モテない事は関係ないだろ!」

 俺とシャロの装備の手入れ代を肩代わりする事に対して、不満を漏らしていたマルコさんに、他のメンバーは慰めの言葉を送っていた。

「いいじゃん。
 可愛い後輩からの好感度が上がるんだし~」

 そう言いながら、シャロが料理を持って席にやって来た。

「はぁ——。
 わかったよ。
 その代わり今日はサービスしてくれよー」

「それはお父さんに言って」

 シャロはピシャリと言い放った。

 シャロの親父さんを全員が無言で見つめる。

 すると、無言で酒瓶を1本テーブルに置いてくれた。やったー。

 料理の準備が終わり。

 各々のコップに酒が注がれた。

 ——俺とシャロ未成年なんですが?

「15過ぎてるなら飲めるだろ?」

 ——そうか異世界だからその辺の法律とか無いのか。

 では!

「「「「「「乾杯~!」」」」」」


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