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偽り

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「そっか。色々あったんだね」
「心配かけてごめん」
「そんなに謝らないでよ。私だって、かずくんの気持ち全然分かってなかったんだし、お互い様でしょ」

 こんな甲斐性のない俺を軽蔑することなく、優しい言葉をかけてくれる紗絢。
 恐る恐る顔を上げ、紗絢の顔を見ると、彼女は柔らかな微笑みを浮かべていた。

「紗絢は昔から変わらないね。優しくて温かいままだ」

 昔から包容力が高く、なんでも相談に乗ってくれた。誰からも信頼される優等生が、なぜ俺なんかと付き合っていたのか。今考え直しても分からない。

 グラスに残っていた酒を一気に飲み干す。溶けた氷で薄まった冷たい液体が、喉の乾きだけを潤した。

「これからどうするの? まだ仕事見つかってないんでしょ?」

 空いた皿の縁を見つめてぼーっとしていると、紗絢から次の話が振られる。耳が痛くなる将来の話。正直、何も考えたくない。

 全てを打ち明けようとは思っていたが、働く気がないこと、ヒモになるためにナンパをしていたことは伝えられなかった。いくら寛大な心を持つ紗絢でも、そんなことをしていたと知れば、失望し愛想を尽かしてしまうだろう。

 信用なんて地に落ちているはずなのに、嫌悪感を抱かれることに恐怖を感じる。
 だから今だけは、嘘ハッタリで誤魔化すしかない。

「夢を叶えるために、早いところバイトを見つけて頑張るつもり」
「夢? 何かやりたいことがあるの?」
「プロゲーマーになりたいんだ。そのために五年間、必死に練習してた。アマチュアの大会では結構いい成績も残せたし、あと少しで届きそうなんだ」

  次から次へと嘘を並べ立てる。俺が好きなのは一人で黙々とこなすゲームであり対人ゲームではない。もちろん大会に出たことなんて一度もないし、エントリーしようと思ったことすらない。

「そうだったんだ。凄いね」

 紗絢の声に張りが生まれ、期待の眼差しが俺を襲う。
 偽りの自分に芽生える罪悪感と不安感。

 大丈夫だ。ずっと一緒にいるわけじゃないしバレるわけがない。

 俺は夢追い人を演じ続け、やる気があるようにみせた。
 すると、それを見た紗絢が一つの提案を持ちかけてくる。

「それじゃあ、住む所が決まるまで家に来る?」
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