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両親の策略

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 空腹で目が覚め、時計を確認する。

 時刻は午後十時を過ぎていて、いつもよりだいぶ長く寝てしまっていたらしい。

 飯でも食うか。

 夜になると、部屋を出てすぐそばにある棚の上に、料理の載ったお盆が置かれている。

 今日の夕飯はなんだろう。肉だったらいいな。

 楽しみにしながら棚を確認する。しかし料理らしきものは見当たらない。

 は? なんで?

 母さんに連絡をするため、部屋に戻りスマホを探していると、先ほど親父から渡された茶封筒が目に入ってくる。

 あ、そうだった……。

 親父から伝えられた退去勧告。
 あの悲劇が現実だったことを痛感し、背中がゾワゾワして気持ち悪い。

 これからどうしようかな。

 親父は食料の補給を断てば俺が家を出ていくと考えたのだろう。
 でも俺は、そんなことで挫けるような柔な人間じゃない。

 よしっ。金はあるし、食料を買い込んで籠城してやろう。

 買い出しに行く準備を開始しようと意気込むが、体に力が入らない。

 今からシャワーを浴びて、髪を乾かして、着替えて、店に行って、買い物をして、帰ってくるのに用する時間と労力を考えると億劫でしかない。

 やっぱり買い物は明日にして、今日はキッチンにある残り物を探して食べよう。

 俺は椅子に深く腰掛け、ゲーミングPCの電源を入れた。

 両親が寝静まるまで、ネット掲示板を見て時間を潰そうとする。
 しかし、ブラウザにはインターネット未接続の文字が大きく表示されるだけで、全然次に進まない。

 おい、おい、マジかよ。

 すぐさまネットワークの設定を確認する。
 すると今まで接続していたはずのネットワークが完全に消えていた。

 通信機器の不具合か? それとも通信障害?

 スマホを手に取り、SNSで同じ現象の人がいないかを見つけにいく。

 えっ、嘘だろ……。

 画面の左上にある圏外という表記を見て愕然とする。

 昨日は確かに使えていたはずのスマホが、ネットに接続出来なくなってしまっていた。
 きっと俺が寝ている間にスマホとインターネット回線の両方を解約しに行ったのだろう。

 最悪だ。最悪の事態だ。
 俺の生きる場所と生きる意味を奪われた。

 苛立ちと焦りから手の震えが止まらない。
 空腹と焦燥感のダブルパンチを食らい頭がクラクラしてきた。

 生きる糧を奪うことで、出て行かざるを得ない状況を作り出す。
 これこそが俺を追い出す最善の手段だったのだろう。
 
 両親の思惑通り、飯も娯楽も無くなったこの場所に居続ける意味なんて見出せない。
 
 もういいよ。望み通り出ていってやる。こんなクソみたいな家。

 俺は旅行用のキャリーバッグを手に取り、必要なものを詰め込み始めた。
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