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番外編 私の名前はアイビー1
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バンッ。
会議を終えて騎士団の談話室の扉を勢いよく押し開いたアルベルトは、部下達に囲まれているフェリックスとアイビーを見つけて小さく息を吐いた。
「こいつらも暇じゃないんだから遊びに付き合わせるんじゃない」
「団長お疲れ様です! 自分達は問題ありません。むしろお二人に癒やされていた所です!」
「お前達の事じゃない。フェリックス、図書館での勉強は終わったのか? アイビー、お前は誘拐でもされたら大変だから勝手に歩き回るんじゃない」
そっちか、と遠い目をした騎士達は散り散りになっていく。するとアルベルトは振り返らずに低い声で言った。
「それで、癒やされていたというのは疲れているという意味か?」
騎士達は一斉に足を止めると誰となく顔を見合わせ、この中では先輩が口を開いた。
「決してそういう意味ではなく、ご子息とご息女の美しさと愛らしさを形容する為にそう申し上げたと言いますか、疲れていても疲れていなくともお二人のお姿を拝見するだけでどんな事でも頑張れるという意味ですッ!」
「確かに俺の子供達は愛らしいし賢いし、愛らしいからな」
騎士達はホッと息を吐きかけてその後に続いた言葉に息を止めた。
「それなら十分に癒やされただろうから日が暮れるまで打ち合いをして来い!」
騎士達がいなくなり静かになると、そこで初めてアイビーがつまらなそうにしているのが目に入った。
「それで俺の姫様はどうしてむくれているんだ?」
「陛下がいないからだって」
その瞬間、ぴくりとアルベルトの頬が引き攣った。
「お忙しいお方だからどこにいるかは分からないぞ」
「……お父様にも分からないの? なんで? お父様はえらい人じゃないの?」
泣き出しそうになったアイビーをひょいと抱き上げるとその首に乗せた。びっくりしたのもつかの間、ギュッと父親の髪の毛を握り締めると、その中に顔を埋めてしまった。
「俺の頭をこう出来るのはお前達くらいだ」
苦笑いしながら視線を下げ隣を歩くフェリックスに声を掛けると、フェリックスは照れたように「もうそんな事はしないよ」と呟いた。
アルベルトはアイビーの気が済むまで王城の中を歩き回った。王城で働く他の貴族や使用人達からは通り過ぎる度に驚かれたり、小さく笑われたりしている。それでもアイビーの機嫌が直る方が最優先だった。
「そろそろ諦めて家に帰ろう。明日また俺が探しておくから」
「今日じゃないと嫌なの。今絶対に会いたいの!」
アイビーは駄々っ子のように髪の毛を掴んだまま暴れた。
「こら落ちるだろ! そんなに暴れる子はこうだ!」
上から降ろすと脇腹をくすぐり、右腕に乗せた。
「アイビーも随分重たくなったな。これではすぐに腕が震えそうだ」
「そうよ、だって私もう六歳だもの。お姉さんでしょう? もう結婚できるでしょ?」
アルベルトは苦笑いを浮かべながら窓の外から見えた塔に目を細めた。
第一王子が幽閉されている塔。フィリップは時折時間を見つけては、入れるはずのない塔に出向いていた。
「お父様?」
フェリックスはアルベルトの視線を追ったようで、無意識なのか心配そうに服を掴んできた。
「陛下を見つけたぞ」
渋々そう言うと窓に近づく。アイビーが窓ガラスに張り付いて外を覗くと、塔の方から歩いてくる姿が見えた。
「陛下! 陛下ぁ――!」
「硝子越しなのだから気付く訳が……」
どうやって力を入れているのか分からないが、物凄い力で窓枠を掴んで離さないアイビーの指を一本一本引き離していくと、隣で真っ赤な顔を本を隠しているフェリックスをちらりと見た。
「お前もアイビーを引き離してくれ!」
下に視線を戻すと何故かフィリップの顔がこちらに上がる。そして一瞬驚いた後、手を上げた。
「陛下ぁーー! 私の未来の旦那様ぁーー!」
アイビーが両手に力を入れた瞬間、窓はバンッと勢いよく開き、アイビーの上半身が窓の外に飛び出した。
とっさに胴体を掴むアルベルトに、足首を掴むフェリックス、そして下では慌てたフィリップが両手を広げたのが同時だった。
「プッ、ククッ」
フィリップの私室に招かれたアルベルトとフェリックスは、居た堪れない気持ちで出されたお茶とお菓子を前に小さくなっていた。当の本人はと言えば、ちゃっかりフィリップの横に陣取り、シワになっているのではないかと心配になる程に上着の端をぎっちりと掴んでいる。
「まさか窓が開いてしまうとは思いもしませんでした」
「振動で鍵が動いてしまったのかもしれないね。早急に王城中の窓という窓の安全対策をし、危険があれば交換しよう」
「その際の請求書はベルトラン侯爵家に回してください」
「王城の維持管理費から出すから問題ないよ?」
「いえ、おそらく王城の窓を叩くなんて者は娘以外いないでしょうから」
いつもは強気なアルベルトが、娘の事となるとこうもしおらしくなるのかとフィリップが笑っていると、視線を感じて下を見た。目が合った瞬間にっこりと微笑まれ、フィリップも釣られて微笑みと、その笑みは更に蕩けるような顔に変わった。
「どこに行っていたんです? 私ずっとずっーーと探していましたのよ! 陛下は今日がなんの日か覚えていますか?」
「もちろんだとも。出会った記念日だろう? すまなかったね、兄の所に行っていたんだ」
「やっぱり覚えていて下さったのね! 私ちゃんと絵日記にその日の事を書いていたのよ」
「これは私からのプレゼントだ」
フィリップはポケットから小さな包みを出した。白いレースのリボンを解くと、アイビーと同じ瞳の色のブレスレットが出てきた。
「まぁ素敵!」
フィリップにブレスレットを付けてもらっている間中、アイビーは嬉しそうにその顔を見ていた。
「私からのお返しとプレゼントよ」
そう言うとアイビーはブレスレットを付ける為に屈んでいたその頬に唇を押し当てた。
「アイビー! ばっちいから止めなさい!」
アルベルトは手を伸ばして止めたがすでに遅かった。
アイビーは満足そうに笑ったが、がっくりと肩を落とすアルベルトを慰めるようにフェリックスがその膝を叩くと、アルベルトは胡乱な目でフィリップを見た。
「俺ももうして貰っていないのに」
「でも不可抗力だよ、ね?」
「先程のお話ですけれど、へいかのお兄様なら私のお兄様でもありますよね。でもぜひお会いしたいわ!」
「フェリックスとアイビーは仲の良い兄妹で有名だからね。でも私の兄は少し特別な場所にいるから会わせる事は出来ないな」
アイビーは後ろのソファにもたれかかった。それでも上着を掴んでいる手を離す事はない。見兼ねたアルベルトが深い溜息を吐いた。
「ほら、お前の望み通り陛下にお会いできたんだからもういいだろう。お忙しいお方なのは本当だから邪魔をしてはいけない。今すぐに帰ろう」
「でもまだ話足りないのに」
「我慢も覚えなくては子供だと笑われてしまうぞ」
ムスッとする顔ですら可愛く見てしまうのは重症だろうか。
「お父様は陛下と少しお話があるからフェリックスと一緒に廊下に出ていなさい」
「それなら私も一緒にいたいわ!」
「アイビー」
「……はい」と言うと、すかさずフェリックスの手を掴み部屋を出て行く。扉の前でもう一度振り返ると不名残惜しそうにフィリップを見た。
「本当に申し訳ありません。誰に似たのか執着心が強くて困っております」
「君に似たんじゃないのかい?」
「心外ですね。かと言って妻でもないですし」
「そう言えばそろそろ奥さんの出産が迫っているよね? アイビーもお姉さんになるのか! ……大丈夫か?」
「家族中でそれを心配しております」
会議を終えて騎士団の談話室の扉を勢いよく押し開いたアルベルトは、部下達に囲まれているフェリックスとアイビーを見つけて小さく息を吐いた。
「こいつらも暇じゃないんだから遊びに付き合わせるんじゃない」
「団長お疲れ様です! 自分達は問題ありません。むしろお二人に癒やされていた所です!」
「お前達の事じゃない。フェリックス、図書館での勉強は終わったのか? アイビー、お前は誘拐でもされたら大変だから勝手に歩き回るんじゃない」
そっちか、と遠い目をした騎士達は散り散りになっていく。するとアルベルトは振り返らずに低い声で言った。
「それで、癒やされていたというのは疲れているという意味か?」
騎士達は一斉に足を止めると誰となく顔を見合わせ、この中では先輩が口を開いた。
「決してそういう意味ではなく、ご子息とご息女の美しさと愛らしさを形容する為にそう申し上げたと言いますか、疲れていても疲れていなくともお二人のお姿を拝見するだけでどんな事でも頑張れるという意味ですッ!」
「確かに俺の子供達は愛らしいし賢いし、愛らしいからな」
騎士達はホッと息を吐きかけてその後に続いた言葉に息を止めた。
「それなら十分に癒やされただろうから日が暮れるまで打ち合いをして来い!」
騎士達がいなくなり静かになると、そこで初めてアイビーがつまらなそうにしているのが目に入った。
「それで俺の姫様はどうしてむくれているんだ?」
「陛下がいないからだって」
その瞬間、ぴくりとアルベルトの頬が引き攣った。
「お忙しいお方だからどこにいるかは分からないぞ」
「……お父様にも分からないの? なんで? お父様はえらい人じゃないの?」
泣き出しそうになったアイビーをひょいと抱き上げるとその首に乗せた。びっくりしたのもつかの間、ギュッと父親の髪の毛を握り締めると、その中に顔を埋めてしまった。
「俺の頭をこう出来るのはお前達くらいだ」
苦笑いしながら視線を下げ隣を歩くフェリックスに声を掛けると、フェリックスは照れたように「もうそんな事はしないよ」と呟いた。
アルベルトはアイビーの気が済むまで王城の中を歩き回った。王城で働く他の貴族や使用人達からは通り過ぎる度に驚かれたり、小さく笑われたりしている。それでもアイビーの機嫌が直る方が最優先だった。
「そろそろ諦めて家に帰ろう。明日また俺が探しておくから」
「今日じゃないと嫌なの。今絶対に会いたいの!」
アイビーは駄々っ子のように髪の毛を掴んだまま暴れた。
「こら落ちるだろ! そんなに暴れる子はこうだ!」
上から降ろすと脇腹をくすぐり、右腕に乗せた。
「アイビーも随分重たくなったな。これではすぐに腕が震えそうだ」
「そうよ、だって私もう六歳だもの。お姉さんでしょう? もう結婚できるでしょ?」
アルベルトは苦笑いを浮かべながら窓の外から見えた塔に目を細めた。
第一王子が幽閉されている塔。フィリップは時折時間を見つけては、入れるはずのない塔に出向いていた。
「お父様?」
フェリックスはアルベルトの視線を追ったようで、無意識なのか心配そうに服を掴んできた。
「陛下を見つけたぞ」
渋々そう言うと窓に近づく。アイビーが窓ガラスに張り付いて外を覗くと、塔の方から歩いてくる姿が見えた。
「陛下! 陛下ぁ――!」
「硝子越しなのだから気付く訳が……」
どうやって力を入れているのか分からないが、物凄い力で窓枠を掴んで離さないアイビーの指を一本一本引き離していくと、隣で真っ赤な顔を本を隠しているフェリックスをちらりと見た。
「お前もアイビーを引き離してくれ!」
下に視線を戻すと何故かフィリップの顔がこちらに上がる。そして一瞬驚いた後、手を上げた。
「陛下ぁーー! 私の未来の旦那様ぁーー!」
アイビーが両手に力を入れた瞬間、窓はバンッと勢いよく開き、アイビーの上半身が窓の外に飛び出した。
とっさに胴体を掴むアルベルトに、足首を掴むフェリックス、そして下では慌てたフィリップが両手を広げたのが同時だった。
「プッ、ククッ」
フィリップの私室に招かれたアルベルトとフェリックスは、居た堪れない気持ちで出されたお茶とお菓子を前に小さくなっていた。当の本人はと言えば、ちゃっかりフィリップの横に陣取り、シワになっているのではないかと心配になる程に上着の端をぎっちりと掴んでいる。
「まさか窓が開いてしまうとは思いもしませんでした」
「振動で鍵が動いてしまったのかもしれないね。早急に王城中の窓という窓の安全対策をし、危険があれば交換しよう」
「その際の請求書はベルトラン侯爵家に回してください」
「王城の維持管理費から出すから問題ないよ?」
「いえ、おそらく王城の窓を叩くなんて者は娘以外いないでしょうから」
いつもは強気なアルベルトが、娘の事となるとこうもしおらしくなるのかとフィリップが笑っていると、視線を感じて下を見た。目が合った瞬間にっこりと微笑まれ、フィリップも釣られて微笑みと、その笑みは更に蕩けるような顔に変わった。
「どこに行っていたんです? 私ずっとずっーーと探していましたのよ! 陛下は今日がなんの日か覚えていますか?」
「もちろんだとも。出会った記念日だろう? すまなかったね、兄の所に行っていたんだ」
「やっぱり覚えていて下さったのね! 私ちゃんと絵日記にその日の事を書いていたのよ」
「これは私からのプレゼントだ」
フィリップはポケットから小さな包みを出した。白いレースのリボンを解くと、アイビーと同じ瞳の色のブレスレットが出てきた。
「まぁ素敵!」
フィリップにブレスレットを付けてもらっている間中、アイビーは嬉しそうにその顔を見ていた。
「私からのお返しとプレゼントよ」
そう言うとアイビーはブレスレットを付ける為に屈んでいたその頬に唇を押し当てた。
「アイビー! ばっちいから止めなさい!」
アルベルトは手を伸ばして止めたがすでに遅かった。
アイビーは満足そうに笑ったが、がっくりと肩を落とすアルベルトを慰めるようにフェリックスがその膝を叩くと、アルベルトは胡乱な目でフィリップを見た。
「俺ももうして貰っていないのに」
「でも不可抗力だよ、ね?」
「先程のお話ですけれど、へいかのお兄様なら私のお兄様でもありますよね。でもぜひお会いしたいわ!」
「フェリックスとアイビーは仲の良い兄妹で有名だからね。でも私の兄は少し特別な場所にいるから会わせる事は出来ないな」
アイビーは後ろのソファにもたれかかった。それでも上着を掴んでいる手を離す事はない。見兼ねたアルベルトが深い溜息を吐いた。
「ほら、お前の望み通り陛下にお会いできたんだからもういいだろう。お忙しいお方なのは本当だから邪魔をしてはいけない。今すぐに帰ろう」
「でもまだ話足りないのに」
「我慢も覚えなくては子供だと笑われてしまうぞ」
ムスッとする顔ですら可愛く見てしまうのは重症だろうか。
「お父様は陛下と少しお話があるからフェリックスと一緒に廊下に出ていなさい」
「それなら私も一緒にいたいわ!」
「アイビー」
「……はい」と言うと、すかさずフェリックスの手を掴み部屋を出て行く。扉の前でもう一度振り返ると不名残惜しそうにフィリップを見た。
「本当に申し訳ありません。誰に似たのか執着心が強くて困っております」
「君に似たんじゃないのかい?」
「心外ですね。かと言って妻でもないですし」
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