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3 恋人の浮気
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「……リアム様? どちらに?」
まどろみながら顔を上げた女の頬をひと撫ですると、リアムは床に落としていたシャツに袖を通した。女は何も着ていない身体にシーツを引き寄せて隠しながらその背に擦り寄った。リアムはおもむろに腕を伸ばして白金の柔らかく長い髪ごと白く柔らかく細い身体を引き寄せ、額に口づけをする。女は途中まで留められていた釦を外すと、その硬い脇腹に手を差し込んだ。
「リリアンヌ、手を離してくれ。また泊まる訳にはいかないよ」
「なぜです? お父様はお許し下さっております」
するとリアムは先程とは打って変わり苦い顔をした。
「明日には聖女と聖騎士団が帰還するんだ」
細い指がシャツの間を滑るように背中から下がっていく。
「リアム様を騙していた聖女様ですね。名はブリジット様でしたでしょうか」
リアムは返事をする代わりに小さく息を飲んだ。
「お可哀そうなリアム様。まさかあのような嘘を吐かれていたのに出迎えられるのですか?」
「……嘘は関係ない。命を掛けて国を救う旅に出てくれたんだ。聖女をこの国の王太子として迎えるのは当然の公務だ」
「公務ならよいのです。ではその時に告げていただけますよね?」
「何をだ」
優しい声音とは裏腹に背中に回されていた手はどんどん下がり、際どい所を撫でていく。臀部を擦りながら力が加わった。女を見るリアムの目に僅かな力が籠もる。少し離れた身体の隙間から薄いシーツが落ち、ツンと上がった女の乳房が顕になった。
「私はずっとリアム様をお慕いしておりました。子供の頃から王太子妃になる為に教育を受けてきたのです。でも突然現れた聖女様にあなたを奪われてしまいました。何より許せなかったのは、貴方様を深く傷つけた事でございます。私が傷つくのは構いませんでしたが、リアム様の事は許容できませんでした」
抱き着いた胸が押し潰されて盛り上がる。リアムはごくりと喉を鳴らすと、女の顎を持ち上げた。庇護欲を掻き立てられる下がり気味の目で縋るように見上げられれば、理性など飛んでしまいそうだった。
「あなたは優しい人だな。心配しなくても私があの女の元へ戻る事は二度とない。あの時はどうかしていたんだ。きっと国に広まりつつあった邪気に疲弊していた時に現れた聖女に、ありもしない幻想を抱いていたのかもしれない。平民の女よりあなたの方がずっと美しい」
「その言葉を信じてもよいのですか?」
唇が近づき、止まる。
「王太子の言葉が信じられないのか?」
「信じております。それでもこの気持ちは信頼とは関係ないのです」
「気持ちとは?」
「嫉妬ですよ、愛しております。リアム様」
小さく濡れた唇が薄く開いてぴったりと隙間なく唇を塞いでくる。リアムは貪るようにその口内を蹂躙しながら再びシャツを脱ぎ捨てると、寝台に押し倒した。
窓から光が差し込み始める。今度は起きない女の肩に薄い毛布を掛けてやると、静かに部屋を出た。気を効かせて誰もいない広い屋敷の中を足早に出ていく。一晩待たせていた御者の待つ馬車に近づくと一人きりになった馬車の中で深い息を吐いた。座席に沈むと身体から微かに情事の残り香がする。口元を押さえながら目を瞑った。
「どちらにしてももう戻れないな」
走り出した馬車の窓からちらりと今出てきた屋敷を見上げると、二階の窓のカーテンが少しだけ開けられているのが目に入った。
「またうるさく言ってきそうだ」
まどろみながら顔を上げた女の頬をひと撫ですると、リアムは床に落としていたシャツに袖を通した。女は何も着ていない身体にシーツを引き寄せて隠しながらその背に擦り寄った。リアムはおもむろに腕を伸ばして白金の柔らかく長い髪ごと白く柔らかく細い身体を引き寄せ、額に口づけをする。女は途中まで留められていた釦を外すと、その硬い脇腹に手を差し込んだ。
「リリアンヌ、手を離してくれ。また泊まる訳にはいかないよ」
「なぜです? お父様はお許し下さっております」
するとリアムは先程とは打って変わり苦い顔をした。
「明日には聖女と聖騎士団が帰還するんだ」
細い指がシャツの間を滑るように背中から下がっていく。
「リアム様を騙していた聖女様ですね。名はブリジット様でしたでしょうか」
リアムは返事をする代わりに小さく息を飲んだ。
「お可哀そうなリアム様。まさかあのような嘘を吐かれていたのに出迎えられるのですか?」
「……嘘は関係ない。命を掛けて国を救う旅に出てくれたんだ。聖女をこの国の王太子として迎えるのは当然の公務だ」
「公務ならよいのです。ではその時に告げていただけますよね?」
「何をだ」
優しい声音とは裏腹に背中に回されていた手はどんどん下がり、際どい所を撫でていく。臀部を擦りながら力が加わった。女を見るリアムの目に僅かな力が籠もる。少し離れた身体の隙間から薄いシーツが落ち、ツンと上がった女の乳房が顕になった。
「私はずっとリアム様をお慕いしておりました。子供の頃から王太子妃になる為に教育を受けてきたのです。でも突然現れた聖女様にあなたを奪われてしまいました。何より許せなかったのは、貴方様を深く傷つけた事でございます。私が傷つくのは構いませんでしたが、リアム様の事は許容できませんでした」
抱き着いた胸が押し潰されて盛り上がる。リアムはごくりと喉を鳴らすと、女の顎を持ち上げた。庇護欲を掻き立てられる下がり気味の目で縋るように見上げられれば、理性など飛んでしまいそうだった。
「あなたは優しい人だな。心配しなくても私があの女の元へ戻る事は二度とない。あの時はどうかしていたんだ。きっと国に広まりつつあった邪気に疲弊していた時に現れた聖女に、ありもしない幻想を抱いていたのかもしれない。平民の女よりあなたの方がずっと美しい」
「その言葉を信じてもよいのですか?」
唇が近づき、止まる。
「王太子の言葉が信じられないのか?」
「信じております。それでもこの気持ちは信頼とは関係ないのです」
「気持ちとは?」
「嫉妬ですよ、愛しております。リアム様」
小さく濡れた唇が薄く開いてぴったりと隙間なく唇を塞いでくる。リアムは貪るようにその口内を蹂躙しながら再びシャツを脱ぎ捨てると、寝台に押し倒した。
窓から光が差し込み始める。今度は起きない女の肩に薄い毛布を掛けてやると、静かに部屋を出た。気を効かせて誰もいない広い屋敷の中を足早に出ていく。一晩待たせていた御者の待つ馬車に近づくと一人きりになった馬車の中で深い息を吐いた。座席に沈むと身体から微かに情事の残り香がする。口元を押さえながら目を瞑った。
「どちらにしてももう戻れないな」
走り出した馬車の窓からちらりと今出てきた屋敷を見上げると、二階の窓のカーテンが少しだけ開けられているのが目に入った。
「またうるさく言ってきそうだ」
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