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49 後悔しても
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優しい水音と共にアレクとパールは何度も舌を絡ませていた。息が上がり、パールが胸元の釦を外そうとした所で、アレクにその手首を掴まれた。
「駄目だよ。この先へ進むのはきちんと婚約をしてからじゃないと」
しかし駄々をこねるように首を振りながら、パールはアレクの首筋に吸い付いた。
「パール! 本当に駄目だよ」
「どうして駄目なのです? 好きなのは私だけですか?」
「そうじゃない! 僕もパールが大好きだ。だからこそちゃんと正式に婚約を結びたいんだよ」
しかしパールの手が下肢に伸びていく。びくりと身体を震わせたアレクは、強引にパールの肩を押した。急性に引き離されたパールは不満そうに唇を尖らせた。
「ここへ来てからアレク様は口付けしかして下さいません。そんなにお嫌ですか?」
するとアレクは痛々しい顔で俯いた。
「そんなにしたがると言う事は、その、パールはもうすでに、その……」
「純潔じゃないと? そうお聞きになりたいのですか?」
アレクは顔を上げると、すぐに頬に触れた。
「疑っている訳じゃないんだ! でも平民はそういった経験が早いと聞くから、その、もしかしたら相手がいたのかもって」
パールは下から掬うような口付けをすると、アレクの胸に飛び込んだ。
「私は誰も受け入れた事はございません! こんな事もアレク様とが初めてです。ただ、友人達の話などは聞いた事があるので、貴族のご令嬢の方々よりは知識があるかもしれません。お嫌ですか?」
「知識……そうか。でもこういう事はここまでにしよう。僕は君を大事にしたいんだ。必ず陛下のお許しを頂くよ」
パールはアレクの胸に無表情で擦り寄った。その時、部屋の扉が叩かれる。最初は返事をしなかったアレクだったが、扉を叩く音は次第に激しくなりとうとう扉を開けた。
「良かったアレク! 部屋にいたのね!」
母親は開いた部屋の隙間から見えた女に目を見開いたが、それには何も言わずにアレクの腕を掴んだ。
「ヴィルヘルミナ帝国と戦争が始まるのよ!」
「陛下がどうにかなさるでしょう。そんなに一大事なら、僕の所じゃなくてもっと行きたい場所あるんじゃないですか?」
「あなたは誤解をしているわ。いいえ、私が悪いのだけれど……」
「認めるんですね! 僕には構わずどうぞ逃げて下さい。ああ、父上にも構わないで下さいね。きっと死に際まであなたの顔など見たく……」
激しい平手打ちが飛ぶ。アレクの身体がよろけて扉にぶつかった。
「アレク様! 大丈夫ですか?」
「あなたも早くヴォルフ侯爵家に戻り、家に返してもらいなさい。娘が一人敵国にいるなどご家族もさぞご心配しているわよ」
「!?」
「あなたの事は調べました。ヴォルフ侯爵が囲っているヴィルヘルミナ敵国からの間者だという事をね」
その時、今度アレクの平手打ちが飛んだ。母親は廊下に倒れすぐに護衛の騎士が支える。驚いたまま固まっている母親の横を大股で通り過ぎると、アレクはパールお腕を掴んで歩き出した。
「アレク様、あの方は?」
「……母だった人だよ」
パールが後ろを振り返り掛けた所で手を引くアレクの力は強くなった。
「あんな女、君が気にしなくていいよ。汚らわしい!」
「汚らわしいとはどういう事です?」
すると大股で歩いていた足は突如止まってパールの両肩に手を置いた。
「あの女は不貞行為を働いていたんだ。夫がいるのに」
「でも珍しい事ではないのでは?」
すると驚いたようにアレクは目を見開いた後、ふっと息を吐いた。
「確かに珍しい事ではないよ。でもあの女は王妃だったんだ。だからそれは国を裏切る行為なんだ。だからこそ僕は貞淑な妻を望むし、相手にもそうありたいと思う」
「私を抱かれない理由はそれですか?」
怒りで強張っていたアレクの頬にさっと赤みが指す。年相応に恥ずかしがった態度でそっとパールの身体を包み込んだ。
「大事にしたいんだ。落ち着いたらアメジスト王国に住まいを移してくれないか? 何不自由ない暮らしを約束する」
返事のないパールの顔を覗き込もうとした時、パールの視線はアレクの肩越し、廊下の先へと釘付けになっていた。アレクも不審に思いながらその視線を追う。そこにはクラウスを先頭とした、今のこの国の中枢を担う者達が回廊を進んでいた所だった。
「陛下達だ。君を紹介したい所だけど、今は止めた方がいいみたいだね」
その瞬間、パールは走り出していた。
突然現れた見ず知らずの女はクラウスの前に飛び出した。護衛達が一斉に構えるがその前を通り過ぎると、後ろでマントを被っていた者の前に膝を着いた。
「必ず生きていらっしゃると信じておりました!」
気怠そうにマントが外され、さらりとした白銀の髪が流れる。パールは眩しいものでも見るように目を細めながら小刻みに身体を震わせていた。
「パール? 何をしているんだ!」
無理やりパールの腕を引いたアレクは、マントを被っていた男の姿を見て言葉を失っていた。
「……お前はあの時に城を襲ってきた奴だ。パール、まさかこの男を知っている訳じゃないよね?」
「ヘルムート様、よくぞご無事で!」
もうアレクなど見えていないかのような態度にアレクはパールの身体を思い切り引き寄せた。細い身体は軽々と腕の中に収まる。しかしパールは今までに見た事のないような顔で睨みつけてくると、その腕から逃れようと身を捩った。
「殿下が行方不明と知り居ても立っても居られずこうして秘密裏に入国していたのです! さあヘルムート様、共に帰りましょう!」
「お前はもっと賢いと思っていたんだがな。状況をよく見ろ、どうやったら帰れるように見える? 私は囚われているんだぞ」
手錠を掛けられた手を上げて見せると、パールは激しい怒りを湛えてクラウスを睨みつけた。
「この方がどなたか分かっているの? ヴィルヘルミナ帝国の皇太子殿下よ!」
「馬鹿者、お前こそ二度目はないぞ。この方はアメジスト王国の国王陛下だ。お前ごときがそう話しかけてよい相手ではない」
「も、申し訳ございません! なんでもお言いつけを守りますからどうかパールを捨てないで下さい!」
騎士がパールの腕を掴むと強引に引き離した。
「その女も密入国者のようだな。牢に入れておけ」
「パールの身分は僕が保証します! 牢などあんまりです兄上!」
すると、ヘルムートは鼻で笑った。
「お前も随分上手く入り込んだものだ。おっと、私の指示ではないぞ。何せずっとエーリカと暮らしていたんだからな」
「エーリカ?」
パールの視線がクラウスの隣りにいたエーリカに向く。強い視線で睨み付けられた時、クラウスの背がその視線を遮った。
「これ以上は意図的な足止めとみなすぞ!」
一行から切り離されるように騎士に連行されていくパールの腕を掴んだアレクは、今まで向けられていた優しい顔とは似ても似つかない表情を向けられ、その場に立ち尽くした。
アレクは気がつくと父親の病室の前に立っていた。
開ける事もせずただ部屋の前に立ち尽くしていると、扉が静かに開く。
「来てくれたのね」
母親の頬は赤くなっており、その痛々しさに顔を歪める。その瞬間、優しい腕が背中に回っていた。
「中へ入りましょう。お父様がお待ちよ」
数ヶ月振りに入る部屋の中、ベッドの上で父親は眠っていた。
「先程息を引き取られたの。ずっと頑張っておられたからもういいわよね?」
「いいも何も、僕は」
言葉にならない言葉が出ない代わりに視界が歪み、涙が次から次に溢れてくる。そのまま膝から崩れ落ちた。
「私のせいでこの人にもあなたにも誤解を招いたまま苦しめてしまったわ。本当にごめんなさい」
「誤解?」
「あなたは紛れもなくこの人の子よ。それは断言出来ます」
「それなら何故! 何故はっきりとそう言ってくれなかったのです!」
「それは半分真実で、半分が嘘だったからよ。あなたはこの人の子。でも不義を働いたのも事実だったわ」
「父上を愛してはいなかったのですか?」
「あの時は周囲の目に耐えきれなくなってしまったの。このまま子が出来なければ側室を、妾をという声が日に日に大きくなり、寝所へ女が送り込まれる事態も何度も起きたわ。私はそれで心が壊れてしまったの。なんとしても子を授からなければと追い詰められてしまった。その時、ふと近付いてきた者と関係を持ってしまった。今思えば策略だったのかもしれないけれど、あの時の私には正常な判断が出来ていなかった」
「相手、とは?」
言い淀んでいたが、アレクはふと呟くようにその名を口にした。
「ヴォルフ公爵ですか?」
「あの男はお前が自分の子だと思っている。だからお前を王位につけようとしているのよ」
「だから僕に近付いてきたのか」
アレクはゆらりと立ち上がると、部屋を出て行こうとした。
「どこへ行くの? アレク?」
「僕はここに居るべき人間ではありません。少しだけ、時間を下さい」
「アレク危険な事はしないで。お願いだから!」
その言葉には返事も振り返る事もなく、静かに部屋を出て行った。
「駄目だよ。この先へ進むのはきちんと婚約をしてからじゃないと」
しかし駄々をこねるように首を振りながら、パールはアレクの首筋に吸い付いた。
「パール! 本当に駄目だよ」
「どうして駄目なのです? 好きなのは私だけですか?」
「そうじゃない! 僕もパールが大好きだ。だからこそちゃんと正式に婚約を結びたいんだよ」
しかしパールの手が下肢に伸びていく。びくりと身体を震わせたアレクは、強引にパールの肩を押した。急性に引き離されたパールは不満そうに唇を尖らせた。
「ここへ来てからアレク様は口付けしかして下さいません。そんなにお嫌ですか?」
するとアレクは痛々しい顔で俯いた。
「そんなにしたがると言う事は、その、パールはもうすでに、その……」
「純潔じゃないと? そうお聞きになりたいのですか?」
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「疑っている訳じゃないんだ! でも平民はそういった経験が早いと聞くから、その、もしかしたら相手がいたのかもって」
パールは下から掬うような口付けをすると、アレクの胸に飛び込んだ。
「私は誰も受け入れた事はございません! こんな事もアレク様とが初めてです。ただ、友人達の話などは聞いた事があるので、貴族のご令嬢の方々よりは知識があるかもしれません。お嫌ですか?」
「知識……そうか。でもこういう事はここまでにしよう。僕は君を大事にしたいんだ。必ず陛下のお許しを頂くよ」
パールはアレクの胸に無表情で擦り寄った。その時、部屋の扉が叩かれる。最初は返事をしなかったアレクだったが、扉を叩く音は次第に激しくなりとうとう扉を開けた。
「良かったアレク! 部屋にいたのね!」
母親は開いた部屋の隙間から見えた女に目を見開いたが、それには何も言わずにアレクの腕を掴んだ。
「ヴィルヘルミナ帝国と戦争が始まるのよ!」
「陛下がどうにかなさるでしょう。そんなに一大事なら、僕の所じゃなくてもっと行きたい場所あるんじゃないですか?」
「あなたは誤解をしているわ。いいえ、私が悪いのだけれど……」
「認めるんですね! 僕には構わずどうぞ逃げて下さい。ああ、父上にも構わないで下さいね。きっと死に際まであなたの顔など見たく……」
激しい平手打ちが飛ぶ。アレクの身体がよろけて扉にぶつかった。
「アレク様! 大丈夫ですか?」
「あなたも早くヴォルフ侯爵家に戻り、家に返してもらいなさい。娘が一人敵国にいるなどご家族もさぞご心配しているわよ」
「!?」
「あなたの事は調べました。ヴォルフ侯爵が囲っているヴィルヘルミナ敵国からの間者だという事をね」
その時、今度アレクの平手打ちが飛んだ。母親は廊下に倒れすぐに護衛の騎士が支える。驚いたまま固まっている母親の横を大股で通り過ぎると、アレクはパールお腕を掴んで歩き出した。
「アレク様、あの方は?」
「……母だった人だよ」
パールが後ろを振り返り掛けた所で手を引くアレクの力は強くなった。
「あんな女、君が気にしなくていいよ。汚らわしい!」
「汚らわしいとはどういう事です?」
すると大股で歩いていた足は突如止まってパールの両肩に手を置いた。
「あの女は不貞行為を働いていたんだ。夫がいるのに」
「でも珍しい事ではないのでは?」
すると驚いたようにアレクは目を見開いた後、ふっと息を吐いた。
「確かに珍しい事ではないよ。でもあの女は王妃だったんだ。だからそれは国を裏切る行為なんだ。だからこそ僕は貞淑な妻を望むし、相手にもそうありたいと思う」
「私を抱かれない理由はそれですか?」
怒りで強張っていたアレクの頬にさっと赤みが指す。年相応に恥ずかしがった態度でそっとパールの身体を包み込んだ。
「大事にしたいんだ。落ち着いたらアメジスト王国に住まいを移してくれないか? 何不自由ない暮らしを約束する」
返事のないパールの顔を覗き込もうとした時、パールの視線はアレクの肩越し、廊下の先へと釘付けになっていた。アレクも不審に思いながらその視線を追う。そこにはクラウスを先頭とした、今のこの国の中枢を担う者達が回廊を進んでいた所だった。
「陛下達だ。君を紹介したい所だけど、今は止めた方がいいみたいだね」
その瞬間、パールは走り出していた。
突然現れた見ず知らずの女はクラウスの前に飛び出した。護衛達が一斉に構えるがその前を通り過ぎると、後ろでマントを被っていた者の前に膝を着いた。
「必ず生きていらっしゃると信じておりました!」
気怠そうにマントが外され、さらりとした白銀の髪が流れる。パールは眩しいものでも見るように目を細めながら小刻みに身体を震わせていた。
「パール? 何をしているんだ!」
無理やりパールの腕を引いたアレクは、マントを被っていた男の姿を見て言葉を失っていた。
「……お前はあの時に城を襲ってきた奴だ。パール、まさかこの男を知っている訳じゃないよね?」
「ヘルムート様、よくぞご無事で!」
もうアレクなど見えていないかのような態度にアレクはパールの身体を思い切り引き寄せた。細い身体は軽々と腕の中に収まる。しかしパールは今までに見た事のないような顔で睨みつけてくると、その腕から逃れようと身を捩った。
「殿下が行方不明と知り居ても立っても居られずこうして秘密裏に入国していたのです! さあヘルムート様、共に帰りましょう!」
「お前はもっと賢いと思っていたんだがな。状況をよく見ろ、どうやったら帰れるように見える? 私は囚われているんだぞ」
手錠を掛けられた手を上げて見せると、パールは激しい怒りを湛えてクラウスを睨みつけた。
「この方がどなたか分かっているの? ヴィルヘルミナ帝国の皇太子殿下よ!」
「馬鹿者、お前こそ二度目はないぞ。この方はアメジスト王国の国王陛下だ。お前ごときがそう話しかけてよい相手ではない」
「も、申し訳ございません! なんでもお言いつけを守りますからどうかパールを捨てないで下さい!」
騎士がパールの腕を掴むと強引に引き離した。
「その女も密入国者のようだな。牢に入れておけ」
「パールの身分は僕が保証します! 牢などあんまりです兄上!」
すると、ヘルムートは鼻で笑った。
「お前も随分上手く入り込んだものだ。おっと、私の指示ではないぞ。何せずっとエーリカと暮らしていたんだからな」
「エーリカ?」
パールの視線がクラウスの隣りにいたエーリカに向く。強い視線で睨み付けられた時、クラウスの背がその視線を遮った。
「これ以上は意図的な足止めとみなすぞ!」
一行から切り離されるように騎士に連行されていくパールの腕を掴んだアレクは、今まで向けられていた優しい顔とは似ても似つかない表情を向けられ、その場に立ち尽くした。
アレクは気がつくと父親の病室の前に立っていた。
開ける事もせずただ部屋の前に立ち尽くしていると、扉が静かに開く。
「来てくれたのね」
母親の頬は赤くなっており、その痛々しさに顔を歪める。その瞬間、優しい腕が背中に回っていた。
「中へ入りましょう。お父様がお待ちよ」
数ヶ月振りに入る部屋の中、ベッドの上で父親は眠っていた。
「先程息を引き取られたの。ずっと頑張っておられたからもういいわよね?」
「いいも何も、僕は」
言葉にならない言葉が出ない代わりに視界が歪み、涙が次から次に溢れてくる。そのまま膝から崩れ落ちた。
「私のせいでこの人にもあなたにも誤解を招いたまま苦しめてしまったわ。本当にごめんなさい」
「誤解?」
「あなたは紛れもなくこの人の子よ。それは断言出来ます」
「それなら何故! 何故はっきりとそう言ってくれなかったのです!」
「それは半分真実で、半分が嘘だったからよ。あなたはこの人の子。でも不義を働いたのも事実だったわ」
「父上を愛してはいなかったのですか?」
「あの時は周囲の目に耐えきれなくなってしまったの。このまま子が出来なければ側室を、妾をという声が日に日に大きくなり、寝所へ女が送り込まれる事態も何度も起きたわ。私はそれで心が壊れてしまったの。なんとしても子を授からなければと追い詰められてしまった。その時、ふと近付いてきた者と関係を持ってしまった。今思えば策略だったのかもしれないけれど、あの時の私には正常な判断が出来ていなかった」
「相手、とは?」
言い淀んでいたが、アレクはふと呟くようにその名を口にした。
「ヴォルフ公爵ですか?」
「あの男はお前が自分の子だと思っている。だからお前を王位につけようとしているのよ」
「だから僕に近付いてきたのか」
アレクはゆらりと立ち上がると、部屋を出て行こうとした。
「どこへ行くの? アレク?」
「僕はここに居るべき人間ではありません。少しだけ、時間を下さい」
「アレク危険な事はしないで。お願いだから!」
その言葉には返事も振り返る事もなく、静かに部屋を出て行った。
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