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序章 王子の夜伽
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豪華な一室に響き渡る肉を打つ卑猥な音と、艶めかしい女の喘ぎ声。
男は片手から溢れる程の胸を掌で掬いながら、動かす腰を早急にした。激しくなる水音に、短くなっていく息遣いが重なる。
「イーサンさまぁッ」
「もう、少しで……」
イーサンはただ一心不乱に、一箇所に集まっていく熱い快楽を取り零してしまわないよう目を瞑った。女は口づけをせがむように首を上げ、汗を掻いて少し湿った金色の髪の中に手を差し入れた。
「愛していますッ、イーサン様、私うれしいぃ」
女はもうすぐ果てそうなイーサンの唇に、そのぽってりとした唇を押し付けようとした時だった。
二人の顔の間にニュッと、もう一人の女の顔が現れた。
「イーサン王子、そのまま少しだけシャーロット様のお足を持てますか?」
「こ、こうか?」
イーサンはとっさに腰を止めると、言われるままに組み敷いていたシャーロットのほっそりとして滑らかな足を掴んだ。
「そうではなく、もっと上の方へ……」
「こ、こうか!?」
抱えていた足を持ち上げてみる。しかし女は眉を顰めて呆れたように首を振った。
「いえいえ、そうではなくてですね……」
「オノラ! はっきりと言ってくれ。どう持ったらいいんだ?」
オノラは少し迷いながら申し訳なさそうに広いベッドによじ登ると、シャーロットの両足を力任せにぐいっと持ち上げた。あられもない格好になったシャーロットは声にならない声で口をパクパクさせながら、怒りとも羞恥とも取れる顔でオノラを見上げていた。オノラは持ち上げた足をイーサンの肩に掛けると、素早くマントの中に隠した手で、美しい筋肉が付いたイーサンの背中をぐっと押した。そして上から伸し掛かるようになった体制を見て、オノラはさっとベッドから降りた。
「これで奥まで注げます。さあ、どうぞッ!」
明るく言われた室内で一瞬、短くも長い沈黙が流れた後、イーサンは気まずそうにそっとシャーロットの足を降ろした。
「今日はもう終わりだ」
「え?! 何故ですッ!」
大きな声を出したオノラとは裏腹に、飛び起きたシャーロットは目に入ったある一点をじっと見つめていた。オノラもつられて視線を向けると、さっきまでシャーロットの中を激しく突いていた逞しい物は、今はもう、それはそれは可愛らしく項垂れていた。
「とにかく今日は気分が乗らなかったんだ。もう二人共出て行ってくれ!」
イーサンは床に落ちていたガウンを勢いよく拾うと、肩に掛けて別室へと大股で歩いて行ってしまった。ベッドの上で一人取り残されたシャーロットは、扉が閉まる音で我に返ると立ち尽くすオノラをキッと睨み付けた。
「お前のせいよ! やっともう少しであのお方の子種を貰えたのに!」
シーツを鷲掴みにして身体に巻き付けると、さっきまで響いていた肉の音とは違い、乾いた破裂音が響いた。オノラは少しよろけて踏み留まると、更に突き飛ばされて床に倒れた。
「この事はエブリン王妃様にご報告するからそのつもりでいるようにね。さぞお前にがっかりされる事でしょう!」
「……ですがあの格好の方がより奥に子種が到達致します。おそらくシャーロット様は一度も達していらっしゃいませんでしたよね? そのような状態では子宮も下がってきてはおらず……」
「黙りなさい! お前ごときに何が分かるのよ!」
すると今度は腕を何度も振りながら殴り掛かってきた。正直、シャーロットにぶたれてもほとんど痛くはない。貴族の令嬢の腕はこうも細く筋力もないのかと心配になる程だった。
「誰か! 誰かいないの?! 部屋へ戻るわよ!」
シャーロットは喚き散らしながら扉を開けると、真夜中の廊下から幾つかの慌ただしい足音が近づいて来た。シャーロットを気遣う声や、オノラを罵る言葉が扉の防音で多少濁されて聞こえてくる。オノラは叩かれてた頬を擦りながら、一際大きな溜息を付いた。
「はぁ~~。もう辞めたい……」
男は片手から溢れる程の胸を掌で掬いながら、動かす腰を早急にした。激しくなる水音に、短くなっていく息遣いが重なる。
「イーサンさまぁッ」
「もう、少しで……」
イーサンはただ一心不乱に、一箇所に集まっていく熱い快楽を取り零してしまわないよう目を瞑った。女は口づけをせがむように首を上げ、汗を掻いて少し湿った金色の髪の中に手を差し入れた。
「愛していますッ、イーサン様、私うれしいぃ」
女はもうすぐ果てそうなイーサンの唇に、そのぽってりとした唇を押し付けようとした時だった。
二人の顔の間にニュッと、もう一人の女の顔が現れた。
「イーサン王子、そのまま少しだけシャーロット様のお足を持てますか?」
「こ、こうか?」
イーサンはとっさに腰を止めると、言われるままに組み敷いていたシャーロットのほっそりとして滑らかな足を掴んだ。
「そうではなく、もっと上の方へ……」
「こ、こうか!?」
抱えていた足を持ち上げてみる。しかし女は眉を顰めて呆れたように首を振った。
「いえいえ、そうではなくてですね……」
「オノラ! はっきりと言ってくれ。どう持ったらいいんだ?」
オノラは少し迷いながら申し訳なさそうに広いベッドによじ登ると、シャーロットの両足を力任せにぐいっと持ち上げた。あられもない格好になったシャーロットは声にならない声で口をパクパクさせながら、怒りとも羞恥とも取れる顔でオノラを見上げていた。オノラは持ち上げた足をイーサンの肩に掛けると、素早くマントの中に隠した手で、美しい筋肉が付いたイーサンの背中をぐっと押した。そして上から伸し掛かるようになった体制を見て、オノラはさっとベッドから降りた。
「これで奥まで注げます。さあ、どうぞッ!」
明るく言われた室内で一瞬、短くも長い沈黙が流れた後、イーサンは気まずそうにそっとシャーロットの足を降ろした。
「今日はもう終わりだ」
「え?! 何故ですッ!」
大きな声を出したオノラとは裏腹に、飛び起きたシャーロットは目に入ったある一点をじっと見つめていた。オノラもつられて視線を向けると、さっきまでシャーロットの中を激しく突いていた逞しい物は、今はもう、それはそれは可愛らしく項垂れていた。
「とにかく今日は気分が乗らなかったんだ。もう二人共出て行ってくれ!」
イーサンは床に落ちていたガウンを勢いよく拾うと、肩に掛けて別室へと大股で歩いて行ってしまった。ベッドの上で一人取り残されたシャーロットは、扉が閉まる音で我に返ると立ち尽くすオノラをキッと睨み付けた。
「お前のせいよ! やっともう少しであのお方の子種を貰えたのに!」
シーツを鷲掴みにして身体に巻き付けると、さっきまで響いていた肉の音とは違い、乾いた破裂音が響いた。オノラは少しよろけて踏み留まると、更に突き飛ばされて床に倒れた。
「この事はエブリン王妃様にご報告するからそのつもりでいるようにね。さぞお前にがっかりされる事でしょう!」
「……ですがあの格好の方がより奥に子種が到達致します。おそらくシャーロット様は一度も達していらっしゃいませんでしたよね? そのような状態では子宮も下がってきてはおらず……」
「黙りなさい! お前ごときに何が分かるのよ!」
すると今度は腕を何度も振りながら殴り掛かってきた。正直、シャーロットにぶたれてもほとんど痛くはない。貴族の令嬢の腕はこうも細く筋力もないのかと心配になる程だった。
「誰か! 誰かいないの?! 部屋へ戻るわよ!」
シャーロットは喚き散らしながら扉を開けると、真夜中の廊下から幾つかの慌ただしい足音が近づいて来た。シャーロットを気遣う声や、オノラを罵る言葉が扉の防音で多少濁されて聞こえてくる。オノラは叩かれてた頬を擦りながら、一際大きな溜息を付いた。
「はぁ~~。もう辞めたい……」
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