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第28話
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「トール・アンデックスね……。コレットのやつ、いつトールのフルネームなんて知ったのかしら? わたしだって忘れてたくらいなのに」
「うん、姉さんは忘れないでね。うちの家名なんだから。というか、姉さんが名乗りたければいつでも名乗って構わない、って父さんは言ってるけど?」
「アハハ……まあ、ここまで来たらね、もう本当の家名がわかるまで名乗ったら負けだと思ってる」
「思わないでよ~」
「ゴースト・コレットには、心を読む能力でもあったのかしら? テレパシー的な」
「ゴースト・コレットって……」
あとテレパシーってなに?
「たぶん違うと思うよ。結構単純で、コレットさんがゴーストだったなら、最初から見てたんじゃないかな、僕らが協会に入ったときから。透明な姿で。たぶん僕ら以外も、みんな見てた。王子を浄化できる存在をずっと待ってたんだと思う。それで、登録するときに姉さんが聖女だと知って――」
全ては推測に過ぎないけど、だったらコレットさんが僕のフルネームを知っていて、たぶん、クラスも知ったからこその、最後のアドバイスだったのだろう。
「そういえば姉さん、コレットさんも古城に来てるって気づいてたけど、いつからコレットさんがゴーストだってわかってたの?」
「ん~、割と最初からかな。ほら、私が聖女パンチでトールを殴ったときの驚き方、というか跳び上がり方、あれが気になって。おしとやかそうなお嬢様にしては、変だったでしょ」
「そう言われると……」
聖女パンチを食らったら一撃昇天。
強制的に浄化させられるのを恐れたのかもしれない。
「一度不審に思えば、あとはもう感覚的に、あーこの子霊体なんだな、ってことはわかったし。ま、聖女センサーね」
聖女センサー……?
「あー、だから姉さんの人見知りも発動しなかったんだ」
「ぶ~、生きてる人間の方が怖いのよ!」
「でもさ、相手がゴーストだってわかってたのに、クエストは受けたんだ? クエスト票が偽物かもって思わなかったの?」
「だって、報酬は本物だったし。しかも先払いよ」
確かに……。
僕は残されたアンサルディの赤のルベライトを見つめた。
「でも、これ売るの?」
間違いなく大金になるとは思うけど。
一躍大金持ちだ。
「……売ると祟られそうよね」
「あの2人なら祟らないと思うけど……しばらく売らずに持ち歩こうか?」
「そうね。どうしても売るのはお金に困ったとき。そのときはありがたーく換金させていただきましょう」
そのときの僕らはまだ、この赤のルベライトが世界を救う鍵となる宝石の一つだとは、思ってもみなかったのだ。
帰る前に、なんとなく3階のバルコニーに行こうという話になった。
最後に、王子と令嬢が愛した景色を眺めたいと思ったのだ。
2人の人物画を横目に階段を上がる。
バルコニーに出ると、ちょうど朝日が差しこむところで、ルベライトがコレットさんの髪や瞳の色のように、ピンクがかった赤色に輝いていた。
「そういえば、ルベライトって愛情を意味する宝石なんだっけ」
「うん、姉さんは忘れないでね。うちの家名なんだから。というか、姉さんが名乗りたければいつでも名乗って構わない、って父さんは言ってるけど?」
「アハハ……まあ、ここまで来たらね、もう本当の家名がわかるまで名乗ったら負けだと思ってる」
「思わないでよ~」
「ゴースト・コレットには、心を読む能力でもあったのかしら? テレパシー的な」
「ゴースト・コレットって……」
あとテレパシーってなに?
「たぶん違うと思うよ。結構単純で、コレットさんがゴーストだったなら、最初から見てたんじゃないかな、僕らが協会に入ったときから。透明な姿で。たぶん僕ら以外も、みんな見てた。王子を浄化できる存在をずっと待ってたんだと思う。それで、登録するときに姉さんが聖女だと知って――」
全ては推測に過ぎないけど、だったらコレットさんが僕のフルネームを知っていて、たぶん、クラスも知ったからこその、最後のアドバイスだったのだろう。
「そういえば姉さん、コレットさんも古城に来てるって気づいてたけど、いつからコレットさんがゴーストだってわかってたの?」
「ん~、割と最初からかな。ほら、私が聖女パンチでトールを殴ったときの驚き方、というか跳び上がり方、あれが気になって。おしとやかそうなお嬢様にしては、変だったでしょ」
「そう言われると……」
聖女パンチを食らったら一撃昇天。
強制的に浄化させられるのを恐れたのかもしれない。
「一度不審に思えば、あとはもう感覚的に、あーこの子霊体なんだな、ってことはわかったし。ま、聖女センサーね」
聖女センサー……?
「あー、だから姉さんの人見知りも発動しなかったんだ」
「ぶ~、生きてる人間の方が怖いのよ!」
「でもさ、相手がゴーストだってわかってたのに、クエストは受けたんだ? クエスト票が偽物かもって思わなかったの?」
「だって、報酬は本物だったし。しかも先払いよ」
確かに……。
僕は残されたアンサルディの赤のルベライトを見つめた。
「でも、これ売るの?」
間違いなく大金になるとは思うけど。
一躍大金持ちだ。
「……売ると祟られそうよね」
「あの2人なら祟らないと思うけど……しばらく売らずに持ち歩こうか?」
「そうね。どうしても売るのはお金に困ったとき。そのときはありがたーく換金させていただきましょう」
そのときの僕らはまだ、この赤のルベライトが世界を救う鍵となる宝石の一つだとは、思ってもみなかったのだ。
帰る前に、なんとなく3階のバルコニーに行こうという話になった。
最後に、王子と令嬢が愛した景色を眺めたいと思ったのだ。
2人の人物画を横目に階段を上がる。
バルコニーに出ると、ちょうど朝日が差しこむところで、ルベライトがコレットさんの髪や瞳の色のように、ピンクがかった赤色に輝いていた。
「そういえば、ルベライトって愛情を意味する宝石なんだっけ」
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