27 / 29
第27話
しおりを挟む
「光明神ルクスベル――。
光差す天界の主にして、安らかなる魂の守護者よ――。
異界の転生者にして聖女のクラスを与えら れし、ユースフィアが請い願う――。
死者の理を外れし、哀れなる男女――。
1人はベルディナット・ヴァン・アンサルディ――。
もう1人はコレット・ロゼ・ネフライト――。
さまよえる彼らの魂を、あなたの御許たる天界まで誘い、導きたまえ――」
姉さんがルクスベルへ祈りを捧げていると、唐突に王子の頭が動いた。
一言、二言、僕らには届かない程度の声音で、コレットさんにだけ何かを告げる。
「どうしたの、ベルディナット……ああ、ええ、そう、そうだったわね。私の方が忘れているだなんてダメね」
コレットさんが姉さんを見やった。
「ユースフィアさん」
「はい?」
「その手の甲のアザ――いえ、紋章を、私は自国の王宮で見たことがあります。もし気になるようでしたら、一度隣国――グリンスフェンを訪ねてみるといいかもしれません」
まさか、こんなところで姉さんのアザの秘密の一端が明らかになるなんて……。
「それとトール・アンデックスさん。これはただのお節介かもしれませんが、いつか後悔しないよう、すれ違わぬよう、正直に伝えた方がいいこともあります。私たちのような過ちを繰り返さないよう祈っております」
王子と令嬢が手を取り合った。
『2人とも、本当にお世話になりました。ありがとう、さようなら――』
こうして、黒衣の王子ベルディナットとコレットさんは、白銀の光の中に溶けるように消えていった。
細かな光の粒が天に昇っていく。
どこか、スラッシュが浄化されたときと似ていると感じた。
そして、魔法の光に照らされた暗闇と静寂だけが残された。
光差す天界の主にして、安らかなる魂の守護者よ――。
異界の転生者にして聖女のクラスを与えら れし、ユースフィアが請い願う――。
死者の理を外れし、哀れなる男女――。
1人はベルディナット・ヴァン・アンサルディ――。
もう1人はコレット・ロゼ・ネフライト――。
さまよえる彼らの魂を、あなたの御許たる天界まで誘い、導きたまえ――」
姉さんがルクスベルへ祈りを捧げていると、唐突に王子の頭が動いた。
一言、二言、僕らには届かない程度の声音で、コレットさんにだけ何かを告げる。
「どうしたの、ベルディナット……ああ、ええ、そう、そうだったわね。私の方が忘れているだなんてダメね」
コレットさんが姉さんを見やった。
「ユースフィアさん」
「はい?」
「その手の甲のアザ――いえ、紋章を、私は自国の王宮で見たことがあります。もし気になるようでしたら、一度隣国――グリンスフェンを訪ねてみるといいかもしれません」
まさか、こんなところで姉さんのアザの秘密の一端が明らかになるなんて……。
「それとトール・アンデックスさん。これはただのお節介かもしれませんが、いつか後悔しないよう、すれ違わぬよう、正直に伝えた方がいいこともあります。私たちのような過ちを繰り返さないよう祈っております」
王子と令嬢が手を取り合った。
『2人とも、本当にお世話になりました。ありがとう、さようなら――』
こうして、黒衣の王子ベルディナットとコレットさんは、白銀の光の中に溶けるように消えていった。
細かな光の粒が天に昇っていく。
どこか、スラッシュが浄化されたときと似ていると感じた。
そして、魔法の光に照らされた暗闇と静寂だけが残された。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる