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第12話
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なんてこったい。
まあ、だからこそ基本ヒーラーは後方なんだろうけど。
「ほら、姉さん手を出して。……手負いは揺れる、森のゆりかご」
いわゆるヒールの魔法だ。
緑色の光と共に傷が癒えていく。
「いつもすまないわね。そういえば、トールって昔から使えてたわよね。炎の矢もそうだけど」
「うん。父さんに教わったからね」
僕らを育ててくれた老神官のことだ。
かつては王都の大神殿に務めていたらしいけど、詳しいことは知らない。
成人の儀式を受ける前から魔法を使えるのは珍しいと言われてたけど、自分のクラス・プレートを見た今なら、何となく理由がわかる。
たぶん、そのために与えられた能力なんだろう。
その後、クラスレベルを3まで上げた僕と姉さんは、今度こそ――と意気込んで冒険者協会へ向かおうとしたのだけど、
『ピピィィ……』
「どうしのよ、スラッシュ?」
声が弱々しい。
よく見ると、
「ああ……!? スラッシュの体が溶けてるっ!」
「ど、どういうことよ!?」
「そうだ……。スラッシュは、見た目はアレだけどれっきとした魔物。姉さんの純粋な聖女の力に長時間触れ続けて、浄化されてしまったんだよ!」
「ヒールは平気だったのに!?」
「うん。癒やしの力とはまた別だから」
そんな話をしている間にも、スライモの全身から白い煙のようなものがた立ち上り続ける。
そして、
「え、え、嘘っ!? スラッシュ? スラッシュゥゥ――ッ!?」
『ピィィ……』
こうして僕らの初めての仲間は、遺体すら残さず空と大地に帰ってしまった。
石を積み、小さなお墓を建てる。
姉さんと一緒に、父さんから教わった聖句を唱えた。
「モンスターでもずっと一緒にはいられないんだ……」
「姉さん?」
「ううん、なんでもない。さあ、冒険者協会に乗りこむわよっ!」
いつもの姉さんみたいに、こういうことも3歩あるいて忘れられたらいいのに……。
まあ、だからこそ基本ヒーラーは後方なんだろうけど。
「ほら、姉さん手を出して。……手負いは揺れる、森のゆりかご」
いわゆるヒールの魔法だ。
緑色の光と共に傷が癒えていく。
「いつもすまないわね。そういえば、トールって昔から使えてたわよね。炎の矢もそうだけど」
「うん。父さんに教わったからね」
僕らを育ててくれた老神官のことだ。
かつては王都の大神殿に務めていたらしいけど、詳しいことは知らない。
成人の儀式を受ける前から魔法を使えるのは珍しいと言われてたけど、自分のクラス・プレートを見た今なら、何となく理由がわかる。
たぶん、そのために与えられた能力なんだろう。
その後、クラスレベルを3まで上げた僕と姉さんは、今度こそ――と意気込んで冒険者協会へ向かおうとしたのだけど、
『ピピィィ……』
「どうしのよ、スラッシュ?」
声が弱々しい。
よく見ると、
「ああ……!? スラッシュの体が溶けてるっ!」
「ど、どういうことよ!?」
「そうだ……。スラッシュは、見た目はアレだけどれっきとした魔物。姉さんの純粋な聖女の力に長時間触れ続けて、浄化されてしまったんだよ!」
「ヒールは平気だったのに!?」
「うん。癒やしの力とはまた別だから」
そんな話をしている間にも、スライモの全身から白い煙のようなものがた立ち上り続ける。
そして、
「え、え、嘘っ!? スラッシュ? スラッシュゥゥ――ッ!?」
『ピィィ……』
こうして僕らの初めての仲間は、遺体すら残さず空と大地に帰ってしまった。
石を積み、小さなお墓を建てる。
姉さんと一緒に、父さんから教わった聖句を唱えた。
「モンスターでもずっと一緒にはいられないんだ……」
「姉さん?」
「ううん、なんでもない。さあ、冒険者協会に乗りこむわよっ!」
いつもの姉さんみたいに、こういうことも3歩あるいて忘れられたらいいのに……。
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