上 下
11 / 29

第11話

しおりを挟む
「きっとあなたはパーティのマスコット的な存在になるのね。それで、いずれは強力なスキルを身に着けてわたしたちをサポート。大活躍するようになるのよ!」

「スライモってそんな強くなるのかな? でも姉さんのペットだからなあ……」


 意外性の塊に見えてきた。
 すると、


『ピ、ピピィィィ――ッ!』

「え? え? な、何が起きたのよ、スラッシュ!?」


 茂みの中から、ホーンラビットがガサゴソ草をかき分けながら姿を見せた。


「か、かわいい!」

「姉さん、かわいいけど魔物だからね!」


 どれだけかわいかろうと、額に角の生えた大きなウサギは魔物の一種でしかない。

 こちらの一瞬の油断を突いて襲ってきた。

 聖女らしく、手に杖の一本でも持っていればよかったんだろうけど、それすらない姉さんは、ホーンラビットの体当たりを必死に手で食い止める。


「くっ!」

「ユフィ姉さん!? ……それは燃え走る炎の射手!」


 炎の矢の魔法がホーンラビットに突き刺さる。突き刺さった箇所から炎が噴き上がり、全身が焼け焦げた。


「やったかな……?」


 すると、新たに草むらからもう一匹のホーンラビットが姿を現す。


「姉さん危ない!」

『ピィィ――ッ!』


 角を前に突撃する大ウサギを、スライモが体当たりで食い止めた。


「ナイス、スラッシュ!」

『ピィィ!』


 スライモとの連携。
 スラッシュと入れ替わりながら、僕は護身用のナイフを引き抜くと、ホーンラビットの急所――首の付け根に刃を突き刺し、一撃で仕留めた。


「おおっ、やるわねトール」

「なんだかんだで、スライモと並んで弱い魔物の代表格だからねぇ」


 やはり食用になるから、狩人にとっては最良の獲物の一匹でもある。


「って、それより姉さん手は大丈夫?」


 赤く血が滲んでいる。


「ううっ……わたしは今日、一つの真実を知ったわ。自分が痛いと、痛みで集中できないからヒールが使えない!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

処理中です...