9 / 29
第9話
しおりを挟む
こうして街の外に出ると、僕らは早速スライム――正確にはスライムもどきの〝スライモ〟と呼ばれている魔物の一種に出会った。
ちなみに本物のスライムは、迷宮や森の奥深くなどに生息している粘液質のドロドロした生物だ。
人の身体を溶かしてしまう恐ろしいモンスターで、万が一取りこまれてしまうと、金属の剣や鎧だけが残るという。
だから、誰が亡くなったかわかるようにクラス・プレートは金属製らしい。
そんな本家に比べてスライモは、大きなもちもちした団子の塊のようで、体当たりされてもそこまで大怪我はしない。
痛いことは痛いけど。
もちろん溶かす能力もないので、最弱の名を欲しいままにしていた。
「スライモ! ここであったが百年目! 今日こそお前を倒してみせるわ!」
「姉さん、昨日も棒で叩いて倒してたよね」
さっきも食べてたけど、食用になるのだ。
味はタロイモに似ている。
「いいの! 昨日はまだすっぴんみたいなものだったから。聖女としてモンスターとの初めてのバトルだもの、しっかり聖女のスキルを使って倒してみせるわ」
「そっか。聖女のスキルって特殊なものも多いだろうし、事前にどんな能力なのか使っておくのも大事だよね。さっきは回復しちゃったし」
「そーいうことよ! さあ、行くわよ! わたしの右手が聖なる光で輝き満ちる――」
姉さんの右拳が白銀の魔力に包まれていく……ひょっとしてこれは!?
「今必殺のぉぉ――っ、聖女パァァ――ンチッ!」
ユフィ姉さんは勢いよく駆け出すと、勢いよく左足で踏みこんだ。と同時に右拳に全体重を乗せて、スライモに叩きこむ。
「それ聖女関係ないよねっ!? ただ力任せに殴りつけただけだよねっ!?」
とはいえ、ぶっちゃけスライモぐらいならそれでも十分倒せるはずだったのに、スライモはボールのように跳ねただけで、びくともしていない。
「最近甘いモノの食べすぎてこっそり体重が増えたのを気にしている姉さんの、重い一撃を食らっても平気だなんて……」
「ちょ、なんで知ってるのよ!? 聖女パンチィィ――ッ!」
「それ敵違い――あだっ!? あ……ん?」
確かに痛い、痛いのだけど、
「姉さん、その手の光って?」
「ヒールだけど?」
「だからそれ回復魔法だよね!? 神殿でもみんなを癒やしてたじゃん! どうりで痛いと思った瞬間に痛みが引いたと思ったら……ほら、スライモの体を見てみなよ! なんだか表面がつやつやしてるよ!」
ちなみに本物のスライムは、迷宮や森の奥深くなどに生息している粘液質のドロドロした生物だ。
人の身体を溶かしてしまう恐ろしいモンスターで、万が一取りこまれてしまうと、金属の剣や鎧だけが残るという。
だから、誰が亡くなったかわかるようにクラス・プレートは金属製らしい。
そんな本家に比べてスライモは、大きなもちもちした団子の塊のようで、体当たりされてもそこまで大怪我はしない。
痛いことは痛いけど。
もちろん溶かす能力もないので、最弱の名を欲しいままにしていた。
「スライモ! ここであったが百年目! 今日こそお前を倒してみせるわ!」
「姉さん、昨日も棒で叩いて倒してたよね」
さっきも食べてたけど、食用になるのだ。
味はタロイモに似ている。
「いいの! 昨日はまだすっぴんみたいなものだったから。聖女としてモンスターとの初めてのバトルだもの、しっかり聖女のスキルを使って倒してみせるわ」
「そっか。聖女のスキルって特殊なものも多いだろうし、事前にどんな能力なのか使っておくのも大事だよね。さっきは回復しちゃったし」
「そーいうことよ! さあ、行くわよ! わたしの右手が聖なる光で輝き満ちる――」
姉さんの右拳が白銀の魔力に包まれていく……ひょっとしてこれは!?
「今必殺のぉぉ――っ、聖女パァァ――ンチッ!」
ユフィ姉さんは勢いよく駆け出すと、勢いよく左足で踏みこんだ。と同時に右拳に全体重を乗せて、スライモに叩きこむ。
「それ聖女関係ないよねっ!? ただ力任せに殴りつけただけだよねっ!?」
とはいえ、ぶっちゃけスライモぐらいならそれでも十分倒せるはずだったのに、スライモはボールのように跳ねただけで、びくともしていない。
「最近甘いモノの食べすぎてこっそり体重が増えたのを気にしている姉さんの、重い一撃を食らっても平気だなんて……」
「ちょ、なんで知ってるのよ!? 聖女パンチィィ――ッ!」
「それ敵違い――あだっ!? あ……ん?」
確かに痛い、痛いのだけど、
「姉さん、その手の光って?」
「ヒールだけど?」
「だからそれ回復魔法だよね!? 神殿でもみんなを癒やしてたじゃん! どうりで痛いと思った瞬間に痛みが引いたと思ったら……ほら、スライモの体を見てみなよ! なんだか表面がつやつやしてるよ!」
0
よかったら他の作品も読んでみてください。タイトルを見て、少しでも興味を持った作品があれば、試しに読んでいただけるとうれしいです。
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
とりかえばや聖女は成功しない
猫乃真鶴
ファンタジー
キステナス王国のサレバントーレ侯爵家に生まれたエクレールは、ミルクティー色の髪を持つという以外には、特別これといった特徴を持たない平凡な少女だ。
ごく普通の貴族の娘として育ったが、五歳の時、女神から神託があった事でそれが一変してしまう。
『亜麻色の乙女が、聖なる力でこの国に繁栄をもたらすでしょう』
その色を持つのは、国内ではエクレールだけ。神託にある乙女とはエクレールの事だろうと、慣れ親しんだ家を離れ、神殿での生活を強制される。
エクレールは言われるがまま厳しい教育と修行を始めるが、十六歳の成人を迎えてもエクレールに聖なる力は発現しなかった。
それどころか成人の祝いの場でエクレールと同じ特徴を持つ少女が現れる。しかもエクレールと同じエクレール・サレバントーレと名乗った少女は、聖なる力を自在に操れると言うのだ。
それを知った周囲は、その少女こそを〝エクレール〟として扱うようになり——。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる