7 / 29
第7話
しおりを挟む
「はぁ~、失礼しちゃうわ、この神殿。1年は近づいてあげないんだから!」
「まあ、どのみちクラスチェンジできるのは1年後だから、1年は近づく必要ないんだけどね」
神殿の長い参道に出店している屋台で、串に刺さったスライモ焼きを購入した。
食べ歩きをしながら、今後の方針を相談する。
「でも姉さん、実際これからどうするの? 聖女ともなれば各地の神殿や教団から引っ張りだこだとは思うんだけど……嫌なら一度、村に帰る?」
「はぐっ! もひろん、魔王討伐するわほぉ!」
「えー、まだ言ってるのー」
「ははら何度も言ってるへしょ」
ゴクリ、と姉さんはスライモ焼きを飲みこんだ。
「前世で死んだわたしは、神様に会って、聖女の力を授けてもらう代わりに、この世界の魔王を倒すよう頼まれたんだって。確か、30年以内に倒さないと世界が滅びるとか」
「それかなりヤバい状況だよねっ!?」
世界が滅びるとかおかしいでしょ。
「またまた、姉さん流石にそれは盛り過ぎというか冗談――」
「ううん、本当。思い出してきた。だから、わたし聖女としても最初から色んな能力を与えられてるの。つまり聖女は聖女でも、そんじゃそこらの聖女とは違う――そう、わたしはいわば……大聖女なんだよっ!」
「急に安っぽい!」
とはいえ、とはいえだ……。
そういえば、最初から広範囲に高レベルのヒールみたいなのを使っていた。
『白い抱擁』だっけ?
成人の儀式を受けてすぐというのは、流石にありえない。
普通はもう少し修行してから……
「えっと姉さん、その話が本当なら、やっぱり姉さんは勇者と旅をした方が」
「嫌よ、知らない人と旅するなんて」
「そりゃ、勇者とは初めて会うんだから知らない人なんだろうけど……」
姉さんが赤い顔して頬を膨らませた。
「あ、ああ~、そうだった! というか、すっかり忘れてた。ごめん、ユフィ姉さん、こんなだけど人見知りなんだっけ!」
田舎の村は、魔物でも出ない限り、滅多に外部の人が訪れないので、姉さんの人見知りが発動することはほとんどなかったのだ。
だから、最初のころは大変だった。
「こんなとは何よっ!?」
おそらく、記憶は失っていても、幼少時の馬車の襲撃で、よほど恐ろしい目に遭ったのだろう。
初めて会う人に対して、トラウマになっているんだと思う。
そしてそれは今も治っていない。
心の傷なのだ。
「じゃ、どうするの姉さん。いくら姉さんが聖女――」
「大聖女っ!」
「あー、大聖女でも、僕と2人だけじゃ魔王は倒せっこないよ?」
「まあ、どのみちクラスチェンジできるのは1年後だから、1年は近づく必要ないんだけどね」
神殿の長い参道に出店している屋台で、串に刺さったスライモ焼きを購入した。
食べ歩きをしながら、今後の方針を相談する。
「でも姉さん、実際これからどうするの? 聖女ともなれば各地の神殿や教団から引っ張りだこだとは思うんだけど……嫌なら一度、村に帰る?」
「はぐっ! もひろん、魔王討伐するわほぉ!」
「えー、まだ言ってるのー」
「ははら何度も言ってるへしょ」
ゴクリ、と姉さんはスライモ焼きを飲みこんだ。
「前世で死んだわたしは、神様に会って、聖女の力を授けてもらう代わりに、この世界の魔王を倒すよう頼まれたんだって。確か、30年以内に倒さないと世界が滅びるとか」
「それかなりヤバい状況だよねっ!?」
世界が滅びるとかおかしいでしょ。
「またまた、姉さん流石にそれは盛り過ぎというか冗談――」
「ううん、本当。思い出してきた。だから、わたし聖女としても最初から色んな能力を与えられてるの。つまり聖女は聖女でも、そんじゃそこらの聖女とは違う――そう、わたしはいわば……大聖女なんだよっ!」
「急に安っぽい!」
とはいえ、とはいえだ……。
そういえば、最初から広範囲に高レベルのヒールみたいなのを使っていた。
『白い抱擁』だっけ?
成人の儀式を受けてすぐというのは、流石にありえない。
普通はもう少し修行してから……
「えっと姉さん、その話が本当なら、やっぱり姉さんは勇者と旅をした方が」
「嫌よ、知らない人と旅するなんて」
「そりゃ、勇者とは初めて会うんだから知らない人なんだろうけど……」
姉さんが赤い顔して頬を膨らませた。
「あ、ああ~、そうだった! というか、すっかり忘れてた。ごめん、ユフィ姉さん、こんなだけど人見知りなんだっけ!」
田舎の村は、魔物でも出ない限り、滅多に外部の人が訪れないので、姉さんの人見知りが発動することはほとんどなかったのだ。
だから、最初のころは大変だった。
「こんなとは何よっ!?」
おそらく、記憶は失っていても、幼少時の馬車の襲撃で、よほど恐ろしい目に遭ったのだろう。
初めて会う人に対して、トラウマになっているんだと思う。
そしてそれは今も治っていない。
心の傷なのだ。
「じゃ、どうするの姉さん。いくら姉さんが聖女――」
「大聖女っ!」
「あー、大聖女でも、僕と2人だけじゃ魔王は倒せっこないよ?」
0
よかったら他の作品も読んでみてください。タイトルを見て、少しでも興味を持った作品があれば、試しに読んでいただけるとうれしいです。
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
とりかえばや聖女は成功しない
猫乃真鶴
ファンタジー
キステナス王国のサレバントーレ侯爵家に生まれたエクレールは、ミルクティー色の髪を持つという以外には、特別これといった特徴を持たない平凡な少女だ。
ごく普通の貴族の娘として育ったが、五歳の時、女神から神託があった事でそれが一変してしまう。
『亜麻色の乙女が、聖なる力でこの国に繁栄をもたらすでしょう』
その色を持つのは、国内ではエクレールだけ。神託にある乙女とはエクレールの事だろうと、慣れ親しんだ家を離れ、神殿での生活を強制される。
エクレールは言われるがまま厳しい教育と修行を始めるが、十六歳の成人を迎えてもエクレールに聖なる力は発現しなかった。
それどころか成人の祝いの場でエクレールと同じ特徴を持つ少女が現れる。しかもエクレールと同じエクレール・サレバントーレと名乗った少女は、聖なる力を自在に操れると言うのだ。
それを知った周囲は、その少女こそを〝エクレール〟として扱うようになり——。
※小説家になろう様にも投稿しています
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる