4 / 29
第4話
しおりを挟む
薄暗い神殿内――。
周囲がざわつく中、姉さんが〝聖女〟と刻まれたクラス・プレートを自慢げに見せてくる。
----------------------------------------
【ネーム】:ユースフィア
【クラス】:聖女/1
----------------------------------------
どや~。
そのまま金属プレートを頬にグリグリ押しつけてくる。
「痛い、痛い……でも、まさか、本当に聖女のクラスだなんて……」
「そうでしょう、そうでしょう、わたしもビックリよ」
「凄い、凄いんだけど、ユフィ姉さん〝聖女〟だけでも出来すぎなのに、前世の記憶とか異世界転生とか盛り過ぎじゃない?」
「盛ってないから! 本当なの!」
「前に姉さん、木に登ると、手の甲のアザを天にかざして『わたしは伝説の竜神の生まれ変わりなのよっ! いつか天空の城に帰る日が来るんだわっ! それは近い!』とか叫んでたけど、あれはもういいの?」
「あれはもういいのっ! 若気の至りというやつよ。それにしても、結局この格好いいアザの秘密はよくわかんなかったわね――」
確かに、昔から何かの紋章のように見えるアザではあったけど、
「聖女の証だったとか?」
「あ~、そうかも! それね。今度からそうしましょう。と・に・か・く、伝説の竜神は冗談だけど、今回は本当なんだってば! 信じてよ! 前世はなんと異世界の女子高生で――」
「そのジョシコーセーってのが何なのかよくわかんないけど、僕も〝成人の儀式〟を受けてくるから、そこでおとなしく待っててね」
「……はーい」
姉さんは捨てられた犬みたいに、こちらをジッと見つめている。
でも犬みたいなので、3秒で飽きてどこかに行っちゃうけど。
ちなみに〝成人の儀式〟というは、僕らの住んでいる田舎の小さな村にはない、大きな街の職業神クラスベル様の神殿で行われる祝福の一種だ。
この世界に生きる人間は、15歳になると祝福を受けることで、自分に相応しい職業――クラスを知ることができる。
それは、生まれ持った天職のようなもので、才能や資質と言っても差し支えない。
これ以外の仕事をしたとしても、あまり成長は望めないのだ。
もちろん変更もできるけど、2回目からは『1年に1回だけ』という制約があり、のちの姉さん曰く「1年に1回だけ引けるガチャみたいなものね」とのことだった。
まあ、そんなわけで、ユフィ姉さんの聖女騒ぎでゴタゴタしている中――僕の担当神官も上の空だった――僕が授かったクラスはなんと……おや?
「…………」
えっと神様?
職業欄はメッセージ欄じゃないですよ?
「どうだったの、トール?」
姉さんは僕の肩にアゴを置くと、自分の名前とクラスが刻まれ、身分証明にもなる小さな金属板――クラス・プレートをのぞきこんできた。
バッ、と思わず隠してしまう。
「はっ!? もしかして人に言えないようなぱふぱふしそうなクラスになったの!?」
周囲がざわつく中、姉さんが〝聖女〟と刻まれたクラス・プレートを自慢げに見せてくる。
----------------------------------------
【ネーム】:ユースフィア
【クラス】:聖女/1
----------------------------------------
どや~。
そのまま金属プレートを頬にグリグリ押しつけてくる。
「痛い、痛い……でも、まさか、本当に聖女のクラスだなんて……」
「そうでしょう、そうでしょう、わたしもビックリよ」
「凄い、凄いんだけど、ユフィ姉さん〝聖女〟だけでも出来すぎなのに、前世の記憶とか異世界転生とか盛り過ぎじゃない?」
「盛ってないから! 本当なの!」
「前に姉さん、木に登ると、手の甲のアザを天にかざして『わたしは伝説の竜神の生まれ変わりなのよっ! いつか天空の城に帰る日が来るんだわっ! それは近い!』とか叫んでたけど、あれはもういいの?」
「あれはもういいのっ! 若気の至りというやつよ。それにしても、結局この格好いいアザの秘密はよくわかんなかったわね――」
確かに、昔から何かの紋章のように見えるアザではあったけど、
「聖女の証だったとか?」
「あ~、そうかも! それね。今度からそうしましょう。と・に・か・く、伝説の竜神は冗談だけど、今回は本当なんだってば! 信じてよ! 前世はなんと異世界の女子高生で――」
「そのジョシコーセーってのが何なのかよくわかんないけど、僕も〝成人の儀式〟を受けてくるから、そこでおとなしく待っててね」
「……はーい」
姉さんは捨てられた犬みたいに、こちらをジッと見つめている。
でも犬みたいなので、3秒で飽きてどこかに行っちゃうけど。
ちなみに〝成人の儀式〟というは、僕らの住んでいる田舎の小さな村にはない、大きな街の職業神クラスベル様の神殿で行われる祝福の一種だ。
この世界に生きる人間は、15歳になると祝福を受けることで、自分に相応しい職業――クラスを知ることができる。
それは、生まれ持った天職のようなもので、才能や資質と言っても差し支えない。
これ以外の仕事をしたとしても、あまり成長は望めないのだ。
もちろん変更もできるけど、2回目からは『1年に1回だけ』という制約があり、のちの姉さん曰く「1年に1回だけ引けるガチャみたいなものね」とのことだった。
まあ、そんなわけで、ユフィ姉さんの聖女騒ぎでゴタゴタしている中――僕の担当神官も上の空だった――僕が授かったクラスはなんと……おや?
「…………」
えっと神様?
職業欄はメッセージ欄じゃないですよ?
「どうだったの、トール?」
姉さんは僕の肩にアゴを置くと、自分の名前とクラスが刻まれ、身分証明にもなる小さな金属板――クラス・プレートをのぞきこんできた。
バッ、と思わず隠してしまう。
「はっ!? もしかして人に言えないようなぱふぱふしそうなクラスになったの!?」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】五度の人生を不幸な出来事で幕を閉じた転生少女は、六度目の転生で幸せを掴みたい!
アノマロカリス
ファンタジー
「ノワール・エルティナス! 貴様とは婚約破棄だ!」
ノワール・エルティナス伯爵令嬢は、アクード・ベリヤル第三王子に婚約破棄を言い渡される。
理由を聞いたら、真実の相手は私では無く妹のメルティだという。
すると、アクードの背後からメルティが現れて、アクードに肩を抱かれてメルティが不敵な笑みを浮かべた。
「お姉様ったら可哀想! まぁ、お姉様より私の方が王子に相応しいという事よ!」
ノワールは、アクードの婚約者に相応しくする為に、様々な事を犠牲にして尽くしたというのに、こんな形で裏切られるとは思っていなくて、ショックで立ち崩れていた。
その時、頭の中にビジョンが浮かんできた。
最初の人生では、日本という国で淵東 黒樹(えんどう くろき)という女子高生で、ゲームやアニメ、ファンタジー小説好きなオタクだったが、学校の帰り道にトラックに刎ねられて死んだ人生。
2度目の人生は、異世界に転生して日本の知識を駆使して…魔女となって魔法や薬学を発展させたが、最後は魔女狩りによって命を落とした。
3度目の人生は、王国に使える女騎士だった。
幾度も国を救い、活躍をして行ったが…最後は王族によって魔物侵攻の盾に使われて死亡した。
4度目の人生は、聖女として国を守る為に活動したが…
魔王の供物として生贄にされて命を落とした。
5度目の人生は、城で王族に使えるメイドだった。
炊事・洗濯などを完璧にこなして様々な能力を駆使して、更には貴族の妻に抜擢されそうになったのだが…同期のメイドの嫉妬により捏造の罪をなすりつけられて処刑された。
そして6度目の現在、全ての前世での記憶が甦り…
「そうですか、では婚約破棄を快く受け入れます!」
そう言って、ノワールは城から出て行った。
5度による浮いた話もなく死んでしまった人生…
6度目には絶対に幸せになってみせる!
そう誓って、家に帰ったのだが…?
一応恋愛として話を完結する予定ですが…
作品の内容が、思いっ切りファンタジー路線に行ってしまったので、ジャンルを恋愛からファンタジーに変更します。
今回はHOTランキングは最高9位でした。
皆様、有り難う御座います!

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

異世界転生者の図書館暮らし3 モフモフのレシピ 神鳥の羽と龍の鱗の悪魔仕立て
パナマ
ファンタジー
異世界転生者の図書館暮らし2 の続編。
深海から引き上げられた謎の箱。精霊の消失。イグドラム国内で発生した、子供達の行方不明事件を警察官の次男ニトゥリーが追う。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる