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59・狩人
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とある 地方の小さな町にて。
夜の喫茶店で、一人の男の老人が、いくつかの新聞の記事を読みながら、ノートにメモをとっていた。
その様は 熱中していると言っても過言ではなく、喫茶店に流れるジャズ音楽も聴いてはいなかった。
老人は ふと作業の手を止めると、従業員に向かって一言。
「紅茶のおかわりを」
「はい、かしこまりました」
女性従業員は、紅茶のおかわりを注ぐ。
老人はそれを一口すすると、またノートにメモをとる作業に取りかかった。
若いサラリーマンがその様子を見て、女性従業員に聞く。
「なんかヘンな人だけど、いつもあそこに座ってるよな。どういう人なのか知ってるの?」
「山のほうに住んでいる人ですよ。変わり者だけど、親切でいい人ですよ」
「そう。偏屈じいさんってやつかね」
そこにガラの悪そうな三人組が喫茶店に入ってきた。
男が二人に、女が一人。
三人とも若いが、実際の年齢より老けて見える。
女性従業員がオーダーを取りに行く。
「ご注文は?」
女が言った。
「酒」
女性従業員は困ったように説明する。
「ここは喫茶店ですので、お酒は置いていないんですよ」
「じゃあ、いい」
三人組は喫茶店を出て行った。
女性従業員は、あの三人組は何しに来たのだろうと、ポカンとしてしまった。
そして ふと見ると、老人の姿が消えていた。
老人は、喫茶店に三人組が入ってきた途端、急いで山の家に戻った。
そして 慌てて玄関の鍵を開けると、中に入る。
しかし 家の中には、すでに女の姿があった。
先程 喫茶店に入ってきたガラの悪い三人組の女だ。
女はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「逃げるなんて、つれないじゃない」
緊張が走り、老人は無言で投げナイフを投げた。
それは狙いを違わず心臓に命中する。
しかし女は興味なさそうに告げる。
「こんなの効かないわよ」
老人はその言葉を無視して、奥の書斎へ逃げ込むと、箪笥を倒して簡単なバリケードを作った。
そして本棚にある金庫のダイヤルを回し始める。
慌てて一度 失敗してしまった。
だが、なんとか金庫を空けると、中には適度な大きさの木箱があった。
木箱の中には、古い回転式拳銃が入っていた。
老人は急いで弾を込めようとした その時、窓から二人組の男が突入してきた。
喫茶店に入ってきた残りの二人だ。
二人の男は中に突入するなり、老人の両腕をつかみ、地面に押し倒す。
「ぐぅううっ」
とてつもない力で、老人は苦悶の声を上げる。
そして そこに、女がバリケードを破って入ってきた。
女は老人が何もできないのを見ると、せせら笑った。
そして銃を手にし、
「こんなの使ったって意味ないのに」
女は老人の頬を撫でると、二人の男に言う。
「さあ、食事にしましょう」
そして 誰もいない山の中で、老人の悲鳴が響き渡った。
私がこれらの事実を知ったのは、ずいぶん後になってからだった。
私はこの老人の死の事件を知ったとき、警察は熊の襲撃だと発表した。
しかし、なぜか空の拳銃の保管箱があったという記述が気になり、私はこの事件を調査してみることにした。
私は事件現場に到着すると、周囲を窺う。
人里から離れている一軒家。
玄関は鍵がかかっていなかったので、わたしは勝手に入った。
中はずいぶん荒らされている。
とくに、応接間のドアが破壊され、書斎がメチャクチャだった。
そして書斎の書き物机の上に、気になった拳銃の箱が置いてあった。
日本では銃刀法の観点から、拳銃を所持することは難しい。
それに中は空だが、誰が持ち去ったのか。
警察は特に疑問視しなかったようだが、なにかありそうだ。
机の上には、分厚いノートが数冊置かれていた。
読んでみると、数々の事件の記録と、そして異能力の推理について書かれていた。
異能力の調査をしている。
この被害者は、ブラインド レディと同じ、能力者を狩っていたのか。
私は遺体が発見された場所を調査する。
遺体があった場所に沿って、チョークで線が引かれていた。
私はふと、木の床にひっかき傷があるのを見つけた。
ちょうど右手が置かれていた位置だ。
なぜか私は気になり、よく観察してみる。
何かの文字に見えるが、しかし ひっかき傷なのでよくわからない。
私はメモ用紙を取り出し、一枚ちぎると、ひっかき傷の上に敷き、そして鉛筆で薄くこすってみた。
ひっかき傷に沿って文字が浮かぶ。
それは数種類の文字と数字。
郵便私書箱の番号だ。
そこに、背後から声をかける者がいた。
「貴方もこの事件に興味があるの」
私は驚いて後ろを振り向くと、そこには ブラインド レディの姿があった。
私たちは町に降り、郵便局に立ち寄る。
ブラインド レディは一人ではなかった。
彼女を介護するメイド。
そして、
「お久しぶりですな」
執事の姿があった。
私は彼に言う。
「彼女と一緒だと言うことは、笑い男の調査に進展があったということか」
「その通りでございます。そして 今回の事件も、その一つ」
「被害者の自宅からノートを見つけた。異能力についての調査記録だ。
被害者は能力者を狩っていたんだな」
これには ブラインド レディが答えた。
「その通りよ。そして 私の師匠の一人でもある。彼からは 能力者について色々と学んだわ。
彼が亡くなったという記事を知って、駆け付けた。でも、貴方が先に到着していたのだけど」
私書箱には一通の封筒が入っていた。
中を空けると、紙が一枚。
書かれていたのは、
「南部ゼロ式」
執事が説明した。
「それは日本の伝説的な銃職人、南部麒次郎が作った拳銃です。
南部麒次郎は、とある男に依頼され、その南部ゼロ式と十三発の弾を作りました。男とは、お嬢さまと同じく、能力者を狩る者です。
そう、南部ゼロ式とは、能力者を殺すための銃。命中さえすれば、どんな相手でも、必ず殺すことができる。
お嬢さまが時折 遭遇する、不死としか思えぬようなものであっても。
そして 笑い男は、その銃を手に入れようとしているのです」
「笑い男が、その南部ゼロ式を手に入れようとしている?
しかし 笑い男は、能力者を扇動するようなことをしているのだろう。なぜ 能力者を殺すような武器を欲しがる」
「その銃は、単純に能力者を殺すだけではありません。他にも秘密があるようなのです。
その秘密がなんなのかは、まだ突き止めることはできておりませんが、しかし笑い男は その秘密を知っているようですな。
そして今、南部ゼロ式は能力者の手に渡った。
能力者を狩る者が殺されたからには、犯人は能力者以外 有り得ない」
「まずは、それを突き止めなければならないな」
ブラインド レディが宣言する。
「手がかりは、彼が残したノートよ。それを調べてみましょう」
夜の喫茶店で、一人の男の老人が、いくつかの新聞の記事を読みながら、ノートにメモをとっていた。
その様は 熱中していると言っても過言ではなく、喫茶店に流れるジャズ音楽も聴いてはいなかった。
老人は ふと作業の手を止めると、従業員に向かって一言。
「紅茶のおかわりを」
「はい、かしこまりました」
女性従業員は、紅茶のおかわりを注ぐ。
老人はそれを一口すすると、またノートにメモをとる作業に取りかかった。
若いサラリーマンがその様子を見て、女性従業員に聞く。
「なんかヘンな人だけど、いつもあそこに座ってるよな。どういう人なのか知ってるの?」
「山のほうに住んでいる人ですよ。変わり者だけど、親切でいい人ですよ」
「そう。偏屈じいさんってやつかね」
そこにガラの悪そうな三人組が喫茶店に入ってきた。
男が二人に、女が一人。
三人とも若いが、実際の年齢より老けて見える。
女性従業員がオーダーを取りに行く。
「ご注文は?」
女が言った。
「酒」
女性従業員は困ったように説明する。
「ここは喫茶店ですので、お酒は置いていないんですよ」
「じゃあ、いい」
三人組は喫茶店を出て行った。
女性従業員は、あの三人組は何しに来たのだろうと、ポカンとしてしまった。
そして ふと見ると、老人の姿が消えていた。
老人は、喫茶店に三人組が入ってきた途端、急いで山の家に戻った。
そして 慌てて玄関の鍵を開けると、中に入る。
しかし 家の中には、すでに女の姿があった。
先程 喫茶店に入ってきたガラの悪い三人組の女だ。
女はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「逃げるなんて、つれないじゃない」
緊張が走り、老人は無言で投げナイフを投げた。
それは狙いを違わず心臓に命中する。
しかし女は興味なさそうに告げる。
「こんなの効かないわよ」
老人はその言葉を無視して、奥の書斎へ逃げ込むと、箪笥を倒して簡単なバリケードを作った。
そして本棚にある金庫のダイヤルを回し始める。
慌てて一度 失敗してしまった。
だが、なんとか金庫を空けると、中には適度な大きさの木箱があった。
木箱の中には、古い回転式拳銃が入っていた。
老人は急いで弾を込めようとした その時、窓から二人組の男が突入してきた。
喫茶店に入ってきた残りの二人だ。
二人の男は中に突入するなり、老人の両腕をつかみ、地面に押し倒す。
「ぐぅううっ」
とてつもない力で、老人は苦悶の声を上げる。
そして そこに、女がバリケードを破って入ってきた。
女は老人が何もできないのを見ると、せせら笑った。
そして銃を手にし、
「こんなの使ったって意味ないのに」
女は老人の頬を撫でると、二人の男に言う。
「さあ、食事にしましょう」
そして 誰もいない山の中で、老人の悲鳴が響き渡った。
私がこれらの事実を知ったのは、ずいぶん後になってからだった。
私はこの老人の死の事件を知ったとき、警察は熊の襲撃だと発表した。
しかし、なぜか空の拳銃の保管箱があったという記述が気になり、私はこの事件を調査してみることにした。
私は事件現場に到着すると、周囲を窺う。
人里から離れている一軒家。
玄関は鍵がかかっていなかったので、わたしは勝手に入った。
中はずいぶん荒らされている。
とくに、応接間のドアが破壊され、書斎がメチャクチャだった。
そして書斎の書き物机の上に、気になった拳銃の箱が置いてあった。
日本では銃刀法の観点から、拳銃を所持することは難しい。
それに中は空だが、誰が持ち去ったのか。
警察は特に疑問視しなかったようだが、なにかありそうだ。
机の上には、分厚いノートが数冊置かれていた。
読んでみると、数々の事件の記録と、そして異能力の推理について書かれていた。
異能力の調査をしている。
この被害者は、ブラインド レディと同じ、能力者を狩っていたのか。
私は遺体が発見された場所を調査する。
遺体があった場所に沿って、チョークで線が引かれていた。
私はふと、木の床にひっかき傷があるのを見つけた。
ちょうど右手が置かれていた位置だ。
なぜか私は気になり、よく観察してみる。
何かの文字に見えるが、しかし ひっかき傷なのでよくわからない。
私はメモ用紙を取り出し、一枚ちぎると、ひっかき傷の上に敷き、そして鉛筆で薄くこすってみた。
ひっかき傷に沿って文字が浮かぶ。
それは数種類の文字と数字。
郵便私書箱の番号だ。
そこに、背後から声をかける者がいた。
「貴方もこの事件に興味があるの」
私は驚いて後ろを振り向くと、そこには ブラインド レディの姿があった。
私たちは町に降り、郵便局に立ち寄る。
ブラインド レディは一人ではなかった。
彼女を介護するメイド。
そして、
「お久しぶりですな」
執事の姿があった。
私は彼に言う。
「彼女と一緒だと言うことは、笑い男の調査に進展があったということか」
「その通りでございます。そして 今回の事件も、その一つ」
「被害者の自宅からノートを見つけた。異能力についての調査記録だ。
被害者は能力者を狩っていたんだな」
これには ブラインド レディが答えた。
「その通りよ。そして 私の師匠の一人でもある。彼からは 能力者について色々と学んだわ。
彼が亡くなったという記事を知って、駆け付けた。でも、貴方が先に到着していたのだけど」
私書箱には一通の封筒が入っていた。
中を空けると、紙が一枚。
書かれていたのは、
「南部ゼロ式」
執事が説明した。
「それは日本の伝説的な銃職人、南部麒次郎が作った拳銃です。
南部麒次郎は、とある男に依頼され、その南部ゼロ式と十三発の弾を作りました。男とは、お嬢さまと同じく、能力者を狩る者です。
そう、南部ゼロ式とは、能力者を殺すための銃。命中さえすれば、どんな相手でも、必ず殺すことができる。
お嬢さまが時折 遭遇する、不死としか思えぬようなものであっても。
そして 笑い男は、その銃を手に入れようとしているのです」
「笑い男が、その南部ゼロ式を手に入れようとしている?
しかし 笑い男は、能力者を扇動するようなことをしているのだろう。なぜ 能力者を殺すような武器を欲しがる」
「その銃は、単純に能力者を殺すだけではありません。他にも秘密があるようなのです。
その秘密がなんなのかは、まだ突き止めることはできておりませんが、しかし笑い男は その秘密を知っているようですな。
そして今、南部ゼロ式は能力者の手に渡った。
能力者を狩る者が殺されたからには、犯人は能力者以外 有り得ない」
「まずは、それを突き止めなければならないな」
ブラインド レディが宣言する。
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