47 / 67
47・密室殺人事件
しおりを挟む
とある小さな町で、五件の連続殺人が起きた。
被害者は全て自室にて殺害されていた。
五件の殺人事件に共通点は無く、それが連続殺人だとわかったのは、壁の血文字によるものだった。
殺人現場の壁に、被害者の血液で、大きな丸にZのような字が書かれていたのだった。
そのシンボルマークによって、同一犯であると警察は断定した。
そして もう一つ、事件の重大な共通点がある。
それは、密室であると言うこと。
五件の殺人事件の全ては、完全な密室だったのだ。
しかし、私は知っている。
実際の殺人事件において、密室事件を起こす者など誰もいない。
現実の殺人は、殺して死体を隠蔽するというのがパターンであり、密室殺人など推理小説などにしか存在しないのだ。
警察は、ミステリーマニアの犯行だと騒いでいる、というより、喜んでいる。
しかし、能力者の存在を知っている者からすると、違う可能性を考えてしまう。
だから私はブラインド レディに連絡を取った。
ホテルのスィートルームにて、私はメイドから紅茶をいただくと、ブラインド レディに資料を渡し、説明する。
「最近の被害者は、スーパーでパートをしている、いたって普通の二十代後半の女性。
遺体が発見されたのは 自室で、死後 十日経過しているとのことだ。
被害者の両親が被害者から連絡が無いので、警察に通報。警官が訪れると、腐臭がドア越しからも漂ってきたので、アパートの大家に連絡し、鍵を開けた。
室内には、腐敗が進んだバラバラ死体と、そして壁に丸にZの血文字。
このシンボルマークによって、一連の連続殺人だと判明。
扉に鍵はかかっていたし、チェーンも付いていた。窓にも鍵はかかっている。防犯装置も作動し、警察もチェックしたが、きちんと作動していた。全て破壊された形跡はなし。
完全な密室。
金銭などが取られた様子はなく、指紋もDNAもない。証拠は一切ないと言うことになる。
どうだろう、能力者の可能性は?」
ブラインド レディは即答する。
「極めて高い。調査する必要があるわね。さっそく、事件の部屋を回って調査しましょう」
そして我々は、ホテルを出ようとすると、不意にブラインド レディが立ち止まった。
「? どうした?」
「いえ、気になる声が……」
ブラインド レディは一人で、その声がすると思われる方向へ。
そして フロントで、受付係と会話している、一人の若い男の肩を叩く。
男は振り向いた。
「あれ? お姉さん、すごい偶然だね」
私は初対面になるのだが、それはわたしが 以前、リンゴ園で危機に陥っていたさい、ブラインド レディに話しかけてきた軽い男。
イガラシだった。
「お姉さんもこのホテルの泊まってるの?」
「ええ、そうよ」
「おれも このホテルに泊まってるんだ。まあ、すぐに出るけどね。賃貸アパートが決まったから。
しばらく この街に滞在するつもりなんだ。この街の観光スポットを回ったり、色々とね。
いやー、それにしても奇遇だよなー。まさか、また会うなんて。お姉さんとは運命の糸で結ばれてたりして。
そんなわけないかー。
おっと、もう行かないと。
じゃあね、お姉さん。名残惜しいけど、また縁があったらどこかで会おうよ」
そしてイガラシは足早に去って行った。
私はブラインド レディに訊く。
「今の男が、以前 話をしていたイガラシか」
「その通り。でも、ハッキリ言って、なにか怪しい」
「私も同感だ。能力者の疑いがある事件を調査している最中に、以前 能力者の事件で関わった人物。
前の時も偶然なのだろうか?」
「お願いがあるのだけど。実は今、イガラシの肩を叩くときに、服に小型GPSを付けたの。スマホのアプリでも簡単に位置が特定できるから、調査して貰えないかしら」
「わかった。あの男に関しては引き受けよう。きみは、連続密室事件の調査を」
「気をつけて」
そして我々は、別れて調査することとなった。
ブラインド レディは事件の起きたアパートに到着した。
大家のおばさんが対応する。
「あんたがセキュリティ会社のオーナーだって?」
「そうよ」
「まあ、こんだけの事件だ。社長 自ら出るのもわかるよ。
なにせ、セキュリティがまったく作動しなかったんだから」
「セキュリティだけではなく、鍵も正常だったと聞いたわ」
「そうよ。玄関も窓も、全部 鍵はかかってた。セキュリティも正常に作動していた。
完全な密室ってやつね。テレビとかで よく見るけど、まさか 現実に起きるなんてねぇ」
「遺体発見時、あなたも一緒に居たと聞いたわ」
「ええ、警察が開けてくれと言ってきたんで、鍵を開けたんだけど。玄関の外からも、変な匂いがしてきたわ。
それで、鍵を開けて中に入ったら、酷い有り様よ。死んでいたって言うか、散らばっていたの。
この部屋の住人の遺体が、床一面にバラバラになってね」
「壁に奇妙なシンボルマークが描かれているそうね」
「ええ、大きな丸の中にZに似た文字ね。
警察の捜査が終わった後、清掃業者に依頼して、この部屋を掃除して、その時にそのマークも消したけど。
でも、今後十年は、借り手は付かないだろうねぇ。こんな事件があってこの町じゃ有名になっちまったから。
まったく、殺人犯のせいで収入が減ったよ」
「マークの書かれた壁はどこに?」
「ああ、こっちだよ」
大家のおばさんは、ブラインド レディを誘導してあげた。
ブラインド レディは壁まで来ると、それに触れて匂いを嗅ぐ。
「……この匂い」
微かにイガラシの匂いが残っていた。
被害者は全て自室にて殺害されていた。
五件の殺人事件に共通点は無く、それが連続殺人だとわかったのは、壁の血文字によるものだった。
殺人現場の壁に、被害者の血液で、大きな丸にZのような字が書かれていたのだった。
そのシンボルマークによって、同一犯であると警察は断定した。
そして もう一つ、事件の重大な共通点がある。
それは、密室であると言うこと。
五件の殺人事件の全ては、完全な密室だったのだ。
しかし、私は知っている。
実際の殺人事件において、密室事件を起こす者など誰もいない。
現実の殺人は、殺して死体を隠蔽するというのがパターンであり、密室殺人など推理小説などにしか存在しないのだ。
警察は、ミステリーマニアの犯行だと騒いでいる、というより、喜んでいる。
しかし、能力者の存在を知っている者からすると、違う可能性を考えてしまう。
だから私はブラインド レディに連絡を取った。
ホテルのスィートルームにて、私はメイドから紅茶をいただくと、ブラインド レディに資料を渡し、説明する。
「最近の被害者は、スーパーでパートをしている、いたって普通の二十代後半の女性。
遺体が発見されたのは 自室で、死後 十日経過しているとのことだ。
被害者の両親が被害者から連絡が無いので、警察に通報。警官が訪れると、腐臭がドア越しからも漂ってきたので、アパートの大家に連絡し、鍵を開けた。
室内には、腐敗が進んだバラバラ死体と、そして壁に丸にZの血文字。
このシンボルマークによって、一連の連続殺人だと判明。
扉に鍵はかかっていたし、チェーンも付いていた。窓にも鍵はかかっている。防犯装置も作動し、警察もチェックしたが、きちんと作動していた。全て破壊された形跡はなし。
完全な密室。
金銭などが取られた様子はなく、指紋もDNAもない。証拠は一切ないと言うことになる。
どうだろう、能力者の可能性は?」
ブラインド レディは即答する。
「極めて高い。調査する必要があるわね。さっそく、事件の部屋を回って調査しましょう」
そして我々は、ホテルを出ようとすると、不意にブラインド レディが立ち止まった。
「? どうした?」
「いえ、気になる声が……」
ブラインド レディは一人で、その声がすると思われる方向へ。
そして フロントで、受付係と会話している、一人の若い男の肩を叩く。
男は振り向いた。
「あれ? お姉さん、すごい偶然だね」
私は初対面になるのだが、それはわたしが 以前、リンゴ園で危機に陥っていたさい、ブラインド レディに話しかけてきた軽い男。
イガラシだった。
「お姉さんもこのホテルの泊まってるの?」
「ええ、そうよ」
「おれも このホテルに泊まってるんだ。まあ、すぐに出るけどね。賃貸アパートが決まったから。
しばらく この街に滞在するつもりなんだ。この街の観光スポットを回ったり、色々とね。
いやー、それにしても奇遇だよなー。まさか、また会うなんて。お姉さんとは運命の糸で結ばれてたりして。
そんなわけないかー。
おっと、もう行かないと。
じゃあね、お姉さん。名残惜しいけど、また縁があったらどこかで会おうよ」
そしてイガラシは足早に去って行った。
私はブラインド レディに訊く。
「今の男が、以前 話をしていたイガラシか」
「その通り。でも、ハッキリ言って、なにか怪しい」
「私も同感だ。能力者の疑いがある事件を調査している最中に、以前 能力者の事件で関わった人物。
前の時も偶然なのだろうか?」
「お願いがあるのだけど。実は今、イガラシの肩を叩くときに、服に小型GPSを付けたの。スマホのアプリでも簡単に位置が特定できるから、調査して貰えないかしら」
「わかった。あの男に関しては引き受けよう。きみは、連続密室事件の調査を」
「気をつけて」
そして我々は、別れて調査することとなった。
ブラインド レディは事件の起きたアパートに到着した。
大家のおばさんが対応する。
「あんたがセキュリティ会社のオーナーだって?」
「そうよ」
「まあ、こんだけの事件だ。社長 自ら出るのもわかるよ。
なにせ、セキュリティがまったく作動しなかったんだから」
「セキュリティだけではなく、鍵も正常だったと聞いたわ」
「そうよ。玄関も窓も、全部 鍵はかかってた。セキュリティも正常に作動していた。
完全な密室ってやつね。テレビとかで よく見るけど、まさか 現実に起きるなんてねぇ」
「遺体発見時、あなたも一緒に居たと聞いたわ」
「ええ、警察が開けてくれと言ってきたんで、鍵を開けたんだけど。玄関の外からも、変な匂いがしてきたわ。
それで、鍵を開けて中に入ったら、酷い有り様よ。死んでいたって言うか、散らばっていたの。
この部屋の住人の遺体が、床一面にバラバラになってね」
「壁に奇妙なシンボルマークが描かれているそうね」
「ええ、大きな丸の中にZに似た文字ね。
警察の捜査が終わった後、清掃業者に依頼して、この部屋を掃除して、その時にそのマークも消したけど。
でも、今後十年は、借り手は付かないだろうねぇ。こんな事件があってこの町じゃ有名になっちまったから。
まったく、殺人犯のせいで収入が減ったよ」
「マークの書かれた壁はどこに?」
「ああ、こっちだよ」
大家のおばさんは、ブラインド レディを誘導してあげた。
ブラインド レディは壁まで来ると、それに触れて匂いを嗅ぐ。
「……この匂い」
微かにイガラシの匂いが残っていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
【完結】永遠の旅人
邦幸恵紀
SF
高校生・椎名達也は、未来人が創設した〈時間旅行者協会〉の職員ライアンに腕時計型タイム・マシンを使われ、強引に〈協会〉本部へと連れてこられる。実は達也はマシンなしで時空間移動ができる〝時間跳躍者〟で、ライアンはかつて別時空の達也と偶然会っていた。以来、執念深く達也を捜しつづけたライアンの目的とは。
フルタイム・オンライン ~24時間ログインしっぱなしの現実逃避行、または『いつもつながっている』~
於田縫紀
SF
大学を卒業した3月末に両親が事故で死亡。保険金目当ての伯母一家のせいで生活が無茶苦茶に。弁護士を入れてシャットアウトした後、私は生命維持装置付の最高級VR機器を購入し、腐った現実から逃げ出した。
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。
ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
あなたの隣で初めての恋を知る
ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
関西訛りな人工生命体の少女がお母さんを探して旅するお話。
虎柄トラ
SF
あるところに誰もがうらやむ才能を持った科学者がいた。
科学者は天賦の才を得た代償なのか、天涯孤独の身で愛する家族も頼れる友人もいなかった。
愛情に飢えた科学者は存在しないのであれば、創造すればいいじゃないかという発想に至る。
そして試行錯誤の末、科学者はありとあらゆる癖を詰め込んだ最高傑作を完成させた。
科学者は人工生命体にリアムと名付け、それはもうドン引きするぐらい溺愛した。
そして月日は経ち、可憐な少女に成長したリアムは二度目の誕生日を迎えようとしていた。
誕生日プレゼントを手に入れるため科学者は、リアムに留守番をお願いすると家を出て行った。
それからいくつも季節が通り過ぎたが、科学者が家に帰ってくることはなかった。
科学者が帰宅しないのは迷子になっているからだと、推察をしたリアムはある行動を起こした。
「お母さん待っててな、リアムがいま迎えに行くから!」
一度も外に出たことがない関西訛りな箱入り娘による壮大な母親探しの旅がいまはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる