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42・押し殺す
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ウエハラの弟はオートロックマンションに住んでおり、ブラインド レディが到着すると、弟は丁度コンビニの買い物から戻ってきたところで、中に入ろうとしていた。
「待って、話があるわ」
ブラインド レディが呼び止めるが、弟は忌ま忌ましげな目を向けた。
「あんたか。構わないでくれ」
無視して、そのままマンションの中に入り、エレベーターに乗ってしまった。
マンションの鍵はロックされて中に入ることが出来ない。
「まずいわね。あれを持ってきて」
「はい、お嬢さま」
メイドはリムジンから、拳銃のような形状のものを二つ取り出した。
それは射出式ワイヤーフックだった。
二人はマンションの駐車場から、屋上へ構えると、フックを射出する。
フックは屋上の柵に引っかかり、そして二人はワイヤーを巻き上げ、十秒で屋上へ到着。
屋上から、六階の部屋に到着し、ブライドレディは鍵を破壊して、部屋の中へ侵入した。
「勝手に入るわよ」
だが、返事はなかった。
「お嬢さま!」
リビングでは、首つりした弟の姿があった。
ブラインド レディはすぐに縄を切断し、彼の体をメイドが受け止める。
メイドは脈を確認したが、すでに止まっている。
「救急車を呼んで。私は蘇生措置をする」
メイドは室内にあった電話で救急車を呼んだ。
救急車が到着する間、二人は蘇生措置を行ったが、息を吹き返すことはなく、搬送された病院で、死亡が確認された。
ブラインド レディは、警察に事情聴取されたが、彼女の社会的地位や身分を知ると、警察署長はすぐに釈放した。
そのついでに、ブラインド レディは検死の報告書のコピーを警察から入手。
ホテルに戻り、ブラインド レディは報告書を読む。
「彼の死に関しては、首つりした高さから、自分から椅子で上がらないと不可能。警察は自殺で間違いないと判断。原因は、兄の自殺だろうとみているのね」
メイドは応える。
「しかし、間違いなく、殺人です。
でも、理由がわかりません。笑い男は犯行を予告しましたが、笑い男の手口は自分で手を下さないことにあります。直接の犯人は誰か? 動機は何か?
ウエハラの家庭は、経済的には普通ですから、金目当てではありませんよね。そうなると、怨恨でしょうか?」
「もう一度、家族と話をしてみましょう」
次の日、ブラインド レディとメイドはウエハラ家を訪ねた。
葬儀はまだ行われていないが、警察から話を聞いたと言うことにした。
なお、警察に口止めし、自分たちが第一発見者だとは伝えていない。
知られれば、おそらく家族は疑いを向けて、話をしなくなるだろう。
ウエハラの妻ナオコは、夫に続き、義弟の葬式の準備で忙しかった。
それでも対応してくれた。
「二人とも逝ってしまった。どうして自殺なんか。
このままだと息子も自殺するのではないかと、怖くてたまらない」
ナオコは精神的に疲弊しきっていた。
ブラインド レディは次に、ウエハラの息子ノブアキに話を聞いてみた。
通学途中を狙って話しかける。
「お姉さんか。なんのよう?」
「あなたがどうしているのか気になって。家族が立て続けに二人も亡くなったから」
「……まるで現実感がないよ。二人とも、自殺するようには思えなかったのに」
「二人に恨みを持っている人はいないかしら?」
「お姉さん、父さんと叔父さんが、殺されたと思ってるの?」
「自殺の動機が分からないから、もしかするとそうかもしれない。
そうなると、残されたあなたたちも危険だと言うことになる」
「そうかもしれないね。でも、僕にはわからない。
僕の家族は普通だ。今までなにも変わったことはなかった。なにも、変わったことはなかったんだ。それなのに、急にどうしてこんなことに」
話をしているうちに、高校に到着した。
「ぼく、学校があるから」
「ええ、話をしてくれて、ありがとう」
そうして、ノブアキと別れた。
メイドがリムジンで出迎えて、お嬢さまに話す。
「二人とも、なにも知らないようですね」
しかしブラインド レディはその言葉を否定した。
「いいえ、二人とも、恐怖の感情を押し殺していたわ」
「え? 恐怖? ということは、二人はなにかを知っていると言うことですか。殺されたこともわかっていたと。
なのに、どうしてそれを警察に言わないのでしょうか? 次は自分たちかもしれないのに」
ブラインド レディはしばらくの沈黙の後、言葉を発する。
「引っ越し前に住んでいたという家に行ってみましょう。そこで聞き込みをすれば、なにかわかるかもしれない」
メイドはリムジンを走らせた。
ウエハラ一家が引っ越す前の家に到着し、さっそく隣の家の老紳士から話を聞いた。
「ウエハラに付いて聞きたいそうだが」
「ええ、実は事件が起きて、その調査をしているの」
「あの子供は? ノブアキは無事か?」
「ええ、無事よ」
「それはよかった。だが、事件が起きたと言うが、なにが起きたんだ? それを聞かなければ、答えない」
「自殺よ。ウエハラと弟が立て続けに自殺したの」
「自殺? 本当か?」
「ええ」
「なら、罪の意識かもな」
「どういうこと?」
「あの男と弟は、息子のノブアキを虐待していたんだ」
「虐待」
「ああ。私の家からは少し見えるのだが、あの二人が息子を殴ったり蹴ったりしていた。
私は警察や児童保護に、何度も通報したのだが、結局引き離すことが出来なかった。
助けてやることが出来なかったのが悔やまれる。
だが、一番酷いのは、母親だ。
彼女は、虐待されている息子を見ても、なにもしなかった。ただ、テレビを見ていた。なにもせず、退屈そうにテレビを見ていただけだったんだ。
息子が暴力を振るわれているのに、無関心だなんて。
それから、ウエハラは引っ越した。私とはそれっきりだ。
ウエハラと弟は自殺したそうだが、しかしそれで良かったのかもしれない。少なくとも、もう二度と、あの子は虐待を受けることはない」
「話をしてくれてありがとう」
ブラインド レディは老紳士の家を去ると、至急ウエハラの家へ向かった。
「犯人はノブアキよ。動機は復讐。能力は念動力。
車庫で車に故障を起こさせて一酸化酸素中毒で死に至らしめた。
そして、弟の死も、念動力で首つりさせた。
笑い男が映像を消したのは、ノブアキの姿が映っていたからよ。
そして最後に、母親のナオコを殺すつもりね。急いで」
「待って、話があるわ」
ブラインド レディが呼び止めるが、弟は忌ま忌ましげな目を向けた。
「あんたか。構わないでくれ」
無視して、そのままマンションの中に入り、エレベーターに乗ってしまった。
マンションの鍵はロックされて中に入ることが出来ない。
「まずいわね。あれを持ってきて」
「はい、お嬢さま」
メイドはリムジンから、拳銃のような形状のものを二つ取り出した。
それは射出式ワイヤーフックだった。
二人はマンションの駐車場から、屋上へ構えると、フックを射出する。
フックは屋上の柵に引っかかり、そして二人はワイヤーを巻き上げ、十秒で屋上へ到着。
屋上から、六階の部屋に到着し、ブライドレディは鍵を破壊して、部屋の中へ侵入した。
「勝手に入るわよ」
だが、返事はなかった。
「お嬢さま!」
リビングでは、首つりした弟の姿があった。
ブラインド レディはすぐに縄を切断し、彼の体をメイドが受け止める。
メイドは脈を確認したが、すでに止まっている。
「救急車を呼んで。私は蘇生措置をする」
メイドは室内にあった電話で救急車を呼んだ。
救急車が到着する間、二人は蘇生措置を行ったが、息を吹き返すことはなく、搬送された病院で、死亡が確認された。
ブラインド レディは、警察に事情聴取されたが、彼女の社会的地位や身分を知ると、警察署長はすぐに釈放した。
そのついでに、ブラインド レディは検死の報告書のコピーを警察から入手。
ホテルに戻り、ブラインド レディは報告書を読む。
「彼の死に関しては、首つりした高さから、自分から椅子で上がらないと不可能。警察は自殺で間違いないと判断。原因は、兄の自殺だろうとみているのね」
メイドは応える。
「しかし、間違いなく、殺人です。
でも、理由がわかりません。笑い男は犯行を予告しましたが、笑い男の手口は自分で手を下さないことにあります。直接の犯人は誰か? 動機は何か?
ウエハラの家庭は、経済的には普通ですから、金目当てではありませんよね。そうなると、怨恨でしょうか?」
「もう一度、家族と話をしてみましょう」
次の日、ブラインド レディとメイドはウエハラ家を訪ねた。
葬儀はまだ行われていないが、警察から話を聞いたと言うことにした。
なお、警察に口止めし、自分たちが第一発見者だとは伝えていない。
知られれば、おそらく家族は疑いを向けて、話をしなくなるだろう。
ウエハラの妻ナオコは、夫に続き、義弟の葬式の準備で忙しかった。
それでも対応してくれた。
「二人とも逝ってしまった。どうして自殺なんか。
このままだと息子も自殺するのではないかと、怖くてたまらない」
ナオコは精神的に疲弊しきっていた。
ブラインド レディは次に、ウエハラの息子ノブアキに話を聞いてみた。
通学途中を狙って話しかける。
「お姉さんか。なんのよう?」
「あなたがどうしているのか気になって。家族が立て続けに二人も亡くなったから」
「……まるで現実感がないよ。二人とも、自殺するようには思えなかったのに」
「二人に恨みを持っている人はいないかしら?」
「お姉さん、父さんと叔父さんが、殺されたと思ってるの?」
「自殺の動機が分からないから、もしかするとそうかもしれない。
そうなると、残されたあなたたちも危険だと言うことになる」
「そうかもしれないね。でも、僕にはわからない。
僕の家族は普通だ。今までなにも変わったことはなかった。なにも、変わったことはなかったんだ。それなのに、急にどうしてこんなことに」
話をしているうちに、高校に到着した。
「ぼく、学校があるから」
「ええ、話をしてくれて、ありがとう」
そうして、ノブアキと別れた。
メイドがリムジンで出迎えて、お嬢さまに話す。
「二人とも、なにも知らないようですね」
しかしブラインド レディはその言葉を否定した。
「いいえ、二人とも、恐怖の感情を押し殺していたわ」
「え? 恐怖? ということは、二人はなにかを知っていると言うことですか。殺されたこともわかっていたと。
なのに、どうしてそれを警察に言わないのでしょうか? 次は自分たちかもしれないのに」
ブラインド レディはしばらくの沈黙の後、言葉を発する。
「引っ越し前に住んでいたという家に行ってみましょう。そこで聞き込みをすれば、なにかわかるかもしれない」
メイドはリムジンを走らせた。
ウエハラ一家が引っ越す前の家に到着し、さっそく隣の家の老紳士から話を聞いた。
「ウエハラに付いて聞きたいそうだが」
「ええ、実は事件が起きて、その調査をしているの」
「あの子供は? ノブアキは無事か?」
「ええ、無事よ」
「それはよかった。だが、事件が起きたと言うが、なにが起きたんだ? それを聞かなければ、答えない」
「自殺よ。ウエハラと弟が立て続けに自殺したの」
「自殺? 本当か?」
「ええ」
「なら、罪の意識かもな」
「どういうこと?」
「あの男と弟は、息子のノブアキを虐待していたんだ」
「虐待」
「ああ。私の家からは少し見えるのだが、あの二人が息子を殴ったり蹴ったりしていた。
私は警察や児童保護に、何度も通報したのだが、結局引き離すことが出来なかった。
助けてやることが出来なかったのが悔やまれる。
だが、一番酷いのは、母親だ。
彼女は、虐待されている息子を見ても、なにもしなかった。ただ、テレビを見ていた。なにもせず、退屈そうにテレビを見ていただけだったんだ。
息子が暴力を振るわれているのに、無関心だなんて。
それから、ウエハラは引っ越した。私とはそれっきりだ。
ウエハラと弟は自殺したそうだが、しかしそれで良かったのかもしれない。少なくとも、もう二度と、あの子は虐待を受けることはない」
「話をしてくれてありがとう」
ブラインド レディは老紳士の家を去ると、至急ウエハラの家へ向かった。
「犯人はノブアキよ。動機は復讐。能力は念動力。
車庫で車に故障を起こさせて一酸化酸素中毒で死に至らしめた。
そして、弟の死も、念動力で首つりさせた。
笑い男が映像を消したのは、ノブアキの姿が映っていたからよ。
そして最後に、母親のナオコを殺すつもりね。急いで」
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