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17・同時に存在
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今回の事件の、取材に応じてくれたのは、ナギサという大学生だった。
彼女はブラインド レディの世話をしているメイドの後輩に当たり、メイドとは仲が良かった。
「私は先輩に可愛がってもらって、色々良くしていただきました。大学卒業後、大企業に就職すると聞いて、私も喜びました」
それから お互いに忙しく 疎遠になっていたが、今回の事件で再会することとなった。
事件の発端となった日、ナギサは 姉のナミと一緒に映画を見ていた。
五つ年上の姉は、結婚三年目で夫と二人暮らし。
子供はまだできていないが、幸せな夫婦だった。
そして、その日は夫がたまには姉妹で遊んでこいと言ってくれたので、ナギサと一緒に映画を見ることにしたのだった。
映画館でヒット中のアクション映画を見て、そしてデパートでウィンドショッピングを楽しみ、喫茶店でお茶をしながら お喋りした。
そして夕暮れ。
ナミはナギサと別れ、自宅へ帰宅した。
彼女は自宅に到着して、奇妙なことに気付いた。
もう薄暗いのに、家の電気が付いておらず、奇妙に静寂だった。
なにかがおかしい。
しかし、なにがおかしいのか分からなかった。
ただ嫌な予感がした。
ナミが家の玄関を開けると、鍵はかかっておらず、リビングに入ると、そこには夫が血塗れで倒れている姿。
ナミは悲鳴を上げて、急いで救急車を呼んだ。
数分後、救急車が到着し、夫を病院に運んだが、しかし助かることはなかった。
遅れて警察が駆けつけ、ナミを保護し、現場が封鎖され、現場検証が行われた。
そして、その日のうちに、警察はナギサの姉を緊急逮捕した。
彼女は狼狽して、なぜ自分が逮捕されるのかと聞いた。
警察は怒りと自信に溢れて断言した。
「自宅の警備カメラにおまえの姿が映っている。おまえの犯行の全てが記録されていたんだ」
そして見せられたのは、自分と同じ姿をした女が夫を殺す姿だった。
警察は夫の殺害動機を徹底的に追求し、自白させる構えだった。
ナミは当然 自分のアリバイを主張した。
自分は妹のナギサと一緒に居たと。
しかし、妹の証言は嘘と決めつけられた。
こうして ナギサの姉は警察に徹底的に追求されることとなった。
「先輩、お願いします。助けてください」
姉の危機にナギサは、藁にもすがる思いでメイドに連絡した。
メイドが大企業の会長の侍女をしていると知っていたからだ。
もしかすると、大企業の権力で、姉を助けて貰えるかもしれないと思ったのだ。
メイドは すぐにブラインド レディに報告した。
「お嬢さま。ナギサは嘘を吐く人間ではありません。犯行時刻に一緒に居たというのならば、それは間違いないはずです。
でも、警備カメラには、お姉さんの姿が映っていた。
つまり、同じ人間が別の場所に同時に存在した。
一人の人間が、二つの場所に同時に存在する。
これは、能力者の仕業ではないでしょうか。
お願いします、お嬢さま。彼女を助けてあげてください」
ブラインド レディはしばらくの沈黙のあと、答えた。
「調査する価値はあるわね」
そして二人は事件の街へ向かった。
二人はナギサの部屋に到着し、ドアのチャイムを鳴らした。
出迎えるナギサはメイドを見ると、懐かしそうな、そして安堵した笑顔になった。
「久し振りです、先輩」
「久し振りね、ナギサ」
二人は再会を喜んだ。
そしてメイドはブラインド レディを紹介した。
「私にできる範囲でなら、助けになるわ」
「はい、お願いします」
ブラインド レディは、まずナギサから事情を聞くことにした。
「貴女の知っている範囲で構わないから、情報を教えて貰えるかしら」
「事件の時間、姉さんは確かに私と一緒に居ました。
一緒に映画を見て、デパートでウィンドショッピングをして、喫茶店でお茶をして。
帰宅したのは五時半くらいです。姉さんの家までバスなどを使っても、四十分くらいだから、到着したのは六時すぎ。
犯行が行われたのは五時ぐらいなので、どう考えても姉さんに義兄さんを殺害するなんて不可能です」
「警備カメラに姿が映っていたと言っていたけれど、真犯人は家の玄関から出入りしたの?」
「はい。四時三十分くらいに家に入ったと。義兄さんが迎えて、そして三十分ほどして突然 襲いかかって殺したと。
それから犯人は家を出て、そして一時間ほどして姉さんが帰ってきました。
姉さんは、義兄さんを見て、すぐに救急車を呼びました。
でも 警察は、姉さんは自分が犯人ではないように見せかけて、とぼけるための演技だと。
だけど、そんな すぐに分かる嘘なんて吐くわけありません。
ましてや自分の家に警備カメラがあったことは、姉さんも知っています。
自分の姿が映ることは分かります。
でも、それも計画の内だと。そうやって意味不明なことをして、あたかも犯人でない振りをしているだけだと。
そんな むちゃくちゃな話がありますか」
「つまり、警察はお姉さんの証言は全て嘘だとして、取り合っていないということね。
他に、なにか気になる事はあるかしら」
「十日ほど前、洗濯して庭に干してあった服が盗まれたと言っていました。それが犯人の服と一致していると。
でも 警察は、それも嘘の証言だとして取り合っていません」
「話は大体分かったわ。あとの細かいことは、こちらで調べてみる。なにかわかったら連絡するわ」
「お願いします」
ブラインド レディは調査に向かった。
彼女はブラインド レディの世話をしているメイドの後輩に当たり、メイドとは仲が良かった。
「私は先輩に可愛がってもらって、色々良くしていただきました。大学卒業後、大企業に就職すると聞いて、私も喜びました」
それから お互いに忙しく 疎遠になっていたが、今回の事件で再会することとなった。
事件の発端となった日、ナギサは 姉のナミと一緒に映画を見ていた。
五つ年上の姉は、結婚三年目で夫と二人暮らし。
子供はまだできていないが、幸せな夫婦だった。
そして、その日は夫がたまには姉妹で遊んでこいと言ってくれたので、ナギサと一緒に映画を見ることにしたのだった。
映画館でヒット中のアクション映画を見て、そしてデパートでウィンドショッピングを楽しみ、喫茶店でお茶をしながら お喋りした。
そして夕暮れ。
ナミはナギサと別れ、自宅へ帰宅した。
彼女は自宅に到着して、奇妙なことに気付いた。
もう薄暗いのに、家の電気が付いておらず、奇妙に静寂だった。
なにかがおかしい。
しかし、なにがおかしいのか分からなかった。
ただ嫌な予感がした。
ナミが家の玄関を開けると、鍵はかかっておらず、リビングに入ると、そこには夫が血塗れで倒れている姿。
ナミは悲鳴を上げて、急いで救急車を呼んだ。
数分後、救急車が到着し、夫を病院に運んだが、しかし助かることはなかった。
遅れて警察が駆けつけ、ナミを保護し、現場が封鎖され、現場検証が行われた。
そして、その日のうちに、警察はナギサの姉を緊急逮捕した。
彼女は狼狽して、なぜ自分が逮捕されるのかと聞いた。
警察は怒りと自信に溢れて断言した。
「自宅の警備カメラにおまえの姿が映っている。おまえの犯行の全てが記録されていたんだ」
そして見せられたのは、自分と同じ姿をした女が夫を殺す姿だった。
警察は夫の殺害動機を徹底的に追求し、自白させる構えだった。
ナミは当然 自分のアリバイを主張した。
自分は妹のナギサと一緒に居たと。
しかし、妹の証言は嘘と決めつけられた。
こうして ナギサの姉は警察に徹底的に追求されることとなった。
「先輩、お願いします。助けてください」
姉の危機にナギサは、藁にもすがる思いでメイドに連絡した。
メイドが大企業の会長の侍女をしていると知っていたからだ。
もしかすると、大企業の権力で、姉を助けて貰えるかもしれないと思ったのだ。
メイドは すぐにブラインド レディに報告した。
「お嬢さま。ナギサは嘘を吐く人間ではありません。犯行時刻に一緒に居たというのならば、それは間違いないはずです。
でも、警備カメラには、お姉さんの姿が映っていた。
つまり、同じ人間が別の場所に同時に存在した。
一人の人間が、二つの場所に同時に存在する。
これは、能力者の仕業ではないでしょうか。
お願いします、お嬢さま。彼女を助けてあげてください」
ブラインド レディはしばらくの沈黙のあと、答えた。
「調査する価値はあるわね」
そして二人は事件の街へ向かった。
二人はナギサの部屋に到着し、ドアのチャイムを鳴らした。
出迎えるナギサはメイドを見ると、懐かしそうな、そして安堵した笑顔になった。
「久し振りです、先輩」
「久し振りね、ナギサ」
二人は再会を喜んだ。
そしてメイドはブラインド レディを紹介した。
「私にできる範囲でなら、助けになるわ」
「はい、お願いします」
ブラインド レディは、まずナギサから事情を聞くことにした。
「貴女の知っている範囲で構わないから、情報を教えて貰えるかしら」
「事件の時間、姉さんは確かに私と一緒に居ました。
一緒に映画を見て、デパートでウィンドショッピングをして、喫茶店でお茶をして。
帰宅したのは五時半くらいです。姉さんの家までバスなどを使っても、四十分くらいだから、到着したのは六時すぎ。
犯行が行われたのは五時ぐらいなので、どう考えても姉さんに義兄さんを殺害するなんて不可能です」
「警備カメラに姿が映っていたと言っていたけれど、真犯人は家の玄関から出入りしたの?」
「はい。四時三十分くらいに家に入ったと。義兄さんが迎えて、そして三十分ほどして突然 襲いかかって殺したと。
それから犯人は家を出て、そして一時間ほどして姉さんが帰ってきました。
姉さんは、義兄さんを見て、すぐに救急車を呼びました。
でも 警察は、姉さんは自分が犯人ではないように見せかけて、とぼけるための演技だと。
だけど、そんな すぐに分かる嘘なんて吐くわけありません。
ましてや自分の家に警備カメラがあったことは、姉さんも知っています。
自分の姿が映ることは分かります。
でも、それも計画の内だと。そうやって意味不明なことをして、あたかも犯人でない振りをしているだけだと。
そんな むちゃくちゃな話がありますか」
「つまり、警察はお姉さんの証言は全て嘘だとして、取り合っていないということね。
他に、なにか気になる事はあるかしら」
「十日ほど前、洗濯して庭に干してあった服が盗まれたと言っていました。それが犯人の服と一致していると。
でも 警察は、それも嘘の証言だとして取り合っていません」
「話は大体分かったわ。あとの細かいことは、こちらで調べてみる。なにかわかったら連絡するわ」
「お願いします」
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