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13・生き甲斐
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事故に遭った客室乗務員は ケガもなく、すぐに退院して仕事に復帰した。
そして同じく、ケガもなく仕事に復帰した生存者のエリートビジネスマン。
飛行機に乗る際、お互いの顔を見て、笑顔になった。
「貴方は もう大丈夫なのですね」
「君も仕事に復帰か。良かった」
「お互い、事故を乗り越えて 頑張りましょう」
「そうだな」
そして 客室乗務員は、 その生存者の客を席に案内した。
ブラインド レディとキタムラ氏は飛行機に搭乗すると、十分ほど沈黙していた。
飛行機は もうすぐ離陸しようとしているが、この 飛行機は墜落するのだ。
だが、墜落すると騒げば、飛行機恐怖症か何かだと思われるだけだ。
能力者を見つけなくては。
「お嬢さま、どうですか? 能力者はいましたか?」
「まだ探索中」
ブラインド レディは なんらかの感覚を研ぎ澄まして、能力者の存在を感知しようとしていた。
しかし、しばらくして彼女は首を振った。
「いないわ」
「つまり、能力者は乗っていない? 墜落するよう仕掛けたわけではないと言うことですか? この飛行機は大丈夫?」
「そう判断するのはまだ早い。まだ 調べていない人物がいるから」
「それは誰ですか?」
「機長と副操縦士」
キタムラ氏は操縦席に眼を向けた。
あそこの扉は飛行機の中でも厳重な部類に入る。
ブラインド レディの感覚がいかに鋭敏でも、あの重厚な扉を通過することは出来ない。
「操縦席の外へ出す必要があるわ」
「そうですね。僕に任せてください」
「なにか案があるの?」
「客室乗務員に協力してもらいます。お嬢さまは後部へ移動してください。普段、客は入ってこないスペースがあります」
「わかったわ」
キタムラ氏は生存者の客室乗務員に声をかけた。
「あら、キタムラさん。どうしたのですか? なにかあったのですか?」
何も知らない客室乗務員は、事務職のキタムラ氏がここにいることを怪訝に思った。
「実は、その、緊急事態だ。単刀直入に言うと、この飛行機も墜落する可能性がある」
客室乗務員は顔が強張った。
「ちょっと、止めてください。笑えませんよ」
「冗談じゃないんだ。実は先日、生存者の一人が死亡した」
「……死んだ? どうして?」
「飛行機の墜落だ」
客室乗務員は顔が真っ青になった。
キタムラ氏は さらに言葉を重ねた。
「君が被った飛行機墜落は、事故ではない可能性が高い。そして、あの墜落の生存者が、君と あともう一人、この飛行機に乗っている。犯人なら必ず狙ってくる」
客室乗務員はパニック寸前だった。
飛行機は もうすぐ離陸しようとしている。
「ああ、なんてこと。どうすれば良いの?」
「だから 君に協力してほしい。墜落を避けるために」
「どうすれば良いんですか?」
「操縦士の二人を後部に連れてきてほしい」
「機長と副操縦士が墜落させると言うんですか?」
「それは分からないが、とにかく確認しなくては。確かめる方法はあるんだ。とにかく、なんとかして二人を連れてくるんだ」
「わかりました」
客室乗務員は操縦席に向かった。
これで 彼女が上手くやることを祈るしかない。
客室乗務員は、操縦席でなにかを話していた。
すると機長だけが立ち上がり、操縦席から出てきた。
副操縦士がいない。
どういうことだ?
なにか失敗したのか?
機長が後部のブラインド レディを見ると、爽やかな笑顔になった。
「やあ、お嬢さま。久し振りだね」
ブラインド レディは答えた。
「その声、笑い男ね」
キタムラ氏は驚愕した。
機長は勤務二十年のベテランだ。
笑い男のはずがない。
ブラインド レディは指摘する。
「遠隔操作で機長の体を操っているのね。そういう力を持った能力者がいる」
「そのとおり。僕の力じゃないよ。僕に なんの力もないことは、君もよく知っているだろう。
この能力者の事は、みんな 人形使いと呼んでいる」
「飛行機墜落は何が目的なの?」
機長を操っている笑い男は、楽しそうな微笑みで答えた。
「秘密だよ。
でも、飛行機 墜落からは手を引くよ。何人か生き残りがいるけど、大体の目的は達成したから、まあ 十分だろう。
それに、僕は君を殺したりしない。
君は僕にとって大切な人だから。
そうとも……」
笑い男は ブラインド レディに 慈愛の微笑みで囁いた。
「君は僕の生き甲斐だよ」
そして機長は意識を失い倒れた。
その後、客室乗務員が、機長が意識を失ったことを副操縦士に伝えると、彼は離陸を中止した。
そして 警察などが呼ばれ、すぐに捜査が始まった。
機長は今日一日なにをしていたのか全く憶えておらず、ブラインド レディとの会話も憶えていなかった。
そのことから、一連の飛行機墜落は催眠術による犯行ではないかと見られたが、しかし催眠術では自殺させることは出来ないと言われている。
いったいどうやって墜落させたのか。
警察に その謎を解くことはできないだろう。
機長は精神科の医師に診てもらうことになった。
しかし、心身に異常がないと見られれば、すぐに退院できるだろうとのこと。
こうして、笑い男による飛行機墜落事件は終わりを告げた。
ブラインド レディとキタムラ氏は別れの挨拶をした。
「お嬢さま、やはり 笑い男を追い続けるつもりですか?」
「もちろんよ。あの男を止められるのは私だけなのだから」
「また、お目にかかりましょう」
「ええ、またね」
こうして、キタムラ氏はブラインド レディと別れたのだった。
しかし、笑い男の事件と関わることがあれば、再会するかもしれない。
また 彼女と会えることを、キタムラ氏は少し期待していた。
「今回の事件はこんな感じだったよ。僕も驚いた。まさか、お嬢さまの追っている笑い男に、僕が会うことになるとは。
いや、もっとも機長の体を介してだから、直接 会ったわけではないのだけど」
私はキタムラ氏に質問する。
それは、元々キタムラ氏に聞きたかった質問でもあった。
「笑い男の目的はなんだ? 笑い男とは一体何者なのか? そして 彼女は なぜ笑い男を追っている?」
キタムラ氏は端的に答えた。
「私も詳しくは知らないんだ。
ただ 笑い男は……」
キタムラ氏は少し言い淀んだ後、答えた。
「お嬢さまの ご両親を殺した犯人だ」
私はそれを聞いて理解不能に陥った。
ブラインド レディの両親を殺しのに、なぜブライド レディは殺さないのか?
なぜ 大切な人だと言ったのか?
生き甲斐とは どういう意味なのか?
私は引き続き二人の事件を取材していく。
そして同じく、ケガもなく仕事に復帰した生存者のエリートビジネスマン。
飛行機に乗る際、お互いの顔を見て、笑顔になった。
「貴方は もう大丈夫なのですね」
「君も仕事に復帰か。良かった」
「お互い、事故を乗り越えて 頑張りましょう」
「そうだな」
そして 客室乗務員は、 その生存者の客を席に案内した。
ブラインド レディとキタムラ氏は飛行機に搭乗すると、十分ほど沈黙していた。
飛行機は もうすぐ離陸しようとしているが、この 飛行機は墜落するのだ。
だが、墜落すると騒げば、飛行機恐怖症か何かだと思われるだけだ。
能力者を見つけなくては。
「お嬢さま、どうですか? 能力者はいましたか?」
「まだ探索中」
ブラインド レディは なんらかの感覚を研ぎ澄まして、能力者の存在を感知しようとしていた。
しかし、しばらくして彼女は首を振った。
「いないわ」
「つまり、能力者は乗っていない? 墜落するよう仕掛けたわけではないと言うことですか? この飛行機は大丈夫?」
「そう判断するのはまだ早い。まだ 調べていない人物がいるから」
「それは誰ですか?」
「機長と副操縦士」
キタムラ氏は操縦席に眼を向けた。
あそこの扉は飛行機の中でも厳重な部類に入る。
ブラインド レディの感覚がいかに鋭敏でも、あの重厚な扉を通過することは出来ない。
「操縦席の外へ出す必要があるわ」
「そうですね。僕に任せてください」
「なにか案があるの?」
「客室乗務員に協力してもらいます。お嬢さまは後部へ移動してください。普段、客は入ってこないスペースがあります」
「わかったわ」
キタムラ氏は生存者の客室乗務員に声をかけた。
「あら、キタムラさん。どうしたのですか? なにかあったのですか?」
何も知らない客室乗務員は、事務職のキタムラ氏がここにいることを怪訝に思った。
「実は、その、緊急事態だ。単刀直入に言うと、この飛行機も墜落する可能性がある」
客室乗務員は顔が強張った。
「ちょっと、止めてください。笑えませんよ」
「冗談じゃないんだ。実は先日、生存者の一人が死亡した」
「……死んだ? どうして?」
「飛行機の墜落だ」
客室乗務員は顔が真っ青になった。
キタムラ氏は さらに言葉を重ねた。
「君が被った飛行機墜落は、事故ではない可能性が高い。そして、あの墜落の生存者が、君と あともう一人、この飛行機に乗っている。犯人なら必ず狙ってくる」
客室乗務員はパニック寸前だった。
飛行機は もうすぐ離陸しようとしている。
「ああ、なんてこと。どうすれば良いの?」
「だから 君に協力してほしい。墜落を避けるために」
「どうすれば良いんですか?」
「操縦士の二人を後部に連れてきてほしい」
「機長と副操縦士が墜落させると言うんですか?」
「それは分からないが、とにかく確認しなくては。確かめる方法はあるんだ。とにかく、なんとかして二人を連れてくるんだ」
「わかりました」
客室乗務員は操縦席に向かった。
これで 彼女が上手くやることを祈るしかない。
客室乗務員は、操縦席でなにかを話していた。
すると機長だけが立ち上がり、操縦席から出てきた。
副操縦士がいない。
どういうことだ?
なにか失敗したのか?
機長が後部のブラインド レディを見ると、爽やかな笑顔になった。
「やあ、お嬢さま。久し振りだね」
ブラインド レディは答えた。
「その声、笑い男ね」
キタムラ氏は驚愕した。
機長は勤務二十年のベテランだ。
笑い男のはずがない。
ブラインド レディは指摘する。
「遠隔操作で機長の体を操っているのね。そういう力を持った能力者がいる」
「そのとおり。僕の力じゃないよ。僕に なんの力もないことは、君もよく知っているだろう。
この能力者の事は、みんな 人形使いと呼んでいる」
「飛行機墜落は何が目的なの?」
機長を操っている笑い男は、楽しそうな微笑みで答えた。
「秘密だよ。
でも、飛行機 墜落からは手を引くよ。何人か生き残りがいるけど、大体の目的は達成したから、まあ 十分だろう。
それに、僕は君を殺したりしない。
君は僕にとって大切な人だから。
そうとも……」
笑い男は ブラインド レディに 慈愛の微笑みで囁いた。
「君は僕の生き甲斐だよ」
そして機長は意識を失い倒れた。
その後、客室乗務員が、機長が意識を失ったことを副操縦士に伝えると、彼は離陸を中止した。
そして 警察などが呼ばれ、すぐに捜査が始まった。
機長は今日一日なにをしていたのか全く憶えておらず、ブラインド レディとの会話も憶えていなかった。
そのことから、一連の飛行機墜落は催眠術による犯行ではないかと見られたが、しかし催眠術では自殺させることは出来ないと言われている。
いったいどうやって墜落させたのか。
警察に その謎を解くことはできないだろう。
機長は精神科の医師に診てもらうことになった。
しかし、心身に異常がないと見られれば、すぐに退院できるだろうとのこと。
こうして、笑い男による飛行機墜落事件は終わりを告げた。
ブラインド レディとキタムラ氏は別れの挨拶をした。
「お嬢さま、やはり 笑い男を追い続けるつもりですか?」
「もちろんよ。あの男を止められるのは私だけなのだから」
「また、お目にかかりましょう」
「ええ、またね」
こうして、キタムラ氏はブラインド レディと別れたのだった。
しかし、笑い男の事件と関わることがあれば、再会するかもしれない。
また 彼女と会えることを、キタムラ氏は少し期待していた。
「今回の事件はこんな感じだったよ。僕も驚いた。まさか、お嬢さまの追っている笑い男に、僕が会うことになるとは。
いや、もっとも機長の体を介してだから、直接 会ったわけではないのだけど」
私はキタムラ氏に質問する。
それは、元々キタムラ氏に聞きたかった質問でもあった。
「笑い男の目的はなんだ? 笑い男とは一体何者なのか? そして 彼女は なぜ笑い男を追っている?」
キタムラ氏は端的に答えた。
「私も詳しくは知らないんだ。
ただ 笑い男は……」
キタムラ氏は少し言い淀んだ後、答えた。
「お嬢さまの ご両親を殺した犯人だ」
私はそれを聞いて理解不能に陥った。
ブラインド レディの両親を殺しのに、なぜブライド レディは殺さないのか?
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