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11・高級航空便
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私は ブラインド レディと 笑い男の関係を調査していた。
そして 一人の航空職員から取材することに成功した。
彼のことは便宜上 キタムラと呼ぶことにしよう。
キタムラ氏は以前、ブラインド レディの企業に務めていたことがあるという。
そしてブラインド レディと笑い男について、一つだけ知っていることがあるとのこと。
わたしは彼に話を聞いた。
「やあ、待っていたよ。君からインタビュー出来るのを楽しみにしていた」
私が笑顔で応じると、キタムラ氏も笑顔で応じた。
「僕も話をしたかった。というのも、先日 お嬢さまと会ったんだ。実は笑い男がまた事件を起こしたようでね」
その話は予想外だった。
私は彼女と笑い男の関係を聞く前に、その話を聞くことにした。
「よければ、その話を先に聞かせてもらえないかな」
「もちろんだとも」
彼の会社はセレブやブルジョワなど、資産家を客層とする高級航空便を運営している。
たとえ国内便であっても、身分が確かでなければ乗せることはない。
そして 事件が起きた その日、一機の飛行機が離陸した。
乗ったのは合計三十四人。
乗客 二十八人。
客室乗務員 四人。
そして機長と副操縦士。
離陸前、客室乗務員が乗客に席を案内していた。
次々と乗客が乗り、席が満員になろうとしたとき、問題の人物は現れた。
笑い男ではない。
年配の女性だった。
温和な微笑みを浮かべた、虫も殺さないような年配女性。
しかし 客室乗務員は思わず表情が強張った。
彼女の眼は目は異常に充血していたのだ。
「お客様、医師の手配をいたしましょうか。眼が、その……」
年配女性は穏やかに答えた。
「ああ、大丈夫ですよ。実は仕事で徹夜してしまいまして。それで眼が赤くなっているだけなんです」
「そ、そうですか。では、お席に案内いたします」
「ありがとうございます」
客室乗務員は得たいの知れない不気味さを感じながらも、席へ案内し、年配女性は座った。
年配女性で乗客は全員だった。
そして 飛行機は離陸した。
一時間ほど経過した。
空は快晴で荒れておらず、平穏そのものだった。
あまりにも穏やかなので、機長が副操縦士に、冗談で こう言うのを 客室乗務員が聞いた。
「嵐の前の静けさかな」
それは的中した。
年配女性が立ち上がった。
客室乗務員はなにかあったのだろうかと、聞いてみる。
「お客様、なにかありましたか」
「いえ、ずっと座っていたら腰が痛くなってしまって。離陸してから どのくらい経つのかしら?」
「そろそろ 一時間です」
「飛ぶように時間が過ぎますね」
それは飛行機にかけた冗談だったのだろうか。
年配女性は続けて言った。
「少し歩きたいのだけれど、構わないかしら」
「ええ、どうぞ」
客室乗務員は なんとなく嫌な予感がしながらも、止めるわけにもいかなかった。
年配女性は飛行機の前部の非常口までゆっくりと歩いた。
そして非常口の窓から見える空の景色を、穏やかな顔で眺めていたのだった。
その様子を最前列にいた客が見ていた。
年配女性の表情は、まるで天使の笑顔のようだった。
最前列の客は、なんとなく その年配女性を見ていると、不意にその目から血の涙が流れ始めた。
客は仰天し目を見開く。
すると年配女性は、あろうことか 非常口の取っ手に手をかけた。
客は思わず叫んだ。
「あんた なにをするつもりだ!?」
年配女性は その客に対し にっこりと笑うと、こう言った。
「おまえたちも墜ちろ」
非常口の取っ手が回された。
非常口が開き、機内に外気が流れこみ、気圧が一気に減圧する。
飛行機はコントロールを失い、機長と副機長が必死に制御しようとするも、結局 無駄に終わり、飛行機は山腹に墜落した。
乗客は ほとんど死亡し、生存者は六名。
機長と、年配女性を案内した客室乗務員。
そして乗客 四名。
生存者の乗客の中には、年配女性が非常口を開けるのを目撃した者もいた。
この航空会社で働いているキタムラ氏は、この話を聞いて ブラインド レディに連絡した。
ブラインド レディは その日のうちに 彼のオフィスに来た。
「さすがに早いですね、お嬢さま」
「お嬢さまは もう止めてちょうだい。貴方は もう私の社員というわけではないのだから」
「いえ、事情があって お嬢さまの会社は辞めましたが、恩があるということにはかわりありません」
「好きにして」
「では さっそく本題に入ります」
彼は事故に関わる一連の出来事を話した。
「笑い男が関わっている可能性があるとは思いませんか」
「確かにそうね。少なくとも能力者が関わっている可能性は高い。でも、その年配女性は亡くなっているのね」
「そうです。つまり、調査を始める前の段階から、手詰まりかもしれません」
「一応 調べてみるわ。死亡した乗員乗客の名簿と、生存者の名簿を貰えるかしら」
「ここに用意してあります」
彼はディスクを渡した。
「墜落した飛行機の残骸は、回収作業が終わって、倉庫に保管されています。各当局が事故か事件か調査中で、関係者以外は立ち入り禁止。僕の権限では、どうしようもありません」
「それは私の企業から手を回すわ」
そして ブライン ドレディは、キタムラ氏に感謝を告げると、企業に連絡するためにリムジンに戻った。
そして 一人の航空職員から取材することに成功した。
彼のことは便宜上 キタムラと呼ぶことにしよう。
キタムラ氏は以前、ブラインド レディの企業に務めていたことがあるという。
そしてブラインド レディと笑い男について、一つだけ知っていることがあるとのこと。
わたしは彼に話を聞いた。
「やあ、待っていたよ。君からインタビュー出来るのを楽しみにしていた」
私が笑顔で応じると、キタムラ氏も笑顔で応じた。
「僕も話をしたかった。というのも、先日 お嬢さまと会ったんだ。実は笑い男がまた事件を起こしたようでね」
その話は予想外だった。
私は彼女と笑い男の関係を聞く前に、その話を聞くことにした。
「よければ、その話を先に聞かせてもらえないかな」
「もちろんだとも」
彼の会社はセレブやブルジョワなど、資産家を客層とする高級航空便を運営している。
たとえ国内便であっても、身分が確かでなければ乗せることはない。
そして 事件が起きた その日、一機の飛行機が離陸した。
乗ったのは合計三十四人。
乗客 二十八人。
客室乗務員 四人。
そして機長と副操縦士。
離陸前、客室乗務員が乗客に席を案内していた。
次々と乗客が乗り、席が満員になろうとしたとき、問題の人物は現れた。
笑い男ではない。
年配の女性だった。
温和な微笑みを浮かべた、虫も殺さないような年配女性。
しかし 客室乗務員は思わず表情が強張った。
彼女の眼は目は異常に充血していたのだ。
「お客様、医師の手配をいたしましょうか。眼が、その……」
年配女性は穏やかに答えた。
「ああ、大丈夫ですよ。実は仕事で徹夜してしまいまして。それで眼が赤くなっているだけなんです」
「そ、そうですか。では、お席に案内いたします」
「ありがとうございます」
客室乗務員は得たいの知れない不気味さを感じながらも、席へ案内し、年配女性は座った。
年配女性で乗客は全員だった。
そして 飛行機は離陸した。
一時間ほど経過した。
空は快晴で荒れておらず、平穏そのものだった。
あまりにも穏やかなので、機長が副操縦士に、冗談で こう言うのを 客室乗務員が聞いた。
「嵐の前の静けさかな」
それは的中した。
年配女性が立ち上がった。
客室乗務員はなにかあったのだろうかと、聞いてみる。
「お客様、なにかありましたか」
「いえ、ずっと座っていたら腰が痛くなってしまって。離陸してから どのくらい経つのかしら?」
「そろそろ 一時間です」
「飛ぶように時間が過ぎますね」
それは飛行機にかけた冗談だったのだろうか。
年配女性は続けて言った。
「少し歩きたいのだけれど、構わないかしら」
「ええ、どうぞ」
客室乗務員は なんとなく嫌な予感がしながらも、止めるわけにもいかなかった。
年配女性は飛行機の前部の非常口までゆっくりと歩いた。
そして非常口の窓から見える空の景色を、穏やかな顔で眺めていたのだった。
その様子を最前列にいた客が見ていた。
年配女性の表情は、まるで天使の笑顔のようだった。
最前列の客は、なんとなく その年配女性を見ていると、不意にその目から血の涙が流れ始めた。
客は仰天し目を見開く。
すると年配女性は、あろうことか 非常口の取っ手に手をかけた。
客は思わず叫んだ。
「あんた なにをするつもりだ!?」
年配女性は その客に対し にっこりと笑うと、こう言った。
「おまえたちも墜ちろ」
非常口の取っ手が回された。
非常口が開き、機内に外気が流れこみ、気圧が一気に減圧する。
飛行機はコントロールを失い、機長と副機長が必死に制御しようとするも、結局 無駄に終わり、飛行機は山腹に墜落した。
乗客は ほとんど死亡し、生存者は六名。
機長と、年配女性を案内した客室乗務員。
そして乗客 四名。
生存者の乗客の中には、年配女性が非常口を開けるのを目撃した者もいた。
この航空会社で働いているキタムラ氏は、この話を聞いて ブラインド レディに連絡した。
ブラインド レディは その日のうちに 彼のオフィスに来た。
「さすがに早いですね、お嬢さま」
「お嬢さまは もう止めてちょうだい。貴方は もう私の社員というわけではないのだから」
「いえ、事情があって お嬢さまの会社は辞めましたが、恩があるということにはかわりありません」
「好きにして」
「では さっそく本題に入ります」
彼は事故に関わる一連の出来事を話した。
「笑い男が関わっている可能性があるとは思いませんか」
「確かにそうね。少なくとも能力者が関わっている可能性は高い。でも、その年配女性は亡くなっているのね」
「そうです。つまり、調査を始める前の段階から、手詰まりかもしれません」
「一応 調べてみるわ。死亡した乗員乗客の名簿と、生存者の名簿を貰えるかしら」
「ここに用意してあります」
彼はディスクを渡した。
「墜落した飛行機の残骸は、回収作業が終わって、倉庫に保管されています。各当局が事故か事件か調査中で、関係者以外は立ち入り禁止。僕の権限では、どうしようもありません」
「それは私の企業から手を回すわ」
そして ブライン ドレディは、キタムラ氏に感謝を告げると、企業に連絡するためにリムジンに戻った。
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