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129・十四人目
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俺達は園内のカラフルに舗装された道を歩く。
「色んなアトラクションがありますわね。目移りしてしまいますわ」
セルニアの言うとおり、園内には思った以上に多くのアトラクションがあった。
ジェットコースターなどの定番の屋外型の物から、ゲーセンなどの屋内型の物まで。
そんな中で、セルニアが最初に興味を示したのは、
「あ、コーヒーカップがありますわ」
色鮮やかな巨大な陶器西洋茶碗だ。
「わあ、これがくるくると回りますのね」
俺達は早速乗り込む。
「じゃ、セルニアがどうぞ」
「ありがとうございます」
セルニアがウキウキしながら、ハンドルを握った。
「たー!」
物凄い勢いで回し始めた。
いきなりの遠心力に、俺はカップの縁にしがみつく。
「オーッホッホッホッ! 面白い! 面白いですわ!」
「セ、セルニア。違うよ。これ、こういうアトラクションじゃないよ」
「オホホッ! オホホホッ! オーッホッホッホッホッホッ!」
俺の言葉は届いていなかった。
「いやぁ、やはりコーヒーカップはエキサイティングですわ」
目を輝かせているセルニアとは対照的に、俺は口から魂が抜けそうになっていた。
「ああ、そうだね。ところで、こういう楽しみ方はどこで覚えたの?」
「焔華お祖母さまから学びました。コーヒーカップは遠心力で飛ばされるほどの勢いで回すと面白いと」
「そうなんだ」
あの人、孫に教えてはならないことを教えてるなぁ。
これを始めとして、セルニアは、普通のアトラクションをスリリングな物へと変えていった。
「アミューズメントパークとは本当に楽しい場ですわね」
「そうだねぇ」
俺は数々のスリリングに、口から魂が抜けそうになっていった。
ジェットコースターが一番マシだったって、いったい。
そんな風にして、進んで七つ目におとずれたアトラクション。
怪奇堂というお化け屋敷だった。
「うーむ、実に不気味な感じだ」
「まあ、お化け屋敷ですから。しかし、ここを外す手はありませんわ。遊園地の定番、お化け屋敷。
遊園地と言えばお化け屋敷。お化け屋敷と言えば遊園地ですわ。
お化け屋敷でムンクの叫びの如く絶叫せずして、遊園地を堪能したとは言えませんわ」
俺達は乗り物に乗り込む。
このお化け屋敷は、乗り物に乗って自動的に進んで行くライド系。
「暗いですわ。なんだかこういう状況になると、あの時のことを思い出しますわ。同人誌を取りに戻ったときの夜の学校を」
「あの夜のことか。俺も思い出すよ」
セルニアに賢者にしてもらったことを。
「あの時は、本当に幽霊が出てきて大変でしたが、しかしお化け屋敷なので、安心ですわね」
「そうだね。幽霊なんて出ないよ。絶対に出ないから。ははは」
俺は乾いた笑いでごまかした。
ライドが動き出した。
「ドキドキしますわ」
不気味な効果音と共に、磔にされたミイラが出現したり、
幽霊屋敷なのに、なぜかリトルグレイがいたり、
「来ますわ。きっと来ますわ。きっと来ますわ。来たー!」
井戸から髪の長い白服の女が出てきたり。
そんな感じで俺達はお化け屋敷を楽しんだ。
「ありがとうございました-」
係員の挨拶を受けながら、俺達はお化け屋敷を出る。
「面白かったですわね、お化け屋敷」
「ああ、以外と造形がこってたな。雰囲気も抜群で。
特に、十三人の幽霊がダンスしている中、十四人目の幽霊が隅っこでうずくまってブツブツ言っていたヤツ。あれが一番怖い雰囲気を醸し出していたな」
「ええ、本当に。まるで本当の幽霊みたいでしたわ」
「あははは」
「おほほほ」
俺達が出て行ったあと、係員さんが青い顔をしていた。
「十四人目の幽霊なんて居ないはずなのに……」
さて俺達は次に占いの館に入ってみることにした。
西洋風のこぢんまりとした館。
「占いも、こういう大きなアミューズメントパークの定番ですわね」
「そうだな」
中に入ると、そこで占いをしていたのは、
「おや、吉祥院さまではありませんか」
オカルト研究会の魔女部員だった。
「君、こんなところでなにしてるの?」
「休日はここでアルバイトをして、オカ研の部費を稼いでいるのです」
「学校から部費は出るんじゃ」
「オカルト研究会なんて怪しい部活に出る経費など、たかが知れています」
「まあ、それもそうか」
「それよりも、占って欲しいのでしょう。さあ、座ってください。
私がブラジルで学んだ、グレイシー呪術で占って進ぜましょう」
大きな水晶玉の周りで、両手を怪しげに動かす。
「キェエエエエエ!」
奇声を上げて、魔女っ子さんは、
「結果が出ました。非常に興味深い結果です。
お二人の未来に暗雲が立ちこめています。それが吉と出るか凶と出るか、それはお二人次第。
吉祥院さま。近い将来、選択が迫られます。みんなの女神か、それとも一人だけの女性か。その選択を迫られる。
その選択は二人の人生の選択となります。
いいですね、その選択は もうすぐ訪れます。心してください」
なにやら意味ありげな占い結果だった。
その後、俺達は屋内フードコートに行くことにした。
もうお昼だ。
お腹も空いてきた。
広めに作られたフードコートは、ラインナップが充実していて、主にファーストフードが中心だった。
「セルニア、どれにする? 和食系も洋食系もあるけど」
「あ、では、マクスドーナルドでお願いします。実はわたくし食べたことがないのですわ」
「そうなんだ。確かにご飯は、学食以外は基本、晶さんたちが作ってるからか」
「そうなのですわ。だから意外と外食はしたことがなくて。世界一のファーストフードの味、堪能したいですわ」
「分かった。では何にする?」
「分かりませんわ。本当に初めてですので、どれがいいのか迷ってしましますわ。なにかお勧めはありますか?」
「まあ、無難にダブルチーズバーガーセットは?」
「ではそれでお願いします」
俺達はカウンターに行くと、注文する。
そしてセルニアは、まだ品物を受け取っていないのに、席へ行こうとした。
「セルニア、待って。どこ行くの?」
「え? 席で品物が来るのを待つのでは?」
「いや、ここで受け取るんだ」
「そ、そうなのですか」
「で、食べ終わったら、あそこのゴミ箱へ自分で捨てに行く」
「そ、そこまでセルフサービスだとは。安さの秘密が分かりますわね。これは吉祥院グループも参考にせねば」
庶民的なお嬢さまでも、意外なところで世間知らずなところが出てくるのだな。
そして俺達はダブチーセットを手に席に座った。
「いただきますわ」
「召し上がれ」
「ガブ、モグモグ、ゴックン。
うーむ、実に美味しいですわ。大量生産でこれほどの味を出すとは。だてに世界一のファーストフード店になっておりませんわね。実に参考になります。ハグ、モグモグ」
セルニアは世界一のファーストフードを堪能したのだった。
昼食を終えた後、俺達は水原さんの言っていたイベントへ向かうことにした。
「色んなアトラクションがありますわね。目移りしてしまいますわ」
セルニアの言うとおり、園内には思った以上に多くのアトラクションがあった。
ジェットコースターなどの定番の屋外型の物から、ゲーセンなどの屋内型の物まで。
そんな中で、セルニアが最初に興味を示したのは、
「あ、コーヒーカップがありますわ」
色鮮やかな巨大な陶器西洋茶碗だ。
「わあ、これがくるくると回りますのね」
俺達は早速乗り込む。
「じゃ、セルニアがどうぞ」
「ありがとうございます」
セルニアがウキウキしながら、ハンドルを握った。
「たー!」
物凄い勢いで回し始めた。
いきなりの遠心力に、俺はカップの縁にしがみつく。
「オーッホッホッホッ! 面白い! 面白いですわ!」
「セ、セルニア。違うよ。これ、こういうアトラクションじゃないよ」
「オホホッ! オホホホッ! オーッホッホッホッホッホッ!」
俺の言葉は届いていなかった。
「いやぁ、やはりコーヒーカップはエキサイティングですわ」
目を輝かせているセルニアとは対照的に、俺は口から魂が抜けそうになっていた。
「ああ、そうだね。ところで、こういう楽しみ方はどこで覚えたの?」
「焔華お祖母さまから学びました。コーヒーカップは遠心力で飛ばされるほどの勢いで回すと面白いと」
「そうなんだ」
あの人、孫に教えてはならないことを教えてるなぁ。
これを始めとして、セルニアは、普通のアトラクションをスリリングな物へと変えていった。
「アミューズメントパークとは本当に楽しい場ですわね」
「そうだねぇ」
俺は数々のスリリングに、口から魂が抜けそうになっていった。
ジェットコースターが一番マシだったって、いったい。
そんな風にして、進んで七つ目におとずれたアトラクション。
怪奇堂というお化け屋敷だった。
「うーむ、実に不気味な感じだ」
「まあ、お化け屋敷ですから。しかし、ここを外す手はありませんわ。遊園地の定番、お化け屋敷。
遊園地と言えばお化け屋敷。お化け屋敷と言えば遊園地ですわ。
お化け屋敷でムンクの叫びの如く絶叫せずして、遊園地を堪能したとは言えませんわ」
俺達は乗り物に乗り込む。
このお化け屋敷は、乗り物に乗って自動的に進んで行くライド系。
「暗いですわ。なんだかこういう状況になると、あの時のことを思い出しますわ。同人誌を取りに戻ったときの夜の学校を」
「あの夜のことか。俺も思い出すよ」
セルニアに賢者にしてもらったことを。
「あの時は、本当に幽霊が出てきて大変でしたが、しかしお化け屋敷なので、安心ですわね」
「そうだね。幽霊なんて出ないよ。絶対に出ないから。ははは」
俺は乾いた笑いでごまかした。
ライドが動き出した。
「ドキドキしますわ」
不気味な効果音と共に、磔にされたミイラが出現したり、
幽霊屋敷なのに、なぜかリトルグレイがいたり、
「来ますわ。きっと来ますわ。きっと来ますわ。来たー!」
井戸から髪の長い白服の女が出てきたり。
そんな感じで俺達はお化け屋敷を楽しんだ。
「ありがとうございました-」
係員の挨拶を受けながら、俺達はお化け屋敷を出る。
「面白かったですわね、お化け屋敷」
「ああ、以外と造形がこってたな。雰囲気も抜群で。
特に、十三人の幽霊がダンスしている中、十四人目の幽霊が隅っこでうずくまってブツブツ言っていたヤツ。あれが一番怖い雰囲気を醸し出していたな」
「ええ、本当に。まるで本当の幽霊みたいでしたわ」
「あははは」
「おほほほ」
俺達が出て行ったあと、係員さんが青い顔をしていた。
「十四人目の幽霊なんて居ないはずなのに……」
さて俺達は次に占いの館に入ってみることにした。
西洋風のこぢんまりとした館。
「占いも、こういう大きなアミューズメントパークの定番ですわね」
「そうだな」
中に入ると、そこで占いをしていたのは、
「おや、吉祥院さまではありませんか」
オカルト研究会の魔女部員だった。
「君、こんなところでなにしてるの?」
「休日はここでアルバイトをして、オカ研の部費を稼いでいるのです」
「学校から部費は出るんじゃ」
「オカルト研究会なんて怪しい部活に出る経費など、たかが知れています」
「まあ、それもそうか」
「それよりも、占って欲しいのでしょう。さあ、座ってください。
私がブラジルで学んだ、グレイシー呪術で占って進ぜましょう」
大きな水晶玉の周りで、両手を怪しげに動かす。
「キェエエエエエ!」
奇声を上げて、魔女っ子さんは、
「結果が出ました。非常に興味深い結果です。
お二人の未来に暗雲が立ちこめています。それが吉と出るか凶と出るか、それはお二人次第。
吉祥院さま。近い将来、選択が迫られます。みんなの女神か、それとも一人だけの女性か。その選択を迫られる。
その選択は二人の人生の選択となります。
いいですね、その選択は もうすぐ訪れます。心してください」
なにやら意味ありげな占い結果だった。
その後、俺達は屋内フードコートに行くことにした。
もうお昼だ。
お腹も空いてきた。
広めに作られたフードコートは、ラインナップが充実していて、主にファーストフードが中心だった。
「セルニア、どれにする? 和食系も洋食系もあるけど」
「あ、では、マクスドーナルドでお願いします。実はわたくし食べたことがないのですわ」
「そうなんだ。確かにご飯は、学食以外は基本、晶さんたちが作ってるからか」
「そうなのですわ。だから意外と外食はしたことがなくて。世界一のファーストフードの味、堪能したいですわ」
「分かった。では何にする?」
「分かりませんわ。本当に初めてですので、どれがいいのか迷ってしましますわ。なにかお勧めはありますか?」
「まあ、無難にダブルチーズバーガーセットは?」
「ではそれでお願いします」
俺達はカウンターに行くと、注文する。
そしてセルニアは、まだ品物を受け取っていないのに、席へ行こうとした。
「セルニア、待って。どこ行くの?」
「え? 席で品物が来るのを待つのでは?」
「いや、ここで受け取るんだ」
「そ、そうなのですか」
「で、食べ終わったら、あそこのゴミ箱へ自分で捨てに行く」
「そ、そこまでセルフサービスだとは。安さの秘密が分かりますわね。これは吉祥院グループも参考にせねば」
庶民的なお嬢さまでも、意外なところで世間知らずなところが出てくるのだな。
そして俺達はダブチーセットを手に席に座った。
「いただきますわ」
「召し上がれ」
「ガブ、モグモグ、ゴックン。
うーむ、実に美味しいですわ。大量生産でこれほどの味を出すとは。だてに世界一のファーストフード店になっておりませんわね。実に参考になります。ハグ、モグモグ」
セルニアは世界一のファーストフードを堪能したのだった。
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