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118・かぶり物
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入ってきたのはセルニアたちだった。
正確には、セルニア、湖瑠璃ちゃん、眞鳥さん、晶さんの四人。
俺の位置からは声だけでしか判別できないが、間違いない。
もし、俺が宮と一緒に温泉に入っているところを見られれば、みんなはどう思うか。
特にセルニア。
怒るを通り越して、泣き出してもおかしくないんじゃないか。
誤解だとか言っても、そんなの通用しない。
俺と宮は完全に裸のお付き合いをしているようにしか見えないんだから。
宮が小声で俺に、
「動いちゃだめ」
「わかった」
俺は隠れていると、みんなが湯船に入ってきた。
「あら、球竜さんではありませんか」
セルニアが宮に気付いた。
しかし、俺がいることまでは気付いていない。
湖瑠璃ちゃんが、
「宮 お姉さんでしたか」
宮は少しキョドりながらも、
「ええっと、みんなもこっち来たんだ」
「ええ、ここは明日は入れないので、今日の内に入っておこうと思いまして」
セルニアが説明した。
宮は俺を体で隠す位置にいる。
俺は この位置から動くことはできないのだが、場所が獅子像の給湯口に近くて、メチャクチャ熱い。
眞鳥さんが、
「どうですか、球竜さん。湯加減は?」
「うん、良い感じだよ。少し熱めで温泉って雰囲気が出てる」
晶さんが、
「なるほど。温泉と言えば熱めなのが基本。どれ、アタシがちょっと確かめやしょう」
晶さんが入ってきた。
「なるほど。良い感じでやす。いかにも温泉と行った風情」
湖瑠璃ちゃんも、
「ええ、いい湯加減です。ほら、お姉さまも」
「はいはい」
湖瑠璃ちゃんに促され、セルニアも入ってくる。
「ではわたしも」
眞鳥さんも入ってきた。
こうして、さっきまで広々とした貸し切り状態だった湯船は、すっかり女子で一杯になった。
セルニアが感嘆した声。
「まあ、とても良いお湯です。それに広々としていて開放的ですわ」
湖瑠璃ちゃんが、
「ちょっとしたプールみたいで、泳げそうですね」
眞鳥さんが、
「それ誰でも一度はやりたいことですよね。まあ、さすがにやりませんけど」
晶さんが、
「アタシは二十八回やりやした」
「やったんですか!?」
姿は見えずとも、聞こえてくる声。
湯気のカーテン越しに聞こえてくる、女子の開放的な声。
獅子の口から出てくるお湯が熱く、かなりきついが必死に耐えるしかない。
眞鳥さんが、
「それにしても、湖瑠璃ちゃんって ホントに吉祥院さんの妹なんだって分かりますね。
髪型と色は違いますが、それ以外はそっくり」
湖瑠璃ちゃんが照れたように、
「そうですか。えへへへ……」
「将来は お姉さんのように、美人になりますね。きっと 髪以外は凄いそっくりの……」
そこで言葉が止まった。
眞鳥さんの視線が、湖瑠璃ちゃんの胸に止まったのだ。
「凪お姉さん。その目はどこを見ているのでしょう」
「ううん。別に何でもないですよ-」
「これはあれですよ、今はしかたないんです。湖瑠璃はまだ十二歳ですから。不可抗力なんです。これから成長していってすっごいナイスバディのボンッキュンッボンッになるんです」
晶さんが、
「麗華お嬢さまは、小学校卒業の時には、すでにかなりの発達具合でやした」
「晶さんまで!」
みんなして キャッキャウフフで はしゃいでいた。
男の煩悩が全開になる。
落ち着け。
心の中で般若心経を唱えるんだ。
はんにゃーはーらーみーたーじょーじょーむげむげしゃーらー……
あれ、般若心経ってこんなんだっけか?
「では、体を洗いましょうか」
セルニアが言うと、宮は、
「わたしはもう少し入ってく。しばらくしたら、出るから」
湖瑠璃ちゃんが、
「お姉さま、洗いっこしましょう」
セルニアたちが、湯船を出るのを確認して、宮は俺に言った。
「大丈夫? 茹でタコみたいになってるけど」
「なんとか、踏ん張れる」
「よし。じゃあ、その状態で少し動ける?
今はみんな、洗い場に行ってるから、その間に 一先ず お湯から出て、岩伝いにあそこの大きな岩にまで移動して。
ここに居たら さっきみたいなことになるかもだし、あそこなら 人 一人 余裕で隠れられると思うから。
で、みんなが湯船に戻ってきたら、その隙に 洗い場の裏側を通って脱衣所まで行けば、見つからないで脱出できると思う」
みんなが居るから多少のリスクはあるが、成功すれば一気に脱衣所まで行ける。
「わかった。スニーキングは得意だ」
「了解。だったら湯船から出るまでは、あたしが誘導するから。
あと、見つかりにくいように これをかぶって」
風呂桶を差し出してきた。
「OK。スニーキングにかぶり物は必須だ」
「それじゃ行こう。前、見えないと思うから、あたしの背中に捕まりながら付いてきて」
「頼む」
こうして決死の潜入作戦を決行することとなった。
しかし……
「きゃん。ちょっと、そこ背中じゃない」
「スンマセン。すばらしい触り心地でした」
「喜んでないで、ちゃんとして」
違う場所を掴もうとして、
「そこも違う。むしろさっきよりも、やんっ」
「ぬおおぉ、さっきよりも柔らかいのだが、これはもしかして」
「正体に気付いたらぶちのめす」
「ごめんなさいです」
「あれ? 球竜さん、どうしたんですか?」
眞鳥さんが異変を感じ取ったのか、そんなことを聞きながら湯船を見てきた。
「なんだか赤い顔になってるけど、湯あたりしましたか? っていうか、隣に逆さまの風呂桶が浮いてますけど」
「これはね、健康体操なの。風呂桶健康体操。ダイエットに効果的」
眞鳥さんの目がギラリと輝いた。
「なるほど、ダイエットですか。それは非常に興味がありますね。洗い終わったら是非とも教えてください」
そして眞鳥さんは洗い場に戻る。
危なかった。
「変なところ触るから」
「すんません。そして素晴らしかったです」
「喜ぶな」
アクシデントはあったものの、なんとか無事に湯船を移動し、出入り口に続く岩陰の端まで辿り着くことに成功する。
「頑張って。ここから先は援護できないから」
「ああ、ありがとう」
俺は岩陰から次の岩陰へと、慣れた感覚で移動していく。
数々のミッションをこなしてきた俺に、こんなことは朝飯前。
そして目的の、出入り口付近の岩まで到着。
自分の体を最小体積に縮こまらせ、岩陰からはみ出ないようにする。
ギリギリで多少辛いが、なんとかできた。
「ふふふーん。ふんふふんふーん」
鼻歌を歌いながら髪を洗っているセルニア。
シャワーからお湯を出そうとして、最初に出てきたのは水だった。
「きゃあぁん」
色っぽい悲鳴を上げる。
「あらあら、お姉さまったら」
湖瑠璃ちゃんがフォローして、お湯に。
眞鳥さんが、
「吉祥院さんって、時々ドジっ子になりますね」
「もー、眞鳥さん」
と 拗ねる、セルニア。
「ところで、吉祥院さんは 彼とはどうなんですか?」
「え?」
「前から気になってたんですが、仲良いですよね。湖瑠璃ちゃんが お兄さまと呼んでいますし、メイドさんや執事さんたちとも仲良しですし。
吉祥院さんたちも、お姉さんの玲さんとも仲良いですしね。
家族ぐるみの付き合いなんでしょう」
「それは、そうですが」
「それで、一度ハッキリ聞いておきたかったんですよ。
お二人は お付き合いしているのかどうか」
「お、お付き合いの仲……」
「言っておきますが、フェンシングで お突きあいしているという意味ではありません」
「そんな べたべたな ダジャレで ごまかしたりしませんわよ」
「では、交際ですか? 交際しているのですか?
言っておきますが、高等裁判所を意味する高裁ではありません」
「それぐらい分かりますわよ」
「では、どうなのですか? 恋人なのですか? 恋人同士と言うことで決定ですか?」
なんか ぐいぐい迫ってくる眞鳥さん。
セルニアは目がぐるぐる回り始めた。
「しょ、しょれは、なんというか、しょの、けして否定はいたしませんが、しかしながら そう断じるには まだ早計かと」
「そういうハッキリしない態度はよくありません。そうやって うやむやにしてごまかしている内に、逆寝取られとかが発生したりするんです。
寝取られとはわかりますか?
女が他の男に奪われることです。
逆寝取られとは、男が他の女に寝取られることです。
お互いの肌の感触を知ってしまうと、すぐに情が移ってしまう物なのです。
こうしている今も、すでに他の女の肌を知ってしまったのかも知れませんよ」
眞鳥さん、高畑くんみたいに超能力でもあるじゃなかろうか。
「さあ、どうなんです。さあ、さあ!」
はい か いいえ か。
イエスか ノーか。
眞鳥さんはセルニアに、二択を迫る。
もはや逃れられない。
と、その時だった。
からからかしゃーん。
大量の積み木が崩れたかのような音が響き渡った。
見ると、俺が隠れている岩陰のすぐ隣、風呂桶や風呂椅子が大量に積んであった山の中に猪鹿蝶 晶さんが埋もれていた。
湖瑠璃ちゃんが、慌てて駆け寄る。
「どうしました、晶さん」
「申し訳ありやせん。サウナに入ろうとして、足を滑らせ、アイススケートの如く 五 六メートルほど滑ったあげくに、ご覧の通り突っ込んでしまいやした」
眞鳥さんが、
「メイドさんも意外なところでドジっ子だ」
セルニアが、
「とにかく、今助けますわ」
みんなが岩の隣に駆け寄ってくる。
とうぜん、すぐ近くに俺がいる。
みんなが集まれば、間違いなく俺は見つかるだろう
俺は即座に動いた。
来たルートとは逆に、湯船に戻らんと、蛇の如く匍匐前進で素早く移動。
不幸中の幸いで、みんなの注意は晶さんに向いており、ばれることはなかった。
しかし、
「ただいま 帰還しました」
「作戦失敗だね」
再び湯船の中に、潜伏することとなった。
双六のように、ゴール直前で、振り出しに戻るである。
正確には、セルニア、湖瑠璃ちゃん、眞鳥さん、晶さんの四人。
俺の位置からは声だけでしか判別できないが、間違いない。
もし、俺が宮と一緒に温泉に入っているところを見られれば、みんなはどう思うか。
特にセルニア。
怒るを通り越して、泣き出してもおかしくないんじゃないか。
誤解だとか言っても、そんなの通用しない。
俺と宮は完全に裸のお付き合いをしているようにしか見えないんだから。
宮が小声で俺に、
「動いちゃだめ」
「わかった」
俺は隠れていると、みんなが湯船に入ってきた。
「あら、球竜さんではありませんか」
セルニアが宮に気付いた。
しかし、俺がいることまでは気付いていない。
湖瑠璃ちゃんが、
「宮 お姉さんでしたか」
宮は少しキョドりながらも、
「ええっと、みんなもこっち来たんだ」
「ええ、ここは明日は入れないので、今日の内に入っておこうと思いまして」
セルニアが説明した。
宮は俺を体で隠す位置にいる。
俺は この位置から動くことはできないのだが、場所が獅子像の給湯口に近くて、メチャクチャ熱い。
眞鳥さんが、
「どうですか、球竜さん。湯加減は?」
「うん、良い感じだよ。少し熱めで温泉って雰囲気が出てる」
晶さんが、
「なるほど。温泉と言えば熱めなのが基本。どれ、アタシがちょっと確かめやしょう」
晶さんが入ってきた。
「なるほど。良い感じでやす。いかにも温泉と行った風情」
湖瑠璃ちゃんも、
「ええ、いい湯加減です。ほら、お姉さまも」
「はいはい」
湖瑠璃ちゃんに促され、セルニアも入ってくる。
「ではわたしも」
眞鳥さんも入ってきた。
こうして、さっきまで広々とした貸し切り状態だった湯船は、すっかり女子で一杯になった。
セルニアが感嘆した声。
「まあ、とても良いお湯です。それに広々としていて開放的ですわ」
湖瑠璃ちゃんが、
「ちょっとしたプールみたいで、泳げそうですね」
眞鳥さんが、
「それ誰でも一度はやりたいことですよね。まあ、さすがにやりませんけど」
晶さんが、
「アタシは二十八回やりやした」
「やったんですか!?」
姿は見えずとも、聞こえてくる声。
湯気のカーテン越しに聞こえてくる、女子の開放的な声。
獅子の口から出てくるお湯が熱く、かなりきついが必死に耐えるしかない。
眞鳥さんが、
「それにしても、湖瑠璃ちゃんって ホントに吉祥院さんの妹なんだって分かりますね。
髪型と色は違いますが、それ以外はそっくり」
湖瑠璃ちゃんが照れたように、
「そうですか。えへへへ……」
「将来は お姉さんのように、美人になりますね。きっと 髪以外は凄いそっくりの……」
そこで言葉が止まった。
眞鳥さんの視線が、湖瑠璃ちゃんの胸に止まったのだ。
「凪お姉さん。その目はどこを見ているのでしょう」
「ううん。別に何でもないですよ-」
「これはあれですよ、今はしかたないんです。湖瑠璃はまだ十二歳ですから。不可抗力なんです。これから成長していってすっごいナイスバディのボンッキュンッボンッになるんです」
晶さんが、
「麗華お嬢さまは、小学校卒業の時には、すでにかなりの発達具合でやした」
「晶さんまで!」
みんなして キャッキャウフフで はしゃいでいた。
男の煩悩が全開になる。
落ち着け。
心の中で般若心経を唱えるんだ。
はんにゃーはーらーみーたーじょーじょーむげむげしゃーらー……
あれ、般若心経ってこんなんだっけか?
「では、体を洗いましょうか」
セルニアが言うと、宮は、
「わたしはもう少し入ってく。しばらくしたら、出るから」
湖瑠璃ちゃんが、
「お姉さま、洗いっこしましょう」
セルニアたちが、湯船を出るのを確認して、宮は俺に言った。
「大丈夫? 茹でタコみたいになってるけど」
「なんとか、踏ん張れる」
「よし。じゃあ、その状態で少し動ける?
今はみんな、洗い場に行ってるから、その間に 一先ず お湯から出て、岩伝いにあそこの大きな岩にまで移動して。
ここに居たら さっきみたいなことになるかもだし、あそこなら 人 一人 余裕で隠れられると思うから。
で、みんなが湯船に戻ってきたら、その隙に 洗い場の裏側を通って脱衣所まで行けば、見つからないで脱出できると思う」
みんなが居るから多少のリスクはあるが、成功すれば一気に脱衣所まで行ける。
「わかった。スニーキングは得意だ」
「了解。だったら湯船から出るまでは、あたしが誘導するから。
あと、見つかりにくいように これをかぶって」
風呂桶を差し出してきた。
「OK。スニーキングにかぶり物は必須だ」
「それじゃ行こう。前、見えないと思うから、あたしの背中に捕まりながら付いてきて」
「頼む」
こうして決死の潜入作戦を決行することとなった。
しかし……
「きゃん。ちょっと、そこ背中じゃない」
「スンマセン。すばらしい触り心地でした」
「喜んでないで、ちゃんとして」
違う場所を掴もうとして、
「そこも違う。むしろさっきよりも、やんっ」
「ぬおおぉ、さっきよりも柔らかいのだが、これはもしかして」
「正体に気付いたらぶちのめす」
「ごめんなさいです」
「あれ? 球竜さん、どうしたんですか?」
眞鳥さんが異変を感じ取ったのか、そんなことを聞きながら湯船を見てきた。
「なんだか赤い顔になってるけど、湯あたりしましたか? っていうか、隣に逆さまの風呂桶が浮いてますけど」
「これはね、健康体操なの。風呂桶健康体操。ダイエットに効果的」
眞鳥さんの目がギラリと輝いた。
「なるほど、ダイエットですか。それは非常に興味がありますね。洗い終わったら是非とも教えてください」
そして眞鳥さんは洗い場に戻る。
危なかった。
「変なところ触るから」
「すんません。そして素晴らしかったです」
「喜ぶな」
アクシデントはあったものの、なんとか無事に湯船を移動し、出入り口に続く岩陰の端まで辿り着くことに成功する。
「頑張って。ここから先は援護できないから」
「ああ、ありがとう」
俺は岩陰から次の岩陰へと、慣れた感覚で移動していく。
数々のミッションをこなしてきた俺に、こんなことは朝飯前。
そして目的の、出入り口付近の岩まで到着。
自分の体を最小体積に縮こまらせ、岩陰からはみ出ないようにする。
ギリギリで多少辛いが、なんとかできた。
「ふふふーん。ふんふふんふーん」
鼻歌を歌いながら髪を洗っているセルニア。
シャワーからお湯を出そうとして、最初に出てきたのは水だった。
「きゃあぁん」
色っぽい悲鳴を上げる。
「あらあら、お姉さまったら」
湖瑠璃ちゃんがフォローして、お湯に。
眞鳥さんが、
「吉祥院さんって、時々ドジっ子になりますね」
「もー、眞鳥さん」
と 拗ねる、セルニア。
「ところで、吉祥院さんは 彼とはどうなんですか?」
「え?」
「前から気になってたんですが、仲良いですよね。湖瑠璃ちゃんが お兄さまと呼んでいますし、メイドさんや執事さんたちとも仲良しですし。
吉祥院さんたちも、お姉さんの玲さんとも仲良いですしね。
家族ぐるみの付き合いなんでしょう」
「それは、そうですが」
「それで、一度ハッキリ聞いておきたかったんですよ。
お二人は お付き合いしているのかどうか」
「お、お付き合いの仲……」
「言っておきますが、フェンシングで お突きあいしているという意味ではありません」
「そんな べたべたな ダジャレで ごまかしたりしませんわよ」
「では、交際ですか? 交際しているのですか?
言っておきますが、高等裁判所を意味する高裁ではありません」
「それぐらい分かりますわよ」
「では、どうなのですか? 恋人なのですか? 恋人同士と言うことで決定ですか?」
なんか ぐいぐい迫ってくる眞鳥さん。
セルニアは目がぐるぐる回り始めた。
「しょ、しょれは、なんというか、しょの、けして否定はいたしませんが、しかしながら そう断じるには まだ早計かと」
「そういうハッキリしない態度はよくありません。そうやって うやむやにしてごまかしている内に、逆寝取られとかが発生したりするんです。
寝取られとはわかりますか?
女が他の男に奪われることです。
逆寝取られとは、男が他の女に寝取られることです。
お互いの肌の感触を知ってしまうと、すぐに情が移ってしまう物なのです。
こうしている今も、すでに他の女の肌を知ってしまったのかも知れませんよ」
眞鳥さん、高畑くんみたいに超能力でもあるじゃなかろうか。
「さあ、どうなんです。さあ、さあ!」
はい か いいえ か。
イエスか ノーか。
眞鳥さんはセルニアに、二択を迫る。
もはや逃れられない。
と、その時だった。
からからかしゃーん。
大量の積み木が崩れたかのような音が響き渡った。
見ると、俺が隠れている岩陰のすぐ隣、風呂桶や風呂椅子が大量に積んであった山の中に猪鹿蝶 晶さんが埋もれていた。
湖瑠璃ちゃんが、慌てて駆け寄る。
「どうしました、晶さん」
「申し訳ありやせん。サウナに入ろうとして、足を滑らせ、アイススケートの如く 五 六メートルほど滑ったあげくに、ご覧の通り突っ込んでしまいやした」
眞鳥さんが、
「メイドさんも意外なところでドジっ子だ」
セルニアが、
「とにかく、今助けますわ」
みんなが岩の隣に駆け寄ってくる。
とうぜん、すぐ近くに俺がいる。
みんなが集まれば、間違いなく俺は見つかるだろう
俺は即座に動いた。
来たルートとは逆に、湯船に戻らんと、蛇の如く匍匐前進で素早く移動。
不幸中の幸いで、みんなの注意は晶さんに向いており、ばれることはなかった。
しかし、
「ただいま 帰還しました」
「作戦失敗だね」
再び湯船の中に、潜伏することとなった。
双六のように、ゴール直前で、振り出しに戻るである。
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