悪役令嬢は腐女子である

神泉灯

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99・触手

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 二回戦目のゲームを藤守さんが発表する。
「二回戦目のゲームは、デビル・スレイヤーです。
 乱戦可能な3D格闘ゲームで、天使、悪魔、人間のキャラから、選択してプレイします。
 八人 一組の 五チームに分かれての対戦が可能で、最大 四十人同時プレイが可能。
 バトルロイヤルも可能ですが、今回は四人で四チームに分かれての対戦となります」


 そして 準備に入る俺達に声をかけるチーム。
「よろしくおねがいねぇん」
 上永先生チームだ。
 宮が上永先生に答える。
「よろしくおねがいします。エンジェル・プリンスのコンサートは私の物ですよ」
「わたしだって負けないわよぉん」
 五十嵐武士が愛想笑いをしながらセルニアに、
「吉祥院さま、お手柔らかにお願いします」
 しかし セルニアは鋭い眼で答えた。
「いいえ、全力で勝ちに行きます」
 高畑くんが感心する。
「さすが吉祥院どの。勝負と付くからには手加減はしないでござるか」
 そして 大滝利通くんが俺に挨拶。
「では一試合お願いするよ」
「ああ、よろしくな、大滝くん」


 俺達は試合のスタンバイ。
 俺が選ぶのは人間の電撃使い。
 電撃を操るキャラクターで、極めてオーソドックスなタイプ。
 セルニアが選んだのは、剣士タイプ。
 フェンシングをしているセルニアらしいキャラだ。
 宮が選んだのは、武道家。
 やはり空手をしている宮らしい。
 海翔が選んだのは、魔法少女。
 美少女オタクの海翔らしいチョイスだった。


 ゲームスタート。
 四人 四チームの 十六人が同時に戦う。
 チームメンバー以外を全員倒せば、その時点で勝利確定。
 つまり、チームの一人でも生き残っていれば、それで勝ちだ。
 舞台は立体的なフィールド。
 かなり段差のある地形で、このフィールドを四方八方へ移動しながら、必殺技などを出して相手を攻撃する。
 しかし このゲームは複数プレイだ。
 一人に気を取られていると、突然 横から攻撃されるなどと言うことは当たり前。
 全方向に注意しなくてはならない。
 俺は先ず手始めに、ネコ科の魔獣を狙って攻めてみる。
 出だしで いきなり必殺技。
 雷光電撃。
 遠距離攻撃の必殺技で牽制し、距離を詰め、弱パンチ 弱キックを連打し体力を削ってみる。
 しかし、相手もすぐに対応した。
 防御してからのカウンターで必殺技の突進攻撃。
 俺も防御したが、必殺技は防御しても少しダメージを受ける。
 しかし 防御はした。
 次はこちらの番だ。
 と 思ったら、横から攻撃を受けた。
 死神を思わせる、大きな鎌を手にしたキャラの、大パンチ。
 いや、鎌を使っての攻撃だからパンチとは言わないのだろうけど。
 さらに そこに、恐竜を思わせる人間サイズの二足歩行の爬虫類が攻撃に加わった。
 ヤバい。
 こいつら全員 同じチームで、俺を潰しにかかってる。
 とにかく回避行動だ。
 右に避け、左によけ、上にジャンプし、スライディングし、とにかく回避し続けるのだが、それにも限界がある。
 相手は三人。
 こちらは一人。
 数が多すぎる。
 体力ゲージが どんどん削られていく。
 そこに、俺のヘッドセットから声が聞こえた。
「プリティ サンシャイン!」
 わざわざ 魔法少女の必殺技を口にする海翔だった。
 だが、光の攻撃が、俺を集中攻撃していた奴らに命中。
 完全な不意打ちとなり、かなりのダメージを与えられた。
 すかさず俺も反撃に転じる。
 雷光放電。
 周囲に電撃を放つ必殺技。
 三体のキャラに大ダメージ。
 三体は分が悪いと判断したのか、いったん距離を取った。
 しかし、そこにセルニアが死神に剣での打突攻撃を当てた。
 死神の体力ゲージはゼロになった。
「やりましたわ」
「さすがセルニアだ」
 海翔が連絡する。
「球竜さんもピンチみたいだよ」
 見ると宮のキャラも集団に囲まれている。
 だが 宮が集中攻撃されているわけではなく、入り乱れての乱戦だ。
 どうやら 複数のチームが同じ場所に固まってしまったらしい。
 ならば ここは遠距離攻撃。
 雷光電撃を連発する。
 同じチームではダメージは受けないので、同士討ちなど気にせずに連発する。
「プリティ スターライト」
 海翔も遠距離攻撃を連発し、そしてセルニアが集団に飛び込んだ。
 セルニアは宮を援護するように、他のキャラを攻撃する。
 宮が喜ぶ。
「助かったよ。これで反撃できる」
「行きますわよ」
 二人は合図すると、連携して攻勢に転じた。
 俺達の所にも戦闘は拡大し、俺と海翔も接近戦での戦いになる。
 まずいな。
 俺は始めに集団で攻撃を受けてしまったため、体力ゲージが半分を切っている。
 乱闘が続けば、KOされるだろう。
 ここは いったん距離を取る。
 だが、触手タイプのキャラが俺を執拗に追いかけてきた。
 なぜかは 分からないが、集団から離れた俺を、明らかに狙い撃ちしてきている。
 なぜだ?
 この試合では こいつとは戦っていない。
 なにか恨みを買うようなことをしたか?
 とにかく挑まれたなら戦わなくては。
 俺は通常攻撃に必殺技を織り交ぜながら攻撃を繰り出すが、どういうわけか この触手タイプは俺の攻撃を全て読んでいるかのように、回避や防御をし、そして まとわりつくかのような攻撃ばかり仕掛けてくる。
 俺のゲージはどんどん減っていき、そしてついに、ゼロとなった。
 KO。


 くそ、俺はリタイアか。
 そうなると 残り三人に期待するしかない。
 だが 心配する必要もなく、ゲームはかなり進んだが、三人ともまだ無事。
 三人以外で残っているのは、やはり三人だが、しかし別々のチーム。
 連携を取れるセルニアたちの方が有利なのは当然で、そして、三人とも残ったのだった。


 こうして 俺達は二回戦目を勝ち進み、次は決勝となるのだった。


 高畑くんが爽やかな笑顔で、俺達の健闘を称える。
「いやー、楽しかったでござるな。負けてしまったが、たまには こういう大会に出場するのも良い物でござる」
 上永先生が同意する。
「ホントねぇん。わたし エロエロな触手キャラ使ったんだけどぉ、なんだか電撃使いを苛めたくなってぇ、執拗に責めちゃったのぉん」
 あの キャラ上永先生だったのか。
 どうりで 怪しい動きをしていると思ったんだ。
 で、五十嵐がセルニアを応援する。
「決勝戦 頑張ってください。応援しています」
「ありがとうございます」
 そして大滝くんが俺に応援を送る。
「優勝するよう祈っているよ」
「ありがとう、大滝くん」


 次で全ての決着が付く。
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