悪役令嬢は腐女子である

神泉灯

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90・小技を連発

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 ……続き。


 俺達は総合デパートの中を色々見て回った。
 クレープの味を楽しんだり、CDショップを覗いたり、服を見て回ったり。
 そしてゲーセンに立ち寄った。
 このデパート、中々広いゲームコーナーがあるな。
「そう言えば、君ってゲーマーだったよね。私、こういうのあまりやったことないんだけど、ちょっと教えてよ」
「オーケー」
「ね、これはどういうゲーム?」
「ワニ叩きゲーム。モグラ叩きゲームの亜種で、出てくるワニを片っ端から叩いて掃討していく物だ」
「これは?」
「体感型戦闘機のシューティングゲームだな。操作に連動して座席が動く。飛来する敵機を片っ端から撃墜していく物だ」
「これは?」
「ゾンビ ガン シューティングゲーム。この銃で出現するゾンビを片っ端から撃っていく物だ」
「ゲームってとにかく片っ端から倒していく物なんだって事だけは理解できたわ」


 そして俺達はクレーンゲームを楽しんだり、ダンスゲームに興じたりした。
 なお、宮はダンスゲームで、いきなり点数トップを叩き出した。
「すげぇ。これやるの初めてなんだよな? 音楽やってるってだけで ここまで出来ないぞ、普通」
「空手のリズム感と共通してるところもあったから」
「ダンスゲームの大会に出場したら、優勝するかも」
「ホント? 今度 挑戦してみようかな」


 次はゲーセン初体験記念にプリクラ。
「これは知ってる。やったことはないけど、有名だよね」
「俺もこれはやったことない」
「えー、以外。なんでやったことないの?」
「独り身には出来ないゲームなんだ」
「あはははー。確かにー。じゃあ、初体験しよー」
 そして俺達はプリクラを楽しんだのだった。


 そして プリクラから出てくると、どこか中性的な小学四年生の男子が待ち構えていた。
「お兄さん、久し振り」
 宮が笑顔になる。
「わー、可愛いー。君の知り合い?」
「俺のライバルの、小田原 一彦」
「ライバル?」
 小田原 一彦が説明する。
「去年の格闘ゲーム大会決勝で、優勝争いをしたんだ。僕が勝ったよ」
「あと もうちょっとで俺が勝てたんだけどな。まさか あそこで 小技を連発してくるとは。普通 必殺技を出すだろ」
「ハメたわけじゃないから良いんだよ。読みの甘かった お兄さんが悪いんだよ」
 そして宮を見て、
「ところで、お姉さんは?」
「私、球竜 宮。よろしくね」
「お兄さんの彼女?」
 俺は即座に、
「いや、違う」
 一彦は気まずそうな表情で、
「お兄さん、お姉さん ちょっと怒ってるよ。っていうか 早すぎるよ」
「なにがだ? っていうか なんで いきなり怒り出すんだ」
 宮は ぷいっとそっぽを向いて、
「知らない」
 なんで怒るんだ?


「お兄さん、久し振りに僕と勝負しようよ」
「よし。ここんとこ やってなかったし、勝負と行こう。あの時の雪辱を果たさせて貰うぞ」
 そして俺と小田原 一彦は、格闘ゲーム、キング・オブ・ストリート・ファイターズの対戦台に座った。


 結果発表。
 三回戦い、三敗。
「お兄さん、腕なまってるよ。そんなんじゃ、次の大会で また僕に負けるよ」
「練習しておく」
 デパートの館内放送から、五時を知らせる音が鳴った。
「あ、もう こんな時間。僕、帰らなくちゃ。じゃあね、お兄さん。次の大会までに腕を磨いておいてよ。それと、綺麗な お姉さん、また会おうね」
 と足早に去って行った。


 宮はなにやらニマニマ顔を崩していた。
「えへへへ。綺麗って言われちゃった。可愛い子だったねー」
「将来、プレイボーイになるんじゃなかろうか。まあ、あいつの将来はともかく、俺達もそろそろ帰ろうか」


 帰り道、まだ五時だというのに、かなり薄暗くなっていた。
 もう冬だと言うことを自覚させる。
 そして駅への道は、イルミネーションで輝いていた。
 いかにもクリスマスって感じだった。
「綺麗」
 宮がうっとりとした表情でイルミネーションに見入っていた。
「ああ、本当に綺麗だ」
 しばらく俺達は景色を眺めていると、不意に声をかけられた。
「そちらの素敵なカップルさん。一つ いかがですか」
 見ると、露天のシルバーアクセサリーショップの店員さんだった。
 どうやら俺達のことを恋人同士だと思ったらしい。
「一足早いクリスマスプレゼントに、彼女に買ってあげてはいかがですか」
 クリスマスプレゼントか。
 セルニアの分は買ったけど、手伝って貰った宮には何もプレゼントしていないというのはいかがな物か。
「宮、なにか欲しいアクセサリーはあるか? 一つ買ってやるぞ」
「え、ホント。良いの?」
「ああ、考えてみれば、宮のクリスマスプレゼントも忘れてた。手伝って貰ったし、欲しいものがあれば、俺がプレゼントするよ」
「わー、嬉しー。ありがとう。なんでも良いの?」
「……残りの金の範囲でお願いします」
「あははは。分かった、あんまり高くない物にしておくよ」
 そして宮はシルバーアクセサリーショップの品を見始めた。


「あ、これ素敵」
 宮が選んだのは、少し複雑な形状のリングだった。
 二つの細い指輪が絡まって、無限の記号の形状になっていた。
 店員さんが解説する。
「それはインフィニット・ラブ・リング。二つの指輪がお互いを現し、絡み合って無限の愛を象徴させて見ました。私の手作りです。よければどうぞ」
「ねえ、これが良い」
「わかった」
 俺は代金を払い、そして宮の左手にはめる。
 薬指はプロポーズしているみたいなので、中指に。
 宮は左手を掲げて、リングを眺める。
「これ、ずっと大切にするね」


 こうして、俺は宮に一足早いクリスマスプレゼントをした。
 セルニアのプレゼントも買ったし、次はクリスマスパーティーを待つのみ。
 その日は疲れを癒やすために、早めに就寝したのだった。
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